マンクスミズナギドリ(マンクス水薙鳥、Puffinus puffinus)は、ミズナギドリ目ミズナギドリ科のなかで小形となる海鳥である。別名ヒメミズナギドリ(姫水薙鳥)[1]

マンクスミズナギドリ
マンクスミズナギドリ
マンクスミズナギドリ Puffinus puffinus
アイスランド
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ミズナギドリ目 Procellariiformes
: ミズナギドリ科 Procellariidae
: ミズナギドリ属 Puffinus
: マンクスミズナギドリ
P. puffinus
学名
Puffinus puffinus
(Brünnich, 1764)
和名
マンクスミズナギドリ
英名
Manx Shearwater
生息域概要図
      繁殖地域       非繁殖域

マンクス (Manx) は「マン島の」という意味で、かつて、カーフ・オブ・マンCalf of Man、マン島のすぐ南の小島)において、マンクスミズナギドリの大繁殖地が見られたことに由来する。だが、ここでの種は18世紀後半に、船の難破による偶発的なネズミの移入により減衰した。しかし近年、ミズナギドリの数を増加させるため、カーフ・オブ・マンからネズミが除去されている。

分布

編集

北大西洋で繁殖し、主な繁殖地はイギリスアイルランド周辺の島や海岸の断崖である。冬季はアフリカ南部の海域[2]、および南アメリカ東部の南緯およそ10-50度の[3]ブラジル南部やアルゼンチン沖の水域へと、10,000km以上の渡りをする[4]

形態

編集

全長約34cm (30-38cm)、翼開長約82cm (76-89cm)[3]。翼は真っ直ぐで細長い[5]。上面黒褐色、下面白色。白い翼下面の縁は暗色[5]。くちばしは細くて黒く、足は淡紅色[1]。雌雄ともよく似ており、周年同色で、幼鳥も成鳥とよく似る[3]

生態

編集
 
水を薙ぐような飛翔

普通は、ほとんど羽ばたかずに翼を左右に傾け、翼端が水面に触れるくらいに、水を「薙ぐ(刈る)」(‘shearing’) ようにして飛ぶ。飛行中は翼を体と直角に保っていて十字形に見え、上面は黒く、下面は白いため、海面低く飛んでいると黒から白へと交互に変化して見える。

 
繁殖地の個体
 

海に近接する斜面か平地に、雌雄で穴を掘って巣を作り[5]、集団で営巣する[1]。古いウサギの巣穴も使われることがある[5]。大形カモメ類の捕食を避けて夜のみ滞在し、4-5月に[1]、1個の白い卵を産む。約50日の間、平均するとほぼ6日ごと雌雄交代して抱卵する。親鳥は孵った雛をおよそ60日経つと置き去りにし、雛はその後8-9日で巣立つ[5]

繁殖期以外は海洋で生活する[5]。群れを作り、特に秋の渡りには船や岬から数多く見られる。海上では静かだが、夜、繁殖場所では騒がしく甲高い鳴き声でにぎわう。

海面上または水に浅く潜って捕食し[6]、小さな(特にニシンスプラットイワシ)、頭足類(イカなど)[5]甲殻類、漁船からの魚くずなど水面の臓物を餌とする[6]

脚注

編集
  1. ^ a b c d 三省堂編修所 編『三省堂 世界鳥名事典』吉井正(監修)、三省堂、2005年、426頁。ISBN 4-385-15378-7 
  2. ^ Clements, James F. (2007). The Clements Checklist of Birds of the World (6th ed.). Ithaca, New York: Cornell University Press. p. 12. ISBN 978-0-8014-4501-9 
  3. ^ a b c Harrison, Peter (1985) [1983]. Seabirds: an identification guide (Revised ed.). Boston: Houghton Mifflin Company. pp. 86 262-263. ISBN 0-395-60291-2 
  4. ^ Guilford, T.; Meade, J.; Willis, J.; Phillips, R. A.; Boyle, D.; Roberts, S.; Collett, M.; Freeman, R. et al. (2009). “Migration and stopover in a small pelagic seabird, the Manx shearwater Puffinus puffinus: insights from machine learning”. Proceedings of the Royal Society B 276 (1660): 1215-1223. doi:10.1098/rspb.2008.1577. PMC 2660961. PMID 19141421. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2660961/. 
  5. ^ a b c d e f g Holden, Peter; Cleeves, Tim (2010) [2002]. RSPB Handbook of British Birds (3rd ed.). Christopher Helm. p. 72. ISBN 978-1-4081-2735-3 
  6. ^ a b コリン・ハリソン、アラン・グリーンスミス『鳥の写真図鑑』日本ヴォーグ社、1995年(原著1993年)、53頁。ISBN 4-529-02562-4 

外部リンク

編集