MODEL1(モデルワン)は1992年セガによって開発されたアーケードゲーム基板である。セガが発売したポリゴンによる3D描画機能を搭載した基板としては最初期の製品である[1]

概要

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セガと米国ゼネラル・エレクトリック・エアロスペース社(後のマーティン・マリエッタ)との共同で開発された。先行する3Dポリゴン基板にはナムコSYSTEM21が存在するが、セガのMODEL1の方がより高性能である。

MODEL1上で動作するゲームとして最初にリリースされたのはバーチャレーシングであった。バーチャレーシングはもともとMODEL1の動作確認用として試作されたもので、本来であれば商用リリースの予定はなかったが、出来がよかったためにブラッシュアップを施されて発売された。

また、バーチャレーシングに搭載された初期型のMODEL1基板はその後のものとバージョンが異なっており、互換性はない。しかし、バーチャレーシングは専用の筐体で提供されたために、不都合はほとんど生じなかった。

MODEL1のメインCPUはNEC製のV60、描画プロセッサは富士通製のMB86233。サウンド機能は別基板となっており、4ch出力が可能なサウンドボードを使用(初期のMODEL2基板においても使用)また後期のスターウォーズではWAVE音源再生可能なボードを使用している。描画能力は18万ポリゴン/秒。フラットシェーディングやアルファブレンディングが可能であったものの、ポリゴンにテクスチャーを貼ることが出来ないなど、最低限度の表示品質しか実現できなかった。フレームレートは良くても30fps程度であった。

3Dポリゴンを表示するだけでも苦労が伴う時代であったため、当時の基板としては非常に高価になっていたこともあり、MODEL1で開発されたゲームは6本にすぎない。何れも3Dゲームのプロトタイプを示す程度の役割しか担えなかった。テクスチャ付きで60fpsを実現する本格的な3Dポリゴンへの移行は翌年に発表されたMODEL2によって行われた。

部品調達難に伴い、2017年3月31日を以って修理サポートが終了した[2]

主なスペック

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CPU
V60(32bit) @ 16MHz
数値演算プロセッサ
DSP(32bit) @ 40MHz
3Dマトリックス・軸回転・浮動小数点演算機能搭載
RAM
1MB(ROM:47MB)
解像度
496(H) x 384(V) 水平周波数24kHz
3Dグラフィックエンジン
最大540,000ベクトル/秒
最大180,000ポリゴン/秒
フラットシェーディング・鏡面・拡散反射モード内蔵
ポリゴン面 120Mピクセル/秒,1600万色・発色可能
発色数
65,536色 1,024カラーパレット(16,777,216色中)
スクロール:32,768色,128カラーパレット(2面)
ウインドウ:32,768色,128カラーパレット(2面)、水平方向ラインスクロール可能
その他
通信機能拡張、MIDIによるサウンド通信
サウンド部
FM音源 YM3438
PCM音源 サンプリング周波数44.643kHz、同時発音28音18ビット2ch出力
アクティブ・サーボ・スピーカーシステム(AST)搭載
MIDIによるメインボードとの通信

MODEL1基板で開発されたゲーム

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作品名 スーパー32Xへの移植 備考
バーチャレーシング あり
バーチャフォーミュラ なし
バーチャファイター あり
ウイングウォー 中止[3]
セガネットマーク
スターウォーズ あり[注釈 1]

脚注

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注釈

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  1. ^ 32X版は「スターウォーズ・アーケード」

出典

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  1. ^ 【連載】セガハードストーリー第5回 家庭用ゲーム機新時代の幕開け『セガサターン』 | セガハード大百科”. 【連載】セガハードストーリー第5回 家庭用ゲーム機新時代の幕開け『セガサターン』 | セガハード大百科. 2024年10月11日閲覧。
  2. ^ 弊社製品保守対応の終了についてセガ・インタラクティブ、セガ・ロジスティクスサービス 2016年11月
  3. ^ 全19タイトルのラインアップが出揃った復刻プロジェクト“SEGA AGES”。これまでの1年と今後の展望をキーパーソンに聞く!”. ファミ通.com (2019年5月10日). 2022年5月13日閲覧。

関連項目

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参考資料

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  • マイコンBASICマガジン (号数不明) Video Game P.244「セガからシステム基板が2種類登場 MODEL1(仮),システムマルチ32」