牝鶏晨す
概要
編集めんどりがおんどりに先んじて鳴いて朝になったことを知らせること。これに例えて女が男に代わって権勢を振るうことを意味する。このようになっているのは国や家が滅びるなどの不吉なことの前兆であるとされる[1]。
歴史
編集『書経』の牧誓篇に牝雞之晨という四字熟語が書かれており、この四字熟語が訓読みされて牝鶏晨すとなった。『書経』の牧誓篇では殷の紂王は、悪妻であった妲己に溺れてしまう。このことから紂王は妲己の意見を何でも実行してしまうようになり、国は大いに乱れてしまった。この紂王を周の武王が打倒した。この殷と周の決戦の前に牝雞之晨を含む牧誓篇が書かれていた。当時の中国は男尊女卑の社会であったために、このようなことが書かれていた[2]。ここから日本のことわざでもある「雌鶏うたえば家滅ぶ」にもなっている[3]。
朝鮮語では「암탉이 울면 집안이 망한다」(雌鶏が鳴くと家が滅びる)となる。韓国では女性政治家を批判する時に用いられたことがあるが[4]、現代では性差別的な表現の代表格とされる[5]。朴順天は国会でこれを耳にすると反論したことがある[4]。
他文化圏でのことわざ
編集インドのカシ語にも「Ynda kynih ka ‘iar kynthei, la wai ka pyrthei.」(雌鶏が鳴くと世界が終わりに近づく)ということわざがある[6]。一方、韓国の英文学者、翻訳家、文学評論家のキム・ウクトンによると、英語では「hens crow」に類似の表現を女性の社会進出を指す隠喩的表現としてよく使われる[7]。しかし、やはり西洋にも「A whistling woman and a crowing hen is neither fit for God nor men.」(口笛を吹く女と鳴く雌鶏は神にも男にも適さない。イングランドのことわざ)、「A crooning cow, a crowing hen, and a whistling maid boded never luck to a house.」(鳴く牛、鳴く雌鶏、そして口笛を吹くメイドは、決して家に運をもたらさない。スコットランドのことわざ)、「Une poule qui chante le coq et uni fille qui siffle portent malheur dans la maison.」(雄鶏のように歌う雌鶏と口笛を吹く女子は、家に不幸をもたらす。フランスのことわざ)などの表現がある[8][9]。
脚注
編集- ^ 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,ことわざを知る辞典, 精選版. “牝鶏晨す(ひんけいあしたす)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年10月14日閲覧。
- ^ “No.978 【牝雞之晨】 ひんけいのしん|今日の四字熟語・故事成語|福島みんなのNEWS - 福島ニュース 福島情報 イベント情報 企業・店舗情報 インタビュー記事”. fukushima-net.com. 2023年10月14日閲覧。
- ^ “雌鶏うたえば家滅ぶ - ことわざのコトパワ”. kotopawa.com. 2023年10月14日閲覧。
- ^ a b “[부산 정치비화 60년] ① 여성 정치의 시대를 열다 박순천” (朝鮮語). 부산일보 (2011年1月1日). 2023年10月14日閲覧。
- ^ ““암탉이 울면 망한다?”…성차별 속담 이제 그만!” (朝鮮語). KBS 뉴스 (2015年9月26日). 2023年10月14日閲覧。
- ^ Oosterhoff, P.; Saprii, L.; Kharlyngdoh, D.; Albert, S. (2015-02) (英語). When the Hen Crows: Obstacles that Prevent Indigenous Women from Influencing Health-care Policies – A Case Study of Shillong, Meghalaya, India .
- ^ 이아름 (2023年2月2日). “‘암탉이 울면 집안이 망한다’를 영어로 옮기는 번역자의 자세 [플랫]” (朝鮮語). 경향신문. 2023年10月14日閲覧。
- ^ Daniel H. Resneck (August/September 1982). “Whistling Women”. American Heritage 33 (5) 2023年10月15日閲覧。.
- ^ Simpson, John; Speake, Jennifer, eds. (2008) (英語), A whistling woman and a crowing hen are neither fit for God nor men, Oxford University Press, doi:10.1093/acref/9780199539536.001.0001/acref-9780199539536-e-2448, ISBN 978-0-19-953953-6 2023年10月14日閲覧。