南海8000系電車 (2代)
南海8000系電車(なんかい8000けいでんしゃ)は、2007年(平成19年)に登場した南海電気鉄道の一般車両[1](通勤形電車)の一系列である。
南海8000系電車(2代) | |
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![]() 南海本線・空港線の空港急行で運用する8000系 (粉浜駅) | |
基本情報 | |
運用者 | 南海電気鉄道 |
製造所 |
東急車輛製造 総合車両製作所横浜事業所 |
製造年 | 2007年 - 2014年 |
製造数 | 13編成52両 |
運用開始 | 2008年3月26日 |
投入先 | 南海線 |
主要諸元 | |
編成 | 4両編成 |
軌間 | 1,067 mm (狭軌) |
電気方式 |
直流1,500V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 110 km/h |
設計最高速度 | 120 km/h |
起動加速度 | 2.5 km/h/s |
減速度(常用) | 3.7 km/h/s |
減速度(非常) | 4.0 km/h/s |
編成定員 | 588名 |
車両定員 |
先頭車142名 中間車152名 |
編成重量 | 127.0 t |
全長 |
先頭車 20,765 mm 中間車 20,665 mm |
全幅 | 2,820 mm |
全高 |
先頭車 4,140 mm 中間車 4,050 mm |
車体 | ステンレス |
台車 |
モノリンク式ボルスタレス台車 住友金属工業→新日鐵住金SS-177M・SS-177T |
主電動機 |
かご形三相誘導電動機 三菱電機製 MB-5091-A2 |
主電動機出力 | 180 kW |
駆動方式 | WNドライブ |
歯車比 | 98:15 (6.53) |
編成出力 | 1,440 kW |
制御方式 | IGBT素子VVVFインバータ制御 |
制御装置 | 日立製作所製 VFI-HR1420Q |
制動装置 | 三菱MBSA回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、全電気ブレーキ |
保安装置 | 南海型ATS |
概要
老朽化が進んでいる南海本線用の7000系を置き換える目的で導入された。走行機器類の基本設計や車内設備は1000系 (2代) を踏襲している。登場時のキャッチコピーは、「やさしいがうれしい」。
車両概説
車体
車体は東急車輛製造(現在の鉄道車両製造事業は総合車両製作所)標準の20m級片側4扉のステンレス製軽量構造で、側面と屋根部分の構体は雨樋部分をスポット溶接で接合する設計が採用された。全体は無塗装とし、アクセントとして配されるブルー■とオレンジ■の帯はフィルム張りでなく塗装とした。先頭車前面には1000系と同様に貫通扉が設置されている。8003F・8004Fでは貫通扉がグレー塗装となり、さらに8005F以降は前面貫通路の窓の大きさが若干大きくなった。
前照灯は2300系と同等の配置で貫通扉上部に配されている。2016年より一部の編成がシールドビームからLED電球に交換されており[2]、年度内に全編成の交換が完了した。
車体幅・車体長は南海の在来車と同一であるが、客用扉の中心間隔は4,820mmに変更された。車体幅は2,820mmである。窓配置はdD2D2D2D1(d:乗務員扉、D:客用扉)または1D2D2D2D1であるが、客用扉間は客室側から見て右側が固定窓で左側が下降窓、車端部は固定窓としている。また、車端部の窓は1000系に比較すると横幅が狭くなっている。窓ガラスには紫外線 (UV) カットガラスを使用するが、客室側窓の巻き上げカーテンは存置されている。床面の高さは1000系の1,170mmから1,150mmに低くすることで駅ホームとの段差を縮小し、バリアフリー化を図っている。
前面および側面の種別・行先表示器は南海では初めてフルカラーLED・白色LEDが採用された。側面表示器は横長のものを採用し、日本語と英語を3秒サイクルで交互表示する。[注 1]。
2012年製造分からは、先頭車両同士の連結部での転落防止措置として、和歌山市方の先頭部に転落防止放送装置を設置している[3]。開扉時に連結部であることを放送し注意喚起を行う。
車内
座席は車端部も含めて全て片持ち式ロングシートで、南海では2000系1 - 4次車以来のオールロングシート車となった。座席端部の仕切りは大型FRP製である。座席モケットは茶色、優先座席には青色を新規に採用し識別化によるバリアフリーを推進している。1人あたりの座席幅は従来の455mmから460mmへと拡大した。クッション材はSバネ入りポリエステル綿であるが、従来車より硬い座り心地となった。7人掛け座席の中間部には2本ずつスタンションポールを設置した(1両につき中間車14本、先頭車両のみ12本)。吊り革についても座席同様、優先座席付近をオレンジ色とすることで識別を図っているが、形は従来車と同じ円形である。
荷棚はパイプ式で、天井中央部の素材は繊維強化プラスチック(FRP)製に変更された。ラインデリア(補助送風機)整風板は1000系のような車体全長への設置とは異なり、要所要所に設置されたタイプに変更された。車内照明はカバーなしの蛍光灯だが、2013年製造分からはLED照明が採用され、8008Fと8010F以降では直接照明、8009Fでは間接照明となった[4][注 2]。なお2016年10月以降、車内照明が蛍光灯の編成についても順次LED照明に更新されている[4]。
側引戸の室内側は2300系と同様に化粧板を廃止し、ステンレス無塗装仕上げとされた。バリアフリー対応のため、戸当たり部には黄色のマーキングテープが高さいっぱいに貼り付けられ、床面部も黄色の凹凸付き滑り止めとされた。またドアチャイムとドア開閉表示灯を装備している。車内案内表示器はLED1段スクロール式で、各車両に4基が千鳥配置で設置されている。車両間の貫通扉も、ステンレス製無塗装仕上げで傾斜式戸閉機構の引き戸を採用し、バリアフリー対応として貫通路幅を775mmに拡張している。
運転台の主幹制御器は1000系と同等の横軸2ハンドル式デスクタイプで、計器類は1000系6次車に準じたアナログ式である。
空調装置は冷凍能力23.26kW (20,000kcal/h) のセミ集中式CU-732形を各車2基搭載する。これは2300系と同一で、冷媒には代替フロンを採用している。暖房は片持ち式座席下に吊り下げ式の電気ヒーターと、補助機能として空調装置による急速暖房機能を備える。
このほか、情報案内サービスとして4か国語対応の自動放送装置が全編成に設置されており[5]、一般車両への搭載は8300系に続き2例目(ワンマン対応車を除く)となった。なお、当初は準備工事の状態で、特急「サザン」の12000系および8300系と併結した場合のみ自動放送が流れ、それ以外は車掌の肉声放送で対応していたが、2016年12月頃からインバウンド需要の増加に対応し全面的に使用が開始された。
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車内
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車椅子・ベビーカースペース
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8009Fの間接照明タイプLED照明
機器類
主回路システムはIGBT素子によるVVVFインバータ制御装置、南海標準の日立製作所製でVFI-HR-1420Q形と称する。回生ブレーキおよび全電気ブレーキ機能を有し、両先頭車に各1基搭載される。1基のインバータ装置で4個の電動機を駆動する速度センサレスベクトル制御1C4M方式である。
主電動機は三菱電機製かご形三相誘導電動機MB-5091-A2形で、定格出力は180kWである。
パンタグラフはシングルアーム式の東洋電機製造製PT-7144-B形で、両先頭車の難波方に各1基搭載される。
冷房装置などのサービス機器に電力を供給する補助電源装置はPWM制御2レベルIGBT静止形インバータ(東洋電機製造製 SVH75-4045A形)を採用し、難波方先頭車のモハ8001形と中間付随車サハ8851形に搭載されている。
台車は住友金属工業→新日鐵住金製SS-177M形(電動台車)およびSS-177T形(付随台車)モノリンク式ボルスタレス台車で、ホイールベースは2,100mmである。基礎ブレーキ装置は従来通勤車のシリンダー式から片押し式ユニットブレーキに変更された。また先頭台車には、空転防止のため増粘着剤噴射装置が取り付けられている。
ブレーキシステムは遅れ込め制御を有する回生ブレーキ併用電気指令空気式であり、1000系と共通である。
空気圧縮機は南海で初めてスクロール式を採用し、周辺機器や起動回路を一体箱に納めた省スペース・軽量型としている。これを和歌山市・関西空港方先頭車のモハ8101形と中間付随車のサハ8801形に搭載する。
編成
← 難波 関西空港・和歌山市 →
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形式 | < モハ8001 (Mc1) |
サハ8801 (T1) |
サハ8851 (T2) |
< モハ8101 (Mc2) |
製造年 |
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機器類 | CONT, SIV | CP | SIV | CONT, CP | |
車両番号 | 8001 | 8801 | 8851 | 8101 | 2007年 |
8002 | 8802 | 8852 | 8102 | ||
8003 | 8803 | 8853 | 8103 | 2009年 | |
8004 | 8804 | 8854 | 8104 | ||
8005 | 8805 | 8855 | 8105 | 2010年 | |
8006 | 8806 | 8856 | 8106 | 2012年 | |
8007 | 8807 | 8857 | 8107 | ||
8008 | 8808 | 8858 | 8108 | 2013年 | |
8009 | 8809 | 8859 | 8109 | ||
8010 | 8810 | 8860 | 8110 | 2014年 | |
8011 | 8811 | 8861 | 8111 | ||
8012 | 8812 | 8862 | 8112 | ||
8013 | 8813 | 8863 | 8113 | ||
備考 | 弱冷車 | 女性専用車両 ステッカー |
凡例
- CONT:制御装置(1C4M)
- SIV:静止形インバータ(75kVA)
- CP:空気圧縮機
運用
2008年3月26日から営業運転が開始された[6]。当初は単独で普通車のみに使用されていたが、同年10月頃から1000系2両編成との併結による6両運転を開始し[7]、幅広い種別の列車に充当されるようになった。また2011年9月からは、12000系と連結して特急「サザン」の自由席車両として運用されている。2014年10月のダイヤ改正からは、本系列同士での8両運転も開始された[8]。このため和歌山市方の先頭車は、平日朝ラッシュ時の一部列車で女性専用車両に設定されている。
その後も併結対応を拡大し、現在は8300系の2両編成を併結した6両編成や、9000系VVVF更新車・8300系の4両編成を併結した8両編成でも運用されている。ただし1000系2両編成との併結については、1000系がインバウンド対応工事を受けたのを機に実施されなくなっている[9]。
高野線平坦区間および泉北高速鉄道線での営業運転の実績はないが、検査時の千代田工場への入出場時に高野線を走行することがある。
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特急サザン自由席車両として運用(和歌山市駅)
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空港急行として運転される8005F(二色浜駅)
甲種輸送
(2007年11月3日 「南海電車まつり」にて)
8001F・8002Fは2007年10月に東急車輛製造で8両が落成し、同年10月30日から10月31日にかけて未装飾の状態で、安治川口駅まで甲種輸送が行われた[10]。そして同年11月3日に千代田工場で開催された「南海電車まつり」において未装飾の状態のまま公開された[11]。
その後増備された編成も全て未装飾の状態で落成し、8003F・8004Fは2009年3月2日から3月4日にかけて、横須賀線・根岸線・東海道本線・城東貨物線(おおさか東線)・関西本線・和歌山線・紀勢本線を経由した甲種輸送で和歌山市駅に搬入された[12][13]。和歌山市駅へ搬入されたのは1000系1051F以来8年ぶりであった。
さらに2010年以降の輸送経路は、横須賀線・根岸線・東海道本線・梅田貨物線・大阪環状線・関西本線・和歌山線・紀勢本線経由に変更された[14]。
脚注
注釈
出典
- ^ 現在の車両 - 鉄道博物館 - 南海電気鉄道
- ^ 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、51頁。
- ^ “CSR報告書 2012” (PDF). 南海電気鉄道 (2012年). 2024年6月21日閲覧。30頁に記載。
- ^ a b 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、52頁。
- ^ “インバウンド対応をさらに強化します! ◆タブレット端末を用いた多言語列車放送システム導入” (pdf). 南海電気鉄道 (2018年3月16日). 2024年4月23日閲覧。
- ^ 南海電気鉄道株式会社(編)『南海電鉄 最近の10年 2005-2015』、2015年、115頁。
- ^ 「カラーニュース 南海の話題」『関西の鉄道』2009年陽春号(通巻56号)、関西鉄道研究会、2009年、91頁。
- ^ 「カラーニュース 南海の話題」『関西の鉄道』2015年陽春号(通巻63号)、関西鉄道研究会、2015年、91頁。
- ^ 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、56頁。
- ^ 「甲種鉄道車両輸送計画表」『鉄道ダイヤ情報』2007年11月号(No.273)、交通新聞社、2007年、127頁。
- ^ “南海8000系が公開される”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2007年11月5日)
- ^ “南海8000系が甲種輸送される”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2009年3月3日)
- ^ 「NEWS 南海だより」『関西の鉄道』2009年陽春号(通巻56号)、関西鉄道研究会、2009年、94頁。
- ^ 「甲種鉄道車両輸送計画表」『鉄道ダイヤ情報』2010年11月号(No.319)、交通新聞社、2010年、126頁。
参考文献
- 南海電気鉄道(株)鉄道営業本部車両部車両課 福原栄二「新車ガイド 南海電気鉄道8000系」『鉄道ファン』2008年4月号(通巻564号)p.62 - 66、交友社
関連項目
- 南海8300系電車
- 南海12000系電車 - 本系列と同じ車両規格の特急型電車。
- サザン - 12000系と併結して運用。
外部リンク
- 南海電車まつりで新型車両を披露 (PDF) (南海電気鉄道公式ニュースリリース)
- 新型車両「8000系」へのラッピング広告スポンサーを募集! (PDF) (南海電気鉄道公式ニュースリリース)
公式外
- 南海8000系登場。(ネコ・パブリッシング『鉄道ホビダス』編集長敬白アーカイブ 2008年2月4日・インターネットアーカイブ)
- 南海電気鉄道8000系 - 総合車両製作所(インターネットアーカイブ)