ミザール

おおぐま座の恒星、北斗七星を形成する恒星の1つ

ミザール[1](ミザル[3], Mizar[2][8])あるいはおおぐま座ζ星[4](おおぐまざゼータせい)は、おおぐま座恒星で2等星。北斗七星を形成する恒星の1つでもあり、ひしゃくの柄の先端から2番目に位置する。

ミザール[1]
Mizar [2]
仮符号・別名 ミザル[3], おおぐま座ζ星[4]
星座 おおぐま座
見かけの等級 (mv) 2.27[4]
位置
元期:J2000.0[4]
赤経 (RA, α)  13h 23m 55.54048s[4]
赤緯 (Dec, δ) +54° 55′ 31.2671″[4]
固有運動 (μ) 赤経: 119.01 ミリ秒/年[4]
赤緯: -25.97 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 38.01 ± 1.71ミリ秒[4]
(誤差4.5%)
距離 86 ± 4 光年[注 1]
(26 ± 1 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 0.2[注 2]
ζ星の位置
物理的性質
スペクトル分類 A2V+A1m [4]
他のカタログでの名称
HD 116656J[4]
HIP 65378[4]
Template (ノート 解説) ■Project
おおぐま座ζ星A[5]
仮符号・別名 おおぐま座ζ1[5]
見かけの等級 (mv) 2.23[5]
位置
元期:J2000.0[5]
赤経 (RA, α)  13h 23m 55.543s[5]
赤緯 (Dec, δ) +54° 55′ 31.30″[5]
赤方偏移 -0.000019[5]
視線速度 (Rv) -5.6km/s[5]
固有運動 (μ) 赤経: 121.2 ミリ秒/年[5]
赤緯: -22.0 ミリ秒/年[5]
年周視差 (π) 38.01 ± 1.71ミリ秒[5]
(誤差4.5%)
距離 86 ± 4 光年[注 1]
(26 ± 1 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 0.1[注 2]
物理的性質
スペクトル分類 A2V [5]
色指数 (B-V) +0.02[6]
色指数 (U-B) +0.03[6]
他のカタログでの名称
おおぐま座79番星A[5]
BD +55 1598A[5]
FK5 497[5], HD 116656[5]
HR 5054[5], SAO 28737[5]
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おおぐま座ζ星B[7]
仮符号・別名 おおぐま座ζ2[7]
見かけの等級 (mv) 3.88[7]
位置
元期:J2000.0[7]
赤経 (RA, α)  13h 23m 56.330s[7]
赤緯 (Dec, δ) +54° 55′ 18.56″[7]
赤方偏移 -0.000031[7]
視線速度 (Rv) -9.3km/s[7]
固有運動 (μ) 赤経: 121.2 ミリ秒/年[7]
赤緯: -22.0 ミリ秒/年[7]
年周視差 (π) 38.01 ± 1.71ミリ秒[7]
(誤差4.5%)
距離 86 ± 4 光年[注 1]
(26 ± 1 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 1.8[注 2]
物理的性質
スペクトル分類 A1m [7]
色指数 (B-V) +0.13[6]
色指数 (U-B) +0.09[6]
他のカタログでの名称
おおぐま座79番星B[7]
BD +55 1598B[7]
HD 116657[7], HR 5055[7]
SAO 28738[7]
Template (ノート 解説) ■Project

概要

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視力の良い観測者であれば、ζ星のすぐ脇に暗い星(4等星)があるのが分かる。この星はアルコル (Alcor) またはおおぐま座80番星と呼ばれる。この2つの星はしばしば馬と騎手に例えられ、またアルコルを見分けられるかどうかが昔から視力の検査に用いられてきた[9]

特徴

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ヒッパルコス衛星により年周視差によって測定されたミザールA、Bの太陽からの距離は約86光年である。アルコルは約82光年の距離にあり、約4光年離れている。これらの星は全ておおぐま座運動星団の一員であり、固有運動から見るとほぼ同じ方向に運動していることが分かっているが、ミザールとアルコルが見かけの二重星なのか、重力的に束縛された真の連星なのかについては分かっていない。この運動星団はかつて同じ場所で同時期に生まれ、今ではほとんど分散した星団であることが固有運動から分かっている。北斗七星の他の星のうち、α星η星を除く4個もこの運動星団に属している。

望遠鏡分光法の発明によって、ζ星にはさらに別の伴星が見つかっている。ζ星は望遠鏡によって発見された最初の連星系で、最初にこれを見つけたのはガリレオ・ガリレイの弟子のベネデット・カステリであると考えられている。1617年にカステリはガリレオにこれを観測するよう依頼しており、これを受けてガリレオはミザールの詳細な記録を残している。その後、1650年頃にはジョヴァンニ・バッティスタ・リッチョーリが、ミザールが二重星に見えることを書き残している。この伴星はミザールBと呼ばれ、見かけの等級が4.0等で、主星から380auの距離まで近づく。ミザールAとミザールBの公転周期は数千年である。その後さらにミザールAは1889年に、エドワード・ピッカリングによって分光連星でもあることが発見された。これは歴史上最初に発見された分光連星である。この分光連星をなす二つの星はともに太陽の約35倍の明るさを持ち、約20日周期で公転している。また後に、ミザールBも分光連星であることが明らかとなった。1996年にはミザールA連星系がアメリカの NPOI (Navy Prototype Optical Interferometer) 干渉計によって非常に高い分解能で撮影された。

名称

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ミザールは、アラビア語ميزر mīzar に由来する。元々はおおぐま座β星に使われていた mīraq という名前が、綴りを変えて中世後期から誤ってζ星に使われるようになったものと考えられている[2]。2016年6月30日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Mizar をおおぐま座ζ星の固有名として正式に承認した[8]

史記』などの「天官書」での名は開陽密教教典『仏説北斗七星延命経』では武曲むごく)である。

脚注

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注釈

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  1. ^ a b c d e f パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ a b c 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ a b 野尻抱影『星座の話』(改)偕成社、1977年9月、25頁。ISBN 4037230100 
  2. ^ a b c Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Pub. Corp.. p. 56. ISBN 978-1-931559-44-7 
  3. ^ a b 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、104頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME MIZAR. 2013年2月10日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME MIZAR A. 2013年2月10日閲覧。
  6. ^ a b c d 輝星星表第5版
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q SIMBAD Astronomical Database”. Results for NAME MIZAR B. 2013年2月10日閲覧。
  8. ^ a b IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年11月8日閲覧。
  9. ^ Jim Kaler (2000年7月3日). “Mizar”. STARS. 2016年11月8日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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