レッドブル・RB15
レッドブル・RB15 (Red Bull RB15) は、レッドブル・レーシングが2019年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カーである。
カテゴリー | F1 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コンストラクター | レッドブル | ||||||||||
デザイナー |
エイドリアン・ニューウェイ (CTO) | ||||||||||
先代 | レッドブル・RB14 | ||||||||||
後継 | レッドブル・RB16 | ||||||||||
主要諸元 | |||||||||||
エンジン |
ホンダ RA619H 1.6L V6ターボ | ||||||||||
タイヤ | ピレリ | ||||||||||
主要成績 | |||||||||||
チーム | アストンマーティン・レッドブル・レーシング | ||||||||||
ドライバー |
マックス・フェルスタッペン ピエール・ガスリー (Round 1-12) アレクサンダー・アルボン (Round 13-21) | ||||||||||
出走時期 | 2019年 | ||||||||||
通算獲得ポイント | 417 | ||||||||||
初戦 | 2019年オーストラリアGP | ||||||||||
初勝利 | 2019年オーストリアGP | ||||||||||
最終戦 | 2019年アブダビGP | ||||||||||
|
概要
編集2019年2月13日、特別カラーリングで初披露され[1]、シルバーストン・サーキットでシェイクダウンを実施した[2]。
本年からパワーユニット(以下PUと表記)がホンダに変更され[3]、チーフテクニカルオフィサーのエイドリアン・ニューウェイがマシン製作の仕事に完全復帰した[4]。
マシンの形状は基本的に前年のRB14を踏襲してはいるが、様々な部分に違いがみられた。ホンダPUに改まったことで、サイドポンツーン全体がコンパクトにまとめられた。サイドポッドも非常に小さく、かつ他チームのマシンよりも高い位置に設けられている。リアタイヤ前方のフロアの面積も大きくなっており[5]、それによってリアサスペンションのプルロッドはフロアを盛り上げる様にして取り付けられた。フロントサスペンションでは、アッパーアームを前後で分割したマルチリンクサスペンションとした[6]。また、PUの性能向上とセンタークーリングのため、インダクションポッド開口部面積をRB14より拡大している[7]。
2019年シーズン
編集ドライバーはマックス・フェルスタッペンが残留し、トロ・ロッソからピエール・ガスリーが昇格した。
プレシーズンテストではマシントラブルという点では重大なトラブルもなかったが、ガスリーが2度のクラッシュを起こしたことによりテスト計画に狂いが生じ[8]、これがシーズン前半のセットアップの苦戦の要因となってしまった[9]。
シーズン前半はメルセデスが他を圧倒する戦闘力を発揮する形でスタートした。開幕戦オーストラリアGPこそフェルスタッペンが3位表彰台を獲得したものの、ガスリーは予選戦略のミスでQ1敗退の17番手となってしまったうえに決勝でペースを上げられず11位完走で終わった。 フライアウェイの序盤3戦を通じて、シャシー性能の課題やセットアップの難しさが判明し[10]、その理由としてはタイヤの規格変更と空力ルールの改訂の対応が上手くいっていないことが原因とした[11]。また、それに絡んで、ダウンフォース不足[12]も判明し、その対応に追われた。 それでも、フェルスタッペンは第2戦バーレーンGPから第8戦フランスGPまで入賞や数度の3位表彰台を獲得し、第6戦モナコGPではラップリーダーのルイス・ハミルトンを追い詰めたりしたが、前年のような特定のコースでの優位性を発揮するまでには至っておらず、苦戦気味であった。そのうえ、考慮すべき点はあるがガスリーの方はマシンとのマッチングに苦戦しメディアから度々更迭のうわさが出るほどであった[13]。
そんななか、第8戦あたりでマシン開発が追いつき、フロントウィング周りをアップデートした第9戦オーストリアGPで結果を出すこととなった[14]。フェルスタッペンがスタートに失敗したものの、レースで挽回。メルセデスが熱対策に失敗し苦戦するなか快走し、終盤フェラーリのシャルル・ルクレールとのバトルを制し、トップでチェッカーフラッグを受けた。この際、バトルが審議対象となったものの、お咎めなしとなり優勝が確定。この結果、フェルスタッペン及びレッドブルのホームグランプリでの2連覇、ホンダF1としては13年ぶり優勝を飾ることとなった[15]。また、第11戦ドイツGPではミックスウェザーのレースとなり、メルセデス勢がその対応に失敗したことやフェラーリ勢の予選の不発も後押しした面もあるが、最後までミスをしなかったフロントロースタートのフェルスタッペンがレースを攻略し優勝。今季2勝目を飾った[16]。また、第12戦ハンガリーGPではタイヤ戦略によりハミルトンの逆転勝利を許したものの、フェルスタッペンが自身初、チームとしては今季初、そしてF1の歴史上100人目のポールポジションを獲得[17]。プレシーズンテスト時の取材でレッドブルの幹部であるヘルムート・マルコがコメントした「今季5勝」[18]の達成の可能性を残してシーズン前半を終えた。
8月12日、第13戦ベルギーGPからアレクサンダー・アルボンがRB15のステアリングを握ることになる。ガスリーはトロ・ロッソに降格となった。そして、同GPだが、フェルスタッペンが序盤の接触により今季初のリタイア。レッドブルとして初レースとなったアルボンは、PU交換ペナルティにより後方スタートながらも5位入賞と幸先の良いスタートを切った。だが、PU交換のペナルティやセットアップの失敗、接触によるペースダウンなど外的要因に苦しんだ面もあったが、フェラーリが復調したことにより、マシンの地位が低下。アルボンは安定して入賞しチームの期待にこたえる形で気を吐いたが、フェルスタッペンは波に乗れず、トップ2に引き離されるレースが続く。そんななか、第9戦とレース環境に類似性のある第20戦ブラジルGPでフェルスタッペンが快走。今季2度目のポールポジション[19]を獲得し、その勢いを維持して自身初となるポールトゥーウィンを達成。最終的にフェルスタッペンはメルセデス勢に次ぐドライバーズランキング3位の座を獲得することに成功し、シーズン5勝の目標達成はならなかったものの終盤でメルセデスに一矢報いて来季に期待を持たせた。
スペック
編集シャシー
編集- シャシー名:RB15
- シャシー構造:カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック
- ギアボックス:レッドブル・レーシング 縦置き8速+リバース1速 油圧式パワーシフト&クラッチ・オペレーション
- ホイール:O・Z
- タイヤ:ピレリ
- サスペンション
- フロント:アルミニウム合金製アップライト、カーボンファイバー製ダブルウィッシュボーン プッシュロッド式/プルロッド式スプリング、アンチロールバー&ダンパー プッシュロッド式スプリング
- リア:アルミニウム合金製アップライト、カーボンファイバー製ダブルウィッシュボーン プッシュロッド式/プルロッド式スプリング、アンチロールバー&ダンパー プッシュロッド式スプリング
- ブレーキ:ブレンボ
- エレクトロニクス:MESL スタンダードECU / ホンダ・レーシング・ディベロップメント
- 燃料:エッソ・シナジー
- 重量:冷却水、潤滑油、ドライバーを含めて743kg
エンジン
編集記録
編集- マックス・フェルスタッペン - 278点(ドライバーズランキング3位)、優勝3回、PP2回、FL3回
- ピエール・ガスリー - 63点、FL2回
- アレクサンダー・アルボン - 76点
- 第13戦ベルギーGP以降。レッドブル移籍前を含めると92点(同8位)
年 | No. | ドライバー | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | ポイント | ランキング |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AUS |
BHR |
CHN |
AZE |
ESP |
MON |
CAN |
FRA |
AUT |
GBR |
GER |
HUN |
BEL |
ITA |
SIN |
RUS |
JPN |
MEX |
USA |
BRA |
ABU | |||||
2019 | 33 | フェルスタッペン | 3 | 4 | 4 | 4 | 3 | 4 | 5 | 4 | 1 | 5 | 1 | 2 | Ret | 8 | 3 | 4 | Ret | 6 | 3 | 1 | 2 | 417 | 3位 |
10 | ガスリー | 11 | 8 | 6 | Ret | 6 | 5 | 8 | 10 | 7 | 4 | 14† | 6 | ||||||||||||
23 | アルボン | 5 | 6 | 6 | 5 | 4 | 5 | 5 | 14 | 6 |
脚注
編集- ^ “レッドブル、今年はシェイクダウンを実施。準備万端でバルセロナへ”. AUTOSPORTweb. (2019年2月13日) 2019年2月17日閲覧。
- ^ “レッドブルRB15のシェイクダウンが無事終了。「ホンダとともに成功を目指す上で重要な一日」とチーム代表”. AUTOSPORTweb (2019年2月14日). 2019年2月17日閲覧。
- ^ “ホンダ・レッドブルF1が誕生。2019年から2年間のパワーユニット供給で合意”. AUTOSPORTweb (2018年6月19日). 2019年2月17日閲覧。
- ^ “鬼才ニューウェイ、ホンダとの新シーズンに備えてF1マシン設計の仕事に完全復帰”. formula1-data. (2018年9月16日) 2019年2月17日閲覧。
- ^ “F1新車”雑感”解説:レッドブル・ホンダRB15……巧妙に隠された? ”鬼才”によるボディワーク”. motorsport.com. (2019年2月14日) 2019年2月17日閲覧。
- ^ 【F1メカ解説】レッドブルが採用した、画期的デザインのフロントサスペンションレイアウト(2019年5月8日)2020年11月28日閲覧。
- ^ “F1技術分析ピックアップ:レッドブル、ホンダPUのパフォーマンス向上のためインダクションポッドを大型化”. AUTOSPORTweb (2019年3月9日). 2019年3月10日閲覧。
- ^ 【レッドブル密着】不完全燃焼に終わったF1テスト最終日。2度のクラッシュを演じたガスリーは苦しい立場に autosport web (2019年3月2日)、同年4月1日閲覧。
- ^ レッドブル、セットアップ改善に希望の光? スペインGPまでに空力修正へ jp.motorsport.com (2019年4月6日)、同年4月8日閲覧。
- ^ レッドブルはもっと速くなる?「開幕戦はシャシーが最適とは程遠かった」 jp.motorsport.com (2019年3月29日)、同年4月1日閲覧。
- ^ レッドブル、今季の苦戦は“タイヤと新エアロ規定”のダブルパンチが要因か jp.motorsport.com (2019年5月16日)、同年5月20日閲覧。
- ^ レッドブル・ホンダ、RB15が抱える空力問題は「非力なルノーエンジンが原因」 formula1-data.com (2019年5月11日)、同年5月20日閲覧。
- ^ ピエール・ガスリーは「弱すぎる」とレッドブル首脳 www.topnews.jp (2019年7月31日)、同年8月1日閲覧。
- ^ “アップデートが効果を発揮。フェルスタッペン「パフォーマンスは予想以上!」”. motorsport.com (2019年6月30日). 2020年2月13日閲覧。
- ^ 【レッドブル・ホンダ】ホーナー代表「激しいバトルこそF1だ。ホンダはF1復帰後初勝利、ホームGPで優勝、夢が叶った気分だ」 www.topnews.jp (2019年7月1日)、同年7月1日閲覧。
- ^ フェルスタッペン、一丸となって掴んだ勝利「ホンダとの2勝目、最高に嬉しい結果」F1ドイツGP《決勝》2019 formula1-data.com (2019年7月9日)、同年7月29日閲覧。
- ^ 速報:フェルスタッペンがキャリア初のポールポジションを獲得 formula1-data.com (2019年8月3日)、同年8月5日閲覧。
- ^ レッドブル首脳「目標は5勝以上を挙げてフェルスタッペンでタイトルを獲ること」。マクラーレンは2019年も最後尾との予想も www.as-web.jp(2019年3月5日) 2019年8月5日閲覧
- ^ 本来は3度目だが、第18戦メキシコGPでポールポジションを獲得したものの、予選Q3で黄旗に関する違反を犯してしまい降格。そのため、記録上では2度目のポールポジション獲得として扱われる。
- ^ “RB15”. レッドブル・レーシング. (2019年2月13日) 2019年2月18日閲覧。