胸やけ
胸やけ (heartburn) は、胸部中央または腹部中央上部(みぞおち)が焼けるような感覚である[2][3][4]。英語では、pyrosis、cardialgia、acid indigestion等とも言う[5]。不快感はしばしば胸で発生し、首、喉、下顎角等に広がっていく。
Heartburn | |
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別称 | Pyrosis,[1] cardialgia |
概要 | |
診療科 | 消化器学 |
症状 | 胸の灼熱感、吐き気 |
診断法 | 身体検査、病歴 |
鑑別 | 胸痛、胃炎 |
予防 | 高脂肪、辛み、人工香料を避ける。食事後3-4時間は横にならない。ジャンクフードを避け、健康的なバランスの取れた食事をとる。 |
使用する医薬品 | 制酸剤 |
分類および外部参照情報 |
通常は胃酸が食道に逆流するのが原因で、胃食道逆流症(GERD)の主要な症状である[6]。約0.6%は、虚血性心疾患の症状である[7]。
また、胃の消化能力が不足すると、胃内に内容物が滞留し、腸へ送られない状態となる。この場合、吐き気を催し、胃の中の内容物を吐き出す(消化不良(indigestion)の一症状)。
定義
編集消化不良(indigestion)という用語は、他の多くの症状とともに、胸やけも含む[8]。消化不良は、腹痛と胸やけの組み合わせとして定義されることもある。胸部の火傷という意味ではなく、GERDと同じような意味で用いられる[9]。
鑑別診断
編集心臓と食道は同じ神経を使っているため、心臓発作の症状とGERDの兆候や症状は非常に似ており、区別は難しい[7]。区別のためには画像診断等が必要である。心臓発作の見落としは危険であるため、原因不明の胸痛に対しては、最初に心臓病を考えるべきである。
心臓
編集胸やけの症状は、急性心筋梗塞や狭心症による痛みと混同されうる[10]。消化不良に似た痛みは、急性冠症候群のリスクを増加させるが、統計的に有意なレベルには増加しない[11]。GERDの症状を訴えて病院に来た患者の0.6%は、虚血性心疾患が原因である[7]。
心臓カテーテルを装着している胸痛患者の30%には胸部不快感を説明する所見がなく、しばしば「非定型胸痛」または起源不明の胸痛と定義されている[12]。外来のpHと血圧の観察に基づくいくつかの研究で記録されたデータによると、これらの患者の25-50%は異常GERDであるという証拠がある。
食道
編集- 胃食道逆流症(GERD) - GERDは、胸やけの最も一般的な原因である。逆流した胃酸が食道に炎症を起こす[3]。
- 食道痙攣 - 通常は飲食後に発生し、嚥下困難が併発することもある[13]
- 食道狭窄
- 食道がん
食道炎[14]
- GERD
- 好酸球性食道炎 - 喘息、食物アレルギー、季節性アレルギー、アトピー性皮膚疾患など、一般的にアトピー性疾患に関連する
- マロリー・ワイス症候群 - 食道の表面粘膜の傷であり、多くは嘔吐・レッチングによって胃酸に暴露する
- 化学的食道炎 - 腐食性物質、過量の高温液体、アルコール、タバコの煙に関連する
- 感染症
胃
編集原因不明
編集機能性胸やけ(functional heartburn)は、原因不明の胸やけである[16]。過敏性腸症候群等の機能性胃腸症と関連し、プロトンポンプ阻害薬(PPI)による治療後の改善の欠如の主な原因である[16] 。しかしPPIは未だ奏効率約50%の主要な治療法である[16]。ある研究によると、カナダ人の22.3%に見られた[16]。
診断方法
編集胸やけは様々な状況が原因となりえ、診断は主に追加的な兆候や症状に基づく[16]。GERDによる胸痛は、独特な「焼けるような」感覚であり、食事の後か夜間に起こり、横になったり屈んだりすることで悪化する[17]。妊婦にも一般的で、大量の食事をしたりスパイスやや脂肪、酸が多い特定の食べ物がトリガーとなる[17][18]。胸やけが原因の胸痛が疑われた場合、患者は上部消化管検査を受けて、胃酸の逆流を確認することがある[18][19]。嚥下困難を伴う、食事後の胸やけや胸痛は、食道けいれんを示す場合がある[20]。
GIカクテル
編集リドカインと制酸薬の服用後、5-10分で症状が緩和されれば、食道由来の痛みである可能性が高くなる[21]。しかし、潜在的な心臓由来である可能性を排除できるものではなく[22]、心臓由来の不快感でも10%は制酸薬により改善する[23]。
生化学的
編集食道pHモニタリング:鼻から食道にプローブを通し、食道下部の酸性度を記録する。酸性度のある程度の変動は正常であり、小規模の逆流は比較的一般的であるため、食道pHモニタリングにより、逆流をリアルタイムで記録できる。
機械的
編集管理
編集行動管理
編集胃内容物の逆流を防ぐために、食事後2.5〜3.5時間は横にならない。
胃酸分泌抑制剤
編集最も効果が強いのが、ボノプラザンである。ボノプラザンが開発される前、あるいはコスト面の問題でプロトンポンプ阻害薬(PPI)も使われる。PPIが主流になる前にはH2ブロッカーも使用された。
食事前30〜45分に胃酸抑制薬を服用すると、食物に対する胃酸生成反応が抑制される。
消化管運動改善剤
編集消化管の蠕動運動を促進し、胃内容物の停滞を改善する目的でモサプリドや六君子湯、アコチアミドなども併用される。
ピロリ菌の除菌
編集胃粘膜がヘリコバクター・ピロリに感染している場合は、除菌を行う。除菌によって胃酸分泌が正常化(つまり亢進)し、胸やけの症状が悪化するという指摘もあるが、胸やけが改善したという報告もある。
手術治療
編集内服治療無効例では、外科的あるいは内視鏡を用いた内視鏡的治療も行われている。
疫学
編集アメリカ合衆国の人口の約42%は、胸やけを経験している[24]。
脚注
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