放送線(ほうそうせん)とは、放送伝送するために設置された電気通信用の回線専用線)のことである。主に、複数の放送局で放送番組を同時放送中継放送するためのネットワークに用いられるものを指すが、有線放送・街頭放送を配信するための回線や、難視聴地域等におけるラジオ・テレビの共同受信のための回線も含む。

概要

編集

放送線は、以下のような用途・伝送路で用いられる。

このうち中継放送で使われる回線は、中継線と呼ばれることもある。ネット局が相互に素材の送受信を行えるように、上り・下りの2回線を所有していることが多い[1]

放送線が整備される前は放送波を直接受信して再送信を行ったほか、自営の中継用無線局、録音テープ(テープネット)等を使用して伝送していた。

主に日本電信電話公社(電電公社)によって整備され、電電公社民営化後は、事業を引き継いだNTTコミュニケーションズが所有・管理を行っている。

沿革

編集

この節では特に電電公社およびその後進の事業体による放送線整備の沿革について述べる。

年譜

編集
  • 1954年 - テレビ放送中継サービス開始
  • 1965年 - AM放送中継サービス開始
  • 1979年 - FM放送中継サービス開始
  • 1990年 - INSネット64サービス開始 - 音声コーデックをISDN回線に接続して使用
  • 1991年 - AM・FM放送中継サービスをBNEシステムに順次移行
  • 2010年 - FM放送中継サービス廃止
  • 2015年 - AM放送中継サービス廃止

アナログ

編集

電電公社は、1965年に帯域保証のアナログ専用線AM放送を、1979年には帯域保証のアナログ専用線FM放送を、それぞれ開始した。CBC(Carrier Broadcast Circuit)・SPD(Stereo sound Program Digital transmitting equipment)システムによる音声伝送サービスであった。AM放送中継は周波数帯域50Hz~10kHz(+1.7dB-4.3dB)のモノーラル、FM放送中継は同40Hz~15kHz(+0.24dB-1.44dB)のステレオ音声(チャンネルセパレーション55dB以上)を伝送した。[2]

デジタル

編集

1991年から、従来のアナログ回線の一部をデジタル回線に置き換えたBNE(放送線システム、Broadcasting Node Equipment)システムに順次移行。

インターネットの発達後は、従来主流であったNTT東日本NTT西日本電力系通信事業者ISDN回線のほかに、インターネットの帯域保証型IP回線VPN回線 [3]、専用の光回線[4]、衛星回線[5]などを使用・併用しているところもある。

日本放送協会(NHK)のラジオFMデジタル回線(AM2波・FM1波)は光回線化されており、一部の中継局では自営無線回線・デジタルINS回線・アナログ専用線(AM放送 3.4kHz)を併用している[6]

主な仕様

編集
  • チャンネル数: L・R 各1チャンネル
  • 周波数帯域: 50-10kHz(AM放送)、40-15kHz(FM放送)
  • 符号化: PCM A-law 14/11bit(ITU-T J.41) 32kHz
  • 伝送レート: 384kbit/s(1チャンネルあたり)
  • 通信方式: 全二重通信
  • 送出レベル: -10dBm以下(実効値)

脚注

編集
  1. ^ a b 株式会社文化放送放送部 広田克治「文化放送におけるNRNネットワークの設備と運用」『テレビジョン学会誌』VOL.33NO.9、社団法人映像情報メディア学会、東京、1979年9月、742-743頁、ISSN 0386-68312008年9月閲覧 
  2. ^ 東日本電信電話株式会社 (2001年4月). “一般専用サービスの技術参考資料 第7版 第II編 帯域品目” (PDF). 技術参考資料. 東日本電信電話株式会社. pp. 35-41. 2004年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月26日閲覧。
  3. ^ 朝日放送 技師長・株式会社radiko 技術担当 香取啓志・J-WAVE 編成局 佐々木章・エフエム東京 編成制作局技術部 川島修・株式会社radiko 業務推進局 森川達也「radiko.jpのシステムとサービス概要について」、『放送技術』第64巻(2011年9月号)、兼六館出版、2011年8月、ISSN 0287-8658
  4. ^ 田中太郎(朝日放送 技術局制作技術センター)「ABCラジオのプロ野球中継の取り組み」、『放送技術』第62巻(2009年9月号)、兼六館出版、2009年9月、ISSN 0287-8658
  5. ^ JFN 新番組配信システム“CS-IPネットワーク”にSuprimaを採用』(プレスリリース)松田通商株式会社、2008年6月20日。オリジナルの2010年8月4日時点におけるアーカイブhttp://www.mtc-japan.com/news/2008/080620.html2010年8月4日閲覧 
  6. ^ 第4部資料編 技術:回線系統図(2012年度)、『NHK年鑑2013』NHK放送文化研究所、NHK出版、2013年

参考文献

編集
  • 日本電信電話株式会社ネットワークサービスシステム研究所 小林正人、 山田宏一、天野茂、高山貴行「新ラジオ放送線システムの導入開発」『NTT技術ジャーナル』Vol.21No.2、日本電信電話株式会社、東京、2009年2月、36-39頁、ISSN 0915-23182010年8月4日閲覧 
  • 日本電信電話株式会社 情報流通基盤総合研究所 (2009年2月1日). “アナログ/デジタル専用線システムの開発の流れ” (PDF). NTT技術史料館. 日本電信電話株式会社. pp. 展示概要 > 技術をさぐる > I.サービスとネットワークのひろば > C.トランスミッションの技術 > 電話網の利用からディジタルデータ網へ 専用伝送システムの展開. 2010年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月4日閲覧。

関連項目

編集