鳥島 (八丈支庁)

日本の東京都にある、伊豆諸島に属する無人島
伊豆鳥島から転送)

鳥島(とりしま)は、伊豆諸島無人島)。全島が国の天然記念物天然保護区域)に指定されている(後述を参照)。特別天然記念物アホウドリの生息地としても有名である。他の「鳥島」と区別して、特に伊豆鳥島とも呼ばれる[1]

鳥島(伊豆鳥島)
2007年
所在地 日本の旗 日本東京都
所在海域 太平洋フィリピン海
座標 北緯30度29分02秒 東経140度18分11秒 / 北緯30.48389度 東経140.30306度 / 30.48389; 140.30306座標: 北緯30度29分02秒 東経140度18分11秒 / 北緯30.48389度 東経140.30306度 / 30.48389; 140.30306
面積 4.79 km²
海岸線長 6.5 km
最高標高 394 m
鳥島 (八丈支庁)の位置(日本内)
鳥島 (八丈支庁)
     
プロジェクト 地形
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位置
鳥島の空中写真。
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。2001年10月31日撮影の2枚を合成作成。
鳥島南岸の燕崎沖から。中央部よりやや右下の位置に、黄土色をしたアホウドリのコロニーが見える(2007年)
鳥島気象観測所跡(2007年)

2020年10月1日時点で東京都に属し、都の出先機関である東京都八丈支庁の所管であるが、所属市町村が未定であり[2]本籍を置くことはできない。

地理

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東京の南[3]都庁から582km[4]須美寿島の南南東約110km、孀婦岩の北約76kmに位置する。ほぼ円形に近い二重式成層火山島であり、日本の気象庁においては火山活動度ランクAの活火山に指定されている。島の北方には、鳥島カルデラとよばれる海底火山が存在し、鳥島はその海底カルデラの南縁に位置している。

最高点は硫黄山(394m)。現在は無人島であるが、明治時代から戦前にかけては人が住んでいた時期もあった[5]。現在でも島の西側には、1965年の火山活動による群発地震で閉鎖された気象庁鳥島気象観測所の建物跡が残っており、山階鳥類研究所が島に滞在する調査員の宿泊所として、地震計記録室だった建物を利用している[6][7]

行政

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鳥島は、東京府1897年8月に小笠原島の付属と定め、1901年4月に八丈島の付属と定めた。1980年代八丈町が先住権・登記簿を口実に島の同町への編入を東京都に申し立てると、青ヶ島村も島からの距離の近さを訴えこれに反発した[5]。当時の自治省(現・総務省)に裁定が委ねられるも決着が付かず、2020年時点で所属町村は未定の状態である。このため、鳥島には本籍を置くことができない[8]。現在は東京都が直轄し、都の出先機関である東京都八丈支庁が管理している[9]

自然

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鳥島は噴火の影響により植生遷移の初期段階にあり、植物相は貧弱で、内陸では北西部の斜面にイソギクラセイタソウなどの草本類が、海岸にはハマゴウガクアジサイが生育するだけである。一部人間が持ち込んだクロマツ[10]リュウゼツラン、アズマザサが自生している。

鳥島はアホウドリ特別天然記念物)などの海鳥の繁殖地として有名で、かつては鳥が一斉に飛び立つと島全体が浮き上がるように見えたと比喩されるほど多くの海鳥がいた。そのため、1930年(昭和5年)の山階鳥類研究所の創設者山階芳麿の調査を初めとして、さまざまな学術調査が行われてきた。しかし、アホウドリは羽毛採取・食肉の目的で、八丈島出身の実業家玉置半右衛門の手によって1887年(明治20年)から捕獲が始まり、捕獲が禁止される1933年(昭和8年)まで推定約1,000万羽が乱獲され、禁止された当時は50羽ほどしか生息していなかった[10]

1949年(昭和24年)のアメリカ人研究者オースチンの調査では絶滅の可能性も指摘されたが、1952年(昭和27年)に気象庁鳥島気象観測所所長の山本正司が再発見した。以後観測所職員らにより保護プロジェクトが行われ、1965年(昭和40年)の群発地震による観測所の閉鎖まで続いた[11]

1981年(昭和56年)より環境庁(現環境省)によるアホウドリの生息状況調査および繁殖地の維持・保全事業がおこなわれており、現在でも年数回の上陸調査が実施されている。1994年(平成6年)の調査で約159つがいが確認されている[10]

またオーストンウミツバメも数万から十数万羽規模で繁殖していたが、人間とともに移入されたネコ(現在は死滅)とクマネズミによる捕食で激減し、特に1965年に無人島化してからは、残ったクマネズミがコロニーを消滅させてしまった。現在も多数生息するクマネズミを排除することは、鳥島の自然回復のポイントとなっている。

その他にはカンムリウミスズメクロアシアホウドリなどの海鳥、猛禽類のチョウゲンボウイソヒヨドリウグイスなどの鳥類が確認されているが、両生類爬虫類は確認されていない[10]

沿岸にはザトウクジライルカなどの海洋生物が回遊する[12]

これらの生物相の特徴に加え、比較的最近の火山現象が観察できることから植物・動物・地質鉱物の全ての点において貴重であると判断されたため、1965年(昭和40年)5月10日に国の天然記念物[13]の「天然保護区域」として地域指定された。また、希少な海鳥類の生息地として保護する目的で、1954年(昭和29年)11月1日に国指定鳥島鳥獣保護区[14](希少鳥獣生息地)に指定されている(面積453ha)。

歴史

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1902年の噴火
火山鳥島
年月日1902年8月
場所  日本 東京府
影響死者125人[15]
プロジェクト:地球科学プロジェクト:災害

鳥島は第四紀に活発な活動をしている活火山であり、記録に残っているものだけでも1871年1902年1939年1998年2002年噴火が確認されている。1902年8月7日から9日の大噴火では、島民125人が死亡した[15]

江戸時代には多くの船が鳥島に漂着している。吉村昭によると、この島に漂着し脱出できた者の記録は15例以上ある。たとえば土佐国の船乗り長平(野村長平)はアホウドリで食いつないで12年間生活し、後から漂着した者達と一緒に船を造って青ヶ島に脱出した。また、ジョン万次郎ら5人が漂着したのも鳥島であるが、彼らは約5ヶ月でアメリカの捕鯨船に救助されている[16]。後の文久3年に万次郎らが「一番丸」で父島から捕鯨に出漁した際、鳥島に上陸して領有を示す高札を建てた[17]

1887年玉置半右衛門が「鳥島拝借並ニ定期船御寄島願」を東京府に提出[18]。島の位置未確定のため借地許可は下りなかったが、船の寄港は認められた[18]。同年、玉置は南洋探検に向かう「明治丸」に乗り、鳥島に上陸[18]。島でのアホウドリ捕獲を開始した[19]。1888年、玉置は「鳥島拝借御願書」を東京府に提出[20]。同年、無償での10年間の借地が許可された[21]。その後の15年間で600万羽のアホウドリが捕獲された[21]。1898年には借地は10年間延長され、1902年には島の土地3万9325坪が196円63銭で玉置に払い下げられた[22]

1902年8月、鳥島が噴火し、島にいた出稼ぎ労働者125人全員が死亡した[23]。この噴火の後もアホウドリ捕獲は続けられたが、大正になると無人島に戻った[24]

その後、東京府が鳥島開発を試みたものの、1939年の噴火で再び無人島となった[24]

交通

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定期便はなく、交通手段は八丈島から船のチャーターもしくは、ヘリコプターのみである。島全域が天然記念物に指定されているため、東京都より許可を得た者のみが上陸できる。

1902年の噴火で、島北部に兵庫湾と呼ばれるマールができ、大正から昭和初期にかけて港湾として使用されていたが、1939年の噴火で埋まってしまった。島の西岸の初寝崎には、かつて気象庁が整備したA港とB港があるが、波の浸食により、僅かに一部が残るのみであり、接岸はゴムボートのみ可能である。島の周囲は暗礁が多く、近づきすぎて座礁する船も少なくない[25][26]

鳥島は小笠原やグアム方面へ向かう航路上に位置し、アホウドリを観察するためにクルーズ客船がすぐ沖合いを周遊する。

鳥島を扱った作品

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小説

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漫画

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映画

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ノンフィクション

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  • 森銑三「鳥島に漂著した人々」『傳記文學初雁』 講談社学術文庫863 1989年 ISBN 978-4061588639
  • 池内博之の漂流アドベンチャー 黒潮に乗って奇跡の島へ - NHKのドキュメンタリー
  • 金曜日のスマたちへ(2010年8月6日放送) - アホウドリ保護増殖事業の一環として上陸[27]
  • 長谷川博 オキノタユウの島で 無人島滞在“アホウドリ”調査日誌 偕成社 2015年5月19日 ISBN 978-4030034105
  • NHKスペシャル 小笠原の海にはばたけ~アホウドリ移住計画~
  • 髙橋大輔 漂流の島:江戸時代の鳥島漂流民たちを追う 草思社 2016年5月19日 ISBN 978-4794222022
  • 小林 郁  新編 鳥島漂着物語 18世紀庶民の無人島体験 2018年8月4日 ISBN 978-4635820776
  • ダークサイドミステリー「謎の無人島 鳥島サバイバル〜人の生命を試す島〜」 (NHK BSプレミアム、2022年6月2日放送)[28]
  • 世界の何だコレ!?ミステリー2時間SP〜約240年前の日本で起きた・・・遭難船がたどり着く恐怖の島!?(フジテレビ、2022年11月2日放送)

脚注

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  1. ^ "9.国内外の主な火山現象による津波観測記録一覧表、10.個別火山の津波発生要因に関する調査結果の詳細" (PDF). 原子力規制委員会. 2022年1月10日閲覧
  2. ^ "令和2年 全国都道府県市区町村別面積調(10月1日時点)" (PDF). 国土地理院. 2023年10月5日閲覧
  3. ^ 「伊豆諸島・鳥島で噴煙 「アホウドリの島」」 『読売新聞』2002年8月12日付け夕刊1面
  4. ^ 「江戸時代 無人島に19年間 新居宿の船乗り遭難→鳥島漂着」 『朝日新聞』静岡版2012年5月22日付け朝刊30面
  5. ^ a b “週刊首都圏 -飛び地、線上のドラマ-”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2010年5月28日) 
  6. ^ アホウドリ 復活への展望 ー鳥島ウォーカー - 山階鳥類研究所
  7. ^ 髙橋大輔『漂流の島』 草思社、2016年、149頁。
  8. ^ 浦野起央『日本の国境: 分析・資料・文献』 三和書籍、2013年、118頁。
  9. ^ 八丈支庁の所管する区域 - 東京都八丈支庁
  10. ^ a b c d 長谷川博「鳥島」『日本の天然記念物』『日本の天然記念物』加藤陸奥雄沼田眞渡部景隆畑正憲監修、講談社、1995年3月20日、66頁、ISBN 4-06-180589-4
  11. ^ 諏訪 彰 (1980). “1965~79年の本邦火山活動と観測・研究の発展”. 地学雑誌 89 (4): 247-255. doi:10.5026/jgeography.89.4_247. https://doi.org/10.5026/jgeography.89.4_247 2017年11月1日閲覧。. 
  12. ^ アホウドリ 復活への展望 - 鳥島ウォーカー
  13. ^ 同日、文化財保護委員会告示第21号「天然記念物鳥島を指定する件」
  14. ^ 同年10月29日農林省告示第719号「鳥島鳥獣保護区を設定した件」
  15. ^ a b 伊豆鳥島 有史以降の火山活動 - 気象庁
  16. ^ 髙橋大輔『漂流の島』 草思社、2016年、32頁および39頁。
  17. ^ 田中弘之『幕末の小笠原 欧米の捕鯨船で栄えた緑の島』中央公論社、1997年、ISBN 4-12-101388-3、199ページ
  18. ^ a b c アホウドリと「帝国」日本の拡大、22ページ
  19. ^ アホウドリと「帝国」日本の拡大、23-26ページ
  20. ^ アホウドリと「帝国」日本の拡大、23ページ
  21. ^ a b アホウドリと「帝国」日本の拡大、27ページ
  22. ^ アホウドリと「帝国」日本の拡大、80-81ページ
  23. ^ アホウドリと「帝国」日本の拡大、82ページ
  24. ^ a b アホウドリと「帝国」日本の拡大、84ページ
  25. ^ 「無人島・鳥島に遭難漁船長、野鳥観察船が救助」「読売新聞」 2004年5月13日
  26. ^ 「友丸 鳥島で座礁 海保のヘリで救助 過酷なフィールドで保護活動支える」「南海タイムス」 2007年5月25日
  27. ^ 山階鳥研NEWS 2010年11月号
  28. ^ 謎の無人島 鳥島サバイバル〜人の生命を試す島〜”. NHK. 2022年6月11日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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