デッドセクション
デッドセクション(dead section)、中立セクション(neutral section)[1][2]は、電化された鉄道において、異なる電気方式や会社間の接続点に設けられる、架線に給電されていない区間・地点のことである。
死電区間(しでんくかん)、無電区間(むでんくかん)、死区間(しくかん, Dead Zone)ともいう。
設置の類型
編集デッドセクションが設置される類型としては、以下のものがある。
- 直流電化区間と交流電化区間の境に設けられるもの。(電流区分セクション)
- 同じ電化方式であっても、使用電圧の異なる区間の境に設けられるもの。(電圧区分セクション)
- 同じ電化方式・電圧の交流電化方式の区間において、交流電流の位相が異なる区間の境に設けられるもの。具体的には変電所同士の送電区間の境目となる場合が多い。(異相区分セクション)なお、直流電化区間ではデッドセクションではなくエアセクションが設けられる。
- 交流電化方式の区間において、使用する周波数の異なる区間の境に設けられるもの。(周波数区分セクション)
- 電化方式も電圧も同一の場合で、相互乗り入れを行う場合に、会社間(海外では異国間)の電源分離を行うために設けられるもの また、上下線や本線 - 車庫線で電気的に分離する場合において主に渡り線上に設けられるもの。(電源区分セクション)
- 異なる電化方式・電圧を用いる路線同士が、平面交差する地点に設けられるもの。(平面区分セクション)
- 1.のような直流電化区間と交流電化区間の間に設けられるデッドセクションを交直セクション、3.・4.のような交流電化区間の間に設けられるデッドセクションを交交セクションともいう。
デッドセクションは、碍子やFRPなどで造られたインシュレータ(日本の在来線で長さ8 m 程度)をトロリ線に挿入する方式、主にヨーロッパの本線上で見られる2つのエアセクション間に無加圧区間を設ける「中セクション方式」のいずれかで絶縁を行うが、以下の注意が必要である。
- 列車が力行のまま通過するとパンタグラフがそれまでの送電区間を抜け出た瞬間に大きなアークが発生して危険であるため、その手前に「架線死区間標識」を設けておいて運転士はこれを視認し、惰行状態で通過させる必要がある。
- パンタグラフは発条力で上昇させる構造のため、無架線状態での上昇跳ね上がりによる破損の可能性から、無加圧区間は通電はしなくとも架線かそれに代わる物を張る必要がある。
- また、列車が走行する軌道のレールは、主電動機で使用された電力を変電所に戻す役割があるため、デッドセクション内では、レールに絶縁継目と呼ばれる、隙間を設置することでレールに絶縁区間を設けているが、これでは信号機の制御に使用されている軌道回路の電流をレールに流すことはできないので、インピーダンスボンドを絶縁区間の線路脇に設置して、軌道回路の電流だけを流す役割を持たせる場合がある。
上述類例3.の異相区分セクションは交流電化区間の随所に存在するが、前述した中セクション方式では高速下で運転士が架線死区間標識を見落としやすい上に、惰行運転が速度維持の妨げとなるためデッドセクションの数を増やすことができない。つまり、変電所の数を増やすことが困難であるため列車本数や編成長で制約を受ける欠点があるものの、TGVやKTXなどの高速鉄道はこの方式の下で運転されている。
これに対して日本国有鉄道は1964年(昭和39年)の東海道新幹線開業に際し、2つのエアセクション間に1 km 程度の中間セクションを設置して、それが真空開閉器を介して変電所や饋電区分所に接続されており、列車が中間セクション通過中に真空開閉器により電源を0.05 - 0.3秒程度の無電時間を介して、進行後方側から進行前方側の変電所に自動で切替える[注 1]饋電(きでん)区分切替セクション方式を開発して、惰行することなく異相区分セクションを通過できるようにした。
車上切替方式
編集電車・電気機関車がセクション通過直前でマスコンをノッチオフ(ノッチ戻し)することで主回路を開放し惰性で走行して、直後に運転士がスイッチまたはレバーにより手動で電気方式を切替えてからデッドセクションを通過する。その際には、交流遮断器により主回路を一旦切り離してから、交直切替器による切替を行い、切替先の電力を検知すると交流遮断器により再び主回路が閉じられる動作を自動的に行い、再び力行・制動が可能になる電源切替方式である。たとえば直流から交流に転換する場合は、交流遮断器の主回路開→交直切替器の回路切り替え(直流回路開、交流回路閉[注 2])→セクション通過→交流検知→順次自動的に交流遮断器の主回路閉となる[注 3]。
- 「切替先の送電区間までに無給電区間を走りながら回路を切替えてから、全パンタグラフが切替先の送電区間に進入後に再び通電」という誤解が広くなされているが、これは間違いである[注 4]。
セクション通過時に設計年次が古い電車の場合では、一時的にヘッドライトは片側のみの点灯となり、室内の照明が消え空調が停止するとともに、蓄電池からの電源により非常灯のみが点灯する。これは回路を切り替える際に遮断器(ブレーカー)が作動し一時的に編成全体が停電状態となるためである。
- 一方で設計年次の新しい車両では、種別・行き先表示が消えるが、補助電源(数秒間許容)で車内灯が点灯する、あるいは照明を直流電源(数分間の停電を許容)としているため消灯しないが、空調装置などは一旦停止するため再稼動する際の音でセクション通過を判断できる。機関車から暖房電源供給している一部の客車は、空調が止まる例がある(国鉄50系客車(青函用))。
- 「水前寺有明」や国鉄24系客車の熊本駅停車中の連結作業中[注 5]やTRAIN SUITE 四季島の気動車⇔電車切替[注 6]も同様である。
また地上側でも車両側の切替忘れ防止[注 7]の観点から、標識設置・ブリンカーライトの点滅・車両に搭載されたATSやATCを使用して、運転士がスイッチまたはレバーを手動で電気方式を切替えず、すべての操作を自動で行う自動切替装置の導入などの対策を行っている。
なお、気動車もしくはディーゼル機関車・蒸気機関車牽引の列車では架線から電気の供給を一切受けないため前述の動作は必要ないほか、剛体架線採用区間のデッドセクションでは、FRPを用いず剛体を平行にすることで対応する。
地上切替方式
編集駅構内で架線に流す電流を切替える方式。電気機関車牽引の列車が少なく、電車が主流となった日本の鉄道では採用例が少なく、常用のものは以下の例のみであったが、2018年までにすべて廃止された。
- 仙山線作並駅:1957年9月 仙台 - 作並間交流電化開業にともない設置。1968年9月、仙山線作並 - 山形間の交流電源切替により廃止。
- 東北本線黒磯駅:1959年7月 黒磯 - 白河間交流電化開業にともない設置。2018年1月、デッドセクションを黒磯駅構内(北寄りの高久・仙台方)に移設し廃止された[3][4][5]。
- 奥羽本線福島 - 庭坂間:1960年3月 東北本線白河 - 福島間交流電化開業にともない設置。1968年9月、奥羽本線福島 - 米沢間の交流電源切替により廃止。
なお、2006年9月24日西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線長浜 - 敦賀間・湖西線永原 - 近江塩津間の直流電源切替に伴い敦賀 - 南今庄間に交直デッドセクションが新設されたが、下り線のセクションは上り勾配上に設置されたため切替中に万一セクション手前で停止したような場合に備えて、以下の非常時のみ取扱の地上切替方式という形態での設備を設置した。
- デッドセクション手前の直流区間の架線電源を交流20kVへ切替える切替断路器
- その際に交交セクションとして機能するデッドセクションの中間部を交流加圧し無電区間の長さを短縮するための断路器
各国での設置箇所
編集アメリカ
編集スイス
編集- 直流1000V電化のベルニナ線と交流(11 kV 16.7 Hz)電化の本線系統が接続する両駅には、交直流を地上切替可能な番線がある。ただし2種の電化方式をまたいで走行する列車はごく限られている。
韓国
編集韓国において、デッドセクションは絶縁区間(절연구간)と呼ばれる。
いずれも直流1500V⇔交流25kV・60Hzである。
- 首都圏電鉄1号線(ソウル交通公社1号線・京釜線): ソウル駅(地下) - 南営
- 首都圏電鉄1号線(ソウル交通公社1号線・京元線): 清凉里(地下) - 回基
- 首都圏電鉄4号線(ソウル交通公社4号線・果川線): 南泰嶺 - ソンバウィ
- 仁川国際空港鉄道・ソウル市メトロ9号線: 金浦空港駅構内(連絡線上。現在では営業列車の通過はない)
この他にも交流電化区間における異相区分セクションが多数存在する。
かつては特殊なケースとして、首都圏電鉄京義・中央線(交流電化)の龍山 - 二村間にて、途中の漢江大橋直下を通過する区間の車両限界が小さい関係でデッドセクションが設けられていたが、2017年6月にセクションの移転により解消された。
香港
編集交流電化の内
中華人民共和国の高速鉄道は香港西九龍駅構内(乗降エリア)まで中国(香港内は地上に出ない)駅の内に(中国⇔香港)の国境がある、電力は香港から通関するか本土から延長饋電しているかは不明。
香港島の路面電車と香港軽鉄と前地鉄の各線は直流電化となっているため、デッドセクションはない。
日本の設置箇所
編集日本の鉄道におけるデッドセクションの、主な設置例は次のとおりである。以下類型ごとに挙げる。
直流・交流接続
編集デッドセクションを挟んだ区間では、同じ路線でも使用可能な車両が異なり、ほとんどの場合は運転系統や本数など輸送そのものが分断されている。中には黒磯駅のように別路線のようになっているものもある。
特に交直流電車は高価なことに加えて単行運転ができないので、セクションを越える区間のローカル輸送は全線電化にもかかわらず、羽越本線[注 8]などのように、近辺の非電化路線と共通運用の気動車を運行している路線もある。
また、仙石東北ラインのように線路は接続し直通列車も運行してはいるが、一定の距離を非電化にして架線自体は接続していないケースも存在し[注 9]、この場合も気動車を使用する。
直流1500 V・交流20 kV (50 Hz)
編集- 常磐線 取手(直流) - 藤代(交流)間
- 水戸線 小山(直流) - 小田林(交流)間
- 東北本線 黒磯(直流) - 高久(交流)間[注 10]
- 羽越本線 村上(直流) - 間島(交流)間
- 首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線 守谷(直流) - みらい平(交流)間
直流1500 V・交流20 kV (60 Hz)
編集- えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン 梶屋敷(直流) - えちご押上ひすい海岸(交流)間[6][7]
- 七尾線 中津幡(直流) - 津幡(交流)間
- ハピラインふくい ハピラインふくい線 敦賀(直流) - 南今庄(交流)間(下り線は北陸トンネル入り口の約200 m敦賀寄りに、上り線は下り線よりもさらに約500 m敦賀寄りにずらして設置)
- 北陸本線長浜 - 敦賀間および湖西線永原 - 近江塩津間の直流化による。2006年8月下旬にデッドセクションの設備そのものは完成しており、同年9月24日の直流電源切替までの約1か月間は交交セクションとして機能していた。
- 山陽本線 門司駅構内(下り用2箇所、上り用1箇所)
- 下り旅客列車の場合、3・4番線の下関側にあるシーサスクロッシングポイント手前のセクション (26m) を通過する。貨物列車の場合は一般に編成が長いため、北九州貨物ターミナル駅に向かうホームの無い中線の小倉寄りに設けられたセクションを通過する。これは、関門トンネルから出た直後の登坂中にセクション惰行を行うのを防ぐためである。一方、上り列車は、5・6番線下関側のシーサスクロッシングポイント先でセクションを通過する。
直流1500 V・交流25 kV (60 Hz)
編集異電圧接続
編集主に元々が別のシステムだった路線を接続するために使用される。
直流1500 V・750 V
編集- 小田急箱根鉄道線(箱根登山電車) 箱根湯本駅構内
- 小田原方で小田急電鉄の車両が直通するため。2006年以降、デッドセクションを通過する列車は回送列車のみである。
交流25 kV・20 kV (50 Hz)
編集- 東北新幹線・奥羽本線 福島駅構内(山形新幹線直通列車用)
- 東北新幹線・田沢湖線 盛岡駅構内(秋田新幹線直通列車用)
- 北海道新幹線・海峡線 新中小国信号場構内(在来線用)※JR東日本とJR北海道の異社間セクションを兼ねる。線路はJR東日本、設備はJR北海道所有。
- 北海道新幹線・海峡線 木古内駅構内(在来線用)※道南いさりび鉄道線内であるが設備はJR北海道所有。また、道南いさりび鉄道の車両が到着するホームの線路は非電化。
参考
編集異周波数接続
編集日本においては、異周波数交流をデッドセクションで接続した例は存在しない。下記は、あくまでも参考として挙げたものである。上述の新幹線異相区分セクションと同様、切替セクションにより異周波数交流を接続しているため、接続点であるこれら3か所のき電区分所には無電区間は存在しない。一般的なデッドセクションとは構造の異なるものであるが、異方式電源の接続方法の類例として挙げる。
- 北陸新幹線 軽井沢(50 Hz) - 佐久平(60 Hz)間(新軽井沢き電区分所)
- 北陸新幹線 上越妙高(60 Hz) - 糸魚川(50 Hz)間(新高田き電区分所)※JR東日本と西日本の異社間セクションを兼ねる。設備はJR西日本。
- 北陸新幹線 糸魚川(50 Hz) - 黒部宇奈月温泉(60 Hz)間(新糸魚川き電区分所)
直流同電圧接続
編集- JR東日本宇都宮線(東北本線)・東武日光線 栗橋駅構内
- JR東海御殿場線・小田急小田原線 松田駅構内
- 特急「ふじさん」が使用する連絡線に長さ10 m程度のセクションが設置されている。ただし栗橋駅構内と同様に無電区間内の架線は断路器を介して小田急側の饋電線に接続されており小田急側電源で加圧することも可能である。
- 同区間で営業運転を行う小田急60000形電車は仕様上セクション通過の際に室内灯が消灯する[注 11]。
- JR東日本高崎線・秩父鉄道秩父本線 熊谷駅構内
- 高崎線下り本線と秩父鉄道の渡り線上に長さ数メートル程度のセクションが設置されているが、現在渡り線には車止めとして枕木がくくりつけられており使用されていない。また、架線死区間標識に交直セクション用の六角形のものが流用されている。
- JR東海東海道本線・伊豆箱根鉄道駿豆線 三島駅構内
- JR線と伊豆箱根線の連絡線に設置。無電区間はスライダー無しの直流用セクションインシュレータ1つ分わずか数十センチメートルであり、上述各例と比較すると非常に短い。なお駿豆線昇圧前は1500 V/600 Vの異電圧接続のデッドセクションだった。→「国鉄80系電車 § 駿豆鉄道乗り入れ対策」も参照
- 通過する定期列車は特急「踊り子」で運用されるJR東日本E257系電車のみであるが、伊豆箱根鉄道の車両では大場工場に検査入場となる大雄山線用5000系電車ならびに甲種輸送となるため牽引機の伊豆箱根ED31形と年に1回異常時訓練列車として3000系電車がセクションを通過しJR1番線へ入線する。
- JR線と伊豆箱根線の連絡線に設置。無電区間はスライダー無しの直流用セクションインシュレータ1つ分わずか数十センチメートルであり、上述各例と比較すると非常に短い。なお駿豆線昇圧前は1500 V/600 Vの異電圧接続のデッドセクションだった。
- 阪神なんば線 桜川駅構内
- 近鉄難波線用電留線と本線との分岐器付近に長さ数m程度のセクションが設置されている。架線死区間標識には非電化区間開始標識と同じものを使用している。
- 西武秩父線 西武秩父駅構内
- 秩父鉄道線と西武秩父線の連絡線上に設置されている。
- 富士山麓電気鉄道富士急行線・JR東日本中央本線 大月駅構内
- 富士急行線と中央本線の連絡線上に数メートル程度のセクションが設置されている。
この節の加筆が望まれています。 |
交流同周波数同電圧接続
編集交流電化区間における異相区分セクションは設置例が多数となるので、ここでは異社間(旧北陸本線は会社境界と一致しない)も含め割愛する。
過去の設置例
編集- 近鉄大阪線 布施駅構内(直流1500 V - 直流600 V 1956年12月8日廃止)
- 上本町(現・大阪上本町) - 布施間の複々線化にともない廃止。これ以前の複線時代は同駅間には近鉄奈良線に合わせて直流600 Vが送電されていた。
- 信越本線 横川駅構内(直流600 V - 直流1500 V 1963年9月30日廃止)
- 山陽電気鉄道本線長田駅 神戸市電上沢線長田電停(直流1500 V - 直流600 V 1968年4月7日廃止)
- 仙山線作並駅構内(直流1500 V - 交流50 Hz・20 kV 1968年9月8日廃止)
- 作並 - 山形間交流電源切替のため廃止。
- 奥羽本線福島 - 庭坂間(直流1500 V - 交流50 Hz・20 kV 1968年9月8日廃止)
- 福島 - 米沢間交流電源切替のため廃止。
- 近鉄大阪線・橿原線 大和八木駅構内(直流1500 V - 直流600 V 1969年9月21日廃止)
- 橿原線昇圧にともない廃止。
- 阪急京都本線 十三 - 南方間(直流600 V - 直流1500 V 1969年8月24日廃止)
- 名鉄築港線東名古屋港駅・名古屋市電大江線東橋電停 - 大江町電停間(直流1500 V - 直流600 V 1974年2月16日廃止)
- 異電圧路線同士の平面交差によるセクション。市電大江線廃止にともない廃止。
- 西鉄大牟田線薬院駅・福岡市内線城東橋電停(直流1500 V - 直流600 V 1975年11月2日廃止)
- 異電圧路線同士の平面交差によるセクション。西鉄福岡市内線廃止にともない廃止。
- 北陸本線坂田 - 田村間(直流1500 V - 交流60 Hz・20 kV 1991年9月1日廃止)
- 米原 - 長浜間直流電源切替のため廃止。
- 小浜線・北陸本線 敦賀駅構内(直流1500 V - 交流60 Hz・20 kV 2006年9月24日廃止)
- 湖西線 永原 - 近江塩津間(直流1500 V - 交流60 Hz・20 kV 2006年9月24日廃止)
- 永原 - 近江塩津間直流電源切替のため廃止。
- 北陸本線 長浜 - 虎姫間(直流1500 V - 交流60 Hz・20 kV 2006年9月24日廃止)
- 長浜 - 敦賀駅直流電源切替のため廃止。
- 名鉄田神線 田神 - 市ノ坪間(直流1500 V - 直流600 V 2005年4月1日廃止)
- 富山港線・北陸本線 富山駅構内(直流1500 V - 交流60 Hz・20 kV 2006年3月1日廃止)
- 富山地方鉄道本線・北陸本線 富山駅構内(直流1500 V - 交流60 Hz・20 kV 2010年4月18日廃止)
- 北陸新幹線建設および北陸本線・高山本線高架化工事に伴う富山駅仮ホーム移転による富山地方鉄道への渡り線分断のため廃止。
- 九州新幹線・鹿児島本線 新八代駅構内(交流25 kV - 20 kV (60 Hz) 軌間可変電車試験用 2011年)
- 東北本線(「須賀線」)・王子電気軌道王子四丁目交差点(→都電27系統)(直流1500 V - 直流600 V 1971年3月1日廃止)
- 異電圧路線同士の平面交差によるセクション。須賀線の廃止に伴い廃止。
デッドセクションに関連したトラブル
編集- 1986年11月 国鉄山陽本線(関門間)
- 1986年11月改正で設定されたばかりの下関行き「にちりん」号が、小倉駅で直流電源への切替が出来ないことが判明してそのまま運転を打切るというトラブルが発生した。原因は同列車の先頭車として使用されたクハ481形500番台車両に交直切替スイッチが設置されていなかったためであった。同車は1984年2月のダイヤ改正時に、直流用電車である181系の先頭車クハ181-109およびクハ180-5を交流直流両用の485系に改造編入したものであるが、改造時点では九州島内配置の485系に本州乗り入れ運用が無かったため交直切替スイッチの設置を省略されており、何らかの手違いで同車の充当が不可能な運用に入ったため。その後程なく同車に交直切替スイッチの設置改造が行われている。
- 1995年6月8日 JR東日本常磐線
- 上り貨物列車の機関士が取手 - 藤代間で線路上を歩く人を発見して非常停車したが、停車位置がデッドセクション内であったため発車できず立ち往生した。
- 2004年2月6日 JR西日本北陸本線
- 糸魚川 - 梶屋敷間を走行中の札幌発大阪行き上り寝台特急「トワイライトエクスプレス」の運転士が踏切に進入する車に気付いて急停車したが、EF81形電気機関車の停車位置がデッドセクション内であったため救援のディーゼル機関車が来るまで約1時間立ち往生した。
- 2007年1月11日 JR東日本水戸線
- 小田林 - 小山間を走行中の友部発小山行電車の運転士が異常音を感じたことから急停車させたが、約45mのデッドセクション内に停車したため立ち往生した。後続の普通列車によって救援された。
- 2010年1月14日 JR東日本常磐線
- 試運転中のEF510-501が取手 - 藤代間のデッドセクション通過中に故障し立ち往生。後続の貨物列車に救援された。
- 2014年2月4日 JR西日本七尾線
- 金沢発七尾行き普通電車が車両故障のために停車したが、デッドセクション内に停車したため自力走行できず暖房も効かない気温0°Cの中で2時間30分立ち往生した。
- 2017年6月2日 JR東日本東北本線
- 黒磯駅5番線で当駅発福島行E721系電車の床下機器から発煙が生じる事故が発生した。原因は駅係員が6番線の貨物列車と誤り5番線の交流普通列車の架線に直流を流し機器がショートしたため。
- 2024年9月17日 JR東日本水戸線
- 小山 - 小田林間を走行中の小山発下館行電車の運転士が前方の踏切の緊急停止信号を確認したため、電車を停止させたが、停車場所がデッドセクション内であったため停電で自力走行出来ず、乗客約110人が約1時間10分、車内に閉じ込められた。乗客は代替バスに乗り換え、水戸線の運転再開は停車から約3時間40分後になった。
デッドセクションに関連する作品
編集- 西村京太郎 『特急しらさぎ殺人事件』 - デッドセクションを走行中、車内が真っ暗になっている間に殺人が起きる。小説版では『L特急踊り子号殺人事件』に収録。秋田書店から発売されたコンビニコミック『十津川警部の事件簿』にも収録されている。
- 皆川亮二の漫画『D-LIVE!!』- テロリストに乗っ取られた「スーパーひたち」をデッドセクション内でパンタグラフを離す事で止める。
- 矢野顕子の曲「Night Train Home」(『ホントのきもち』収録)- 黒磯駅におけるデッドセクションが歌詞に登場する。
- 日本エレキテル連合の単独公演「死電区間」(DVD、販売元:アニプレックス) - 本公演がきっかけで、2015年夏季には鉄道博物館の企画展「みんなのでんしゃ展~今度の電車はてっぱく行きです~」の“1日盛り上げ係”に任命された[9]。
- 電車でGO!(電車運転シミュレーションゲーム) - デッドセクション内を惰性走行で通過するとボーナスが加算される。停車すると減点される(一部作品では再発車できなくなり、プレイ続行が不可能となる)。気動車は上記操作を行っても加点や減点はない。
脚注
編集注釈
編集- ^ 切替は軌道回路からの列車条件を元に連動して切替える。
- ^ DC>AC。まだ直流区間であるが、電源検知回路により交流用回路は開であり、交流遮断器による主回路開後に回路の切り替え操作をとった上であれば、交流遮断器による主回路閉操作をしても問題は生じない。主回路閉のままの操作では切り替えが完了する前に異種電源(直流電源)に接続されるため許容されない。
- ^ 日本のほか、韓国でもこの方法で切り替える(日本のシステムを韓国に持ち込んだもの。韓国鉄道1000系電車を参照。415系/485系とほぼ同じ)。欧州では走行中にパンタグラフを下げて回路を切換、その後パンタを上げる方法で切り替える(youtubeに当該動画がある)。黒磯駅でのJR貨物EH500形電気機関車の切替も同様であった。欧州では、本電化区間でパンタを下げて,異電化や(貨物駅の輸送コンテナの荷役線(上空に積み替え用のクレーンがあるので架線が設置できない)など)無架線区間まで惰性で走るパターンもある。その場合は機関車停止後、エンジンか蓄電池(オプションで装備している場合)で自走するか、他の機関車に牽引して本来の架線区間に戻す方法もある。
- ^ 仮に485系9両編成を例にすれば、編成間両端モハ484形同士で100m以上離れている上に、100km/h=1.67km/min=28m/s程度で走行している場合確実に編成がセクションに入った事を確認して、さらに操作を完遂するために必要な時間と余裕を考慮すればデッドセクションが数km必要になる。
- ^ 連結作業中は電源供給を止めてから作業しないと配線/ジャンパ連結器等で作業員が感電事故の危険があるため、電源バスを遮断する必要がある。JR九州783系電車が熊本駅停車中の電源車連結の場合、「駅停車→ドア開→真空遮断器解放→パンタ下げ→電源車連結→ジャンパー接続→発電機から通電→ドア閉→出発」の手順が必要。
- ^ 切替の際、架線電源遮断→発電設備接続の手順が必要。
- ^ 異種電源接続は機器を損傷する可能性があり危険である。安全装置が正常に動作すれば機器の大きな損傷は避けられ、直流→交流の冒進では遮断器が作動するだけなので機器を操作すれば運転継続が可能であり比較的影響は少ないが、交流→直流への冒進事故は、交流側回路を保護するため取付けられたヒューズの交換が必要となりそれまで交流区間では運転ができなくなるなどリスクが大きい。直流→交流の冒進では無電区間走行(約0.5秒)の検知により遮断器を動作させられるが、交流→直流では交流電化区間に交交セクションが存在することにより「無電区間突入=交直セクション突入」を前提とした機構を構成することが不可能でありヒューズ以外の十分に確実性のある防護措置が確保できないからである。
- ^ JR東の新潟支社が通勤・近郊形の交直流電車を保有していないという事情もある。羽越本線#新発田駅_-_村上駅_-_酒田駅間
- ^ よって厳密に言えばデッドセクションではない。 仙石東北ライン#仙石線・東北本線接続線
- ^ 黒磯駅構内扱い[4][5]。
- ^ 以前「あさぎり」運用に投入されていた小田急20000形電車は室内灯消灯。JR東海371系電車では車内表示機消灯・室内灯点灯の差異があった。
出典
編集- ^ IEC 9/3138/CC Compilation of Comments on 9/3083/CD - IEC 63488 ED1: Railway applications - Technical criteria for the coordinations in neutral-section passing system for train
- ^ 『日本の新幹線技術を反映した国際的な業界規格が UIC の出版賞を受賞!』(プレスリリース)JR東日本、2022年10月26日 。
- ^ 鉄道界2012年12月号 P44-45
- ^ a b “東北本線黒磯駅電気設備改良切換工事に伴う列車運休及びバス代行輸送計画についてのお知らせ” (PDF). 東日本旅客鉄道株式会社 (2017年11月24日). 2018年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月20日閲覧。
- ^ a b 佐藤正樹 (2017年11月28日). “交流・直流の切換えは仙台方に…東北本線黒磯駅構内の全面直流化が2018年1月3日に完了へ”. レスポンス (株式会社イード) 2019年3月20日閲覧。
- ^ 日本海ひすいライン 糸魚川―梶屋敷に新駅 2021年3月開業、ホームは上下オフセット2面2線、新駅の直江津方にデッドセクションがあることが紹介されている。
- ^ 「えちご押上ひすい海岸駅」3月13日開業 えちごトキめき鉄道に新駅
- ^ フリーゲージトレイン新試験車両、初の走行試験を実施(2014年4月20日) - Response 鉄道
- ^ 日本エレキテル連合、鉄道博物館「みんなのでんしゃ展」1日盛り上げ係に お笑いナタリー 2015年7月13日