釋摩訶衍論
『大乗起信論』に対する註釈書
『釋摩訶衍論』(しゃくまかえんろん)は、秦姚(ようしん:後秦384-417)の伐提摩多(ばつだいまた)による漢訳とも記され、『大乗起信論』に対する註釈書であり、大乗もしくは密教の龍樹菩薩の著作とされている。全十巻[1]。如来蔵思想と阿頼耶識との結合を図ったものとされている。
撰述問題
編集本書は、龍樹作と伝えられているが、夙にその偽作説が唱えられており、日本の淡海三船が龍樹に仮託した偽書として厳しく批判した[2]。最澄や安然も偽作説を支持している[2]。
このように伝来当時の日本でも偽書ではないかと論争が起き、その事実を知っていたはずの空海は本論を度々引用している[3][4]。
仏教学者の石井公成は、『釈論』には元暁(ウォニョ)や義湘(ウィサン)の影響があり、また本文に変格漢文が見られることを指摘し、新羅撰述であるとする説を主張している[2]。
真言教学との関係
編集真言教学史では特に重視されてきた[1]。これは弘法大師空海がこの論の中にある密教の要素に着目し、顕教と密教との峻別のための典拠としたことによる。空海が真言密教の体系化に本論を用いたことによって、本覚思想が密教とともに進展した。
関連項目
編集脚注
編集参考文献
編集- 石井公成「新羅成立の諸経論」『佛敎學報』第92号、東國大學校 佛敎文化硏究院、2020年、66-87頁、doi:10.18587/bh.2020.9.92.65。