眩人』(げんじん)は、松本清張歴史小説。仏教僧・玄昉の視点から、の都・長安奈良時代の宮廷を描く長編小説。『中央公論』に連載され(1977年2月号 - 1980年9月号)、1980年11月に中央公論社から刊行された。眩人(あるいは幻人)とは、著者の説明によれば、魔法使いに近く、ペルシア人など西域出身の、麻薬を道具にした術師を指している[1]

眩人
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出中央公論1977年2月号 - 1980年9月号
出版元 中央公論社
刊本情報
刊行 『眩人』
出版元 中央公論社
出版年月日 1980年11月30日
挿絵 平山郁夫
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遣唐使のルート(玄昉は717年に渡唐した)

あらすじ

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唐に渡り十数年、日本への帰国を考えていた玄昉は、堕落した生活を送る日本僧・惟安の伝手で、西域の商人・康忠恕と知り合う。日本の薬草知識に興味を持った康忠恕は、玄昉をゾロアスター教徒の集う祠に誘う。地下の斎場で供された液体を飲んだ玄昉は、不可思議で淫猥な幻想の夢を見る。

西域出身の少年・康許生を伴い帰朝した玄昉は、唐で仕込んだ知識と幻術を武器に、朝廷での権力伸張を狙う。

登場人物

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作中における設定を記述。

玄昉
遣唐使に学問僧として参加したが、目下長安の風俗街で色事に耽る日々を送る。他方、帰国後の自分の有利を考慮し、精力的に立ち回る。
李密翳
続日本紀」中、一ヶ所言及のある人物[2]。作中では、架空の西域人「康許生」が改名した人物となっている。玄昉を師と呼ぶ。
吉備真備
作中では下道(しもつみちの)真備と呼ばれる。努力型で凡庸だが、権力動向には敏感。利害の一致した玄昉と組む。
藤原宮子
首皇子(後の聖武天皇)を出産後、心的障害となるが、ある方法によって回復する。
聖武天皇
幼少時から宮人に大事に育てられる。藤原広嗣の乱後、遷都事業・大仏建立を熱心に進める。
光明皇后
聖武天皇を実質的に動かす存在になる。

脚注・出典

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  1. ^ 著者による『着想ばなし』(『松本清張全集』第51巻(1984年、文藝春秋)月報に掲載)参照。
  2. ^ 「波斯人李密翳等ニハ位ヲ授クルコト、差アリ」(天平八年十一月三日)。続日本紀・卷十二。

参考文献

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紀元700年頃におけるアジア諸地域
  • 本文中に記述されるゾロアスター教・ペルシア人の日本伝来をめぐる著者の推論は、以下の作品にも見られる。
    • 火の路(1975年、文藝春秋)・・・小説形式の作品であるが、作中独立した研究ノートのスタイルで、著者による推論が埋め込まれている。
    • ペルセポリスから飛鳥へ(1979年、日本放送出版協会)・・・イランの調査記録。ゾロアスター教の儀式に言及している。
    • 清張通史6(1983年、講談社、1989年、講談社文庫)・・・著者による古代史通史シリーズの第6巻。本作と共通するトピックが取り上げられている。文庫版では改稿されている。