保利 透(ほり とおる、1972年 - )は、日本の音楽蒐集家音楽製作者である[1][2][3][4][5][6]。専門は明治大正を含めた戦前流行歌を中心としたレコード文化であり、自らのSPレコードコレクションの音源を中心とした復刻盤英語版の製作・監修も行っており、実態に即した肩書きとして自身の造語である「アーカイブ・プロデューサー」「戦前レコード文化研究家」を自称している[1][3][4][5]。主宰するレーベルぐらもくらぶ[1][3][4][5]

保利 透
生誕 1972年
出身地 日本の旗 日本 千葉県
ジャンル SPレコード流行歌
職業 アーカイブ・プロデューサー、戦前レコード文化研究家(音楽史家音楽蒐集家復刻盤製作者
活動期間 2003年 -
レーベル ぐらもくらぶ
共同作業者 岡田則夫佐藤利明毛利眞人辻田真佐憲
公式サイト wakwak.com/~polydor78

人物・来歴

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1972年(昭和47年)、千葉県に生まれる[1][3][4]

高等学校在学中の1980年代末、SPレコードのコレクションならびに研究活動を開始する[2][1][7]。幼少時にテレビ放映されたチャールズ・チャップリン榎本健一の映画を観たり、中学校在学中にブラスバンドに所属したことが下地となり、テレビのドキュメンタリー映像で古い蓄音機を観て衝撃を受けたことが、SPレコードに興味を持ったきっかけである旨、『レコード・コレクターズ』誌上で大鷹俊一に対し語っている[1]。最初に購入したSPレコードは、『東京音頭』と、『チャップリンの独裁者』の床屋のシーンで流れるボストン・ポップス・オーケストラハンガリー舞曲』であった[1]。20歳を迎える1992年(平成4年)前後には100-200枚の蒐集となったが、しばらく空白があって、1999年(平成11年)前後にまた蒐集を開始したという[1]。このときに蒐集をポリドール・レコードに絞ったことから、現在の筆名を得る[2][1]。2001年(平成13年)、SPレコードとポリドールの研究サイト「ポリドール狂時代」を開設、これが現在に至る保利の公式ウェブサイトとなる[5]

2003年(平成15年)10月8日にユニバーサルミュージックが発売した榎本健一のSPレコード音源等を使用したコンピレーション・アルバム『唄うエノケン大全集 蘇る戦前録音編』に関わったのが、記録に残る最初の復刻作品である[4]。同年は「エノケン生誕100年」に当たり、東京都江戸東京博物館で開かれた特集展示『エノケンとレビューの時代』の関連事業『エノケン映画の上映とトーク・セッション』において、同年11月2日に毛利眞人とともにトーク・セッションに出演した[8]。2009年(平成21年)11月1日に放送された浜美枝ラジオ番組『浜美枝のいつかあなたと』(文化放送)にゲスト出演した[4][7]。2010年(平成22年)には私設サークルとして「ぐらもくらぶ」を設立、当初は瀬川昌久岡田則夫佐藤利明、毛利眞人、小針侑起をサポートメンバーとした[9]

2011年(平成25年)11月23日にビクターエンタテインメント(現在のJVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)が発売した藤山一郎のコンピレーション・アルバム『ジャズを歌う』を第1作として「ニッポンモダンタイムスシリーズ」を開始、テイチクエンタテインメントではディック・ミネEmpire of Jazz』(同年11月23日発売)ほか、キングレコードでは松島詩子La Tanguista』(同年12月21日発売)ほか、日本コロムビアでは二村定一天野喜久代ほか『SWING TIME 1928-1941』(2012年1月18日発売)ほか、ユニバーサルミュージックでは藤山一郎ほか『スウィング・パラダイス』(2014年1月22日発売)といった、各社レーベルを超えて、企画、選曲、音源監修等を行なった[2][1][4]。「ニッポンモダンタイムスシリーズ」の企画に際し、保利は讀賣新聞『顔』欄に取り上げられ、「戦前にもオシャレな音楽があった」「(ジャズは)今のクラブミュージックに近い都市部の娯楽だった」と語った[2]

「ぐらもくらぶ」はやがて保利の自主レーベルへと活動を進め、2012年(平成24年)3月11日に発売した二村定一のコンピレーション・アルバム『二村定一 街のSOS!』を発売し、レーベルとして本格起動した[1][4]。同レーベル作品の販売はメタカンパニーの協力による[6]。同年3月31日に放送された山田五郎中川翔子のラジオ番組『東京REMIX族』(J-WAVE)に「SPレコードの極み」としてゲスト出演、ディック・ミネ『お洒落禁物』、二村定一『禿オンパレード』、ミミー宮島お祖父さんの時計』の3曲を選曲した[4][10]。2013年(平成25年)4月27日に放送された『日立 世界・ふしぎ発見!』第1271回では、保利の所有する忠犬ハチ公の鳴き声が収録されたSPレコードについて出題され、保利も出演した[11]。同年5月3日には、旧安田楠雄邸で開かれた『旧安田邸の蓄音機で聴く、満洲とその時代』での辻田真佐憲の出演に対し、二村定一『満洲前衛の唄』等のSPレコードの提供協力を行った[12]。また、同年8月23日には、讀賣新聞に「あきれたぼういず幻のレコード 1938年の音源 変名で録音」という報道発表がされたが、このときの楽曲が、同年7月29日にぐらもくらぶが発売したアルバム『大名古屋ジャズ』に収録された『花に浮かれて』等の4篇である[13]

2014年(平成26年)には、同年3月31日に放送開始した連続テレビ小説花子とアン』(NHK総合テレビジョン)の主人公のモデル村岡花子がかつて録音、レコードリリースされた朗読の音源を使用したCD『花子からおはなしのおくりもの』を企画、同年4月16日にユニバーサルミュージックから発売した[4][14][15][16]。同作は「予想以上の反響で一時品薄」と日経トレンディが報道するほどのヒットとなった[15]。収録された村岡の朗読する『フランダースの犬』や『小公子物語』等のレコードは、約10年前から保利が蒐集したものであった[17]。同年8月9日には金沢蓄音器館で村岡花子朗読音源についての講演を行った[18]。同年8月30日には弥生美術館で開催していた『村岡花子と「赤毛のアン」の世界展』の一環として、保利の所有する蓄音機と音源を使用し、朗読を聴かせるイヴェントを行った[19]。また、同年5月6日には、東京都江戸東京博物館で、ぐらもくらぶが同年4月27日にアルバム『大東京ジャズ』、同『六区風景 想ひ出の浅草』を発売したことを記念して、『蓄音機で聴く戦前日本のジャズ世界』『浅草六区と浅草オペラ・戦前の大衆芸能』『若きジャズマンらによる戦前モダンミュージック座談会』の三本立イヴェント『大東京モダンミュージックの世界』を同レーベル主催で行い、保利自身のほか、大谷能生、毛利眞人、岡田則夫、小針侑起、片岡一郎らが出演した[20][21]

「終戦70周年」を迎える2015年(平成27年)には、「戦争と喜劇人」をテーマにした『芸能宝船・歌は戦線へ 戦争と喜劇人』を企画・復刻・制作、同年1月4日に自らのレーベルぐらもくらぶから発売した[4]

ディスコグラフィ

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企画・監修・マスタリング協力、制作に関わった盤の一覧である[4][6]

復刻版

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新作版

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ビブリオグラフィ

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ぐらもくらぶ

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ぐらもくらぶは、日本のレコードレーベルである。アーカイブ・プロデューサー、戦前レコード文化研究家の保利透が主宰する。2010年(平成22年)に私設サークルとして設立、2012年(平成24年)3月11日に発売した二村定一コンピレーション・アルバム『二村定一 街のSOS!』を発売し、レーベルとして本格始動。販売はメタカンパニーの協力による[6]。2015年(平成27年)1月までに合計14作のCDを制作・発売している[4]。レコードの制作・発売のほか、「ぐらもくらぶイベント」あるいは「プチぐら★」のイヴェント、書籍の「ぐらもくらぶシリーズ」の活動も行う[4]。レーベル名は、1934年(昭和9年)末に「大阪を中心とする音楽批評家・新聞記者・有力レコード店等を以って組織され、流行歌の進歩に寄与する団体」の名「ぐらも・くらぶ」に由来する[24]

同レーベルのディスコグラフィは上記 #ディスコグラフィ を参照。

ぐらもくらぶイベント

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  1. 『SP盤でたどる戦前ナンセンスソングの系譜 「二村定一」から「あきれたぼういず」まで』、瀬川昌久佐藤利明・保利透、アディロンダックカフェ、2010年7月24日
  2. 『「ニッポン・スウィングタイム」瀬川昌久×毛利眞人・対談と音源であゆむ戦前ジャズ史』、瀬川昌久・毛利眞人・保利透、CREEPS青山、2010年11月26日
  3. 『決戦下のジャズソング』、瀬川昌久・毛利眞人・保利透、らくごカフェ、2011年2月12日
  4. 『ひばりの誕生』、佐藤利明・小針侑起・保利透、らくごカフェ、2011年5月14日
  5. 『SPレコードで戦前の和製アレンジを聴くぜい!』、大谷能生・毛利眞人・保利透、荻窪ベルベットサン、2011年9月10日
  6. 『大正100年記念 SP盤で甦る伝説の浅草オペラ』、小針侑起・淺井カヨ・保利透、らくごカフェ、2011年9月10日
  7. 『秋の特別篇 「ニッポンモダンタイムス」CDシリーズ制作中 瀬川昌久先生、公開インタビュー! 柳樂光隆&保利透による3世代交流トークショー』、瀬川昌久・柳樂光隆・保利透、荻窪ベルベットサン、2011年10月24日
  8. 『ライブ版 蒐集奇談 岡田則夫・わがSP盤蒐集人生』、岡田則夫・保利透、らくごカフェ、2011年12月10日
  9. 『二村定一・評伝&CD発売記念 昭和初期のジャズソング』、毛利眞人・保利透、らくごカフェ、2012年3月10日
  10. 『「世界軍歌全集」発売1周年&「大名古屋軍歌」CD発売記念 SP盤で聴く世界のミリタリズム』、辻田真佐憲・保利透、らくごカフェ、2012年12月8日
  11. 『「ある交錯期 無声映画と発声映画 転換点を顧る」片岡一郎氏帰朝記念』、片岡一郎・保利透、らくごカフェ、2013年4月14日
  12. 『大東京モダンミュージックの世界』、大谷能生・毛利眞人・岡田則夫・小針侑起・片岡一郎・保利透ら、東京都江戸東京博物館、2014年5月6日
  13. 『辻田真佐憲&保利透「愛国とレコード 幻の大名古屋軍歌とアサヒ蓄音器商会」刊行記念トーク「軍歌は愛国ビジネスだった!」』、辻田真佐憲・保利透、明石スタジオ、2014年11月2日

プチぐら★

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  1. 『vol.0 ビール呑み競争の巻』、保利透、荻窪ベルベットサン、2011年8月31日
  2. 『映画「鴛鴦歌合戦」サウンド解体新書の巻』、木村立哉・下村健・保利透、荻窪ベルベットサン、2011年12月13日
  3. 『シリーズCD・出版記念!「SP盤でたどる二村定一とその時代」の巻』、毛利眞人・保利透、荻窪ベルベットサン、2012年1月20日
  4. 『春の特別篇 ライツ・マイク入手記念!「叫ぶレコードコレクターの会」の巻』、毛利眞人・保利透、荻窪ベルベットサン、2012年4月31日[要検証]
  5. 『「アーティスト」アカデミー賞受賞記念 無声映画・活動写真弁士の巻』、片岡一郎・木村立哉・保利透、荻窪ベルベットサン、2012年5月24日
  6. 『蓄音機でSPレコードを聴くぜい!の巻』、毛利眞人・保利透、荻窪ベルベットサン、2012年6月3日
  7. 『「平成蒐集奇談」コレクションとせどりの巻』、岡田則夫・ノイズ中村・保利透、荻窪ベルベットサン、2012年6月8日
  8. 『片岡一郎氏渡米前興行・無声映画を観るぜい!の巻』、片岡一郎・保利透、荻窪ベルベットサン、2012年8月12日
  9. 『「SPレコード蒐集奇談」発売記念 平成廿五年武装の春・SP盤十番勝負の巻』、岡田則夫・保利透、荻窪ベルベットサン、2013年1月22日
  10. 『戦時下のトンデモ音楽を聴くぜいの巻』、大谷能生・毛利眞人・辻田真佐憲・保利透、荻窪ベルベットサン、2013年4月24日
  11. 『声優になってみました。イギリスから来たけれどの巻』、片岡一郎・Reina・保利透、荻窪ベルベットサン、2013年4月24日
  12. 『プチぐら★・ベルベットサン共同企画!納涼!蓄音お座敷7時間!毛利が聴かせる!大谷が呑ませる!保利は寝る!』、毛利眞人・大谷能生・保利透、荻窪ベルベットサン、2013年8月10日
  13. 『ぐらもくらぶ読書会「SPレコード蒐集奇談」の巻』、岡田則夫・保利透、荻窪ベルベットサン、2014年1月24日
  14. 『戦争と音楽評論 軍歌を聴いて現代を知ろう』、栗原裕一郎・大谷能生・辻田真佐憲・保利透、荻窪ベルベットサン、2014年11月7日

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k レココレ[2012], p.156-161.
  2. ^ a b c d e 「顔 保利透さん 39」、讀賣新聞、2012年1月31日付、p.2.
  3. ^ a b c d 辻田[2014], 奥付。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 保利透はてな、2015年1月28日閲覧。
  5. ^ a b c d ポリドール狂時代、保利透、WAKWAK, 2015年1月28日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h 国立国会図書館サーチ検索結果、国立国会図書館、2015年1月28日閲覧。
  7. ^ a b 2009年11月1日 保利透さん浜美枝のいつかあなたと文化放送、2009年11月1日付、2015年1月28日閲覧。
  8. ^ エノケン生誕100年記念 特集展示「エノケンとレビューの時代」開催要項三木鶏郎資料館、2015年1月28日閲覧。
  9. ^ ひばりの誕生佐藤利明、2011年5月11日付、2015年1月28日閲覧。
  10. ^ SPレコードの極み東京REMIX族J-WAVE、2012年3月31日付、2015年1月28日閲覧。
  11. ^ 2013年4月27日放送 世界・ふしぎ発見!、TVでた蔵、ワイヤーアクション、2015年1月28日閲覧。
  12. ^ 旧安田邸の蓄音機で聴く、満洲とその時代、古書ほうろう、谷根千ねっと、2013年4月1日付、2015年1月28日閲覧。
  13. ^ あきれたぼういず幻のレコード 1938年の音源 変名で録音」、讀賣新聞、2012年8月23日付。
  14. ^ NHK連続テレビ小説「花子とアン」公認!モデルとなった村岡花子の朗読CD発売!ユニバーサルミュージック、2014年4月16日付、2015年1月28日閲覧。
  15. ^ a b 村岡花子が『フランダースの犬』などを朗読するCDが品薄日経トレンディ、2014年6月9日付、2015年1月28日閲覧。
  16. ^ 「花子さん、どんな仕事していたの?」、毎日小学生新聞、2014年8月27日付、p.3.
  17. ^ 「『赤毛のアン』村岡花子の肉声」、讀賣新聞、2014年4月13日付。
  18. ^ 2014年8月のイベント金沢蓄音器館、2015年1月28日閲覧。
  19. ^ 「『花子とアン』深く知る資料展」、讀賣新聞、2014年7月21日付、p.11.
  20. ^ 「大東京モダンミュージックの世界」、讀賣新聞、2014年4月25日付夕刊、p.9.
  21. ^ ゴールデンウィーク最終日はこちらのイベントへ!『大東京モダンミュージックの世界』江戸東京博物館ホール、保利透、2014年4月30日付、2015年1月28日閲覧。
  22. ^ SP盤貴重音源 岡田コレクション」学術研究用デジタル音源集日外アソシエーツ、2010年5月付、2015年1月28日閲覧。
  23. ^ 軍歌と日本人CiNii, 2015年1月28日閲覧。
  24. ^ 「ぐらもくらぶ/プチぐら★」とは、保利透、2010年7月25日付、2015年1月28日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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