ムラサキヤマドリタケ
ムラサキヤマドリタケ(紫山鳥茸[3]、学名: Boletus violaceofuscus)はイグチ目イグチ科ヤマドリタケ属の中型から大型の食用キノコ。傘や柄が紫色で、柄に網目模様があるのが特徴。和名は、傘、柄ともに紫色で、ヤマドリタケ属のキノコに由来することから名付けられている[4]。
ムラサキヤマドリタケ | |||||||||||||||||||||||||||
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Boletus violaceofuscus
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Boletus violaceofuscus W.F. Chiu[1][2] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ムラサキヤマドリタケ |
生態
編集日本各地(山形・東京・静岡・滋賀・京都[5]、四国[6]、九州[6])、および中国(雲南省[5]・四川省[6])、台湾、韓国などに分布する[2]。
外生菌根菌[3][6](共生性[7])。夏から秋にかけて、通常はコナラ、クヌギ、シイ、カシなどブナ科を主とした広葉樹林、またはマツが混じった雑木林、稀にブナ・ミズナラ林などの地上に発生し、しばしば群生する[1][3][2][7]。紫色をしているため森の中では目立たないが[4]、神社の木陰や公園でも見つかることがある[8]。7 - 8月の暑い時期に生えることが多い[8]。梅雨時と秋の彼岸ごろに多く発生するともいわれている[9]。
形態
編集子実体は傘と柄からなる。傘の径は5 - 10センチメートル (cm) [1]。はじめ半球形で、のちに丸山形から扁平に開く[2]。傘表面はなめらかでしわがあり、湿るとやや粘性を示し、暗紫色から黄色やオリーブ色、褐色などが混じった斑模様など変化がある[1][3][2][7][6]。意外と個体差もあって、紫色にきれいな斑点が入ったものが典型的であるが、どら焼きのような見た目のものもある[4]。傘裏は管孔状で、はじめは白色であるが、のちに淡黄色から黄褐色になる[1][3]。管孔部は柄に対して湾生または上生する[2]。孔口は小型で円形、長さ7 - 13ミリメートル (mm) [5]、幼時は白色の菌糸で覆われるが、成熟すると孔がはっきりして汚ない麦藁色になる[1][7]。傘や軸が薄茶色のヤマドリタケモドキ(Boletus reticulatusz)と同じ場所で一緒に生えている場合、傘の色や模様が似ることがある[3]。
柄は中実で、長さ7 - 9 cm、太さ1.2 - 1.5 cm、上下同大か下の方が太くなる[2][5]。柄の表面は暗紫色から赤紫色の地色に、白色で隆起した縦長の網目模様がある[3][6]。肉は白色で厚みがあり、幼時は堅いがのちに軟化し、空気に触れても変色しない[1][2]。
担子胞子は14 - 18 × 5.5 - 6.5マイクロメートル] (μm) の類紡錘形で、褐色、非アミロイド性[1][2]。胞子紋はオリーブ褐色[2]。
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傘表面は暗紫色
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傘裏の管孔面、孔口は小さい
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柄は網目模様がある
食用
編集食用になるキノコで、姿形や色合いが美しく、ほんのりとした甘みがあり、風味や口当たりもよいといわれている[1][8]。肉厚で食べごたえもある[6]。希少性も手伝って、日本ではヤマドリタケモドキよりも上質で珍重される[1][6]。夏場は生長が早いため、1日経つと食用にたえられない状態になってしまう[8]。独特の色合いなどの見た目から一見食べられそうには見えないが[4]、若い個体はコリコリした食感があり、生長した傘は火を通すと、とろっとして美味である[8]。汁物、炒め物、和え物にするとよく[8]、傘をまるのままタレをつけてグリル焼きにすれば、極めて上品な味わいを楽しめるという[1]。厚い肉をスライスしてバター炒め、ピザのトッピング、パスタ、煮込み料理にも合う[7]。
似ているキノコ
編集イグチ科のイロガワリ(Cyanoboletus pulverulentus)は、広葉樹林から針葉樹林の地上に生えるキノコで、子実体に傷がつくと青変する[6]。同じくイグチ科のアカジコウ(Boletus speciosus)はブナ科の広葉樹林に生え、本種のように柄の全体に網目模様が見られるが、傘の表面に微細毛があるなどの違いが見られる[6]。
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参考:イロガワリ
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参考:アカジコウ
出典
編集- ^ a b c d e f g h i j k 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄 編著 2011, p. 319
- ^ a b c d e f g h i j 前川二太郎 編著 2021, p. 278.
- ^ a b c d e f g 秋山弘之 2024, p. 61.
- ^ a b c d 大作晃一 2015, p. 67.
- ^ a b c d 今関六也・本郷次雄 1965, p. 98.
- ^ a b c d e f g h i j 吹春俊光 2010, p. 64.
- ^ a b c d e 牛島秀爾 2021, p. 113.
- ^ a b c d e f 大作晃一 2005, p. 78.
- ^ 吹春俊光 2010, p. 65.
参考文献
編集- 秋山弘之『知りたい会いたい 色と形ですぐわかる 身近なキノコ図鑑』家の光協会、2024年9月20日。ISBN 978-4-259-56812-2。
- 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄 編著『日本のきのこ』(増補改訂新版)山と渓谷社〈山渓カラー名鑑〉、2011年12月25日。ISBN 978-4-635-09044-5。
- 今関六也・本郷次雄『続原色日本菌類図鑑』保育社、1965年3月5日。ISBN 4-586-30042-6。
- 牛島秀爾『道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活 きのこ図鑑』つり人社、2021年11月1日。ISBN 978-4-86447-382-8。
- 大作晃一『山菜&きのこ採り入門 : 見分け方とおいしく食べるコツを解説』山と渓谷社〈Outdoor Books 5〉、2005年9月20日。ISBN 4-635-00755-3。
- 大作晃一『きのこの呼び名事典』世界文化社、2015年9月10日。ISBN 978-4-418-15413-5。
- 吹春俊光『おいしいきのこ 毒きのこ』大作晃一(写真)、主婦の友社、2010年9月30日。ISBN 978-4-07-273560-2。
- 前川二太郎 編著『新分類 キノコ図鑑:スタンダード版』北隆館、2021年7月10日。ISBN 978-4-8326-0747-7。
関連項目
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