流体力学の無次元数一覧

流体力学における主要な無次元数

流体力学の無次元数一覧 では流体力学における主要な無次元数を一覧形式で記述する。

移動現象における拡散係数

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移動現象における無次元数
vs. 慣性力 粘性力 熱力学的力 質量力
慣性力 vd Re Pe PeAB
粘性力 Re-1 η, μ/ρ Pr Sc
熱力学的力 Pe-1 Pr-1 α Le
質量力 PeAB-1 Sc-1 Le-1 D

質量運動量、およびエネルギーの移動現象における古典的な数は、主に、各移動機構における有効拡散率の比によって分析される。6つの無次元数は、慣性力、粘度、伝導伝熱、および物質移動の異なる現象の相対的な強さを与える(表では、それぞれの数は左列の数と上行の数の比である; 例えば Re = vd/η)。これらの数は特性時間、特性長さ、特性的なエネルギーの尺度を示す。

液滴形成

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液滴形成における無次元数
vs. 運動量 粘度 表面張力 重力 運動エネルギー
運動量 ρvd Re Fr
粘度 Re-1 ρη, μ Oh, Ca Ga-1
表面張力 Oh-1, Ca-1 σ Bo-1 We-1
重力 Fr-1 Ga Bo g
運動エネルギー We ρv2d

液滴形成は主に運動量と粘度、表面張力に依存する[1]。In インクジェットプリンターを例に挙げると、オーネゾルゲ数が高すぎるインクは適切に吹き付けることが出来ず、また、オーネゾルゲ数が低すぎる場合は多くの副液滴が吹き付けられる[2]

一覧

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全ての数は無次元数である。他の分野にわたる無次元数の一覧については無次元数の一覧英語版を参照のこと。流体力学における主要な無次元数は下記の通りである:

名称 標準的なシンボル 定義 適用範囲
アルキメデス数 Ar   流体力学 (密度の差による流体の動き)
アサクマ数 As   伝熱 (マイクロ波による集中加熱の指標。誘電加熱熱拡散の比)[3]
アトウッド数 A   流体力学 (密度の差による流体の不安定性の発現)
ベジャン数
(流体力学)
Be   流体力学 ( 水路に沿った無次元圧力損失)[4]
ビンガム数 Bm   流体力学レオロジー (降伏応力と粘性応力の比)[5]
ビオ数 Bi   伝熱 (固体の表面 vs. 体積熱伝導率)
ブレーク数 Bl or B   地質学流体力学多孔質材料 (多孔質材料内を流れる流体の粘性力に対する慣性力)
ボンド数 Bo   地質学流体力学多孔質材料 (浮力 vs. 毛管力エトベス数に類似) [6]
ブリンクマン数 Br   伝熱流体力学 (壁から粘性 流体への熱伝導率)
ブラウネル・カッツ数 NBK   流体力学 (キャピラリ数ボンド数の組み合わせ) [7]
キャピラリ数 Ca   多孔質材料流体力学 (粘性力 vs. 表面張力)
チャンドラセカール数 C   磁気流体力学 (ローレンツ力 vs. 粘度)
コルバーンのJ因子 JM, JH, JD 乱流; 伝熱物質移動, and 運動量移動(無次元伝達係数)
ダンケラー数 Da   化学 (反応時間のスケール vs. 滞留時間)
ダルシーの管摩擦係数 Cf or fD 流体力学 (管摩擦による圧力損失の割合。ファニング摩擦係数の4倍)
ディーン数 D   乱流 (曲がったダクト内の渦)
デボラ数 De   レオロジー (粘性流体)
抗力係数 cd   航空工学流体力学 (流体の運動に対する抵抗力)
エッカート数 Ec   対流熱伝達英語版 (エネルギーの散逸。エンタルピーに対する運動エネルギーの比)
エクマン数 Ek   地球流体力学 (粘性力とコリオリ力の比)
エトベス数 Eo   流体力学 (泡や液滴の形状)
エリクセン数 Er   流体力学 (液晶の流れの挙動; 弾性力に対する粘性力)
オイラー数 (物理学) Eu   流体力学 (流れ圧 vs. 慣性力)
Excess temperature coefficient     伝熱流体力学 (慣性力運動エネルギーの比の変化)[8]
管摩擦係数 f 流体力学 (管摩擦による圧力損失の割合。ダルシーの管摩擦係数の4分の1)[9]
フルード数 Fr   流体力学 (表面波の挙動。慣性力と重力の比)
ガリレイ数 Ga   流体力学 (粘性力に対する重力の比)
ゲルトラー数 G   流体力学 (凹状の壁に沿った境界層流)
グレーツ数 Gz   伝熱, 流体力学 (導管を通る層流; 物質移動にも適用される)
グラスホフ数 Gr   伝熱自然対流 (浮力と粘性力の比)
ハルトマン数 Ha   磁気流体力学 (ローレンツ力と粘性力の比)
ハーゲン数 Hg   伝熱 (強制対流における浮力と粘性力の比)
イリバレン数 Ir   波動力学 (斜面における表面波の崩壊)
カルロビッツ数 Ka   乱流燃焼 (特性流動時間と火炎伸長率の積)
クーリガン・カーペンター数(KC数)[10] KC   流体力学 (振動流体流における崖状の物体の抗力と慣性力の比)
クヌーセン数 Kn   気体力学 (代表的な物理的長さの尺度に対する分子の平均自由行程長さの比)
クタテラッゼ数 Ku   流体力学 (向流二相流)[11]
ラプラス数 La   流体力学 (非混和性流体内の自由対流; 運動量輸送に対する表面張力の比)
ルイス数 Le   伝熱物質移動 (熱拡散率 vs. 質量拡散率)
揚力係数 CL   空気力学 (所定の迎角で翼から得られる揚力)
ロックハート・マルティネリパラメータ     二相流 (湿性ガスの流れ; 液相率)[12]
マッハ数 M or Ma   気体力学 (圧縮性流れ;無次元速度)
マニングの粗度係数 n 開水路 (重力による流れ)[13]
マランゴニ数 Mg   流体力学 (マランゴニ対流; 粘性力に対する熱的表面張力)
マークシュタイン数 Ma   乱流燃焼 (マークシュタイン長さを層流燃焼厚さにより無次元化する[14][15])
モートン数 Mo   流体力学 (気泡/液滴形状の決定)
ヌセルト数 Nu   伝熱 (強制対流; 対流による熱伝達と流体の熱伝導の比)
オーネゾルゲ数 Oh   流体力学 (流体のエアロゾル化、マランゴニ対流)
ペクレ数 Pe   or   流体力学 (分子拡散速度と移流速度の比)、電熱 (熱拡散速度と移流速度の比)
プラントル数 Pr   伝熱 (熱拡散率に対する粘性拡散率の比)
圧力係数 CP   空気力学流体力学 (翼上の点での圧力; 無次元圧力変数)
レイリー数 Ra   伝熱 (自然対流における浮力粘性力の比)
レイノルズ数 Re   流体力学 (流体の慣性力と粘性力の比)[5]
磁気レイノルズ数英語: Magnetic Reynolds number     磁気流体力学 (流体に伴う磁場の移流項と拡散項の大きさの比。 透磁率 電気伝導率)[16]
リチャードソン数 Ri   流体力学 (流れの安定性に及ぼす浮力の効果; 位置エネルギーと運動エネルギーの比)[17]
ロッシュコ数 Ro   流体力学 (振動流、渦放出)
ロスビー数 Ro   地球流体力学 (慣性力コリオリ力の比)
時間ロスビー数     地球流体力学 (自転周期と系の代表的時間スケールの比)
シュミット数 Sc   物質移動 (分子の拡散速度に対する粘性力)[18]
形状係数 (境界層流) H   境界層流 (変位厚さと運動量厚さの比)
シャーウッド数 Sh   物質移動 (強制対流; 対流と拡散物質移動の比)
ゾンマーフェルト数 S   動圧潤滑 (境界潤滑)[19]
スタントン数 St   伝熱流体力学 (強制対流)
ストークス数 Stk or Sk   懸濁液 (微粒子の終端速度と流れの代表速度の比)
ストローハル数 St   渦放出 (固有振動速度と周囲流速の比)
スチュアート数 N   磁気流体力学 (電磁力と慣性力の比)
テイラー数 Ta   流体力学 (回転を伴う流れ; 粘性力に対する流体の回転による慣性力)
アーセル数 U   波動力学(浅い流体層における表面重力波の非線形性)
ウォーリスパラメータ j*   混相流(無次元空塔速度)[20]
ウェーバーの火炎速度数 Wea   燃焼 (水素ガスに対する層流燃焼速度)[21]
ウェーバー数 We   混相流 (強い曲面; 慣性力と表面張力の比)
ワイゼンベルグ数 Wi   粘弾性流 (せん断速度と緩和時間の積[22])[23]
ウオマスリー数     生物流体力学英語版 (連続的かつ脈動的な流れ; 脈動流周波数粘性効果の比)[24]
ゼルドビッチ数     流体力学燃焼 (活性化エネルギーの測定)
ベータ値 (プラズマ物理)     磁気流体力学 (圧力と磁気圧の比。 透磁率)

脚注

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  1. ^ Dijksman, J. Frits; Pierik, Anke (2014). Dynamics of Piezoelectric Print-Heads. pp. 45-86. doi:10.1002/9781118452943.ch3. 
  2. ^ Derby, Brian (2010). “Inkjet Printing of Functional and Structural Materials: Fluid Property Requirements, Feature Stability, and Resolution”. Annual Review of Materials Research 40 (1): 395-414. doi:10.1146/annurev-matsci-070909-104502. ISSN 1531-7331. 
  3. ^ Asakuma, Y. (2020). “A dimensionless number for microwave non-equilibrium local heating through surfactant desorption”. Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects. 591. pp. 124560 
  4. ^ Bhattacharjee S., Grosshandler W.L. (1988). “The formation of wall jet near a high temperature wall under microgravity environment”. ASME MTD 96: 711-6. 
  5. ^ a b Table of Dimensionless Numbers” (PDF). 2009年11月5日閲覧。
  6. ^ Bond number Archived 2012-03-05 at the Wayback Machine.
  7. ^ Home”. OnePetro (2015年5月4日). 2015年5月8日閲覧。
  8. ^ Schetz, Joseph A. (1993). Boundary Layer Analysis. Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall, Inc.. pp. 132-134. ISBN 0-13-086885-X 
  9. ^ Fanning friction factor
  10. ^ 工藤君明, 「「KC数」(Keulegan Carpenter Number)」『日本造船学会誌』 1983年 652巻 p.607-, 日本造船学会, doi:10.14856/zogakusi.652.0_607_1
  11. ^ Tan, R. B. H.; Sundar, R. (2001). “On the froth-spray transition at multiple orifices”. Chemical Engineering Science 56 (21-22): 6337. doi:10.1016/S0009-2509(01)00247-0. 
  12. ^ Lockhart-Martinelli parameter
  13. ^ GUIDE FOR SELECTING MANNING’S ROUGHNESS COEFFICIENTS FOR NATURAL CHANNELS AND FLOOD PLAINS”. 2018年10月9日閲覧。
  14. ^ 田上公俊, 嶋田不美生, 「伸張を有する層流予混合メタン火炎に及ぼすCO2希釈の影響」『日本機械学会論文集 B編』 2005年 71巻 701号 p.337-343, 日本機械学会, doi:10.1299/kikaib.71.337
  15. ^ 田上公俊, 加藤義隆, 嶋田諒, 岩清水健斗, 宮脇健, 嶋田不美生, 橋本淳, 「エタノール及びPRFの層流燃焼特性に関する研究」『日本機械学会論文集B編』 2012年 78巻 792号 p.1432-1440, 日本機械学会, doi:10.1299/kikaib.78.1432
  16. ^ 日本天文学会 (2018年3月6日).「磁気レイノルズ数」 . 天文学辞典. 2023年7月15日閲覧。
  17. ^ Richardson number Archived 2015-03-02 at the Wayback Machine.
  18. ^ Schmidt number Archived 2010-01-24 at the Wayback Machine.
  19. ^ Sommerfeld number
  20. ^ Petritsch, G.; Mewes, D. (1999). “Experimental investigations of the flow patterns in the hot leg of a pressurized water reactor”. Nuclear Engineering and Design 188: 75. doi:10.1016/S0029-5493(99)00005-9. 
  21. ^ Kuneš, J. (2012). “Technology and Mechanical Engineering”. Dimensionless Physical Quantities in Science and Engineering. pp. 353-390. doi:10.1016/B978-0-12-416013-2.00008-7. ISBN 978-0-12-416013-2 
  22. ^ デボラ数、2018年10月9日閲覧。
  23. ^ Weissenberg number Archived 2006-11-01 at the Wayback Machine.
  24. ^ Womersley number Archived 2009-03-25 at the Wayback Machine.

参考文献

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  • Tropea, C.; Yarin, A.L.; Foss, J.F. (2007). Springer Handbook of Experimental Fluid Mechanics. Springer-Verlag