伊藤謙
伊藤 謙(いとう けん、1984年 - )は、日本の実業家、あいホーム代表取締役。住宅産業のIT・インターネット活用など、顧客管理の水準を上げるDX化を推進。DX化に関する著書は台湾でも翻訳・刊行されたほか、スマートフォン向けのウェブデザインに注力。国内初の事例となる1社単独でのバーチャル展示場を開設するなどした[2][3][4][5]。
いとう けん 伊藤 謙 | |
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生誕 |
1984年 宮城県 |
国籍 | 日本 |
民族 | 日本人 |
出身校 | 明治大学商学部 |
職業 | 実業家 |
活動期間 | 2020年 - |
著名な実績 | 住宅産業のIT・インターネット活用などDX化を推進。単独では国内初のバーチャル展示場を開設[1]。 |
活動拠点 | 宮城県 |
肩書き | あいホーム代表取締役 |
公式サイト |
公式ブログ 伊藤 謙 (@kenitoihome) - Instagram 伊藤 謙 (イトケン) (kenitoihome) - Facebook 伊藤 謙|経営と出版で地方創生 - note |
補足 | |
1級FP技能士、宅地建物取引士、インテリアコーディネーター、古民家鑑定士 |
人物・経歴
編集1984年、宮城県加美町に生まれる。実家は建築資材を販売する会社を経営。少年期に柔道に親しみ、高校時代には桐蔭学園でラグビー部に所属。明治大学商学部に進学。明治大学進学後もラグビーを継続するも、経営学に集中。この際にピーター・ドラッカーの「顧客を創造する」との思想に出会い衝撃を受け傾倒。同時にゼミにも夢中になる[3][5]。
大学卒業後は、家業を継ぐため、修業のため山形県の住宅会社で営業職で研鑽を積んだのち、経営を学ぶ目的で徳島県の工務店へ弟子入り。この期間に東日本大震災が発生。宮城県の家族・友人に電話もE-mailもつながらない状況を経験。通信手段がほぼ遮断された中で、唯一MIXIだけが宮城の状況を知る唯一の手段となった。この際、インターネットの重要性を思い知り、後のDXのイメージができたのかもしれないと回想している。インフラが遮断され、運営が難しい状況であった震災後の2011年4月にあいホームに入社し、専務取締役に就任[3]。年商50億円、自己資本比率51%、2022年度宮城県ビルダー着工棟数ランキング5位(宮城県内に本拠を置く企業では第2位)、県北部の大崎、栗原、登米圏内では第1位の優良企業に育て上げる[6]。
DX化推進
編集2011年は前年比で倍以上の売上げがあったものの、人材確保が困難を極め、現存のリソースでの効率化で対処。この際、管理体制の改善に着手、手書きであったスケジュール管理をMicrosoft Excelにすることから始める。東日本大震災をきっかけとして、標準仕様の策定や施工マニュアルの標準化など現場の効率化など約2年間での平準化により、その後、年間200棟以上を安定的に建築する施工体制を構築する[3][7]。
伊藤は、長井克之の「日本の住宅産業は顧客管理が極めて悪い」とする考えを、ドラッカーの「顧客創造」を工務店に置き換えることで、住宅産業の顧客管理の水準を上げることを模索。顧客の口コミを重視しながらも、データ管理が重要との考えに基づき、Salesforceと自社システムを組み合わせて独自の顧客管理システムを構築。顧客を一つのIDで管理していくシステムに切り替えるとともに、契約内容や図面データなども紐付けし、将来的なデータ管理とペーパーレス化を実現した。その後の、スマートフォンの普及により、ZOOMやLINE WORKSのアンケート機能を駆使するなど、非対面のデジタルツールを活用したコミュニケーションを推進。伊藤はDX化が、地方企業の人口減少や少子高齢化の重要な解決策だと考えている。あいホームはテレビCMや総合住宅展示場の出展などを行わずに、宮城県内で約3,000棟の建築実績を持つほか[1][8][9]、2019年度には、宮城県北部エリアで大手ハウスメーカーを抜き、着工数1位を実現[3][10][11][12]。
ところが、DX化推進の裏で弊害も生じる。社内コミュニケーション不足に陥り、若手社員が次々にやめるなど種々の問題に直面する。そこで伊藤は自ら掃除をしたり、オンライン会議を減らし各店舗を回る”社長巡行”でコミュニケーション機会を増やす努力を重ねる。あるとき、皆でカレーを調理する機会を持ったが、この際には皆がマスクを外しお互いの顔が見え会話が弾んだ。これが好評となり、現在も続き、社員がバンド演奏もするようになった。途端に業績が上向いたという。伊藤は社員全員と紙に手書きでの文通を試みるなどアナログ的手法にもこだわった。現在ではこうした経験を同じ境遇の若手経営者と共有しているという[13]。
また、学生へのヒアリングの結果、InstagramやYouTubeライブ配信を活用した新卒採用を行うなど、新しい試みも開始[12]。合同企業説明会にかかるコストや労力削減を実現。SNSを活用する学生は、自ら積極的に情報を探してアプローチする学生が多く、有能な学生の採用に成功した[14]。
SDGs
編集SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みにも熱心で、廃棄される建築端材を再利用し、ベンチなどの家具を製造[15]。また、全事業所の使用電力を再生可能エネルギーに切り替えたり、利用が減少する秋保石の活用に取り組む[6]。
略歴
編集- 2020年5月、あいホーム社長に就任[5]。
- 2021年2月、スマートフォンからでもモデルハウスを内覧できる「あいホーム バーチャル展示場」を開設。1社単独でのバーチャル展示場は国内初の事例で、注目を集めた。一般に展示場の訪問者は月に100名程度といわれる中、このバーチャル展示場には、1日に100名が訪問する[10][9]。2022年現在公開するのは19棟のモデルハウスで、スマホの操作だけで居室すべてが360度見学できる。この展示場は、1社単独でバーチャル展示場を開発した国内初の事例で、その棟数も国内最大規模であった[1]。
書籍
編集- 『地域No.1工務店の圧倒的に実践する経営』~DXで生産性最大化、少数精鋭で高収益!~(日本実業出版社)ISBN 9784534058454 [21]
- 『室內設計公司數位經營革命』(麥浩斯[16])ISBN 9789864087594
- 『圧倒的に実践するブランディング: 熱狂編』(2022年9月22日)[22]
- 『どんな逆境もチャンスに変える! 環境激変でも“連続”最高益! 地域No.1工務店の「劇的に進化する」経営』(日本実業出版社、2024年3月15日) ISBN 9784534060877
- 『あたらしい工務店の教科書』P78-79(2024年6月30日、新建新聞社)ISBN 4865271422
メディア
編集テレビ
編集- ミヤギnews every. - コロナ禍でのオンラインを利用した家づくりについて(2021年3月18日)[23]
講演会・セミナー
編集- 2023年3月17日、住宅産業塾(日菱企画)の「工務店DXの真実」をテーマとした講演会に登壇。デジタル化を貫いた結果として企業文化、ブランディングでの人材育成の重要性などを語った[24]。
- 2023年3月28日、新建ハウジング主催のオンラインセミナー「イエトーク 住宅DX編」に「DXで解消できる工務店の課題」のテーマで登壇。DX経営に舵を切り、試行錯誤を繰り返しながら生産性の向上、高収益化を実現した事例を紹介した[25]。
- 2023年6月23日、「FDUA地銀信金WG×ちいきん会 コラボMeetup」(一般社団法人ちいきん会・一般社団法人金融活用データ推進協会主催)に登壇。新型コロナ禍3年をDXで乗り切った事例、DX推進における課題、未来のデータを活用する試み、今後の成長戦略などについて講演[26]。
- 2024年1月24-26、第147回「全国経営者セミナー」(日本経営合理化協会)に登壇。テーマは「地場の建設・不動産が仕掛ける《中小企業のブランディング戦略》[27]。
脚注
編集出典
編集- ^ a b c 『仙台経済界』2022年3月-4月号(2022年2月25日発行)
- ^ a b “あいホーム 代表取締役 伊藤 謙 (いとうけん)”. 日本経営合理化協会. 2022年11月5日閲覧。
- ^ a b c d e “【伊藤謙 あいホーム(第1回)】もし工務店3代目社長がドラッカーに出会いDXしたら ~震災のピンチに顧客創造~”. StoryNews編集部 (2021年7月9日). 2022年11月5日閲覧。
- ^ “伊藤謙 プロフィール”. HMV&BOOKS. 2022年11月5日閲覧。
- ^ a b c “伊藤 謙 あいホーム代表取締役社長”. DIAMOND ONLINE (2021年8月7日). 2022年11月5日閲覧。
- ^ a b 『仙台経済界』2024年5‐6月号『いつの時代も、最高のホームづくり。』を目指して
- ^ “「共有計画」を活用してWEB上に「バーチャル展示場」をオープン。営業社員によるブログの更新を欠かさないことも大きな営業効果に。”. 安心計画. 2022年11月5日閲覧。
- ^ “あいホーム - コミコミ価格がわかりやすい!人に寄り添う宮城の住宅会社”. SUUMO (2022年11月5日). 2022年11月5日閲覧。
- ^ a b c “【ゲスト対談】中小企業のDX化の教本を書かれた「あいホーム」の伊藤謙社長”. がんばれ社長! チャンネル(YouTube) (2021年3月25日). 2022年11月5日閲覧。
- ^ a b “スマホやPCでモデルハウスを内覧できる「あいホーム バーチャル展示場」の全貌を紹介!”. 不動産テックラボ (2021年12月28日). 2022年11月5日閲覧。
- ^ a b “コロナ禍でも売り上げ30%増。地方工務店が進めたDX”. bizclip(NTT西日本). 2022年11月11日閲覧。
- ^ a b “コロナ禍でも売上30%増。地方工務店が進めたDX”. docomo business. 2022年11月11日閲覧。
- ^ 『日刊工業新聞』2024年5月6日『地域№1工務店の劇的に進化する経営』20面
- ^ “費用をかけずに優秀な人材を採用する「SNS・動画採用」の魅力”. 厚生労働省委託事業 LO活 for company「地方人材還流促進事業」(LO活プロジェクト)事務局. 2022年11月15日閲覧。
- ^ 『日刊工業新聞』2024年4月17日28面
- ^ a b “博客来 - 室內設計公司數位經營革命:內部管理+外部營銷,數位化轉型迎向成長 (電子書)”. 2023年1月12日閲覧。
- ^ “Find Book - 室內設計公司數位經營革命”. 2023年1月12日閲覧。
- ^ “日本全国の中小企業経営者にデジタル化の実践ノウハウを届けたい!中小企業に役立つDX経営の具体的手法を公開!図書館1333施設に書籍を無償で寄贈 コロナ禍で生き残るための成功・成長の仕組み”. PRTIMES (2022年11月11日). 2022年11月11日閲覧。
- ^ “コロナ禍を生き残るために全中小企業経営者必読書です。”. 本田直之公式Facebook. 2022年11月10日閲覧。
- ^ 『建設新聞』2024年5月16日
- ^ “コロナ禍に事業継承した3代目社長が、前年比130%の受注を獲得した秘訣とは?DXで生産性最大化、少数精鋭で高収益!地域No.1工務店の「圧倒的に実践する」経営”. PRTIMES (2021年3月24日). 2022年11月5日閲覧。
- ^ “圧倒的に実践するブランディング: 熱狂編”. Amazon. 2024年2月7日閲覧。
- ^ “あいホーム【テレビ取材】3/18(木)18:15~ミヤギテレビ「ミヤギnews every.」”. 2022年11月11日閲覧。
- ^ 『日刊木材新聞』2023年4月3日
- ^ 『新建ハウジング』2023年4月20日Vol.963「イエトーク住宅DX編」開催
- ^ “【ちいきん会 / 金融データ活用推進協会(FDUA)】「FDUA地銀信金WG × ちいきん会 コラボMeetup」を開催!”. GoodWay (2023年7月9日). 2023年7月13日閲覧。
- ^ “新春147回”. 日本経営合理化協会. 2024年2月7日閲覧。
外部リンク
編集- 公式ブログ
- 伊藤 謙 (@kenitoihome) - Instagram
- 伊藤 謙 (イトケン) (kenitoihome) - Facebook
- 伊藤 謙|経営と出版で地方創生 (kenitoihome) - note