ラーモア歳差運動
ラーモア歳差運動(ラーモアさいさうんどう、英語: Larmor precession)は、物理学において、電子・原子核・原子などの粒子の持つ磁気モーメントが外部磁場によって歳差運動を起こす現象である。ジョゼフ・ラーモアにちなんで名づけられた。
概要
編集外部磁場は、粒子の磁気モーメント、あるいは角運動量(スピン角運動量や軌道角運動量)にトルクを与え、それは以下のように表される。
は磁気回転比と呼ばれ、磁気モーメントと全角運動量の比例関係 を結びつける定数である。
トルクを受けることで、粒子が持つ磁気モーメントベクトル 、あるいは角運動量ベクトル は磁場方向を軸としてその周りを歳差運動する。このとき運動方程式は次式で表される。
この回転運動の角周波数はラーモア周波数(Larmor frequency)と呼ばれ、以下で表される。
ラーモア歳差運動は核磁気共鳴(NMR)、電子スピン共鳴(EPR)、強磁性共鳴(FMR)などにとって重要である。磁場中ではラーモア周波数を共鳴周波数とも呼ばれる。
レフ・ランダウとエフゲニー・リフシッツによる1935年の有名な論文[1]は、ラーモア歳差運動による強磁性共鳴の存在を予言した。それは1946年にJ. H. E. Griffiths[2]、1947年にE. K. Zavoiskyによる実験で、それぞれ独立に確かめられた。
脚注
編集- ^ Landau, L. D.; Lifshitz, L. M. (1935). “On the theory of the dispersion of magnetic permeability in ferromagnetic bodies”. Physik. Zeits. Sowjetunion 8: 153-169.
- ^ Griffiths, J. H. E. (1946). “Anomalous High-frequency Resistance of Ferromagnetic Metals”. Nature 158: 670-671. doi:10.1038/158670a0.