大山 (愛知県)
大山(おおやま)は、愛知県田原市にある標高320 mの山[4]。渥美半島の南西部の先端寄りに位置する[5]。ふもとの集落の名をとって、「越戸の大山(おっとのおおやま)」とも呼ばれている[4][6]。他の別名が、高嶺山、高根山[7]。山域は三河湾国定公園の指定を受けている[4]。
大山 | |
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標高 | 328.03[1] m |
所在地 |
日本 愛知県田原市 |
位置 | 北緯34度36分7秒 東経137度8分47秒 / 北緯34.60194度 東経137.14639度座標: 北緯34度36分7秒 東経137度8分47秒 / 北緯34.60194度 東経137.14639度[1] |
山系 | 渥美山塊[2][3] |
大山の位置 | |
プロジェクト 山 |
概要
編集渥美半島及び田原市の最高峰である[7]。渥美半島は赤石山系の延長上に存在し、北東から南西にかけて標高は低いながらも山が続いている。南面は太平洋の遠州灘に面し[8]、山頂からは太平洋や三河湾が一望できる。天気がよければ北側も見られるが、低いながらも山が連なっているのがわかる。大山から三河湾側に見える山は、田原市内の雨乞山である。同じ市内の藤尾山・蔵王山等の山々も望むことができる。
環境
編集伊良湖岬にかけて9-10月頃にサシバなどの鷹の渡りが見られる[3][4]。山麓ではサンコウチョウ、オオルリ、ヤブサメなどの夏鳥の繁殖が確認されている[3]。周辺の山麓の農地ではキャベツなどの野菜や電照菊などの花卉類が栽培されている[8]。
地質
編集渥美半島の北側の三河湾に沿って海底を通っている中央構造線の南側に位置する[7]。古生層と渥美層群(洪積層)からなり、太平洋側が急斜面となり北側が緩やかな斜面となっている[7]。山体はチャート、石灰岩の古生層[8] で構成されている[7]。
越戸大山原生林
編集南国的な温かい地域で照葉樹林などの原生林が広がっていて[7]、山域の「越戸大山原生林」は三河国定公園の特別地域の区域指定を受けている[2][9]。その周辺は渥美半島県立自然公園の指定を受けている[9]。南面にはタブノキ、シイ、ウバメガシなどの常緑広葉樹林の原生林があり、林床にナチシダなどの温暖性のシダ類が見られる[4]。中腹にはカゴノキ、クスノキ、ヒメユズリハ、シロダモ、ヤブニッケイ、クロバイなども分布し、上部ではアカマツなどが分布している[7]。
北山麓のシデコブシ自生地
編集北山麓には「椛のシデコブシ自生地」があり、1970年(昭和45年)6月19日に国の天然記念物に指定された[10][11]。また椛のシデコブシ自生地の東約500 mには「伊川津のしでこぶし」があり、1967年(昭和42年)10月30日に県の天然記念物に指定された[11]。この北山麓の自生地はシデコブシの南限[12] である。シデコブシは環境省によるレッドリストで準絶滅危惧の指定を受けていて、愛知県のレッドリストで絶滅危惧II類の指定を受けている[13]。
登山
編集各方面から登山道が開設されていて、山頂には一等三角点(基準点名「大山」)[1]、展望台[注釈 1][14] などが設置されている。山頂からは渥美半島、恋路ヶ浜、伊勢湾に浮かぶ神島、三河湾を望むことができる[5]。夏は登山に不向きで、登山適期は10-5月とされている[5]。麓の保育園、小学校、中学校で遠足が行われている[3]。
越戸からのコース
編集登山道(林道)は整備されているが、急傾斜で石ころが多い。車両の乗り入れは禁止されていないが、かなりの急傾斜であるため事実上乗り入れは困難である。南麓の越戸の登山口には白山比咩神社があり、その上部には御岳神社がある[4]。
あつみ大山トンネル北口からのコース
編集農免道路のあつみ大山トンネル北口から山頂に至るコースがある[5]。下部は杉の植林地の急斜面で、中間点付近で雨乞山方面からの渥美半島横断路の尾根道に合流する。山頂直下には見晴らしの良い岩塊があり、富士山、南アルプス、中央アルプス、御嶽山が見渡せることがある[5]。
- あつみ大山トンネル北口 - 植林地 - 尾根合流点 - 露岩 - 山頂広場 - 大山[5]
椛のシデコブシ自生地からのコース
編集北麓の「椛のシデコブシ自生地」(国の天然記念物)付近の登山口から山頂に至るコースがある[5]。椛のシデコブシは3月下旬から4月上旬頃に開花する[5]。雨乞山から大山へと南北に延びる稜線上には、腰掛岩とヘソ岩と呼ばれる見晴らし台がある[5]。
- 椛のシデコブシ自生地 - 椛峠 - 腰掛岩 - ヘソ岩 - 露岩 - 山頂広場 - 大山[5]
地理
編集太平洋側の遠州灘の海岸線から1.2 kmほど北に位置する。大山から雨乞山へ尾根がほぼ南北に連なる。東方に位置する蔵王山、藤尾山、衣笠山などからなる「田原アルプス」と称される山域と独立した山域。北山腹を豊川用水東部幹線水路が貫通する。
周辺の主な山
編集山容 | 山名 | 標高(m) [注釈 2][1] |
三角点等級 基準点名[1] |
大山からの 方角と距離(km) |
備考 |
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蔵王山 | 250.40 | 四等 「蔵王山」 |
北東 14.0 | 田原アルプス | |
藤尾山 | 207.72 | 三等 「大久保村」 |
北東 10.5 | 田原アルプス | |
雨乞山 | 233 | 北 3.1 | |||
大山 | 328.03 | 一等 「大山」 |
0 | 渥美半島の最高峰 | |
宮山 | 139.79 | 二等 「伊良湖村」 |
西 10.6 | 宮山原始林(国の天然記念物) |
源流の河川
編集交通・アクセス
編集遠州灘沿いの南山麓に国道42号が通り、その南側に自転車用道路(渥美サイクリングロード)が並走する。北西山腹を渥美農免道路のあつみ大山トンネル(長さ1,230 m、幅員9.25 m、2002年開通)が貫通し、三河湾側の田原市伊川津町と太平洋側の田原市和地町とを結ぶ[16]。山域の北側の三河湾沿いに、国道259号が通る。
無線電信施設
編集太平洋に面した渥美半島には、明治中期以降多くの軍事施設が設けられた。太平洋を一望できる大山には、無線電信施設が建設された。太平洋戦争末期には空襲を受けている。また、「東海地方を空襲する米軍爆撃機が、移動する際に大山を目印にしていた」との話もある。2004年10月にこの無線電信施設は電信システムのデジタル化に伴い、撤去された。
大山離着陸訓練場問題
編集2004年10月に撤去された大山山頂部の旧電波塔跡地を、三重県の明野駐屯地にある陸上自衛隊航空学校のヘリコプター離着陸訓練場とする計画が持ち上がり、地域住民、日本野鳥の会、WWFジャパンなどにより自然保護と騒音公害の観点から反対運動が起こった[3]。2005年9月に、陸上自衛隊と田原市との間で「周辺の自然環境に配慮する」という覚書が取り交わされて、2005年11月に訓練場が完成した[17]。反対運動などもあってその後7年間訓練が一度も実施されることはなく、2012年12月に訓練場の撤去が決定された[18]。
大山の風景と眺望
編集大山の風景
編集-
北麓の伊川津のキャベツ畑から望む大山
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北側の狼煙山から望む大山
大山からの眺望
編集1897年(明治30年)に、柳田國男が伊良湖岬を旅した際に登頂し、『和地の大山は伊勢の海を大観するには、この上なきなり』と述べている[7]。
-
遠州灘(南東)
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e “基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2014年12月17日閲覧。
- ^ a b “多様な自然が宿るまち” (PDF). 田原市. pp. 10-11 (2011年2月17日). 2014年12月18日閲覧。
- ^ a b c d e “渥美半島越戸大山・ヘリコプター離着陸訓練場計画 要望書” (PDF). 日本野鳥の会 (2003年10月10日). 2014年12月18日閲覧。
- ^ a b c d e f g あつた勤労者山岳会 (1999)、236-237頁
- ^ a b c d e f g h i j 西山 (2010)、90-91頁
- ^ “大山”. 渥美半島観光ビューロー (2011年2月17日). 2014年12月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 長坂 (2005)、1097-1098頁
- ^ a b c d コンサイス日本山名辞典 (1992)、100頁
- ^ a b “愛知県の自然公園”. 愛知県. 2014年12月17日閲覧。
- ^ “国指定文化財等データベース「椛のシデコブシ自生地」”. 文化庁. 2014年12月17日閲覧。
- ^ a b “シデコブシ開花状況”. 田原市教育委員会文化財課. 2014年12月17日閲覧。
- ^ 中島美幸. “東濃地域のシデコブシ自生地”. 岐阜県森林研究所. 2014年12月17日閲覧。
- ^ “レッドデータブックあいち2009” (PDF). 愛知県. pp. 344 (2009年). 2014年12月17日閲覧。
- ^ “越戸の大山展望施設及び衣笠山作業施設(展望施設について)” (PDF). 田原市 (2011年2月17日). 2014年12月17日閲覧。
- ^ “都市計画の基本方針等検討委員会 参考資料” (PDF). 田原市. pp. 15 (2014年9月25日). 2014年12月17日閲覧。
- ^ “広報たはらNo.618(平成20年3月号)『あつみ大山トンネル』” (PDF). 田原市. pp. 30 (2008年3月1日). 2016年11月15日閲覧。
- ^ “愛知県渥美半島の陸上自衛隊大山離着陸訓練場に関する質問主意書”. 防衛省 (2006年2月16日). 2014年12月18日閲覧。
- ^ “陸自ヘリ訓練場撤去へ”. 日本共産党 (2013年2月4日). 2014年12月18日閲覧。
参考文献
編集- 徳久球雄 編『コンサイス日本山名辞典』(修訂版)三省堂、1992年10月。ISBN 4-385-15403-1。
- 日本山岳会『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月。ISBN 4-779-50000-1。
- 日本山岳会東海支部『改訂版 愛知県の山』山と溪谷社〈新・分県登山ガイド 改訂版〉、2010年2月22日。ISBN 978-4635023726。
- あつた勤労者山岳会 編『こんなに楽しい愛知の130山』風媒社、1999年10月8日。ISBN 4833100770。