暗室 (小説)
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『暗室』(あんしつ)は、吉行淳之介の長編小説。1969年1月-12月号の『群像』に連載され、1970年、講談社より単行本化。第6回(1970年)谷崎潤一郎賞受賞。1983年、にっかつ創立70周年記念作品として映画化された(後記)。
暗室 | |
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作者 | 吉行淳之介 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 長編小説 |
発表形態 | 雑誌連載 |
初出情報 | |
初出 | 『群像』1969年1月号-12月号 |
出版元 | 講談社 |
刊本情報 | |
出版元 | 講談社 |
出版年月日 | 1970年3月 |
総ページ数 | 289 |
id | ISBN 978-4061123939 |
受賞 | |
第6回谷崎潤一郎賞 | |
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概要
編集語り手(私)は43歳の作家、中田修一である。屋根裏部屋でひっそりと暮らす精神障害者の兄妹や、東北の貧しい村で行われていた間引き、水面に叩きつけられた150匹のメダカなど、不穏なエピソードを挿みながら、作家と周囲の女たちとの様々な性のあり方を描いている。
あらすじ
編集古い友人で編集者の津野木から私に電話がある。
津野木はかつて同人誌仲間で新進作家だった。20年前のある日、津野木が私の留守宅を訪れ、妻の圭子にお土産を届けたことがあった。私は妻と津野木との関係を疑った。ほどなく妻は妊娠したが、中絶した。その妻も10年前に交通事故死した。
津野木に誘われた酒場で、私はマキという女と知り合いになる。マキは同性愛者で、男が隣りに来ると吐いてしまうのだが、私が体にふれても吐き気がしないという。
私には多加子、夏枝という女がいる。多加子は28歳の華道教授で、4年ほどの関係になる。夏枝は数か月前に偶然知り合った。他にパトロンがいるが、避妊をしようとしない。「子供ができて、それを引張りだしてもらうのが大好き」だという。
やがて多加子は普通の結婚をして、私の前から去る。マキはインテリアの勉強でアメリカに行くことになるが、出発直前、妊娠していることを私に告げる。アメリカで産んで育てるつもりだという。
夏枝から連絡があり、男に殺されかけて、逃げ出したと聞く。夏枝が私を必要としていることを知り、「男の意地」でぬかるみに入って行く覚悟をした。私は1年間、鬱状態になり、ほとんど仕事もできなくなるが、夏枝の部屋に通い、体に溺れた。
夏枝は「子供はできない躯になったらしい」という。生殖と切り離された性行為は「新しい生に受継がれるものではなく、死に近づいてゆく行為を烈しく繰り返している」という思いが浮かぶ。私は今日も夏枝のいるあの薄暗い部屋に行く。
モデル
編集- 吉行の没後、愛人だった大塚英子が夏枝のモデルだと名乗り出ている。大塚は『暗室のなかで 吉行淳之介と私が隠れた深い穴』(1995年)、『夜の文壇博物誌 吉行淳之介の恋人をめぐる銀座「ゴードン」の憎めない人々』(1997年)、『暗室日記』(1998年)を公表している。
- 多加子のモデルを主人公にした小説『特別な他人』(中央公論社、1996年)を高山勝美が公表している。
映画
編集暗室 | |
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Dark Room | |
監督 | 浦山桐郎 |
脚本 | 石堂淑朗 |
原作 | 吉行淳之介 |
出演者 | 清水綋治、三浦真弓、木村理恵 、芦川よしみ |
音楽 | 松村禎三 |
撮影 | 安藤庄平 |
編集 | 井上治 |
製作会社 | にっかつ |
配給 | にっかつ |
公開 | 1983年9月17日 |
上映時間 | 122分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
『暗室』(あんしつ、英題:Dark Room )は、1983年公開の日本映画。にっかつ創立70周年記念作品として製作されたにっかつロマンポルノ・エロス大作。カラー / ビスタ / 122分。
ストーリー
編集作家の中田と周囲の女たち(亡妻、多加子、マキ、夏枝など)の関係を、おおむね小説の設定、ストーリーに沿って描いている。次の点は大きく異なっている。
- 中田は、かつて妻の浮気を疑ったこと、妻が交通事故死したことを小説に書いて発表する。
- ラストで、中田は夏枝の部屋でパトロンの竹井に出くわし、暴行を受ける。夏枝は傷ついた中田を、母と弟がいる群馬の実家に連れて行く。夏枝はもう東京へは帰らないと言い、中田に別れを告げる[1]。
スタッフ
編集- 監督 - 浦山桐郎
- プロデューサー - 三浦朗
- 企画 - 成田尚哉
- 原作 - 吉行淳之介
- 脚本 - 石堂淑朗
- 撮影 - 安藤庄平
- 美術 - 佐谷晃能
- 照明 - 加藤松作
- 録音 - 神保小四郎
- 編集 - 井上治
- 音楽 - 松村禎三
- 助監督 - 菅野隆、浅尾政行
- 製作担当者 - 栗原啓祐
キャスト
編集- 中田修一 - 清水綋治
- 夏枝 - 木村理恵
- 多加子 - 三浦真弓
- マキ - 芦川よしみ
- 圭子 - 風祭ゆき
- 竹井 - 江角英明
- 由美子 - 田家幸子
- タエ - 麻生うさぎ
- 女優(TV・ホームドラマの女) - 江崎和代
- 良子 - 岡本かおり
- バーテン - 北見敏之
- 多加子の新郎 - 関川慎二
- 夏枝の弟 - 伊藤康臣
- 学生 - 阿部雅彦
- 編集者 - 井上高志
- 俳優(TV・ホームドラマの男) - 信実一徳
- 森みどり
- 坂巻祥子
- 渡辺未亡人 - 金子勝美
- 玉井謙介
- 布施絵理子
- 浜田昭美
- 北林みゆき
- 川村真理子
- 渡辺の息子 - 林泰文
- 医師 - 殿山泰司
- 黒服の男 - 浜村純
- 男(中田の対談相手) - 河原崎長一郎
- 夏枝の母 - 初井言栄
- 津野木徹(山野井) - 寺田農
註釈
編集- ^ 『シナリオ』423号。