名古屋市交通局5000形電車

名古屋市交通局の通勤形電車

名古屋市交通局5000形電車(なごやしこうつうきょく5000がたでんしゃ)は、1980年昭和55年)から2015年平成27年)にかけて東山線で使用されていた名古屋市交通局(名古屋市営地下鉄)の通勤形電車である。

名古屋市営地下鉄5000形電車
5000形電車(本郷駅)
基本情報
運用者 名古屋市交通局
製造所 日本車輌製造
日立製作所笠戸事業所
製造年 1980年 - 1990年
製造数 23編成138両
運用開始 1980年7月1日[1]
運用終了 2015年8月28日
廃車 2015年8月30日
投入先 東山線
主要諸元
編成 6両編成(4M2T)
軌間 1,435 mm(標準軌
電気方式 直流600 V(第三軌条方式
最高運転速度 65 km/h
設計最高速度 80 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
車両定員 先頭車110人(38席)
中間車115人(44席)
自重 先頭車22.0 t
中間車24.2 t
長さ 15,580 mm
2,508 mm(5101編成 - 5112編成)
2,546 mm(5113編成 - 5123編成)
高さ 3,440 mm
車体 アルミニウム合金
台車 ペデスタル式空気ばね台車
日車製・日立製・住友(現・日鉄)製TN10[注釈 1]
主電動機 直流直巻電動機
主電動機出力 95 kW × 4
駆動方式 WNドライブ
編成出力 380 kW × 4
制御方式 AVF式チョッパ制御
制御装置 回生ブレーキ付き
制動装置 MBS-R形デジタル演算電気指令式電空併用ブレーキ
保安装置 打子式ATS(改造前)
車内信号ATC(改造後)
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概要

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東山線の冷房化推進として試作車6両編成1本が竣工し、100形・200形の置き換えとして6両編成22本(132両)が増備された。

名古屋市営地下鉄の車両で初めてアルミニウム合金[注釈 2]を採用し、制御車付随車)が先頭車に配置され、標準軌第三軌条方式で初めて冷房装置回生ブレーキを搭載し、電機子チョッパ制御と固定を採用し、荷物棚が設置され[注釈 3]、東山線で初めて黄色の帯が車体に配された。

正面は切妻形であるが、僅かに傾斜させ、非常扉を助士側に寄せた非対称形で、前面上部窓を一体化させた意匠を採用。これは多少の違いはあるが、後の250形や5050形にも受け継がれた。

車番は本形式以前ならローマン体となっていたが、本形式以降はゴシック体を採用している。

本形式以降は小型車体のため、制御装置など主要電気機器を分散搭載し、編成の半分、3両で1ユニットとなった。

冷房装置の搭載に伴い、車端部は天井が低くなり、それ以外はダクトが張り出している[注釈 4]。冷房装置は集約分散式で、能力14.53 kW(12,500kcal/h)出力品を各車に2台(1両あたり29.07 kW・25,000kcal/h)搭載している[2][3]

座席赤橙モケットを採用した。

編成

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藤が丘方面先頭から4両目に当たる5400形は平日の始発から終電まで女性専用車両となる。

← 藤が丘
高畑 →
形式 5100 5200 5300 5400 5500 5600
区分 Tc1 M2 M1 M1' M2' Tc2 次車分類 竣工日 製造所 廃車日 備考
車両番号 5101 5201 5301 5401 5501 5601 試作車 1980年
5102 5202 5302 5402 5502 5602 2次車
5103 5203 5303 5403 5503 5603 ブエノスアイレスへ譲渡
5104 5204 5304 5404 5504 5604
5105 5205 5305 5405 5505 5605
5106 5206 5306 5406 5506 5606
5107 5207 5307 5407 5507 5607
5108 5208 5308 5408 5508 5608
5109 5209 5309 5409 5509 5609
5110 5210 5310 5410 5510 5610
5111 5211 5311 5411 5511 5611
5112 5212 5312 5412 5512 5612 3次車 ブエノスアイレスへ譲渡
5113 5213 5313 5413 5513 5613 4次車
5114 5214 5314 5414 5514 5614
5115 5215 5315 5415 5515 5615 5次車 ブエノスアイレスへ譲渡
5116 5216 5316 5416 5516 5616
5117 5217 5317 5417 5517 5617 6次車
5118 5218 5318 5418 5518 5618
5119 5219 5319 5419 5519 5619 7次車
5120 5220 5320 5420 5520 5620
5121 5221 5321 5421 5521 5621 8次車 1988年6月6日 日車 ブエノスアイレスへ譲渡
5122 5222 5322 5422 5522 5622 日立 ブエノスアイレスへ譲渡
5123 5223 5323 5423 5523 5623 9次車 1990年 日車

廃車

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東山線は後に導入された5050形と合わせて50編成で運用されていたものの、予備編成の見直しに伴う減車措置がとられ、2004年3月27日に保安装置打子式ATSからCS-ATCに切り替えられた際に車内信号式ATC対応改造が見送られた5101・5102編成が廃車された。

車体については鶴舞線3000形より本形式の方が新しいものの、試作車の竣工から約25年が経過し、特に走行時の横揺れが災いするなど、電気機器装置の老朽化が進んでいること、ホーム柵制御装置を新規搭載するスペースがないことから、廃車が決定した。

N1000形の導入に伴い、2008年3月26日から2015年4月24日にかけて順次廃車が進み、8月28日を最後に営業運転を終了し、30日付で廃車され、形式消滅した[4][5]

ブエノスアイレス地下鉄への譲渡・架線集電化

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ブエノスアイレス地下鉄で運行されている、同地下鉄を運営するメトロビアス社への譲渡車両

2013年7月10日から23日にかけて5103・5112・5115・5121・5122編成がブエノスアイレス地下鉄に譲渡され、架線集電化も行われた。

譲渡された車両は以下の通り。

  • 5103編成
  • 5112編成
  • 5115編成
  • 5121編成
  • 5122編成

営業区間

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脚注

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注釈

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  1. ^ 東山線で運用されている車両で一部日立製と住友(現・日鉄)製の台車を採用している。
  2. ^ 名古屋市営地下鉄でアルミ車体を採用した車両は本形式と鶴舞線N3000形N3101編成のみ。
  3. ^ 本形式では客用ドア戸袋部の座席上部8か所のみに設置されている。
  4. ^ 名城線名港線2000形以降の冷房車の車端部冷房装置は本形式より薄く、車内への張り出しが小さくなっている。

出典

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  1. ^ ~東山線5000形車両引退記念イベント(ラストラン)~ 「特別列車」運行及び参加者の募集、引退記念マフラータオルの発売等について” (PDF). 名古屋市交通局 (city.nagoya.jp). 名古屋市. p. 1 (2015年7月7日). 2015年9月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月22日閲覧。
  2. ^ 三菱電機『三菱電機技報』1981年1月号「車両用空気調和装置」 (PDF) 」p.87。
  3. ^ 三菱電機『三菱電機技報』1981年4月号「地下鉄車両用冷房装置」 (PDF) 」pp.29 - 31。当項目ではB社とぼかしているが、同年1月号ではCU75形は名古屋市交通局向けと記載されている。
  4. ^ “東山線5000形に引退記念装飾”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2015年7月15日). http://railf.jp/news/2015/07/15/140000.html 
  5. ^ “名古屋市交通局で5000形車両引退記念イベント”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2015年8月31日). http://railf.jp/news/2015/08/31/204000.html