水唐(すいとう)は、中国の伝説上の生物で、水の中に住んでいるとされる[1]水廬[2](すいろ、すいりょ)とも。

の時代に編まれた『通雅』(巻47)などに記載されており、子供のような姿で、川の水の中にいる生物・妖怪のようなものとされている。『物類相感志』に記されているとされる木唐(もくとう)は、水と木との誤写から生じたもので、水唐の事であるとされている[3]。水唐たちについての記述は、『水経注』の類でも『水経』に登場する川の情報の校注に付随する「水の中に住んでいるとされる存在」の参考として掲載される形式で言及されつづけており、の時代の沈炳巽『水経注集釈訂訛』でも水唐の記述が見られる[4]

人膝

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人膝之怪(にんしつのかい)と称される水の中に住む妖怪は、郝懿行『山海經箋疏』の馬腹の注では、馬腹や水唐と似たものではないかとされている。人膝は『刀剣録』に記述がある中国に伝わる妖怪で、章帝の時代に伊水という川にいたとされ、黄金でつくられたを川に入れる事でこれを祓ったとされる[1][5]

水の中に住み人間を襲うという特徴の相似から、『山海経』(中山経)に記されている馬腹(ばふく)[6]と水唐が似たものではないかと言及されている例は楊守敬『水経注疏』(巻28)などでも見られる[1][7]。また、水虎(すいこ)とはすなわち水唐のことであると『通雅』では記載されており、その内容を引用している本草書では水虎の解説に水唐の情報が合併されている事が多い。『通雅』では動物のうちの「虫」の部類に挙げられており、このような部類認識は水の中に住む伝説上の存在を「渓鬼虫」などの「虫」に付随して配列する例[3]なども反映されていた。楊守敬『水経注疏』(巻28)や栗本丹州『水虎考』などでは、水唐は水虎を誤字として用いたものであろう[8][9]と考察されているが、いずれの対比も古代の基礎文献での記述そのものが乏しく、明確な前後関係は判明していない。

脚注

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  1. ^ a b c 伊藤清司 『中国の神獣悪鬼たち 山海経の世界』東方書店 1986年 22-26頁
  2. ^ 水盧、水蘆とも表記され、用いられる文字には揺れが見られる。
  3. ^ a b 小野蘭山 『本草綱目啓蒙』3、平凡社〈東洋文庫〉、1991年、183-184頁。
  4. ^ 沈炳巽『水經注集釋訂訛』巻29
  5. ^ 郝懿行 『山海經箋疏』 中華書局 1981年 189頁
  6. ^ 『山海経 中国古代の神話世界』高馬三良 訳 平凡社〈平凡社ライブラリー〉、1994年、84頁。
  7. ^ 馬昌儀 『古本山海経図説』 下巻 広西師範大学出版社 2007年 572-574頁
  8. ^ 中村禎里『河童の日本史』 日本エディタースクール出版部 1996年 352頁
  9. ^ 石川純一郎『新版河童の世界』時事通信社 1985年 56-57頁