東急百貨店東横店
東急百貨店東横店(とうきゅうひゃっかてんとうよこてん)は、東京都渋谷区渋谷にあった、株式会社東急百貨店が経営していた百貨店。渋谷駅に直結しており、東京メトロ銀座線の線路が建物内を貫通していた[注釈 2]。渋谷エリアの大規模再開発に伴い、2020年3月31日をもって閉館した。
東急百貨店東横店 | |
---|---|
店舗概要 | |
所在地 |
〒150-8319 東京都渋谷区渋谷2丁目24-1 |
座標 | 北緯35度39分31.3秒 東経139度42分2.8秒 / 北緯35.658694度 東経139.700778度座標: 北緯35度39分31.3秒 東経139度42分2.8秒 / 北緯35.658694度 東経139.700778度 |
開業日 | 1934年(昭和9年)11月1日 |
閉業日 | 2020年(令和2年)3月31日[1] |
正式名称 | 東急百貨店東横店 |
延床面積 | 35,675 m²(3館合計、2013年3月31日まで) |
営業時間 |
10:00 - 21:00 →11:00 - 21:00[注釈 1] |
駐車台数 | 1,136台 |
前身 | 東横百貨店渋谷店 |
後身 | 渋谷スクランブルスクエア |
最寄駅 | 渋谷駅 |
最寄IC | 渋谷出入口 |
外部リンク | http://www.tokyu-dept.co.jp/toyoko/ |
概要
編集東館・西館・南館の3館で構成される。東急百貨店東横店の前身である、東横百貨店は東館の建物で1934年創業。1954年の増築(現:西館、4階までは玉電ビルとして1938年竣工[2])、1970年の増築(現:南館)で東館・西館・南館の3館体制となる。日本初のターミナルデパートである梅田駅(現・大阪梅田駅)の阪急百貨店に倣った関東初の私鉄ターミナルデパートであり、日本初の名店街である「東横のれん街」や、デパ地下ブームにつながる「東急フードショー」などの先進的な売り場づくりで幅広い顧客を獲得してきた[3]。
なお、渋谷駅街区土地区画整理事業のため、東館は2013年3月31日で営業を終了し[4][動画 1]、その後解体工事に入った。これに伴い売り場は西館と南館に集約され、また、東館1階にあった「東横のれん街」は渋谷マークシティ EAST MALL 地下1階へ移設された(2013年4月4日開業、2020年5月25日に渋谷ヒカリエ地下2階・3階へ再移転した[5][6])。跡地には駅直結の大型複合高層ビルである渋谷スクランブルスクエアの1期棟(東棟)が2019年に開業したほか、埼京線・湘南新宿ラインの新ホーム及び新線路が建設・敷設され、2020年に使用が開始された。
さらに2020年3月31日をもって西館・南館も営業を終了し完全閉店[1]。閉店後は「渋谷エキスポ」として同年9月13日までイベントなどに利用される予定であったが[7]、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から「渋谷エキスポ」は中止が決まる。なお、地下1階にあった「渋谷 東急フードショー」や2階の「本家しぶそば」「笹八 渋谷店」、9階の東急レストラン街「ダイニング ダイニング」は閉店後も引き続き営業を継続していた[1][8][9]が、東急レストラン街「ダイニング ダイニング」は新型コロナウイルス感染拡大による政府の緊急事態宣言の発令及び「渋谷エキスポ」の中止により同年4月7日に閉店[10][11][12]、それ以外の店舗についても同年9月13日をもって全て閉店[13][注釈 3]し、東横店はこの日をもって全館営業終了[17]となった。
また、西館2階に存在していたJR渋谷駅・玉川改札は全館営業終了後の9月25日の終電を持って閉鎖された。それに先立ち、閉鎖2日前の9月23日から最終日にかけて、玉川改札への通路となっていた西館1階及び2階の壁面及びシャッターを活用したペインティングイベント「#391045428(サンキュートーヨコシブヤ)」が東急とBAKERUによって実施された[18]。
その後、西館・南館ともに同年10月より2024年(令和6年)12月までの工期で解体されている[19]。跡地には2027年に渋谷スクランブルスクエア2期棟(中央棟・西棟)が建設される計画である。
南館は5階部分まで解体された後、JR東日本渋谷駅の駅改良に使う資材ヤードとして活用するために解体作業が一旦停止されている。2023年1月7日及び翌8日に行われる線路切替工事の終了後に解体を再開する予定となっている[20]。なお、その間屋上化された5階部分は、RADWIMPSの楽曲「カナタハルカ」のミュージックビデオの撮影地として活用された[動画 2]。
フロア案内
編集詳しくは外部リンクの公式サイトを参照。
階 | 南館 | 西館 | 渋谷マークシティ |
---|---|---|---|
屋上 | アディダスフットサルパーク渋谷 | ||
10階 | (閉鎖中) | ||
9階 | 東急レストラン街 | ||
8階 | 家庭用品 健康用品・介護用品 |
催物場 時計・宝飾・メガネ | |
7階 | 婦人服 インマイライフ |
婦人服・婦人肌着 | |
6階 | 婦人服・喫茶 | 婦人服 | |
5階 | 婦人靴 | 化粧品・アクセサリー ハンドバッグ | |
4階 | 紳士洋品・雑貨 旅行用品 |
||
3階 | 銀座・伊東屋 | ミスターミニット 神戸屋キッチン 銀座線駅コンコース | |
2階 | ミスタービーン 本家 しぶそば JTB |
SHIBUYAスクランブルII | |
1階 | SHIBUYAスクランブルI レディスファッション | ||
B1階 | 東急フードショー | 東急フードショー | 東横のれん街 |
東館閉館前
編集下記は2013年3月の東館閉店前のもの。
階 | 南館 | 西館 | 東館 |
---|---|---|---|
屋上 | アディダスフットボールパーク渋谷 | ||
10階 | 簡易郵便局(2012年12月31日廃止)[注釈 4] | ||
9階 | 東急レストラン街 | ||
8階 | (閉鎖中) | 催物場 | ちびっ子プレイランド |
7階 | 婦人服・洋品 呉服 |
婦人服・洋品 時計・宝飾・メガネ |
アーバンホームショー特設売場 |
6階 | 婦人服・洋品 | 婦人服・洋品 | |
5階 | (閉鎖中) | (閉鎖中) | 婦人服・洋品 婦人肌着・ナイトウエア |
4階 | 紳士服・洋品 | 婦人靴 | |
3階 | 銀座・伊東屋 | ミスターミニット 神戸屋キッチン |
服飾雑貨 ハンドバッグ・服飾小物 銀座線改札口 |
2階 | アーバンファッション街区 ウェストII |
アーバン コスメティックス 〈セカンド〉 JTBトラベランド | |
1階 | アーバンファッション街区 サウスI |
アーバンファッション街区 ウエストI |
アーバン コスメティックス ファースト 東横のれん街 |
B1階 | 東急フードショー 薬品 |
東急フードショー |
建築
編集東急百貨店東横店西館 | |
---|---|
情報 | |
旧名称 |
玉電ビル →東急会館 |
用途 | 百貨店[21] |
旧用途 | 駅 |
設計者 | 坂倉準三 |
構造形式 | SRC造[21] |
建築面積 | 2,879 m² [21] |
延床面積 | 29,924 m² [21] |
状態 | 解体 |
階数 | 地上11階、地下2階[21] |
高さ | 43m(最高部60m)[22] |
竣工 | 1938年12月[23] |
改築 | 1954年11月15日[23] |
解体 | 2020年10月12日[24] |
所在地 |
〒150-8319 東京都渋谷区渋谷2丁目24-1 |
ギャラリー
編集-
1956年の東横百貨店の広告
-
ありし日の東横店東館
-
東横店西館
-
東横店南館
-
アディダスフットボールパーク渋谷
-
1960年頃の東横百貨店
-
2010年頃の東急東横店
-
東急東横店とヒカリエ(2011年8月)
-
東急東横店の屋上の様子(2012年5月)
-
東横のれん街(渋谷マークシティ)
その他・エピソード
編集東横ホール ↓ 東横劇場 Toyoko Hall | |
---|---|
情報 | |
正式名称 | 東横ホール |
完成 | 1954年 |
開館 | 1954年 |
閉館 | 1985年6月 |
収容人員 | 1,002[26]人 |
用途 | 演劇、歌舞伎、落語などの舞台公演 |
所在地 | 東急百貨店東横店西館9・10階 |
最寄駅 | 渋谷駅 |
- 西館の10・11階部分には、1954年から1985年まで大劇場「東横ホール」(のちに「東横劇場」と改称)があり、若手俳優による歌舞伎公演、新派劇や落語などの舞台上演の場として日本橋の三越劇場と並んで人気を集めていた[27]。構造設計は東急文化会館と同じ坂倉準三が行い[27]、緞帳の一つにはイサム・ノグチの『No end(無窮)』が描かれていた[26]。
- 旧東館は暗渠化された渋谷川の上に建つ橋上百貨店であった。地下階がなく、上階行きのエスカレーターも床から数段持ち上がった構造になっていたのはこのためである。川の上に建造物を設けることは河川法上違法であるが、現行法成立以前の建築のための特例とされていた。2009年には東京都が都市計画変更を実施し、渋谷川のうち同館周辺約250mの区間は下水道に変更され河川法の制約を受けなくなったが、その4年後に同館は閉館となった。
- 食料品売り場の「東横のれん街」は1951年に誕生したが、その後の高度経済成長で渋谷駅周辺の交通量が増え、商品搬入のトラックが横付けできなくなった。これを解消するため、1963年、国道246号を挟んだ東横線高架下に新たな搬入口を設け、地下通路で東横店と結び、通路では無人のカゴがレールに沿って走って行く無人流通システム「フローベヤ」が稼働していた。東横店東館閉鎖に伴い東横のれん街は渋谷マークシティに移転[動画 1]、これによりフローベヤもその役割を終えた[28]。
- 東横店では2000年代以降、平日午後6時以降の売上高が伸びており、その中心顧客である働く女性たちに「渋谷でのアフター6を楽しんでもらう」ことを目的に、東横店の女性社員18名で構成されたプロジェクトチーム「渋6組(しぶろくぐみ)」を結成。キャリア女性のための商品やサービスを提供してきた[動画 3]。
- 1970~1980年代にかけて「東横のれん街」のテレビCMが放映されていたことでも有名。日本テレビの夕方ニュース番組(現在のnews every.枠[注釈 5])のローカルパートやTBS『“スポーツバラエティ”土曜デポルテ』[注釈 6]『たのきん全力投球!』など、東急百貨店提供のテレビ番組で放映されていた。なお、当時のCMは2020年1月から3月31日まで西館7階で開催された「東横デパートの思ひ出展」でも特別放映された[29]。
- 多くの特撮映画に登場していることでも知られる。最初に登場したのは1961年の『モスラ』で、このときはモスラの幼虫に破壊された。また、1999年の『ガメラ3 邪神覚醒』でも、直結する渋谷駅に墜落したギャオス・ハイパーもろともガメラによって派手に爆破されるシーンがある。その他、2000年(平成12年)の『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』にも登場している。
- 2020年1月から閉店当日の3月31日まで、閉店セールイベントとして「85年分の東横総決算」を開催。各フロアにおける在庫一掃セール、西館8階での「東横店最後の開催」と銘打った各種催事や、西館7階での回顧イベント「東横デパートの思ひ出展」などの各種特別企画が展開された[30]。
脚注
編集注釈
編集- ^ 最末期(2020年3月2日以降)は新型コロナウイルス感染症対策により、営業時間を1時間短縮して営業していた。
- ^ 2019年(令和元年)12月27日までは同線の駅が建物内に設置されていた。2020年(令和2年)1月3日の駅移転後は、旧ホームの一部が駅コンコースとして転用されている。
- ^ 「渋谷 東急フードショー」は改装のため同日で「一旦」閉店[14]とされたが、改装によって大部分は渋谷マークシティに移転したほか、既存のエリアは縮小され、東横店地下1階部分と被らないエリアのみが「デリゾーン」として2021年7月10日に再オープンした[15][16]。
- ^ ゆうちょ銀行の取扱店番号は「01492」
- ^ NNNジャストニュース→NNN6:30きょうのニュース→NNNライブオンネットワーク→NNNニュースプラス1時代。
- ^ 東急百貨店の一社提供番組。
出典
編集- ^ a b c 『東急百貨店東横店の営業終了についてのお知らせ(地下1階の食品売場等を除く)』(PDF)(プレスリリース)東急百貨店、2019年7月22日。オリジナルの2019年10月11日時点におけるアーカイブ 。2020年3月31日閲覧。
- ^ “「渋谷駅=東急東横店のファサード」 私たちが知る渋谷駅の姿とは?”. 渋谷文化プロジェクト. 2023年3月10日閲覧。
- ^ “渋谷の「顔」東急東横店、85年の歴史に幕 来店客ら最後の姿見届ける”. シブヤ経済新聞. 2020年4月2日閲覧。
- ^ "東急百貨店東横店の営業面積の変更について" (Press release). 東急百貨店・東急. 20 January 2012. 2013年2月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月23日閲覧。
- ^ “渋谷ヒカリエ ShinQs 東横のれん街”. 東急百貨店. 2022年5月12日閲覧。
- ^ “「東横のれん街」リニューアル - 渋谷ヒカリエ ShinQsに移設オープン、東急フードショー拡大も”. ファッションプレス. 株式会社カーリン (2020年8月3日). 2022年5月12日閲覧。
- ^ 渋谷エキスポ公式サイト(2020年3月23日閲覧)
- ^ “本家しぶそば(渋谷店)の営業について”. 東急グルメフロント (2020年3月18日). 2020年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月8日閲覧。
- ^ 「しぶそば」の公式Twitterより
- ^ “渋谷駅・東横店 |東急百貨店公式ホームページ”. 東急百貨店. 2020年4月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月8日閲覧。
- ^ 杏花 渋谷店 閉店のお知らせ
- ^ 2020 | 小松庵
- ^ “渋谷の駅そば「本家しぶそば」が閉店 40年の歴史に幕、店長あいさつも”. シブヤ経済新聞. 2022年12月8日閲覧。
- ^ “「渋谷 東急フードショー」全面改装へ 今秋、一部リニューアルオープン”. シブヤ経済新聞. 2022年12月8日閲覧。
- ^ しぶちか|フロアマップ|渋谷 東急フードショー|東急百貨店公式ホームページ
- ^ 『2021 年 7 月 10 日(土)グランドオープン「渋谷 東急フードショー」 全 104 ショップがラインナップ』(PDF)(プレスリリース)東急百貨店、2021年5月25日。オリジナルの2021年5月25日時点におけるアーカイブ 。2022年12月8日閲覧。
- ^ 半田健人氏の公式Twitterより
- ^ “「玉川改札」閉鎖迫る 解体前の旧東急東横店通路でアート企画「#391045428」”. シブヤ経済新聞 (2020年9月23日). 2022年12月29日閲覧。
- ^ “来月から解体工事が始まる渋谷駅上の東急百貨店東横店西館南館の工事説明会に地域住民の1人として参加。 - 中村豪志(ナカムラタケシ)”. 選挙ドットコム (2020年9月25日). 2023年1月20日閲覧。
- ^ “【動画ニュース・進化続ける渋谷の魅力(上)】田村昭和女子大教授と東急百貨店東横店南館の解体現場を見学”. 建設通信新聞 (2022年12月13日). 2022年12月29日閲覧。
- ^ a b c d e Tokyu Kaikan (Tokyu Department Store, Shibuya Toyoko) - 坂倉建築研究所
- ^ 「渋谷文化」の原点がここから生まれた。 - 渋谷文化プロジェクト
- ^ a b 東横デパートとまちの歴史(1885-1964) - 渋谷文化プロジェクト
- ^ 東急百貨店東横店西・南館解体工事 - 建設データバンク
- ^ 東急100年史 1章 1918ー1945 |東急株式会社
- ^ a b “「渋谷文化」の原点がここから生まれた。”. 渋谷文化プロジェクト. 2021年2月6日閲覧。
- ^ a b 東急百貨店 渋谷駅・東横店 (2012年10月25日). “今から27年前に、東急東横店の西館9階、10階に大劇場「東横ホール」(のちに「東横劇場」と改称)があったのを、みなさまはご存知でしょうか。”. Facebook. 2021年2月6日閲覧。
- ^ “変わる渋谷駅 名店街を支えた“トロッコ” - 特集まるごと”. NHKニュースおはよう日本 (日本放送協会). (2013年3月15日) 2013年10月19日閲覧。
- ^ すべてのお客様に大感謝。85年分の東横総決算「東横デパートの思ひ出展」
- ^ すべてのお客様に大感謝。85年分の東横総決算 特設サイト
動画
編集- ^ a b TOKYO MX 新東横店オープン「東横のれん街」2000人が長蛇の列 - YouTube(2013年4月4日)2021年2月6日閲覧。
- ^ 日刊建設通信新聞社進化し続ける街、渋谷-前編・東急百貨店東横店解体現場から- - YouTube(2022年12月13日)2022年12月29日閲覧。
- ^ 東急百貨店公式チャンネル 渋6組ってなに?/東急百貨店 女性プロジェクト - YouTube(2015年10月21日)2021年2月6日閲覧。
参考文献
編集関連項目
編集- 渋谷駅
- 東横映画 - かつてあった日本の映画会社、現在の東映の前身。
- 渋谷川 - 東横店の地下を流れる川。
- 渋谷スクランブルスクエア
外部リンク
編集- 渋谷駅・東横店 - 東急百貨店Webサイトに於ける当店舗の個別サイト・トップ
- 東急百貨店 渋谷駅・東横店 (tokyu.dept.toyoko) - Facebook - 当店舗の公式アカウント
- 東急百貨店 東横店 (@TOKYU_DEPT_ty) - X(旧Twitter) - 当店舗の公式アカウント
- 東横百貨店 『土木建築工事画報』 第10巻 第11号 工事画報社 1934年(昭和9年)11月発行