ラブドウイルス科
ラブドウイルス科(ラブドウイルスか、Rhabdoviridae)は、ウイルスの分類においてモノネガウイルス目に属する1科[1][2][3]。動物ウイルスではそのビリオンは銃弾型の形態をし、エンベロープに包まれている。ラブドウイルスの名前はギリシャ語で棒を意味するrhabdosに由来する。ゲノムは一本鎖-RNA。赤血球凝集性を有する。ラブドウイルス科の有名なウイルスとしては狂犬病ウイルスがあり、このウイルスはほとんどの温血動物に感染し、ヒトの場合は発症するとほとんどが死に至る。
ラブドウイルス科 | |||||||||||||||||||||
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狂犬病ウイルスの電子顕微鏡写真(灰色の円形から棒状の粒子)。
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分類 | |||||||||||||||||||||
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宿主域は非常に広く、動物(脊椎動物、節足動物)および植物に感染するものが知られている[4]。昆虫などにより媒介されるものも多いが、脊椎動物と植物とで共に感染するものはない。
多くのウイルスはL(large protein)、G(glycoprotein)、N(nucleoprotein)、P(phosphoprotein)、M(matrix protein)の5種の遺伝子を含む。多くは宿主細胞の細胞質で増殖するが、植物に感染するNucleorhabdovirus属だけは細胞核で増殖する。
RNAの転写と複製にはLとPが必要である。転写は遺伝子毎に行われ、細胞のものと同じ形のmRNAとなる。ビリオンにはカプシドを作るN、エンベロープの膜タンパク質G、これらをつなぐMの3種類のタンパク質が含まれる。
分類
編集- リッサウイルス属 Lyssavirus
- 狂犬病ウイルス(Rabies virus)
- ベシクロウイルス属 Vesiculovirus
- 水胞性口内炎アラゴウイルス(Vesicular stomatitis Alagoas virus)
- エフェメロウイルス属 Ephemerovirus
- 牛流行熱ウイルス(Bovine ephemeral virus)
- ノビラブドウイルス属 Novirhabdovirus
- 伝染性造血器壊死ウイルス(Infectious hematopoietic virus)
- ウイルス性出血性敗血症ウイルス(Viral hemorrhagic septicemia virus)
- サイトラブドウイルス属 Cytorhabdovirus
- Lettuce necrotic yellows virus
- ヌクレオラブドウイルス属 Nucleorhabdovirus
- Potato yellow dwarf virus
参考文献
編集- 東匡伸、小熊惠二編集 『シンプル微生物学 改訂第3版』 南江堂 2000年 ISBN 4524220577
- 原澤亮 「動物ウイルスの新しい分類(2005)」 『獣医畜産新報』 58号 921-931頁 2005年
脚注
編集- ^ “Virus Taxonomy: 2019 Release”. 国際ウイルス分類委員会 (ICTV). 2020年10月23日閲覧。
- ^ 西園晃・山田健太郎「ラブドウイルス」『ウイルス』第62巻第2号、日本ウイルス学会、2012年、183-196頁。
- ^ 緒方靖哉・西山孝・土居克実「改訂 ウイルス分類 話題のウイルスの知見と動向」『化学と生物』第58巻第1号、日本農芸化学会、2020年、20-33頁。
- ^ 近藤秀樹「分節型ゲノムを持つラブドウイルス」『ウイルス』第63巻第2号、日本ウイルス学会、2013年、143-154頁。
関連項目
編集- RNAウイルス
- ウイルス性出血性敗血症(VHS)-ニジマス、カワカマスなどの筋肉に点状出血
- 牛流行熱
- 狂犬病
- 水胞性口炎
- 伝染性造血器壊死症(IHN)-サケ科魚類の造血器に壊死、鰭や筋肉にV字型出血
- ヒラメラブドウイルス病-ヒラメに腹水貯留