冥加訓(みょうがくん)は心学書。日常の道徳をわかりやすく説いたもの。著者は関一楽で本名は関幸甫。関は江戸時代儒学者で、備前岡山藩の儒医であったが、豊後岡藩(大分県竹田市)第4代藩主中川久恒に招聘され、藩の儒学者となった[1][2]

『冥加訓』
著者 関一楽(せきいちらく)(関幸甫)(せきこうすけ)
発行日 1724年(享保9)刊
発行元 輔仁堂(ほじんどう)
ジャンル 心学
JPN日本の旗 日本
言語 日本語
形態 写本および版本
ページ数 5巻5冊
コード ISBN
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関幸甫(せきこうすけ)
人物情報
別名 関一楽(せきいちらく)
生誕 1644年(正保元年)
備前岡山藩(岡山県)
死没 1730年8月13日(享保15)87歳(満88)
豊後岡藩(大分県)
学問
時代 江戸時代前期-中期
活動地域 豊後岡藩(大分県)
研究分野 儒学/朱子学
研究機関 輔仁堂/由学館/修道館
称号 長博,正軒,一楽,真庵,幸輔,仁堂
主要な作品 大道訓、春秋胡伝諺解、冥加訓
影響を受けた人物 岡藩4代藩主中川久恒
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概要

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江戸時代の書籍で、『冥加訓』とは「人間が天から授けられた本性に従って生きる道」といった意味[3]。日常の道徳をわかりやすく説いたもの。

著者

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本名は関幸甫(せきこうすけ)で「関一楽」(せきいちらく)は(ごう)で現代でのペンネームである。江戸時代前期-中期の儒者であり儒医。「冥加訓」は1724年享保9年)関が81歳(満82歳)の時に30年かかり成立した[4][5][6][7][8]

関幸輔について多くは不明であり、「藩政時代の教育」大分県社会課/1925年(T14)[9]、「大分県偉人伝」大分県教育会/1953年(S10)[10]、他に墓誌等が紹介され、その著書に「大道訓」「春秋胡伝諺解」「冥加訓」とされている[11]自宅室号が輔仁堂である。[12]「冥加訓」は国書総目録/岩波書店に関一楽の名で掲載されている[13]

輔仁堂(ほじんどう)

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輔仁堂の「輔仁」とは『論語』の「君子以文会友、以友輔仁」(君子は文を以て友と会し、友を以て仁を輔く、「学問を通じて出会った友人なら、互いに仁をもって助け合えるものだ」)という言葉からのものです[14]

  • 1696年(元禄9) - 関正軒が邸内に藩儒として藩士の教育のため、学問所として私塾「輔仁堂」を開いた[15]
  • 1726年(享保11) - 私塾の「輔仁堂」より藩立の「輔仁堂」に改組[16]
  • 1776年(安永5) -「輔仁堂」を藩校「由学館」に改称[17]

内容

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著者が塾で『論語』『大学』などの中国古典を教える際、『冥加訓』をその手引き書として用いたと考えられる[18]


文章

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『人は万物の霊長であるから牛馬を苦しめ、その背中に乗るような可哀想なことをしてはならない。ましてや駕籠のような人間が人間を苦しめるようなものに乗ってはならない[19]

「朝は日の出とともに小鳥の囀りを聞いて起床し、手水で顔を洗い、髪を結い、身嗜みを整えてそれぞれの家業とする天職に励みなさい。王と身分の高い人から庶民に至るまで分相応の役目があり、上に立つ人ほど役目も重くなります[20]。」

「とかく体を動かし手足を惜しまず使い、与えられた職を全うすることです。働くために天から手足を与えられているのであり、自身は楽をして人を使って働かせ、人を苦しめてはいけません[21]。」

書誌情報

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初版本

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不詳

版本

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  • 『冥加訓』 5巻5冊、輔仁堂、1724年(享保9)。 

現代語訳

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本田耕一(ほんだ・こういち)- 1943年(S18)大阪府生まれ。1964年(S39)竹田市役所入庁。竹田市立歴史資料館水琴館・古文書講座講師などを歴任し1992年(H4)から図書館長。6年退職。著書(共著)に『三宅山御鹿狩絵巻』(京都大学学術出版会)など。[23]

『国書総目録』

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「国書総目録」(国書と略されている場合あり)岩波書店[24] 588頁に「冥加訓」が2件掲載されており、本項は後者を取扱う。

  • 冥加訓 3巻3冊[分類]教訓[著者]貝原益軒[版本]京大・東大・東北大<狩野>[25]
  • 冥加訓 5巻5冊[分類]心学[著者]関一楽[成立]1724年(享保9)刊[写本][版本]宮書(中古巌書69・70)・東大(1冊)・東北大<狩野>(4巻1冊)・山口(高津慎遺書乃蔵書の内、4冊)・飯田(1冊)・島原(版本写1冊)[版本]国会・内閣・東博・九大・教大・早大東北大<狩野>・東洋大<哲学堂>・一橋大・秋田・福島・飯田(欠本、4冊)・刈谷・雲水・仙台伊達家[活字翻刻]日本教育文庫<訓戒篇上>・日本道徳巌書三[26]

と記されている[27]

二次利用のためのクレジット

   『国書総目録』
   岩波書店発行・国文学研究資料館提供
   クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス CC BY-SA
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   "Kokusho Sōmokuroku"
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本書をモチーフにしたタイトルの作品・商品

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脚注

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  1. ^ 商家に伝わる古典『冥加訓(みょうがくん)』の教え ”. chichi.co.jp (2018年12月26日). 2020年9月17日閲覧。藩儒となった著者が、日常の道徳をわかりやすく説いたもの。
  2. ^ 冥加訓 ”. http://codh.rois.ac.jp+(2020年9月17日).+2020年9月17日閲覧。
  3. ^ 商家に伝わる古典『冥加訓(みょうがくん)』の教え ”. chichi.co.jp (2018年12月26日). 2020年9月17日閲覧。
  4. ^ 大分)江戸の教育書「冥加訓」を意訳し出版 人気集める ”. asahi.com (2018年5月17日). 2020年9月17日閲覧。
  5. ^ 100万人導入の大ヒット映画 殿、利息でござる!で話題となった家訓の本『冥加訓』のルーツは、岡藩にあり! ”. okajou.com (2018年8月31日). 2020年9月17日閲覧。
  6. ^ 冥加訓. 巻之1,5 / 関一楽 [撰 ]”. waseda.ac.jp (2020年9月19日). 2020年9月19日閲覧。
  7. ^ 冥加訓. 巻之1,5 / 關一樂/ 享保九年大坂伊丹屋新兵衞等 ”. waseda.ac.jp (2020年9月19日). 2020年9月19日閲覧。
  8. ^ 豊後岡藩の輔仁堂 ”. fc2 (2013年8月18日). 2020年9月17日閲覧。
  9. ^ https://www.oita-library.jp/?page_id=475
  10. ^ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/777500/25
  11. ^ 豊後岡藩の輔仁堂 ”. fc2 (2013年8月18日). 2020年9月17日閲覧。
  12. ^ 豊後岡藩の輔仁堂 ”. fc2 (2013年8月18日). 2020年9月17日閲覧。
  13. ^ 豊後岡藩の輔仁堂 ”. fc2 (2013年8月18日). 2020年9月17日閲覧。
  14. ^ 「輔仁」とは ” (2020年9月22日). 2020年9月22日閲覧。
  15. ^ 竹田高等学校関東同窓会の歩み ~岡藩の藩校由学館(1776年(安永5年)設立、のち修道館)跡地~ ”. kantoutaketa.org (2020年9月20日). 2020年9月20日閲覧。
  16. ^ 竹田高等学校関東同窓会の歩み ~岡藩の藩校由学館(1776年(安永5年)設立、のち修道館)跡地~ ”. kantoutaketa.org (2020年9月20日). 2020年9月20日閲覧。
  17. ^ おおいた木造建築ファイル”. www.arch.oita-u.ac.jp. 2020年10月23日閲覧。
  18. ^ 大分)江戸の教育書「冥加訓」を意訳し出版 人気集める ”. asahi.com (2018年5月17日). 2020年9月17日閲覧。
  19. ^ 100万人導入の大ヒット映画 殿、利息でござる!で話題となった家訓の本『冥加訓』のルーツは、岡藩にあり! ”. okajou.com (2018年8月31日). 2020年9月17日閲覧。
  20. ^ 商家に伝わる古典『冥加訓(みょうがくん)』の教え ”. chichi.co.jp (2018年12月26日). 2020年9月17日閲覧。藩儒となった著者が、日常の道徳をわかりやすく説いたもの。
  21. ^ 商家に伝わる古典『冥加訓(みょうがくん)』の教え ”. chichi.co.jp (2018年12月26日). 2020年9月17日閲覧。藩儒となった著者が、日常の道徳をわかりやすく説いたもの。
  22. ^ 冥加訓を現代語訳「道徳で町おこしを」 竹田商議所【大分県】”. oita-press.co.jp (2020年3月8日). 2020年9月17日閲覧。
  23. ^ 商家に伝わる古典『冥加訓(みょうがくん)』の教え ”. chichi.co.jp (2018年12月26日). 2020年9月17日閲覧。
  24. ^ 『国書総目録』岩波書店発行・国文学研究資料館提供” (2020年9月20日). 2020年9月20日閲覧。
  25. ^ 東北大<狩野>・冥加訓・貝原益軒・大坂文花堂” (2020年9月20日). 2020年9月20日閲覧。
  26. ^ 『国書総目録』岩波書店発行・国文学研究資料館提供” (2020年9月20日). 2020年9月20日閲覧。
  27. ^ 豊後岡藩の輔仁堂 ”. fc2 (2013年8月18日). 2020年9月17日閲覧。
  28. ^ 単行本:無私の日本人 ”. bunshun.jp (2012年10月25日). 2020年9月17日閲覧。
  29. ^ 映画:『殿、利息でござる!』 ”. bunshun.jp (2016-15-14). 2020年9月17日閲覧。

外部リンク

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