紀伊半島南東沖地震
紀伊半島南東沖地震(きいはんとうなんとうおきじしん)、または東海道沖地震(とうかいどうおきじしん)とは、2004年(平成16年)9月5日の19時7分と23時57分、9月7日8時29分(いずれもJST)に起きた地震である。いずれも、東南海地震の想定震源域の南側の海溝軸付近のフィリピン海プレート内で発生した逆断層型のプレート内地震と考えられている[1]。気象庁の地震震源地域区分で「紀伊半島沖」と「東海道沖」をまたぐように起こった。
この地震で死者は出なかったが、けが人が多数出たほか、沿岸部では津波が観測され、港の漁船が壊れるなどの被害があった。しかし、気象庁から津波警報が発せられたにもかかわらず、避難勧告を行わなかった自治体が多数あったうえ、実際に避難した住民もごく少数だったにもかかわらず、津波による人的被害が生じなかった。
2006年(平成18年)10月1日より、国内各地の震源名が変更になり、地震の起きた海域は「三重県南東沖」に改められているが、本記事では地震発生時の名称で記述する。
2004年9月5日19時7分8秒発生の地震
編集紀伊半島南東沖地震 | |
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地震の震央の位置を示した地図 | |
本震 | |
発生日 | 2004年(平成16年)9月5日 |
発生時刻 | 19時7分8秒(JST) |
震央 |
日本 紀伊半島南東沖 北緯33度1.9分 東経136度47.8分(北緯33度1.9分 東経136度47.8分 / 北緯33.0317度 東経136.7967度) |
震源の深さ | 38 km |
規模 | マグニチュード(M)7.1 |
最大震度 | 震度5弱:奈良県下北山村、和歌山県新宮市 |
津波 | 63cm:神津島 |
地震の種類 | プレート内地震、逆断層型注1 |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
概要
編集紀伊半島沖で地震が発生。津波注意報が震源地に近い沿岸部に発表された。
- 北緯33度1.9分、東経136度47.8分、M7.1、震源の深さ38km
- 奈良県下北山村、和歌山県新宮市で震度5弱。関東地方から九州地方までの広い範囲で揺れを観測。
- 揺れはさほど激しい揺れではなく、ゆっくりとした揺れが感じられた。2分近く同間隔の揺れが続いた。
- メカニズム解[2]
- 走向、傾斜、すべり角 (71, 56, 75)
- 地震モーメントMo 9.8 * 1019Nm
- Mw 7.3
- 破壊継続時間(主破壊) 16秒
- 破壊開始点の深さ 15 km
- 食い違い Dmax 3.9 m
各地の震度
編集震度 | 都道府県 | 観測点名 |
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5弱 | 奈良県 | 下北山村寺垣内 |
和歌山県 | 新宮市新宮 | |
4 | 岐阜県 | 岐阜山県市高木 |
愛知県 | 渥美町福江・名古屋南区鳴尾・西尾市寄住町・愛知美浜町河和 | |
三重県 | 鈴鹿市西条・津市島崎町・津市西丸之内・松阪市高町・松阪市殿町・久居市東鷹跡町・香良洲町役場・玉城町田丸・二見町江・大山田村平田・熊野市井戸町・紀伊長島町長島・海山町相賀・紀宝町成川・紀和町板屋・鵜殿村役場 | |
滋賀県 | 彦根市城町・近江八幡市桜宮町・中主町西河原 | |
京都府 | 城陽市寺田・長岡京市開田・八幡市八幡・大山崎町円明寺・久御山町田井 | |
大阪府 | 大阪西淀川区千船・八尾市本町・寝屋川市役所・大東市新町・箕面市粟生外院・柏原市安堂町・門真市中町・摂津市三島・東大阪市荒本北・四條畷市中野・堺市深井清水町・堺市石津西町・岸和田市岸城町・岸和田市役所・泉大津市東雲町・貝塚市畠中・泉佐野市市場・泉佐野市りんくう往来・富田林市高辺台・松原市阿保・大阪和泉市府中町・藤井寺市岡・泉南市信達市場・大阪狭山市狭山・阪南市尾崎町・忠岡町忠岡東・大阪田尻町嘉祥寺・大阪太子町山田・大阪美原町黒山 | |
奈良県 | 天理市川原城町・桜井市粟殿・都祁村針・奈良川西町結崎・三宅町伴堂・田原本町役場・大宇陀町迫間・菟田野町松井・奈良榛原町下井足・高取町観覚寺・新庄町柿本・広陵町南郷・奈良吉野町上市・大淀町桧垣本・黒滝村寺戸・奈良川上村迫・東吉野村小川 | |
和歌山県 | 海南市日方・御坊市薗・粉河町粉河・那賀町名手市場・桃山町元・かつらぎ町丁ノ町・高野口町名倉・和歌山美浜町和田・和歌山川辺町土生・南部川村谷口・和歌山南部町芝・和歌山印南町印南・田辺市中屋敷町・和歌山白浜町湯崎・中辺路町栗栖川・上富田町朝来・串本町潮岬・古座川町高池・熊野川町日足 |
津波
編集観測値は検潮所による。
9月5日23時57分17秒発生の地震
編集紀伊半島南東沖地震 | |
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地震の震央の位置を示した地図 | |
本震 | |
発生日 | 2004年(平成16年)9月5日 |
発生時刻 | 23時57分17秒(JST) |
震央 |
日本 紀伊半島南東沖 北緯33度8.2分 東経137度8.4分(北緯33度8.2分 東経137度8.4分 / 北緯33.1367度 東経137.1400度) |
震源の深さ | 44 km |
規模 | マグニチュード(M)7.4 |
最大震度 | 震度5弱:三重県香良洲町(現・津市)、松阪市、奈良県下北山村、和歌山県新宮市 |
津波 | 93cm:神津島 |
地震の種類 | プレート内地震、逆断層型注1 |
被害 | |
死傷者数 | 負傷者36人注2 |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
概要
編集19時7分の地震のやや東(東海道沖)で地震発生。この地震で翌9月6日0時03分頃に愛知県外海、三重県南部、和歌山県に津波警報が発表され緊急警報放送が出された。(NHKのみ[3])
- 北緯33度8.2分、東経137度8.4分、M7.4、震源の深さ44km
- 三重県松阪市、香良洲町(現:津市)、和歌山県新宮市、奈良県下北山村で震度5弱を観測。
- 名古屋をはじめ広い範囲で震度4を観測。
- 宮城県から熊本県までの広い範囲で揺れを観測し、震度1以上を観測した地点は当時の震度観測網の約半数に当たるおよそ1800に上った。
- 19時7分の地震と揺れ方はほぼ同じ。
- メカニズム解[4]
- 走向、傾斜、すべり角 (135, 40, 123)
- 地震モーメントMo 1.7* 1020Nm
- Mw 7.4
- 破壊継続時間(主破壊) 30秒
- 破壊開始点の深さ 10 km
- 食い違い Dmax 6.5 m
各地の震度
編集震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
5弱 | 三重県 | 松阪市殿町・香良洲町役場 |
奈良県 | 下北山村寺垣内 | |
和歌山県 | 新宮市新宮 | |
4 | ||
福井県 | 福井三方町中央・高浜町宮崎 | |
岐阜県 | 大垣市丸の内・海津町高須・岐阜平田町今尾・輪之内町四郷・安八町氷取・岐阜山県市高木 | |
静岡県 | 下田市東本郷・河津町田中 | |
愛知県 | 作手村高里・愛知御津町西方・渥美町福江・田原市赤羽根町赤土・名古屋瑞穂区塩入町・名古屋熱田区一番・名古屋中川区東春田・名古屋港区金城ふ頭・名古屋港区春田野・名古屋港区善進本町・名古屋南区鳴尾・半田市東洋町・碧南市松本町・刈谷市寿町・豊田市長興寺・安城市横山町・西尾市寄住町・常滑市新開町・知立市弘法町・高浜市稗田町・祖父江町上牧・平和町横池・蟹江町蟹江本町・十四山村神戸新田・飛島村飛島新田・弥富町前ヶ須新田・佐屋町稲葉・立田村石田・阿久比町卯坂・南知多町豊浜・愛知美浜町河和・武豊町長尾山・一色町一色・幡豆町西幡豆・愛知三好町三好・小原村大草 | |
三重県 | 四日市市日永・四日市市諏訪町・鈴鹿市西条・多度町多度・三重長島町松ヶ島・川越町豊田一色・いなべ市北勢町阿下喜・津市島崎町・津市西丸之内・伊勢市岩淵・松阪市高町・上野市緑ヶ丘本町・上野市丸之内・名張市鴻之台・亀山市本丸町・久居市東鷹跡町・河芸町浜田・芸濃町椋本・安濃町川西・一志町田尻・白山町川口・三重嬉野町須賀・美杉村八知・三重明和町馬之上・玉城町田丸・二見町江・小俣町元町・御薗村長屋・伊賀町下柘植・阿山町馬場・大山田村平田・浜島町浜島・磯部町迫間・尾鷲市南陽町・紀伊長島町長島・海山町相賀・三重御浜町阿田和・紀宝町成川・紀和町板屋・鵜殿村役場 | |
滋賀県 | 彦根市城町・彦根市元町・愛東町下中野・秦荘町安孫子・滋賀豊郷町石畑・多賀町多賀・米原町下多良・虎姫町五村・びわ町落合・西浅井町大浦・大津市南郷・近江八幡市桜宮町・栗東市安養寺・中主町西河原・石部町石部中央・信楽町長野・滋賀蒲生町市子川原・滋賀日野町河原・滋賀竜王町小口・能登川町躰光寺 | |
京都府 | 京丹後市網野町・城陽市寺田・八幡市八幡・大山崎町円明寺・久御山町田井・京田辺市田辺・井手町井手・木津町木津・八木町八木 | |
大阪府 | 大阪此花区春日出北・大阪西淀川区千船・大阪中央区大手前・八尾市本町・寝屋川市役所・大東市新町・箕面市粟生外院・門真市中町・四條畷市中野・交野市私部・島本町若山台・能勢町宿野・堺市深井清水町・堺市石津西町・岸和田市岸城町・岸和田市役所・貝塚市畠中・泉佐野市市場・泉佐野市りんくう往来・富田林市本町・富田林市高辺台・河内長野市原町・松原市阿保・大阪和泉市府中町・羽曳野市誉田・高石市加茂・藤井寺市岡・泉南市信達市場・大阪狭山市狭山・阪南市尾崎町・忠岡町忠岡東・熊取町野田・大阪田尻町嘉祥寺・大阪岬町深日・大阪太子町山田・大阪美原町黒山 | |
兵庫県 | 津名町志筑 | |
奈良県 | 奈良市半田開町・奈良市二条大路南・大和高田市大中・大和郡山市北郡山町・天理市川原城町・桜井市粟殿・五條市本町・御所市役所・香芝市本町・都祁村針・安堵町東安堵・奈良川西町結崎・三宅町伴堂・田原本町役場・大宇陀町迫間・菟田野町松井・奈良榛原町下井足・曽爾村今井・御杖村菅野・高取町観覚寺・新庄町柿本・広陵町南郷・奈良吉野町上市・黒滝村寺戸・天川村沢谷・奈良川上村迫・東吉野村小川 | |
和歌山県 | 和歌山市男野芝・海南市日方・橋本市東家・有田市箕島・御坊市薗・粉河町粉河・那賀町名手市場・桃山町元・かつらぎ町丁ノ町・高野口町名倉・和歌山高野町高野山・和歌山川辺町土生・南部川村谷口・和歌山南部町芝・田辺市中屋敷町・和歌山白浜町湯崎・中辺路町栗栖川・上富田町朝来・日置川町日置・串本町潮岬・古座川町高池・熊野川町日足・和歌山本宮町本宮 | |
鳥取県 | 鳥取市吉方・福部村細川 |
津波
編集観測値は検潮所による。
- 翌日9月6日0時01分、大阪管区気象台は和歌山県に津波警報、徳島県、高知県に津波注意報を発表する。
- 翌日9月6日0時03分、気象庁は三重県南部、愛知県外海に津波警報、伊勢・三河湾、静岡県、伊豆諸島、小笠原諸島、千葉県九十九里・外房に津波注意報を発表する。
- 0時17分、和歌山県那智勝浦町浦神に高さ61cmの押しの津波第一波が到達する。
- 0時53分、神津島に93cmの最大波が到達する。
- その他三宅島、父島、南伊豆町、御前崎市、沼津市、鳥羽市、尾鷲市、和歌山県白浜町、串本町、和歌山市、小松島市、室戸市、土佐清水市の各観測地点で津波が観測される。
- 2時40分、津波予報は全面解除となった。
報道への対応
編集NHKでは、9月6日午前0時03分に緊急警報放送を出した[5]。また、独立U局の三重テレビとテレビ和歌山は番組の途中に地震関連を放送した。
9月7日8時29分36秒発生の地震
編集9月5日23時57分の地震のやや東で地震発生。最大の余震である。
- 北緯33度12.5分、東経137度17.5分、M6.5、震源の深さ41km
- 静岡県河津町、三重県松阪市、香良洲町(現:津市)、兵庫県津名町(現:淡路市)、奈良県下北山村、和歌山県新宮市、那賀町(現:紀の川市)で最大震度4を記録した。
- 各地でゆっくりとした揺れが感じられたが、揺れは1分ほどでおさまった。
- メカニズム解[2]
- 走向、傾斜、すべり角 (266, 50, 99)
- 地震モーメントMo 1.1 * 1019Nm
- Mw 6.6
- 破壊継続時間(主破壊) 13秒
- 破壊開始点の深さ 25 km
- 食い違い Dmax 1.3 m
各地の震度
編集震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
4 | 静岡県 | 河津町田中 |
三重県 | 松阪市高町・松阪市殿町・香良洲町役場 | |
兵庫県 | 津名町志筑 | |
奈良県 | 下北山村寺垣内 | |
和歌山県 | 新宮市新宮・那賀町名手市場 |
津波
編集- 津波予報は発表されなかった。
1984年の地震
編集1984年1月1日にも北緯33度37.4分 東経136度50.3分 / 北緯33.6233度 東経136.8383度の深さ388 kmでM 7.0の地震が発生しており、いわき・宇都宮・館山・東京・横浜で震度4を観測し[6]、負傷者が1名出ている[7]。
脚注
編集- ^ a b c “9月5日 紀伊半島南東沖の地震”. 地震調査研究推進本部. 2012年7月31日閲覧。
- ^ a b EIC地震学ノート No.152
- ^ この時には緊急警報放送発報前に緊急ニュースを担当したキャスターが、「今、津波警報が出ました。今、先ほどの地震で津波警報が出ました。」とアナウンスしている。
- ^ EIC地震学ノート No.153
- ^ 全13波緊急警報放送 <チャイムQF付き> 「和歌山沖震源の震度5弱の地震で津波警報」 - NHKクロニクル
- ^ 震度データベース検索 気象庁、2024年5月15日確認
- ^ 吉田弘ほか最近の顕著な地震の表 (1981年-1990年) 験震時報第60巻 (1997) 52 - 65頁
関連項目
編集外部リンク
編集- 気象庁
- 地震予知連絡会会報 第73巻
- 2004年9月5日 紀伊半島南東沖の地震特集 防災科学研究所
- 紀伊半島南東沖の地震活動の評価 地震調査研究推進本部
- 2004年9月5日紀伊半島南東沖の地震の特集ページ 東京大学地震研究所
- 2004年 紀伊半島沖で地震 震度5弱 - NHK災害アーカイブス