投影 (心理学)
(自己投影から転送)
この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2024年6月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
心理学における投影(とうえい、英: Psychological projection)とは、自己のとある衝動や資質を認めたくないとき(否認)、自分自身を守るため(防衛機制)それを認める代わりに、他の人間にその悪い面を押し付けてしまう(帰属させる)ような心の働きをいう[1][2][3]。たとえば「私は彼を憎んでいる」は「彼は私を憎んでいる」に置き換わる[3]。そのひとつに責任転嫁(Blame shifting)があり、たとえば習慣的に失礼な振る舞いをしている人は、いつも他者を失礼な人だと言って回っているケースがある。一般的には悪い面を強調することが多いが、良い投影も存在する。
投影は日常生活においてよく起こっている。例えば、なんとなく嫌いだった人物が、実は自分の否定的な、認めたくない面を体現していたなどである。また、この概念はパーソナリティ障害の治療において、医者に向けられる怒りとして専門的に語られることもある(精神分析における対象関係論の投影性同一視)。統合失調症における迫害妄想との関連も語られている。
ユング心理学では、元型の一つ影 (Schatten) とも関連し、否定するのではなくそれを自分の一面として認識し受容することで、もっと大きな「大いなる自己」・自己実現へと成長するきっかけとして活かすことができると言う。
理論的一例
編集投影は、普通の人においては、個人的・政治的な危機に遭遇した時に起こり得る[4]。自己愛性パーソナリティ障害や境界性人格障害では、より一般的に見られる[5][6]。
例
編集- いじめ
- いじめの加害者は、自分の脆弱な点をいじめの標的に対して投影しうる。いじめの卑劣行為は被害者に向けられているのだが、そのネガティブさの発生源は、実際には加害者側自身が持っていた個人的な不安感・脆弱感に起因するものである[9]。こういったネガティブな感情の相手への積極的投影は、対人関係といったミクロレベルから、国際政治、国際武力紛争というマクロレベルまで、どこでも発生する可能性がある[10]。
- 希望の投影
- ポジティブな面としては、患者は時にセラピストに対し希望の気持ちを投影することがある[12]。
脚注
編集- ^ B.J.Kaplan; V.A.Sadock『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』(3版)メディカルサイエンスインターナショナル、2016年5月31日、Chapt.4。ISBN 978-4895928526。
- ^ Sigmund Freud, Case Histories II (PFL 9) p. 132
- ^ a b 吉松和哉; 小泉典章; 川野雅資『精神看護学I』(6版)ヌーヴェルヒロカワ、2010年、Chapt.1.3。ISBN 978-4-86174-064-0。
- ^ Erik Erikson, Childhood and Society (1973) p. 241
- ^ Peter Gay, Freud: A Life for Our Time, page 281n
- ^ Glen O. Gabbard, Long-Term Psychodynamic Psychotherapy (London 2010) p. 33
- ^ The Pursuit of Health, June Bingham & Norman Tamarkin, M.D., Walker Press
- ^ Sigmund Freud, On Psychopathology (Middlesex 1987) p. 198
- ^ Paul Gilbert, Overcoming Depression (1999) p. 185–6
- ^ a b Carl G. Jung ed., Man and his Symbols (London 1978) p. 181–2
- ^ Patrick Casement, Further Learning from the Patient (1990) p. 142
- ^ Patrick Casement, Further Learning from the Patient (1990) p. 122