利他主義

他人の福祉の増進を行為の目的とする考え方

利他主義(りたしゅぎ、: altruism)とは、自己の利益よりも、他者の利益を優先する考え方。

愛他主義とも呼ばれる。

利他主義(altruism)という言葉は、利己主義(egoism)の対概念としてフランスの社会学者オーギュスト・コントによって造られた造語である[1]。日本に導入された際に、他人を思いやり、自己の善行による功徳によって他者を救済するという意味を持つ仏教用語「利他」の語が当てられた[1]

利他主義は行動論的には「社会通念に照らして、困っている状況にあると判断される他者を援助する行動で、自分の利益を主な目的としない行動」と定義できる[1]社会科学では、人を利他主義に至らしめる内的要因として、自己満足や自尊心・罪の意識からの解放などが挙げられている。一方、援助者の信じる宗教の思想に則った他者への援助行動は宗教的利他主義と呼ばれ、世界の多くの宗教活動に見られる現象である[1]

利他主義には「自然状態の人間は利己主義的であるが、人間が普遍的利益の重視や利他的な行為をすることができるのは、人間に固有の精神性による。この精神性は、自然科学の方法ではとらえられない」とする考え方と、「自然状態の人間は利他的であるが、人間が普遍的利益の重視や利他的な行為をすることができるのは、人間のもつ自然的本性による。この自然的本性は、自然科学の方法によってとらえることができる」との考え方が存在する。

脚注

編集
  1. ^ a b c d 稲場圭信 櫻井義秀・三木英(編)『よくわかる宗教社会学』 ミネルヴァ書房 <やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ> 2007年、ISBN 978-4-623-04996-7 pp.166-167.

関連項目

編集