生稲晃子靖国神社参拝誤報問題

生稲晃子靖国神社参拝誤報問題(いくいなあきこやすくにじんじゃさんぱいごほうもんだい)は、生稲晃子参議院議員靖国神社に参拝したという内容を共同通信社が報道したことに端を発する日本国大韓民国との間の外交問題。結果としてこの報道内容は誤報であった。

生稲晃子

背景

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生稲晃子の靖国神社参拝報道

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靖国神社に参拝する閣僚や国会議員への取材は、靖国神社が持つその特性から毎年行われており、そういった状況の中で、令和4年(2022年8月15日、共同通信社は生稲晃子参議院議員が靖国神社に参拝したと報道した[* 1]。これに従って東京新聞も同内容の記事を掲載した[* 1]

佐渡島の金山の世界遺産登録

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令和6年(2024年)7月27日、朝鮮半島出身者の強制労働があったとして反対していた大韓民国が賛成したことにより、佐渡金山は「佐渡島の金山」として世界文化遺産に登録された[* 2]。このとき、日韓間では毎年合同で朝鮮半島出身労働者を含むすべての労働犠牲者の追悼式を開催することを合意していた[* 3]。同年9月18日には朴喆熙駐日韓国大使が花角英世新潟県知事と面会し[+ 1]、早期の追悼式開催と日本政府高官の出席を求めていた[* 3]11月20日、追悼式を主催する「佐渡島の金山」式典実行委員会は11月24日佐渡市あいかわ開発総合センターに於いて開催することを発表した[* 4]

経過

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「佐渡島の金山」追悼式

令和6年(2024年11月13日第2次石破内閣において生稲が外務大臣政務官に就任し[* 5]11月22日には岩屋毅外務大臣の会見に於いて、生稲が24日に初開催される佐渡金山の労働者の追悼式に参列することが発表された[+ 2][* 6]。これに対し23日、生稲がかつて靖国神社に参拝していたことを問題視した韓国側が自国として代表者を派遣せず追悼式に参加しないことを発表した[* 7]韓国外交部は「生稲議員は2022年7月に参議院選挙で当選したあと、8月15日に靖国神社に参拝したと理解している」と表明している[* 8]。結果として、韓国側の代表者や遺族が参列しないまま24日に「佐渡島の金山」追悼式が開催された[* 8]。韓国側は、25日に独自の追悼式を佐渡市で行った[* 8][* 9]

しかし、生稲は問題視されたとする靖国神社への参拝をしていないと主張し、北村俊博外務報道官もこの主張と同様の認識を表明した[* 10]。韓国外交部が認識するに至り不参加を決める要因となった靖国神社参拝を報道した共同通信は25日、これが誤報であり実際には生稲が靖国神社に参拝していないことを認めた[* 11]。共同通信は、誤報に至った理由を、生稲本人への確認取材をしていないまま記事化したことにあるとした[* 12]高橋直人編集局長は

生稲議員をはじめ、新潟県や佐渡市、追悼式実行委員会などの地元関係者、読者の皆さまにご迷惑をおかけし、深くおわびします。取材の在り方を含めて再発防止策を徹底します。

とコメントを出した[* 12]

11月26日林芳正内閣官房長官は定例記者会見に於いて「事実に基づかない報道がなされたこと、また「佐渡島の金山」追悼式について、そうした誤った報道が混乱を生ぜせしめた、そういう風に認識をしておりまして、極めて遺憾であります。政府として共同通信に対し事実関係や経緯の説明を求める予定でございます。」と発言、共同通信への指摘を明確に述べた[+ 3][* 13]。同日、水谷亨共同通信社社長は岡野正敬外務事務次官と外務省に於いて面会し、謝罪と説明をおこなったが、岡野事務次官は「留意」するとした[+ 4][* 14]。2日後の28日、水谷社長は生稲外務政務官とも面会し、同様の謝罪と説明をおこなったが、生稲は「大変心を痛めて」いるとして謝罪を「留意」するとし、しっかりとした対外的な説明を求めた[+ 5][* 15]。同日には小渕敏郎共同通信社専務理事[注釈 1]小熊宏尚共同通信新潟支局長、杉田雄心共同通信政治部長も花角新潟県知事と新潟県庁で面会して「新潟県、佐渡市の皆さまに心よりおわびを申し上げます」と謝罪した[* 15][* 16]

また27日には「生稲晃子参院議員(現外務政務官)の靖国神社参拝報道は誤りでした 。深くおわびします」と題する謝罪コメントが共同通信社のホームページに発表された[+ 6]

11月30日、共同通信は当該問題に関する検証記事を配信した[* 17]

12月5日、共同通信社は、取材情報の真偽の見極めや事実確認を徹底することなどを柱とした再発防止策を掲示した[+ 7][* 18]。また同日、同社は誤報問題に関わった6人を含む12月4日付の懲戒処分を発表した[+ 8][* 19][* 20]。処分は次の通り。

  1. 水谷亨社長:役員報酬の10%を三か月間返上
  2. 小渕敏郎専務理事:役員報酬の10%を三か月間返上
  3. 高橋直人編集局長(当時ニュースセンター長):減給、2025年(令和7年)1月16日付で更迭され論説委員に転じる[注釈 2]
  4. 山根士郎ニュースセンター長(当時政治部長):出勤停止3日、2025年(令和7年)1月16日付で更迭され総務局企画委員に転じる[注釈 3]
  5. 高松支局長(当時デスク):譴責処分
  6. 政治部次長(当時官邸キャップ):譴責処分
  7. 政治部記者(記事を執筆した2名):戒告処分

論点

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誤報に端を発するこの問題で明確になったことについて、九州歴史観光戦略研究所の代表を務める井上政典は、韓国が政務官の過去の靖国神社への参拝までもが問題視するようになったとし、「(この)状況を食い止めねばならない。」「首相の参拝はなおさら問題視されることだろう。」と述べた[* 21]。また前衆議院議員の杉田水脈もこの問題に関連して「過去に靖国神社に参拝した議員は政務三役に就けなくなる」とポストした[* 22]

反応

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11月26日に前防衛大臣の木原稔はX(旧Twitter)に「誤報は論外」だが「そもそも靖国神社を参拝する国会議員の名前を逐一公表しようとする報道姿勢は論外の外。中韓に向けて必死に伝えようとするオールドメディアに異常性を感じてい」るとポストした[* 22][X 1]。同日若林洋平もXに「靖国神社を参拝した事を問題視して記事にし、政治家や我が国を陥れる事自体が大問題」とポストした[* 22][X 2]

ジャーナリストの室谷克実は、林官房長官の会見に於ける態度を以て「「生稲氏は靖国に参拝していない」とばかり強調した」と断じ、靖国参拝は悪いことという韓国側の決め付けに従属した政府の対応を批判した[* 23]

脚注

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注釈

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  1. ^ 小渕は前日の27日に渡辺竜五佐渡市長、中野洸「佐渡を世界遺産にする会」会長ともそれぞれ面会し謝罪している[* 1]
  2. ^ 後任の編集局長には同日付で有田司総務局次長が転じる[+ 9][* 20]
  3. ^ 後任のニュースセンター長には同日付で池田裕明編集局総務が転じる[+ 9][* 20]

X出典

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  1. ^ 木原稔 [@kihara_minoru] (2024年11月26日). "誤報は論外ですが、". X(旧Twitter)より2024年12月1日閲覧
  2. ^ 若林洋平 [@w_youhei] (2024年11月26日). "#生稲晃子 外務大臣政務官を散々叩いたうえに、外交に悪影響を及ぼし国益を損なった #共同通信". X(旧Twitter)より2024年12月1日閲覧

新聞サイト出典

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  1. ^ a b c 共同通信、靖国神社参拝に関する誤報を検証、生稲晃子参院議員や新潟県、日韓の関係者に謝罪」『東京新聞』2024年11月30日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  2. ^ 佐渡金山、世界遺産に ユネスコが登録決定 強制労働主張の韓国同意」『産経ニュース』2024年7月27日。オリジナルの2024年7月27日時点におけるアーカイブ。
  3. ^ a b 新潟県知事「世界遺産に育ててくれた思いを表現したい」 佐渡金山の追悼式」『産経ニュース』2024年11月20日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  4. ^ 「佐渡金山」労働者追悼式、24日に新潟県佐渡市で開催 世界遺産登録決定巡り日韓で合意」『産経ニュース』2024年11月20日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  5. ^ 【速報】生稲晃子氏と今井絵理子氏が政務官に…第2次石破内閣の副大臣・政務官を正式決定 女性は6人」『FNNプライムオンライン』2024年11月13日。オリジナルの2024年11月14日時点におけるアーカイブ。
  6. ^ 【速報】佐渡金山の追悼式に生稲外務政務官が参列」『47NEWS』2024年11月22日。オリジナルの2024年11月22日時点におけるアーカイブ。
  7. ^ 【速報】佐渡金山追悼式に韓国政府が不参加表明」『新潟日報』2024年11月23日。オリジナルの2024年11月23日時点におけるアーカイブ。
  8. ^ a b c 世界文化遺産 「佐渡島の金山」労働者のための追悼式開催」『NHKニュース』2024年11月24日。オリジナルの2024年11月28日時点におけるアーカイブ。
  9. ^ 【速報】韓国人遺族らが佐渡金山で独自の追悼行事」『47NEWS』2024年11月25日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  10. ^ 「佐渡金山」の追悼式、韓国不参加で開催 歴史問題の火種浮き彫り」『朝日新聞デジタル』2024年11月24日。オリジナルの2024年11月24日時点におけるアーカイブ。
  11. ^ 共同通信、生稲氏めぐり記事訂正 「参拝しておらず、誤った報道に」」『朝日新聞デジタル』2024年11月25日。オリジナルの2024年11月25日時点におけるアーカイブ。
  12. ^ a b 生稲氏の靖国参拝報道は誤り 共同通信「深くおわび」」『47NEWS』2024年11月26日。オリジナルの2024年11月26日時点におけるアーカイブ。
  13. ^ 共同通信の訂正「極めて遺憾」 官房長官、説明求める」『47NEWS』2024年11月26日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  14. ^ 外務次官「極めて遺憾」 共同通信社長と誤報めぐり面会」『日本経済新聞』2024年11月26日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  15. ^ a b 誤報を巡り生稲外務政務官に謝罪 共同通信社長、国会内で面会」『47NEWS』2024年11月28日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  16. ^ 共同通信の専務理事らが新潟県庁訪れ知事に謝罪…「生稲晃子外務政務官の靖国参拝」誤報」『読売新聞オンライン』2024年11月28日。オリジナルの2024年12月1日時点におけるアーカイブ。
  17. ^ 共同通信、靖国参拝誤報で検証記事 裏付け取らず他社情報をうのみ」『毎日新聞』2024年11月30日。オリジナルの2024年11月30日時点におけるアーカイブ。
  18. ^ 生稲晃子氏の靖国参拝誤報で共同通信が再発防止策 取材情報の事実確認を徹底」『産経ニュース』2024年12月5日。オリジナルの2024年12月5日時点におけるアーカイブ。
  19. ^ 共同通信、編集局長更迭など6人処分 他社情報の裏付け怠る 生稲氏の靖国参拝誤報問題」『産経ニュース』2024年12月5日。オリジナルの2024年12月7日時点におけるアーカイブ。
  20. ^ a b c 靖国参拝誤報で共同通信6人処分 編集局長更迭 「日韓外交に影響」」『朝日新聞デジタル』2024年12月5日。オリジナルの2024年12月7日時点におけるアーカイブ。
  21. ^ 「日本の政治家を靖国から遠ざけようとしている」井上政典氏 自民・生稲氏の参拝報道問題」『産経ニュース』2024年11月27日。オリジナルの2024年11月28日時点におけるアーカイブ。
  22. ^ a b c 「中韓に必死で伝えるオールドメディア」自民・木原稔氏 靖国参拝報道に相次ぐ疑問の声」『産経ニュース』2024年11月27日。オリジナルの2024年11月27日時点におけるアーカイブ。
  23. ^ 〈深層韓国〉「靖国参拝してどこが悪い」林官房長官は言えないのか 日韓共同の「印象操作」」『週刊フジ』室谷克実、2024年11月30日。オリジナルの2024年11月30日時点におけるアーカイブ。

ウェブサイト出典

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  1. ^ 令和6年9月18日 新潟県知事 定例記者会見”. 新潟県ホームページ. 新潟県庁. 2024年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月2日閲覧。
  2. ^ 岩屋外務大臣会見記録(令和6年11月22日13時46分)”. 外務省ホームページ. 外務省. 2024年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月1日閲覧。
  3. ^ 官房長官記者会見 令和6年11月26日(火)午前”. 首相官邸ホームページ. 内閣官房. 2024年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月1日閲覧。
  4. ^ 岡野外務事務次官と水谷亨・共同通信社社長との面会(概要)”. 外務省ホームページ. 外務省. 2024年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月1日閲覧。
  5. ^ 生稲外務大臣政務官と水谷亨・共同通信社社長との面会(概要)”. 外務省ホームページ. 外務省. 2024年12月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月1日閲覧。
  6. ^ 生稲晃子参院議員(現外務政務官)の靖国神社参拝報道は誤りでした。深くおわびします”. お知らせ. 共同通信社. 2024年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月1日閲覧。
  7. ^ 靖国参拝誤報で再発防止策決定”. お知らせ. 共同通信社 (2024年12月5日). 2024年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月5日閲覧。
  8. ^ 当社職員を懲戒処分”. お知らせ. 共同通信社 (2024年12月5日). 2024年12月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月7日閲覧。
  9. ^ a b 一般社団法人共同通信社人事”. お知らせ. 共同通信社 (2024年12月5日). 2024年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月7日閲覧。