ウゥルカーヌス
ウゥルカーヌス(古典ラテン語:Vulcānus)は、ローマ神話に登場する火の神[1]。ムルキベル(Mulciber)とも呼ばれた[1]。後にギリシア神話の鍛冶神ヘーパイストスと同一視される[1]。ウルカヌスとも表記され[2]、英語読みのヴァルカン(Vulcan)でも知られる。
ウゥルカーヌス | |
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火の神 鍛冶神 | |
住処 | ヴルカーノ島 |
配偶神 | ウェヌス |
親 | ユーピテル, ユーノー |
ギリシア神話 | ヘーパイストス |
ロームルスあるいはサビーニー人の王タティウスが信仰を始めたという[1]。祭日は8月23日のウゥルカーナーリア(Vulcānālia)であった[1]。
語源
編集ウゥルカーヌスの語源には複数の説があるが、どれも確実なものではない。
一般的に受け入れられているのはヴェーダ語の várcas 「輝き」、アヴェスター語の varəčah 「力、エネルギー」と同じインド・ヨーロッパ祖語に由来するというものである。várcas はウゥルカーヌスと同じ火の神アグニや太陽神スーリヤの持ち物であるとされた。
ほかにはエトルリアの神ウォルカヌスに由来するという説、前ギリシア文明期のクレタ島の神ウェルカノス(Ϝελχανος)に由来するという説もあるが、どちらも意味的・神話学的にウゥルカーヌスと共通点がなく、偶然の一致である可能性が高い。
またオセット人のナルト叙事詩に登場する鍛冶神クルダレゴン(Kurdalægon)の方言形 Kurdalæwærgon を分解して得られる wærgon には「狼」という意味があり、そしてウゥルカーヌスと音声上一致するという説もある。しかしこれにしても、ウゥルカーヌスが鍛冶の神であるのはヘーパイストスに関連付けられて以降であり、ウゥルカーヌスと狼とは何の関係もない。
ガリアのウゥルカーヌス
編集東ローマ帝国の歴史家ヨルダネスは著書『ローマ人』において、ガリアの鍛冶神を指して「ウゥルカーヌス」と呼んでいる。アイルランドのゴヴニュやウェールズのゴヴァノンと同源の、現在では名前の失われたガリアの鍛冶神に対して与えられたローマ名がウゥルカーヌスである[4]とも、単にローマのウゥルカーヌスがガリアを席巻した結果、元来のガリアの鍛冶神は消え去った[5]とも考えられる。
脚注
編集参考文献
編集- 稲葉義明ほか『西洋神名事典』山北篤監修、新紀元社〈Truth In Fantasy事典シリーズ 4〉、1999年11月。ISBN 978-4-88317-342-6。
- グラント, マイケル、ヘイゼル, ジョン『ギリシア・ローマ神話事典』西田実ほか訳、大修館書店、1988年7月。ISBN 978-4-469-01221-7。
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年2月。ISBN 978-4-00-080013-6。
- デュヴァル, ポール=マリー [in ドイツ語] (2001). "ガロ・ロマン期の神々 4.ウルカヌス". In イヴ・ボンヌフォワ (ed.). 世界神話大事典. 大修館書店. ISBN 4469012653。
- マイヤー, ベルンハルト 著、鶴岡真弓 監修・平島直一郎 訳『ケルト辞典』創元社、2001年。ISBN 4-422-23004-2。
関連項目
編集- 火山 - 火山を表す英語 volcano の語源である。