ヴェリエフェンディ競馬場
ヴェリエフェンディ競馬場(ヴェリエフェンディけいばじょう、トルコ語: Veliefendi Hipodromu ヴェリエフェンディ・ヒポドロム)は、トルコ・イスタンブールにある競馬場。トルコ競馬の最高峰であるトルコ国内G1のガジ賞(ガジダービー)やかつてマイル競走で欧州最高クラスの賞金総額を誇ったトプカプトロフィーなどの大競走が開催されるトルコ最大の競馬場である[1]。
施設情報 | |
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所在地 | Ekrem Kurt Bulvarı, Bakırköy/İstanbul, Turkey |
座標 | 北緯40度59分13秒 東経28度53分19秒 / 北緯40.98694度 東経28.88861度座標: 北緯40度59分13秒 東経28度53分19秒 / 北緯40.98694度 東経28.88861度 |
開場 | 1912年 |
管理・運用者 | トルコジョッキークラブ |
収容能力 | 4,004人 |
コース | |
周回 | 右回り |
馬場 | 芝・ポリトラック |
歴史
編集ヴェリエフェンディ競馬場は、イスタンブールのヨーロッパ大陸側のうち、旧市街を区切るテオドシウスの城壁の外側のバクルキョイに位置する[2]。
18世紀にマクリキョイ(現在のバクルキョイ)とゼイティンブルヌの中間にあるこの地にオスマン帝国のシェイヒュルイスラム(イスラム法の権威)だったヴェリユッディン・エフェンディ(Veliyüddin Efendi)という人物が緑地と噴水を造営し、イスタンブール市民の憩いの場として知られるようになってヴェリエフェンディ(Veliefendi)の地名が起こった[3]。1911年、エンヴェル・パシャがイスタンブールにおける競馬の開催地としてヴェリエフェンディの緑地を選定した[1]。
1912年、ドイツの建築家によって競馬場の建設が行われ[1]、1913年にエンヴェルの後援により競馬の開催主体となるスィパーヒー協会騎手クラブ(Sipahi Ocağı Binicilik Kulübü)と馬匹血統改良協会(Islah-ı Nefs-i Feres Cemiyeti)が設立された[4][5]。
第一次世界大戦(1914年-1918年)による中断後、1923年にスコットランドのハミルトンパーク競馬場の関係者によってマクリキョイレーシングシンジケート(Makrikuey Racing Syndicate)が設立され、コンクリート造の観客席を設けて近代競馬を開催したが、1年で休止した。その後はスィパーヒー協会などによって競馬が開催されたが、当時は馬券発売が行えず、資金面で十分な競馬開催が行えなかった[4]。
1953年、馬券発売を伴う競馬の開催権限がトルコ政府からトルコジョッキークラブに委任され、同クラブによる競馬開催が始められた[6]。
1968年、トルコのダービー競走であるアタテュルク賞(現在のガジ賞)が初めてヴェリエフェンディ競馬場で開催された[7]。
1990年から国際競走が開催されるようになり、外国調教馬の出走を促す目的で1991年にインターナショナルレーシングフェスティバルが開始された[8][9]。
コース
編集右回り第1コーナーから第2コーナーがややきつく、第3コーナーから第4コーナーがやや緩い楕円形をとる。外側が1周2020mの芝コース、内側が1周1870mのポリトラックコースになっている。その内側に1周1720mの調教用ダートコースがある[1]。
設備
編集2棟の大型スタンド、パドック、207m2の大型LEDディスプレイ、168m2のLED着順掲示板などを備える近代的な競馬場である[5]。
敷地面積は約596,000平方メートルあり、場内にトルコジョッキークラブの本部、競走馬診療所、見習騎手学校、ギフトショップ、博物館、展示会場などがある。また、緑地化された場内に110テーブルあるピクニックエリア、キッズプレイガーデン、多数のカフェテリア、駐車場がある[2]。
主な競走
編集2024年の年間レーシングプログラム[10]による。馬場の「ポ」はポリトラックを意味する。賞金単位のTLはトルコリラ。
サラブレッド競走
編集開催月 | 競走名 | 馬場・距離 | 出走条件 | 1着賞金 |
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5月中旬 | エルケック・タイ・デネメ Erkek Tay Deneme (トルコ2000ギニー) |
芝1600m | 3歳牡 | 275万TL |
5月中旬 | ディシ・タイ・デネメ Dişi Tay Deneme (トルコ1000ギニー) |
芝1600m | 3歳牝 | 275万TL |
5月下旬 | 五月十九日賞 19 Mayıs Koşusu |
ポ2000m | 3歳以上 | 195万TL |
6月上旬 | クスラック賞 Kısrak Koşusu (トルコオークス) |
芝2100m | 3歳牝 | 330万TL |
6月下旬 | ガジ賞 Gazi Koşusu (ガジダービー) |
芝2400m | 3歳内国産牡牝 | 1350万TL |
6月下旬 | アナファルタラル賞 Anafartalar Koşusu |
ポ2000m | 3歳 | 195万TL |
6月下旬 | ハリチ賞 Haliç Koşusu |
芝1600m | 3歳以上 | 195万TL |
7月中旬 | ヤヴズ・スルタン・セリム賞 Yavuz Sultan Selim Koşusu |
ポ1500m | 3歳以上 | 195万TL |
7月下旬 | アヴラシア賞 Avrasya Koşusu (ユーラシア賞) |
芝2000m | 3歳以上 | 225万TL |
8月中旬 | ファーティフ・スルタン・メフメト賞 Fatih Sultan Mehmet Koşusu |
芝1600m | 3歳以上 | 220万TL |
9月下旬 | トルコジョッキークラブ賞 Türkiye Jokey Kulübü Koşusu (ジョッキークラブカップ) |
芝2400m | 3歳以上 | 260万TL |
10月中旬 | バイアリーターク賞 Buerley Turk Koşusu |
ポ2000m | 3歳以上 | 195万TL |
10月中旬 | ハレム賞 Harem Koşusu |
芝2100m | 3歳以上牝 | 195万TL |
10月下旬 | チャルディラン賞 Çaldıran Koşusu |
芝1600m | 2歳 | 275万TL |
アラブ競走
編集開催月 | 競走名 | 馬場・距離 | 出走条件 | 1着賞金 |
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5月中旬 | 母の日賞 Anneler Günü Koşusu |
芝1600m | 4歳以上牝 | 195万TL |
6月下旬 | トルコ独立戦争賞 İstiklal Savaş Koşusu |
芝2100m | 4歳 | 245万TL |
7月下旬 | ニーボル賞 Niğbolu Koşusu |
芝2400m | 4歳 | 195万TL |
8月上旬 | チャナッカレ勝利賞 Çanakkale Zaferi Koşusu |
芝1600m | 3歳 | 195万TL |
9月下旬 | ヴェリエフェンディ賞 Veliefendi Koşusu |
芝2800m | 4歳以上 | 195万TL |
10月上旬 | ハタイ賞 Hatay Koşusu |
芝1600m | 3歳 | 275万TL |
10月中旬 | カーヌーニー・スルタン・スレイマン賞 Kanuni Sultan Süleyman Koşusu |
ポ1500m | 4歳以上 | 195万TL |
インターナショナルレーシングフェスティバル
編集トルコ語名「国際競走フェスティバル」(トルコ語: Uluslararası Yarış Festivali)。「国際競馬フェスティバル」と訳されることもある[11]。国際セリ名簿基準書のパートII国[12]であるトルコにおいて外国調教馬に開放された数少ない国際競走をヴェリエフェンディ競馬場において集中的に開催するイベントで、外国調教馬の出走を促進する目的で1991年に開始[8][9]。2008年から9月上旬の週末2日間にわたってサラブレッドの国際重賞3競走、アラブの国際重賞1競走を含む7競走を開催する方式が定着した[13]。
2007年から2009年まで1着賞金が60万ドルとマイル競走で欧州最高クラスの賞金総額を誇ったトプカプトロフィーをはじめ、かつては賞金が高額だったが[1]、2020年代には外国通貨に換算した賞金額はそれほど高額ではなくなっている[13]。
開催日 | 格付け | 競走名 | 馬場・距離 | 出走条件 | 1着賞金 |
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土曜第6競走 | 国際G3 | イスタンブールトロフィー | 芝1600m | サラ3歳以上牝 | 140万TL |
土曜第7競走 | 国内G2 | アナトリアトロフィー | ポ2000m | サラ3歳以上 | 85.5万TL |
土曜第8競走 | 非重賞 | IFAHRトロフィー | ポ2100m | アラ3歳以上 | 27.3万TL |
日曜第2競走 | 国内G3 | トラキアトロフィー | 芝1200m | サラ2歳 | 56.2万TL |
日曜第4競走 | 国際G3 | マラズギルトトロフィー | 芝1600m | アラ3歳以上 | 40.5万TL |
日曜第6競走 | 国際G3 | トプカプトロフィー | 芝1600m | サラ3歳以上 | 268万TL |
日曜第7競走 | 国際G2 | ボスポラスカップ | 芝2400m | サラ3歳以上 | 268万TL |
出典 |
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国際騎手招待競走
編集「国際騎手招待競走」は日本中央競馬会(JRA)が用いた名称で、トルコ語名は「国際騎手トーナメント」(トルコ語: Uluslararası Jokey Turnuvası)である。2009年から毎年7月中旬(初回のみ8月中旬)にヴェリエフェンディ競馬場で行われていた[14][15]。2012年の第4回からは日本代表の騎手がJRAから選出されて参加した[16][17][18][19]。
2016年からは開催されていない。
回 | 開催日 | 優勝騎手 | 優勝チーム | JRAからの参加 | 出典 |
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1 | 2009年8月14日 | クリストフ・ルメール | [14] | ||
2 | 2010年7月14日 | イオリッツ・メンディザバル | [20] | ||
3 | 2011年7月13日 | アクン・ソゼン | トルコ騎手チーム | [21] | |
4 | 2012年7月11日 | コルネリオ・ベラスケス | 外国招待騎手チーム | 川田将雅[16] | [22] |
5 | 2013年7月17日 | ピエール・ストリダム | 外国招待騎手チーム | 武豊[17] | [23] |
6 | 2014年7月16日 | ギョクハン・コジャカヤ | トルコ騎手チーム | 福永祐一[18] | [24] |
7 | 2015年7月15日 | アフメット・チェリク | トルコ騎手チーム | ミルコ・デムーロ[19] | [25] |
アクセス
編集脚注
編集- ^ a b c d e “トルコの競馬場”. 公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル. 2023年7月13日閲覧。
- ^ a b “İstanbul Veliefendi Racecourse” (英語). TJK. 2023年7月12日閲覧。
- ^ Tahsin Özcan. “Veliyüddin Efendi”. TDV İslâm Ansiklopedisi. Türkiye Diyanet Vakfı. 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b “Tarihçe” (トルコ語). TJK. 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b c d e “İstanbul Veliefendi Hipodromu” (英語). TJK. 2023年7月12日閲覧。
- ^ “History” (英語). TJK. 2023年7月12日閲覧。
- ^ “TJK History” (英語). TJK. 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b Sadettin Atığ (2019年9月5日). “Enternasyonal Koşularımız” (トルコ語). At Dünyası. 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b Reşat Yurday Köstem (2020年8月7日). “Rüzgar Gibi Geçenler – 11 / Gerçek Değerini Bilemediğimiz Şampiyon…” (トルコ語). Yarış Dergisi. 2023年7月12日閲覧。
- ^ “Yıllık Yarış Programı” (トルコ語). TJK. 2023年12月23日閲覧。
- ^ “トルコ国際競馬フェスティバルで欧州馬が席巻(トルコ)”. 公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル (2013年10月3日). 2023年7月13日閲覧。
- ^ “2023 International Cataloguing Standards Book” (英語). IFHA. 2023年7月13日閲覧。
- ^ a b “International Races in Turkey 2023” (英語). TJK. 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b “Nesine.Com Uluslararası Jokey Turnuvası14 Ağustos 2009, Cuma günü yapıldı” (トルコ語). TJK (2009年8月15日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ “Tüm İsimli Koşular” (トルコ語). TJK. 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b “川田将雅騎手がトルコジョッキークラブ国際騎手招待競走に参加”. ラジオNIKKEI (2012年7月5日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b “武豊騎手、トルコの国際騎手招待競走でチーム優勝に貢献”. ラジオNIKKEI (2013年7月18日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b “福永祐一騎手、トルコで騎乗のため海外渡航届を提出”. ラジオNIKKEI (2014年7月9日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ a b “デムーロ騎手、トルコの騎手招待レースでは2着が最高”. ラジオNIKKEI (2015年7月16日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ “2. Nesine.com Jokey Turnuvası’nı Ioritz Mendizabal kazandı” (トルコ語). TJK (2010年7月13日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ “3. Uluslararası Jokey Turnuvası’nı Akın Sözen kazandı” (トルコ語). TJK (2011年7月13日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ “Uluslararası Jokey Turnuvası’nı Cornelio Velasquez kazandı” (トルコ語). TJK (2012年7月11日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ “5. Uluslararası Jokey Turnuvası’nı Piere Johan STRYDOM kazandı” (トルコ語). TJK (2013年7月17日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ “6. Uluslararası Jokey Turnuvası’nı Gökhan KOCAKAYA kazandı” (トルコ語). TJK (2014年7月16日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ “7. Uluslararası Jokey Turnuvası’nı Ahmet ÇELİK kazandı” (トルコ語). TJK (2015年7月15日). 2023年7月12日閲覧。
- ^ 須田鷹雄 (2021年1月). “世界旅打ち気分 第31回・イスタンブールとイズミル” (PDF). グリーンファーム. 2023年7月12日閲覧。
- ^ 須田鷹雄 (2022年5月29日). “当てても当てても儲からない……なのにトルコ競馬は国内で大人気!隠れた馬券王国は観光先にもオススメ”. 婦人公論.jp. 2023年7月12日閲覧。