第1次ジョンソン内閣
第1次ジョンソン内閣(だいいちじジョンソンないかく)は、2019年7月24日にテリーザ・メイ首相の辞任後、ボリス・ジョンソンを首相とした内閣である[1]。2019年6月7日にテリーザ・メイは既に保守党党首を辞任しており、同年7月23日の保守党党首選で後継者に選ばれた。ボリス・ジョンソン内閣は57会期の議会から保守党内閣として選ばれた。同内閣は、同年9月3日にフィリップ・リーの自由民主党への鞍替え(w:Crossing the floor)により、法案可決必要な安定多数「ワーキング・マジョリティ」を失った。
第1次ジョンソン内閣 | |
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イギリス 第98代内閣 | |
成立年月日 | 2019年7月24日 |
終了年月日 | 2019年12月16日 |
組織 | |
元首 | 女王エリザベス2世 |
首相 | ボリス・ジョンソン |
与党 | 保守統一党 |
影の内閣 | コービン影の内閣 |
野党 | 労働党 |
野党党首 | ジェレミー・コービン |
詳細 | |
議会任期 | 第57議会期 |
前内閣 | 第2次メイ内閣 |
次内閣 | 第2次ジョンソン内閣 |
経緯
編集2019年5月24日、EU離脱のためにEUと合意していた離脱協定案(w:Withdrawal Agreement and Implementation Bill)」が、庶民院で三度目の採決も挫折したことを受けて、前任者のテリーザ・メイ首相は、保守党党首の辞意、ひいては首相からの退任を表明した。かかる辞任表明では2019年のイギリスでの欧州議会選挙おける保守党の芳しくない選挙結果にも言及されていた。2019年6月7日、メイは保守党党首を辞任した。
同年7月23日、前ロンドン市長で外務・英連邦大臣のボリス・ジョンソンは保守党党首選でメイの後継に選ばれ、保守党党首となった。ジョンソンはエリザベス女王に拝謁し、北アイルランドの民主統一党の閣外協力協定による支持を受けて首相に就任した。翌7月24日にはジョンソンは組閣し、「ジョンソン内閣」が発足した。この内閣は「現代のイギリスのための内閣("Cabinet for modern Britain")」として説明されるとともに、「ガーディアン」紙は「(顔ぶれは)多文化主義的だがイデオロギー的には単一的思想」によるものだと評した[2][3]。
組閣の間、ジョンソンは11人の前任の大臣を罷免し、6人の前任の大臣の辞任を受け入れた。この「パージ」をジョンソンの盟友 ナイジェル・エヴァンズは「夏の日の虐殺というほどの大した内閣改造ではない( "not so much a reshuffle as a summer's day massacre") 」と言い表した[4][5] 。この大量の解任劇は英国政治史上、与野党逆転ではない新内閣発足では7人の大臣が解任された「1962年の長いナイフの夜("Night of the Long Knives" )」を越える、最も大がかりなものとなった[6]。これを大衆紙「ザ・サン」は「ブロンドのナイフの夜 ("Night of the Blond Knives")」と言い換えた[7]。
閣内に残った他の閣僚のうち、ジョンソンはドミニク・ラーブを筆頭国務大臣並びに外務・英連邦大臣に、サジド・ジャヴィドを財務大臣にプリティ・パテルを内務大臣に任命した。ジョンソンは内閣に参加する大臣の数を33に減らした。これは第2次メイ内閣より4人少ない。閣僚の4分の1は女性が任命されたがこれは前のメイ政権、デーヴィッド・キャメロン政権より少ない。この内閣はこれまでで最もエスニック・マイノリティの就任者が多い。4人の長官(secretaries of state)と2人の補佐官(additional minister)はマイノリティのバックグラウンドを有していた。閣僚の17%はBAME(黒人とエスニックマイノリティ)のバックグラウンドを有していた。BAMEの人々はイギリスの人口の14%を占めている[2]。3分の2近くが無料学校に通い、ほぼ半分がオックスブリッジ(オックスフォード大学、ケンブリッジ大学)に進学している[2]。ジョンソンは新しい内閣の称号「連合大臣(w:Minister for the Union) 」を自身が帯びるために創設した。これは指導者に選ばれたときの公約として掲げたものであった[8] 。
「多数派」からの転落
2019年9月3日フィリップ・リーが反対派に転じ、自由民主党に鞍替えしため、ジョンソンは安定可決に必要な議席数「ワークキング・マジョリティ」を失った[9][10]。同日、議会による提出議題一覧のコントロールとEUからの合意なき離脱を防ぐための議員提出法案審議を求めて21人の保守党議員が政府に反対する票を投じたため追放処分となり、さらにジョンソン側の議員数が減少することとなった[11][12]。
2019年9月5日、ジョンソンの弟でオーピントン選挙区選出の議員ジョー・ジョンソンは、閣僚と議員の両方の地位を辞任する意図を表明した。「この数週間、私は家族との忠誠と国民の利益の間で引き裂かれてきた。解決しがたい緊張状態で、議員と閣僚の役割を他の方にお引き受け頂くべき時だと思う」と述べた[13][14][15]。
2019年9月7日、平等担当大臣で労働年金大臣のアンバー・ラッドが辞職し保守党を離党した[16]。
2019年総選挙と第2次ジョンソン内閣
編集2019年12月12日に行われた総選挙では、ジョンソン首相が率いる与党が勝利し、第2次ジョンソン内閣は3日後に結成された。
閣僚の一覧
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ “Boris Johnson becomes UK's new prime minister”. BBC News. (2019年7月24日) 2019年7月24日閲覧。
- ^ a b c “Boris Johnson: Does his cabinet reflect 'modern Britain'?”. BBC News. (25 July 2019) 25 July 2019閲覧。
- ^ “How representative is Boris Johnson's new cabinet?”. The Guardian 25 July 2019閲覧。
- ^ Swinford, Steven; Chorley, Matt (25 July 2019). “Boris Johnson the Godfather takes his retribution in massacre of cabinet ministers”. The Times 27 July 2019閲覧。
- ^ Syal, Rajeev (24 July 2019). “'Summer's day massacre' may spell backbench trouble for Boris Johnson”. The Guardian 27 July 2019閲覧。
- ^ Woodcock, Andrew (25 July 2019). “Boris Johnson dismantles cabinet in reshuffle, building government around people who delivered Brexit vote”. The Independent 27 July 2019閲覧。
- ^ Lyons, Kate (25 July 2019). “'Cabinet massacre': what the papers say about Boris Johnson's arrival in No 10”. The Guardian 27 July 2019閲覧。
- ^ Murphy, Sean (26 July 2019). “Boris Johnson gives himself 'Minister for the Union' title”. The Scotsman 27 July 2019閲覧。
- ^ Payne, Sebastian; Parker, George (3 September 2019). “Boris Johnson’s government loses majority after Philip Lee defects”. Financial Times 3 September 2019閲覧。
- ^ “Tory MP defects ahead of crucial Brexit vote” (英語). (2019年9月3日) 2019年9月4日閲覧。
- ^ “Brexit: Boris Johnson defeated as MPs take control”. BBC News Website. (4 September 2019) 4 September 2019閲覧。
- ^ ジョンソン首相に造反した与党議員21人の顔ぶれ 英ブレグジット政局BBC2019年9月5日
- ^ “Jo Johnson to quit as minister and MP”. Financial Times Online. (5 September 2019) 5 September 2019閲覧。
- ^ ジョンソン英首相の弟が辞任表明 家族と国益の間で「引き裂かれた」CNN2019年9月6日
- ^ EUより先に英首相の弟が閣僚を「離脱」、史上最短政権の懸念もロイター2019年9月6日
- ^ Shipman, Tim (7 September 2019). “Exclusive: Amber Rudd resigns from cabinet and quits Tories”. Times 7 September 2019閲覧。
- ^ "Election 2017: Prime Minister and ministerial appointments". gov.uk (Press release). British Government. 11 June 2017. 2017年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月12日閲覧。
- ^ “Her Majesty's Government”. parliament.uk. Parliament of the United Kingdom. 12 June 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。12 June 2017閲覧。
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