豆乳
豆乳(とうにゅう)は、大豆を水に浸してすりつぶし、水を加えて煮つめた汁を漉した飲料である[3]。煮詰めた汁を濾して残ったのがおからである。
豆乳 | |||||||
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別名 | ソイミルク | ||||||
発祥地 | 中国 | ||||||
誕生時期 | a. 1365[1][2] | ||||||
33 kcal (138 kJ) | |||||||
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グリセミック指数 | 34 (低) |
味は無調整であれば豆腐とほぼ同じで、大豆特有の青臭さがある。この風味を好む人も多いが、飲みづらいと感じる人もいるため、日本ではこの他、植物油などを加えて飲みやすく味を調えた調製豆乳や、砂糖などで甘みを加えたり、果汁や抹茶、ココアのような副原料で味付けしたりした豆乳飲料も販売されている。
各国における豆乳
編集中華圏
編集中華文化圏では、伝統的な豆乳を「豆漿」(トウチアン dòujiāng)と呼び、牛乳代替品は「豆奶」と呼ぶ。
東南アジア
編集豆乳は、東南アジアでも広く飲まれている。ベトナムでも朝食用に「スアダウナイン sữa đậu nành」という甘い豆乳が販売されており、バニラ、ココア風味のものもある。タイでも朝食用に「ナームトーフーน้ำเต้าหู้」という甘い豆乳があるほか、タピオカやゼリー入りのものも販売されている。カンボジアでも練乳入り豆乳「タッグ・ソンダエク(Tek Sondaek)」が販売されている。シンガポールでは缶入りの調製豆乳も販売されている。
日本
編集原材料等 | 豆乳(無調整豆乳) | 調製豆乳 | 豆乳飲料 |
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大豆たん白質含有率 | 3.8%以上 | 3.0%以上 | 1.8%以上 果実の搾汁の製品に占める重量の割合が5%以上のものにあつては0.9%以上 |
食品添加物以外の原材料 | 大豆以外のものを使用していないこと。 | 以下に列挙している物以外の物を使用していないこと。 | 次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。 |
食品添加物 | 使用していないこと | 次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。
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次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。 |
日本では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店頭にも並ぶようになり、無調整の豆乳や豆乳飲料を手に入れることが容易になった。紙パックやプラスチックボトルに入った商品が多く販売されている。豆汁を濾した豆乳を「無調整豆乳」と表記しているものもあり、近年は大豆の青臭さを抑えられる製法が開発されている。一方、飲みやすい味や香りに調整したものは「調製豆乳(ちょうせいとうにゅう)」と呼ばれており[4]、砂糖(甘味料)・食塩・ビタミン類の他香料・植物油などを加えて飲みやすい味に加工したものが販売されている。また、不二製油は世界初の大豆の分離分画技術(USS製法・2012年特許取得)を確立させ、「低脂肪豆乳」と「豆乳クリーム」という新素材を生み出した。日本国内の代表的な製造販売メーカーは、キッコーマンソイフーズ(旧:紀文フードケミファ)、マルサンアイ、ソヤファームなど。かつては、三菱化成食品→三菱化学フーズ(ブランド名:マプロン)、明治乳業(ブランド名:サングロー豆乳)、日清サラダ油からも販売していた。自家製の豆乳は中国ほど一般的ではないが、豆腐店の店頭などで、新鮮な豆乳が販売されている。
関連する食品
編集豆乳ににがりなどの凝固剤を加えて固めると豆腐となる。無調整豆乳の中には、凝固させると豆腐ができると表示しているものもある。大豆から豆乳を絞った残り滓はおからと言い、食物繊維が多く含まれている[6]。
豆乳をじっくり加熱した時に、表面にできる薄皮を引き上げたものをゆば(湯葉・湯波)といい、吸い物の具として使われたり、刺身と同様にそのまま醤油などをつけて食されたりする。精進料理にも欠かせない伝統食材である。
豆乳を使った料理など
編集豆乳鍋や豆乳グラタン、豆乳シチュー、コーヒー、カフェ・オ・レ、カフェ・ラッテにおける牛乳の代わりに豆乳を用いたメニューも増えている(「ソイラテ」など)。ダイエット食品としては、豆乳クッキーなども販売されている。特に牛乳を豆乳で代用したデザートでは、プリン・ドーナツ[7]・チーズ[8]、アイスクリームなど沢山のバリエーションがある。
健康
編集100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 268 kJ (64 kcal) |
4.8 g | |
食物繊維 | 0.3 g |
3.6 g | |
飽和脂肪酸 | 0.50 g |
一価不飽和 | 0.75 g |
多価不飽和 | 1.99 g |
3.2 g | |
ビタミン | |
チアミン (B1) |
(6%) 0.07 mg |
リボフラビン (B2) |
(2%) 0.02 mg |
ナイアシン (B3) |
(1%) 0.2 mg |
パントテン酸 (B5) |
(5%) 0.24 mg |
ビタミンB6 |
(4%) 0.05 mg |
葉酸 (B9) |
(8%) 31 µg |
ビタミンE |
(15%) 2.2 mg |
ビタミンK |
(6%) 6 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(3%) 50 mg |
カリウム |
(4%) 170 mg |
カルシウム |
(3%) 31 mg |
マグネシウム |
(5%) 19 mg |
リン |
(6%) 44 mg |
鉄分 |
(9%) 1.2 mg |
亜鉛 |
(4%) 0.4 mg |
銅 |
(6%) 0.12 mg |
他の成分 | |
水分 | 87.9 g |
水溶性食物繊維 | 0.2 g |
不溶性食物繊維 | 0.1 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[10]。 | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
高タンパク低カロリーな食べ物として認知され、大豆蛋白はコレステロール低下作用があるとされるため[11]、健康飲料として利用されている。
豆乳は大豆イソフラボンが含まれ、ポリフェノール化合物の一種で、「植物由来エストロゲン」と呼ばれることもあり、体内で女性ホルモンのエストロゲンと同様の働きをし、これが骨粗鬆症予防効果、抗動脈硬化作用、更年期障害の緩和など健康にいいとされている。[12]また、乳がんや前立腺がん等の予防にも効果があることが、疫学的な調査で明らかになってきており、特にイソフラボン配糖体のゲニステインという物質に、腫瘍の血管新生を抑える効果があり、それにより腫瘍の増殖を抑制するとする研究があり[13]。さらに、大豆固形成分含量が高い豆乳には、血糖値改善効果が期待できるとの報告もあるピニトールという成分が多く含まれている[14]。
乳糖不耐症や牛乳アレルギーで牛乳を摂取できない乳児に豆乳を与えることもあるが、アフリカ系アメリカ人1,553名を対象にした調査では、豆乳を乳児期に摂取した女性は、摂取していない女性と比べ初経後5年以内に月経痛で薬剤を飲んだ比率が20%高く、18~22歳で中等度または重度の月経痛を経験する比率が50%上昇した[15]。
豆乳中のトリプシン・インヒビターのトリプシン親和性は、豆腐、味噌、きな粉などの大豆製品に比べて高いことが指摘されている[16]。トリプシン・インヒビターを多く含むものを摂食すると消化不良を起こし下痢することがある[17]。
適正摂取量および摂取上限について
編集日本豆乳協会・日本豆乳公正取引協議会は、適正摂取量について「一般的な推奨は一日当り200mlから600ml程度」としつつも、摂取上限については「特に制限はない」とし、他の飲料と同様に食事全体の健康バランスを考えることが重要であるとの見解を示している[18]。
豆乳等の大豆食品に含まれる大豆イソフラボンの摂取上限について、2006年5月、食品安全委員会は「閉経前の女性における内分泌機能への影響」に鑑みて「特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値を 30 mg/日とする」とした[19]。もっとも、この文書が対象とする食品は、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品及び特定保健用食品以外の錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状の食品を対象としたもの」「錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等のうち大豆イソフラボンを濃縮、強化した大豆イソフラボンを摂取することを目的とした『いわゆる健康食品』」であり、豆腐や豆乳・おからクッキーを含めた「単に大豆素材を利用しただけのもの」は対象ではない[20]。
あくまで大豆イソフラボンを濃縮・強化した食品が「大豆のイソフラボンとそれ以外の成分(たんぱく質、カルシウム等)とのバランスが、長い食経験を有する大豆食品とは異なって」[20] いるために指針が策定されたものであるからである。 しかし、この報告書は一般の消費者には普通の大豆食品の大量摂取にも危険性があると誤解され、キッコーマン飲料の大島秀隆に拠れば、(工場の生産能力の頭打ちと合わせて)この誤解が豆乳の第二次ブームの終了に繋がったとされている[21]。 2017年時点でも、大豆イソフラボン単体の摂取目安量の上限が75mg/日であることを根拠に「(豆乳の)1日の摂取量目安は必然的に200ml程度」「実は豆乳はその効果の多さや高さから、過剰摂取すると体に悪影響を及ぼす飲料としても知られている」などと豆乳の過剰摂取の危険性を喚起するウェブサイトも存在するが[22]、前述の通り誤解に基づくものであり、報告書は、通常の大豆食品の摂取については安全性が疑問視されたことはないこと、通常の大豆食品によって大豆イソフラボンの摂取量が75mg/日を超えたとしても直ちに健康被害に結びつくものではないことを、再三強調している[23]。
脚注
編集出典
編集- ^ Shurtleff & al. (2013), pp. 5 & 23–4.
- ^ Shurtleff & al. (2014), p. 9.
- ^ 『広辞苑』第六版【豆乳】
- ^ a b c 豆乳類の日本農林規格 農林水産省
- ^ 豆乳用大豆 関東以西向け「すみさやか」誕生 農研機構『日本農業新聞』2021年9月22日1面
- ^ “おからで糖質制限しよう。”. Amebaニュース. (2017年9月1日) 2018年1月17日閲覧。
- ^ “ミスドとタニタと「野菜ドーナツ」販売 生地にニンジン、クリームにトマトや豆乳”. J-castニュース. (2017年8月28日) 2018年1月17日閲覧。
- ^ “豆乳は「飲む」から「食べる」時代へ!大豆からできた新食材!「チーズのような豆乳ぶろっく」都内カフェで販売開始”. SankeiBiz(産経新聞社). (2017年8月7日) 2018年1月17日閲覧。
- ^ 文部科学省『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』
- ^ 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2015年版)』
- ^ 陳開利、井浦克弘、高野亮、平林潔「ラットの血中コレステロール濃度低下に対するフィブロイン投与の効果」『日本蚕糸学雑誌』1993年 62巻 1号 p.56-60, doi:10.11416/kontyushigen1930.62.56
- ^ 要出典
- ^ 大豆イソフラボン 九州大学 食糧化学研究室
- ^ Soy pinitol acts partly as an insulin sensitizer or insulin mediator in 3T3-L1 preadipocytes - The National Center for Biotechnology Information
- ^ Upson K, Adgent MA, Wegienka G, Baird DD (2019). “Soy-based infant formula feeding and menstrual pain in a cohort of women aged 23-35 years.”. Hum Reprod 34 (1): 148-154. doi:10.1093/humrep/dey303. PMC 6296212. PMID 30412246 .
- ^ 棚橋勝道 ほか「大豆トリプシンインヒビターの加熱によるトリプシン親和性の変化」『日本食品工業学会誌』1988年 35巻 8号 pp.541-544, doi:10.3136/nskkk1962.35.8_541
- ^ 町田芳郎「食用大豆タンパク質とその新しい用途」『油化学』1963年 12巻 8号 p.461-467, doi:10.5650/jos1956.12.461
- ^ “豆乳Q&A 日本豆乳協会”. 日本豆乳協会・日本豆乳公正取引協議会. 2017年8月19日閲覧。
- ^ 『大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方』p. 45
- ^ a b “厚生労働省:大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A”. 厚生労働省. 2017年8月19日閲覧。
- ^ “豆乳の味、多すぎやしないですか? メーカーにきいた - デイリーポータルZ:@nifty”. NIFTY Corporation (2016年3月1日). 2017年8月19日閲覧。
- ^ “美容や健康に効果的!豆乳の優れた効果と上手な飲み方 - 豆乳専門ページ - ピントル”. PINTORU. 2017年8月19日閲覧。
- ^ 大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方 (PDF) 食品安全委員会
参考文献
編集- 食品安全委員会 (2006年5月). “大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方”. pp. 35. 2017年8月19日閲覧。
- Shurtleff, William et al. (2013), History of Soymilk and Other Non-Dairy Milks, 1226 to 2013, Lafayette: Soyinfo Center.
- Shurtleff, William et al. (2014), History of Soybeans and Soyfoods in China and Taiwan and in Chinese Cookbooks, Restaurants, and Chinese Work with Soyfoods outside China, 1024 BCE to 2014, Lafayette: Soyinfo Center.