第1期棋聖戦 (囲碁)
囲碁の第1期棋聖戦(だいいっき きせいせん)は、1976年に開催された。
棋聖戦は、読売新聞が1975年まで主催していた名人戦が、日本棋院との間のいわゆる「名人戦騒動(名人 (囲碁)#移管))」により朝日新聞に移管されたために、当時最高額の契約金による「序列第一位の新棋戦、最高棋士決定戦・棋聖戦」として創設することになったタイトル戦である。
各段優勝戦、全段争覇戦を経て、最高棋士決定戦の決勝戦に進出した関西棋院の橋本宇太郎九段と、日本棋院の藤沢秀行九段による七番勝負が1976年12月から1977年2月に行われ、4勝1敗で勝利した藤沢秀行が第1期棋聖位に就いた。
七番勝負の内容は、読売テレビとしては初めての囲碁番組「棋聖戦激突の譜」として放送された。また第4局の行われた北海道では、これを記念して北海道大学棋聖戦が開催され、第4局当日に決勝戦が行われた。
方式
編集- 参加棋士:日本棋院・関西棋院の棋士。
- 棋戦の仕組み
- 各段優勝戦:初段から九段までの各段で、それぞれトーナメントで優勝を争う。従来の棋戦では日本棋院と関西棋院で別々に予選を行っていたが、各段戦では両棋院の棋士が混じってトーナメントを行う点も特色だった。
- 全段争覇戦:初段から六段までの各段優勝者と七段戦優勝者がパラマス式トーナメントを行い、勝抜き者が、七段戦優勝者、八段戦上位2名、九段戦ベスト4とトーナメントを行う。
- 最高棋士決定戦:名人、本因坊、十段、天元のタイトル保持者と、全段争覇戦の上位者、及び棋聖審議会推薦棋士の計11名によるトーナメント。決勝は七番勝負。優勝者は第2期の最高棋士決定戦優勝者との挑戦手合七番勝負を行う。
- コミは5目半。
- 持時間は、各6時間、決勝七番勝負は各9時間。
- 賞金 優勝者1700万円、七番勝負対局料計500万円
結果
編集各段優勝戦・全段争覇戦
編集各段戦優勝者によるパラマス戦では、三段戦優勝の王立誠が4連勝して勝ち上がり棋聖戦ボーイと呼ばれた。決勝には八段戦優勝の加藤正夫と、七段戦優勝の小林光一が進み、加藤が全段争覇戦の優勝となった。また日本棋院と関西棋院の交流対決は、日本棋院64-43関西棋院、という結果だった。
初段戦優勝 伊藤庸二 | 笠井 | 王 | 王 | 王 | 王 | 石井 | 大平 | 加藤 | 加藤 |
二段戦優勝 笠井浩二 | |||||||||
三段戦優勝 王立誠 | |||||||||
四段戦優勝 時本壱 | |||||||||
五段戦優勝 宮沢吾朗 | |||||||||
六段戦優勝 佐藤昌晴 | |||||||||
七段戦準優勝 石井衛 | |||||||||
九段戦準優勝 大平修三 | |||||||||
八段戦優勝 加藤正夫 | 加藤 | ||||||||
九段戦3位 坂田栄男 | |||||||||
七段戦優勝 小林光一 | 小林 | 小林 | |||||||
九段戦3位 加田克司 | |||||||||
八段戦準優勝 東野政治 | 白石 | ||||||||
九段戦優勝 白石裕 |
最高棋士決定戦
編集大竹英雄名人、武宮秀樹本因坊、林海峰十段、藤沢秀行天元、全段争覇戦ベスト4の加藤正夫、小林光一、大平修三、白石裕、審議会推薦の橋本宇太郎、坂田栄男、石田芳夫の、計11名が出場。
準決勝の大竹-橋本戦、藤沢-武宮戦は、同じ11月11日にそれぞれ日本棋院「清風の間」「寂光の間」で行われ、橋本は先番であちこちの大石を巧妙にシノギきって中押勝。藤沢は終始細かい形勢の碁を先番半目勝。決勝七番勝負には、第1期名人や前年の第1期天元戦優勝などで初物食いと呼ばれる藤沢秀行と、69歳の橋本宇太郎が進出し、七番勝負を戦うこととなった。七番勝負に関西棋院の棋士が登場するのは、1962年第17期本因坊戦の半田道玄以来であり、第1局の立会人も両棋院から1名ずつという異例のこととなり、長谷川章、白石裕の両名が務めた。また藤沢は七番勝負の対局前には断酒して臨んだ。
1回戦 | 2回戦 | 3回戦 | 4回戦 | |||||||||||
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林海峰 | ○ | |||||||||||||
- | ||||||||||||||
白石裕 | × | |||||||||||||
林海峰 | × | |||||||||||||
大竹英雄 | ○ | |||||||||||||
11月11日 | ||||||||||||||
大竹英雄 | × | |||||||||||||
橋本宇太郎 | ○ | |||||||||||||
- | ||||||||||||||
坂田栄男 | × | |||||||||||||
橋本宇太郎 | ○ | |||||||||||||
12月2−3日-2月7-8日 | ||||||||||||||
橋本宇太郎 | 1 | |||||||||||||
藤沢秀行 | 4 | |||||||||||||
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石田芳夫 | × | |||||||||||||
- | ||||||||||||||
藤沢秀行 | ○ | |||||||||||||
藤沢秀行 | ○ | |||||||||||||
11月11日 | ||||||||||||||
加藤正夫 | × | |||||||||||||
藤沢秀行 | ○ | |||||||||||||
武宮正樹 | × | |||||||||||||
- | ||||||||||||||
武宮秀樹 | ○ | |||||||||||||
- | ||||||||||||||
大平修三 | × | |||||||||||||
小林光一 | × | |||||||||||||
大平修三 | ○ | |||||||||||||
七番勝負第1局は、握って藤沢の先番となって下座に座る。序盤に高目定石で藤沢の新手が出て、その後黒が優勢に進め、白の大石を仕留めて153手目まで黒中押勝ち。この局は前夜祭で抽選に当ったファン9人が20分ずつ観戦できるという新企画も行われた。第2局は、読売新聞北陸支社15周年記念行事の一つとして富山県氷見市で開催。白番藤沢が序盤好調だったが、中盤のポカで先番橋本が133手中押勝ちし、1勝1敗のタイとした。第3局は先番藤沢が序盤好手で局面をリードし、その後橋本の粘りで逆転、再逆転、266手黒1目半勝ち。第4局は二間ばさみ定石の新手から白番藤沢が優勢に進めて、278手白5目半勝ち。第5局は先番藤沢が、得意の中国流布石から徐々にリードを拡げて、171手まで黒中押勝ち、4勝1敗で第1期棋聖位を獲得した。
決勝七番勝負
12月2-3日 |
12月15-16日 |
1月12-13日 |
1月26-27日 |
2月7-8 |
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- | |
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橋本宇太郎 | × | △○ | × | △× | × | - | - |
藤沢秀行 | △○ | × | △○ | ○ | △○ | - | - |
(△は先番)
- 第1期棋聖戦決勝七番勝負第3局 1977年1月12-13日 橋本宇太郎九段-藤沢秀行九段(先番)
1勝1敗で迎えた第3局、13手目の黒1の手が好感覚と言われ、続く黒11、13の手も好手で、左辺白を圧迫しつつ黒は中央に進出して優勢を築いた。この後白が盛り返すが、黒が勝ちきって藤沢が2勝1敗と優位に立った。