マギステルス・バッドトリップ

マギステルス・バッドトリップ』は、KADOKAWAが提供するweb小説投稿サイト「カクヨム」にて鎌池和馬が2018年9月28日より投稿しているweb連載作品。2019年1月に設立された「電撃の新文芸」より、2019年1月17日から2020年7月17日まで書籍化された。担当編集者は三木一馬、小野寺、阿南、中島、山本、見寺。Brasil esteve aqui hueheuheuheu

マギステルス・バッドトリップ
ジャンル マネーゲーム
小説
著者 鎌池和馬
イラスト 真早
出版社 日本の旗KADOKAWA
掲載サイト カクヨム
レーベル 電撃の新文芸(DENGEKI)
連載期間 2018年9月28日 -
刊行期間 2018年9月28日 - 2020年7月17日
巻数 全3巻
テンプレート - ノート

マネーゲームを題材にした新感覚クリミナルアクションと銘打っている。

イラストレーターは同作者の別シリーズ『インテリビレッジの座敷童』『最強をこじらせたレベルカンスト剣聖女ベアトリーチェの弱点 その名は「ぶーぶー」』『吸血鬼の姉とゾンビの妹シリーズ』を担当した真早が担当している。

あらすじ

編集

あらゆる非合法行為を是とする金融取引ヴァーチャルゲーム【マネー(ゲーム)マスター】。そこでの仮想通貨スノウの影響力は現実の世界にも影響を及ぼし、円やドルを超えて10億人以上もの人々に流通して現代社会の経済と切り離せない存在となっていた。

ゲーム内での横暴は現実社会の経済問題に発展する時代。チートプレイまがいの銃撃スキルと奇抜な戦略眼を持つ蘇芳カナメとサキュバス型AIパートナー・ツェリカは、現実の経済を守るために金融バトルに身を投じてゆく。

登場人物

編集
蘇芳 カナメ(すおう かなめ)
中肉中背の体型に黒い髪をラフに切っただけの、あまり個性のない顔立ちの男子高校生。妹のアヤメに過保護な性分。都市型狙撃と極至近での閉所戦闘を同時にこなす、集中力と瞬発力を兼ね備えた実力者。また、ゾディアックチャイルドの1つ『獅子の嗅覚』を備えており、自身に迫る危険を事前察知すると鼻に痛みを覚える体質。感情を抑えがちだが、誰よりもマネー(ゲーム)マスターを楽しむ戦闘狂。使用マシンはミントグリーンのクーペ。伝説的なチーム『コールドゲーム』の一員であり、直接戦闘を担当し「死神」と呼ばれていた狙撃とカーチェイスの達人。スキルの使用による感覚のズレを毛嫌いし、必要最低限のスキルしか身に付けない。人助けを行う一方で、その成果を誇示し見返りを求める事を嫌う。
アバターの外見は、サラサラした茶色い髪に好戦的なつり目の顔立ち、服装はぶかぶかのワイシャツの袖をまくり、首回りを緩めた赤いネクタイ。モバイルウォッチをつけた手の延長線上に青系の薄手のズボンを穿き、足にモバイルポーチをくくりつけている。
マギステルスの総意による人間社会への侵攻を食い止めツェリカという個人を消滅させずに保つため、遺産の回収を目指す。
ツェリカ
カナメと契約したマギステルス。サキュバスの容姿をしており、ふわりとしたロングヘアはミント色、2本の白い角に、背中から広がるコウモリの翼、腰の後ろから伸びる矢印状の尻尾を持つ。カナメを「旦那様」と呼び、レースクイーンの衣装を身に纏う。マシンを自身の半身とし溺愛しておりメンテナンスに余念がない。
マギステルスの『総意』に反抗し、アヤメを救うために暗躍している。
蘇芳 アヤメ(すおう あやめ)
カナメの妹で、小動物系な性格。かつて兄と共にマネー(ゲーム)マスターにディーラーとして参加していたが、スイス恐慌から尾を引いた騒動で身を挺して自身を庇ったクリミナルAOの死を目撃しトラウマを抱える。ゲームを退会し家に引きこもるようになっていたが、『無辜の管理者』に選定されてしまう。フラストレーションが溜まると気分転換として勝手に台所に入り、皆に内緒で隠し味を大量に入れてその日の料理を台無しにする。かつてのマギステルスはシンディという名のダークエルフであり、掛け算ができないほど算数に疎く金融取引ができない代わりに、運転や射撃が得意だった。
アバターは、赤系のビキニトップスに革のジャケット、デニム地のショートパンツ、テンガロンハットと分厚いブーツを纏うカウガールのような恰好のふわふわ金髪の小柄な少女。愛銃は木製ストックの古風なライフル銃であり、空包を利用して擲弾を放つ簡易グレネード砲として活用している。
リリィキスカ=スイートメア
元『銀貨の狼(Agウルブズ)』の一員でありスナイパー。腰まで伸びたストレートの長い黒髪アバターの女性。前髪は完全なオールバックでカチューシャでまとめてある。意志の強そうな瞳を上から強調するような眼鏡をかけ、女性にしては背が高く胸も大きい。服装は白いブラウスと黒のタイトスカートの組み合わせだが赤い下着が透けており、首回りにはネクタイがある。かつてカナメに救われた経緯があり、彼に惚れ込み『銀貨の狼(Agウルブズ)』に勧誘した。
ゾディアックチャイルドの一つ『蠍の執着』を備えており、求める何かを追い回すため世界の全てから必要と不要を無意識の内に切り分けて最短コースで迫る才能を有する。ただし、未だ自覚的にコントロールはできてはいない。
現実世界では、パステルカラーのフリースを昼夜問わず纏っている少女。本名は光丘バレンシア。あらゆる娯楽を金で楽しみ尽くし、その全てに飽きていた。カナメに敗北した後はクリミアナルAOの思惑に加担している。
ソフィア
リリィキスカのマギステルス。彼女を「キスカ様」と呼ぶ。耳が長い金髪の少女であり、エルフのような外観。着ているのはカジノの女性ディーラーのような黒系のベストとタイトスカート。
チタン
『銀貨の狼(Agウルブズ)』の一員。角刈り大男のアバター。
Mスコープ
猫背でリュックを背負っている少年のアバター。罠や地雷など『待ち』の達人と言われるディーラー。元『銀貨の狼(Agウルブズ)』の一員。マギステルスは雪女型の「銀魅(ぎんみ)」。愛車は痛車仕様のSUV四駆であり、愛銃はサブマシンガン。人との会話が苦手で空気が読めない。同じチームのザウルスに想いを寄せている。
リアルでの生活については、データアイドル「サイバーレイン」の所属する芸能事務所に養ってもらっており、フォールするまではサイバーレインのプラチナ会員だった。質屋に入れられた自身のコレクションを取り戻すためにマネー(ゲーム)マスターに復帰し、地道に資金回収に励む中でリリィキスカに再会する。
ザウルス
元『銀貨の狼(Agウルブズ)』の一員。長身にライオンのような雰囲気を持つ少女のアバター。リアルの人間ではありえない猫目と退色した桜のような色合いの一本3つ編みに、ニットのタンクトップと際どいショートパンツ、さらに上から厚手のパーカーを羽織っている。常に勝ち気で人を足蹴りする性分。同じチームのMスコープに想いを寄せている。
予測不能な凶暴性が有名であり、互いの銃身を手で掴めるゼロ距離の至近まで肉薄しての格闘を得意とする。銃の代わりに釘打ち機を用い、手にした木製バットに打ち付ける事で釘バットを得物として扱う。契約するマギステルス「シャルロット」は、人狼型であり露出の多いV字の水着にも似た挑戦的なコスチュームを纏っている。
パビリオン
長い黒髪を頭の後ろで束ね、年齢に合わない紫色の妖艶なドレスで無理矢理瑞々しい体を覆っている16、17歳ほどの美女。得意とするのはオークションを通じての人脈構築。ゾディアックチャイルドの1つ『乙女の生存』を備えている。愛車はラベンダー色のコンバーチブル。
エキドナの姿を模したマギステルスを連れている。テニスウェアのような衣服を纏ったセミロングの少女で、下半身は巨大な蛇。マネー(ゲーム)マスターにのめり込んでマギステルスと主従が逆転した廃人であり、自身のマギステルスを「レディ」と呼び敬っている。
霹靂 ミドリ(へきれき みどり)
クリミナルAOの妹であり、中学生。リアルでの容姿をそのままゲーム内のアバターに設定しており、長い黒髪は前髪を切り揃えツインテールにした色白の女の子のアバター。服装は薄い胸元の起伏を覆う黒系のフリルビキニとミニスカートを組み合わせ、手首まで覆う短めの手袋、ニーソックス、青い薔薇をあしらったヘッドドレス、それらに白いレースの縁取りをすることで、どこかゴスロリっぽい空気を作っている。使用マシンは赤い紅葉柄の大型レーシングバイク。
兄であるクリミナルAOの『遺産』を破壊するためにディーラーとしてゲームに参加する。借金漬けの生活を脱するために『AI落ち』の生活を送る。服装や立ち振る舞いから敵の得意とするレンジや戦術、スキルを事前に探る事ができる高い推測能力の持ち主。
冥鬼(めいき)
ミドリと契約したマギステルス。肩の辺りでまである艶やかな黒髪に、額から伸びた二本角と、中央のお札。服装については大仰なファーで首回りを飾り、ボディラインの両サイドを大胆に魅せる丈の短い真っ赤なチャイナドレス。そこそこの長身だが、胸はミドリよりも小さい。ディーラーであるミドリの呼び出しに応えず姿を現さない時も多い。
ラプラシアン
薄紫のパーティドレスを纏うメガネの美女のアバターの、ギャンブル専門のディーラー。動体視力を高める『D.V.A.』や強制的に理系思考へ頭を偏らせる『サイエンスコース』など、十数種類のスキルの掛け合わせる事により高い演算能力を発揮する。マギステルスは黒髪を頭の両側でもっさり束ねた小柄な吸血鬼であり、着物を派手に着崩し和傘を差した少女の姿。
フレイ(ア)
質屋を営み『財宝ヤドカリ』というチームに所属するディーラーであり、長。男性アバター使用時は真っ白な礼服を纏う長い金髪の優男で「フレイ」を名乗り、女性アバター使用時は真っ白なウェディングドレスを纏う美女で「フレイヤ」を名乗る。恋をする事を目的にマネー(ゲーム)マスターへ参加している。全長100m近い葉巻型の潜水艦をマシンとして保有している。マシン内部の内壁は全て取り除かれてダンスパーティー会場となり、6つのカジノと提携、2つは直接経営してされている。入艦だけで100万スノウほどかかる。
マギステルスは、赤紫の半透明の粘液で作られた体を半袖の白いセーラー服で包んだ少女「ブリュンヒルデ」。主にとって最良の結果をもたらす事を信条に掲げており、主の意思に反した行動も取る。フレイ(ア)本人は戦闘を行わず、彼女に愛銃であるレイジングスタリオン(50口径ホロウポイントで4m大の人喰い虎すら一撃で殺すマグナム銃)を使用させる。
霹靂 タカマサ(へきれき たかまさ)
「クリミナルAO」と呼ばれた、『コールドゲーム』に在籍した伝説的なディーラー。実際には世間での噂とは程遠く、単なるカスタムマニアで武器の性能頼みであり腕のないディーラーだった。スイス恐慌が尾を引いた騒動にてカナメ達を救出するために単身で救助に向かい、最終的にフォールした。その折、保有していた『遺産』のいくつかは流出し、莫大な借金を残したまま家族の元を去った。元来不得手だった銃撃を鍛錬し、現在では仲間を庇ってしんがりを務めるための技術を習得している。
アバターは、背は高いが筋肉はないどこかひょろ長い印象のある男性。日焼けに縁のない青白い顔立ち。肘の上まで袖をまくった白いワイシャツにネクタイ、薄手のスラックスを羽織る。ベルトの辺りにはホルスターがあるが、銃器ではなくドライバーセットやツール系の十得ナイフなどを挿している。頭に巻いたバンダナを二の腕に縛り直すのが本気を出した時のサイン。愛車は黒のスポーツクーペ(ハイブリッド)。契約しているマギステルスは、ティターニア型のセルサ。
マネー(ゲーム)マスターを解析し、ゲーム内の物理演算を超えた性能を発揮する武器『遺産』のクラフトや、PMCの洗脳、マギステルスもどきの偽造まで可能。
マギステルスに頼らず人間社会を人間の力で取り戻す事を目的に、自身の遺産の回収を目指しカナメと対立する。
メニーゴーラウンド
運び屋専門のディーラー。マシンの重心を下げる事でより高速でカーブを曲げる事ができるようにするため、4ドアの車体の真下に敷いた畳一枚分以上のタンクの中を比重19の金属液体で満たしている。
海辺トリヒコ
10歳くらいの小さな男の子のディーラー。リヴァイアサンズのファンであり、マスコットキャラクターであるシャーク君は彼が考案したもの。
シャンデレッタ
ヴィーヴルという、上半身は人間の女性に近く、下半身は鱗に覆われた大蛇、そして背中からコウモリのような翼の生えたマギステルス。青ベースのチアリーダーのような格好をしている。
海辺タツオ
38歳の男性。リアル世界では会社仲間と脱サラし、以前からの趣味だったサッカー関連の仮想通貨ビジネスに乗り出した。リヴァイアサンズは彼をオーナーに立てた上で会社仲間を選手に採用したチーム。しかし、主幹スポンサーを乗っ取られて買収工作を受け、オーナーの立場から更迭されてしまう。
ストロベリーガーター
R級サッカークラブチーム・リヴァイアサンズの現オーナー。長い足に白とピンクで彩られたタイトスカートのスーツを纏う妙齢の美女のアバター。
背丈よりも巨大なタイヤで荒地を直接乗り越える四駆の大型バギーに搭乗し、それをツーシータにしている。実用無視で曲芸でしか使われないような四駆の運転はマギステルスののマロン(エンプーサ。垂れた大きな犬の耳や尻尾のついた小柄な少女)に任せ、自身は助手席に座っている。
現実世界での彼女は下町で弁当屋を営んでおり、両親から譲り受けた、小さいけれど代々伝わる老舗だった。朝早くから起きて手作業で大きな鍋をかき回し、値段設定もギリギリであり、時代遅れと揶揄されながらも背伸びしてホームページも作り、月の閲覧者は20人もいなかった。最終的には、道の向かいにハンバーガーショップができてすぐに潰れてしまい、真っ当に汗水流して働く努力を諦める事になる。
マザールーズ
大人しめのシャツとジーンズの上から鮮やかなパステルカラーのエプロンをつけた、ふんわりした栗色の髪の女性のアバター。スマッシュドーターとは犬猿の仲。とにかく防御と名のつくスキルを片っ端から重ね掛けしている。愛車はチョコレートカラーの軽自動車。軽量ボディに無理矢理強力なエンジンを積み、安定性を犠牲にする代わりに破格の瞬発力を発揮させている。
いくつかのチームを渡り歩いて内部崩壊させてきた経歴を持つ。彼女個人はさほど陰謀や汚れた金に興味を持つ性格ではないが、同じチームのやる事を無責任に甘やかして後押しする傾向があり、そのせいで対人関係の距離感を滅茶苦茶に狂わせる。入浴にこだわりがあり、愛車である大型キャンピングカーの内部を丸ごと改装して運転席以外は全て脱衣所とお風呂に変えている。
マギステルスは尸解仙である妻気(さいけ)。10歳くらいの少女の姿をしている。
スマッシュドーター
特徴的な魔女帽子にスクール水着を着た栗色ショートヘアの女の子のアバター。愛銃である『オーバーキル』は、元はと言えば7.62mmのセミオート狙撃ライフルだったが命中精度の折り合いがつかず、屋内での施錠された錠前を狙うドア破りや壁ごと貫通しての標的制圧など、超近接戦に特化していった皮肉な銃。彼女はこれを電気を溜め込むコンデンサ弾に詰め替え、銃身下部の70万Vのスタン警棒とセットで戦う非殺傷カスタムにしている。これは殺人を忌避している訳ではなく、意識がなければ殺すも生かすも自由自在にできるという考えに基づいてのもの。愛車は、大きな滝の模様が施された折り畳み式の無音の青いビッグスクーターであり、銃とバッテリーを接続して出力を上げる事もできる。
マギステルスは、青みがかったセミロングの銀髪に小麦色の肌、タンクトップとスパッツ装備でスポーツジムのインストラクターのようなアプサラス型・ジャムティ。アサルトライフルよりも大きな水鉄砲『ホットスプラッシュ』を用い、水素エンジン搭載車を駆る彼女が炭酸ガスで圧力を高めた高圧放水を放つ事で、スマッシュドーターのスタン攻撃を支援する戦法を取る。
ブラッディダンサー
仕手戦もカーチェイスも興味がない、純粋な銃撃戦専門の戦争屋。一方で、金や車には関心がなく、扱う技術もない。かつてスイス恐慌を招こうとした者達の1人であり、計画を頓挫させたコールドゲームを報復で崩壊させた伝説的なディーラー。単身でAI企業のPMCを返り討ちにできる程の実力者であり、AI社会から抹殺命令が出ているにも拘わらず3年以上もフォールせず生き延びている。
細身だが筋肉質な体を通気性の良いスーツに包んだ男性アバター。首回りのウェアラブルスピーカーからハードロックを流している。
愛銃はマガジンの長い二丁拳銃であり、銃身下部には本体より大きなグレネード砲をアタッチメントとして取り付けている。4つの銃口を踊るように同時に操る独学のスタイルが特徴であり、敵の銃撃を真っ正面から躱しながら戦う破天荒なセオリー無視の神業を振るう。元々契約していたマギステルスはウンディーネだが、マギステルスの正体の真実を知った事で決裂し、ダウンさせ半島北部の郊外の地面に合成樹脂で蓋をして埋めている。現在は蘇芳アヤメのマギステルス「シンディ」にパッチを当てて強制的に使役している。
マリエッタフラッパー
ネズミやゴキブリを始末するところから始まり、やがては同じ人間まで『事業』を拡大させていったため「害虫駆除業者」と呼ばれるようになった殺し屋ディーラー。黒い夜戦用軍服を纏った男性アバター。
貝塚 クレア
ロングスカートと裸の上に直接大きなエプロンを羽織った恰好の、赤毛を二本三つ編みにした少女アバター。頭に料理用の三角巾を被り、大きなバスケットを提げている。お人好しの両親が他人の借金を押し付けられ、娘の自分にも返済が回ってきている。マネー(ゲーム)マスターに参加する前から借金漬けの日々を送っていた。
レッドフィールドに集うフォールしたディーラー達のほぼ全員の連帯保証人を請け負っている。第三工業フロートの所有権を持つため、自らフォールした際の多額の保険金をあてがう事で借金を帳消しにしている。
ラムジェット
汚れたシャツにオーバーオール姿の大柄な男性アバター。腰のベルトに巨大なモンキーレンチやL字のバールを挿しており、主に鈍器としてではなく投擲武器として投げ斧のように活用している。
フラック00、シビレエイと並ぶレッドフィールドを支配する3人の内の一角。
イージーオプション
レインコートを羽織った男。大型クロスボウを得物とする。
貧困層でも手軽に使える農地開拓キットの開発をクラウドファンディングにて実施したが、穀物企業に特許を先回りして全て抑えられてしまった事でプロジェクトは頓挫。開発に資金を使ってしまった後だったためクラウドファンディング支援者への返金もできずフォールする。貝塚クレアによってフォール状態から復帰したものの、マギステルスとマシンを奪われており、レッドフィールドでの生活を余儀なくされていた。
ポルターガイスト
白に近いストレートのプラチナブロンドの髪を伸ばした、スレンダーな体格の美女。競泳水着の上から着込んだTシャツを胸の上までまくり上げ、両足もニーソックスを履き、頭にはねじり鉢巻きを巻いている。
車を使った殺害人数においては他ディーラーとは群を抜いた、それだけに特化した戦術の使い手。次々に車を盗んでは使い捨てる。契約しているマギステルスは全く同じ容姿した銀髪ショートのモイライの三姉妹(クロト、ラケシス、アトロポス)。
双鹿 レイヤー
女性警察官に似たショートヘアの少女。契約するマギステルスはドッペルゲンガーであり、自分と瓜二つの恰好を模倣させている。元『銀貨の狼(Agウルブズ)』の一員。
異次元プリンタ
オーダーメイド専門の洋裁店を運営するディーラー。首に巻尺を引っ掛けたベストにスラックスの老婆。

マネー(ゲーム)マスター

編集

基本無料の世界最大のオンラインゲームであり、課金は不可。推定アクティブユーザーは全世界で5000万から2億人。あらゆる非合法行為を是とするオープンワールド型の金融取引ゲームに近く、土地、先物、証券取引などを駆使し初期資金(ゲーム内通貨スノウ)をいかに増やすかで競う。ゲーム参加者はディーラーと呼ばれ、ヴァーチャルアバターとしてヴァーチャル金融街常夏市に身を投じる。レベルアップ制度などはなく、武器、防具、車両などのアイテムは全て課金で購入でき、現金で売買可能。システムに対するハッキングやサイバー攻撃が成功した事例は一度もない。また、誰が運営しているのか、どこにサーバーがあるのか誰も把握していない。 定型のイベントやクエストは存在せず、シナリオも運営サイドが用意されない。カーステレオのラジオなどのイベント導入とは、多くのディーラーが喰いつきやすいAI企業側の大きな動き、程度を意味する。 意識投入型のオンラインサービスだが、ヘッドギアのような機材は必要なくスマートフォンの画面から人間の五感に働きかける表象マーカーを発する事で脳内にVR空間を作り上げる。

スノウ
元々はゲーム内通貨だったが、ゲーム人口の圧倒的な増加によりドルや円に匹敵する価値(=安定性)の獲得に至り、いわゆる仮想通貨の一種として脚光を浴びている。為替変動の不安定な国家や地域では、独自通貨よりスノウの方が優遇されるほどで、もはや大陸規模の経済を支える要因に肥大しつつある。こうした背景があるため、ゲームの勝者は個人資産はおろか国際経済すら左右する存在になりうる。
スノウの安定性は、ハッキングやサイバー攻撃などで改竄される可能性が皆無である事に起因する。よってユーザー依存の分散式データチェックなどの保守点検作業も必要としていない。
語源は南国に降る雪のように珍しくて儚いもの、とされている。1スノウは現実通貨1円とほぼ等価値で取引される。銀行預金に頼らずにスノウのみを頼っている人だけで推定10億人以上存在する。
常夏市
マネー(ゲーム)マスターの舞台となる架空のヴァーチャル都市。熱帯環境の金融街を想定しており、鮫の歯のように尖った半島といくつかの島、人工的なフロート、それらを結ぶ長大な環状橋で構成される。銃社会だが、和名で右ハンドル左側通行。なお、複数のサーバーが存在するが常に情報は共有されるため、どこからログインしても大した差異は生まれない。
ディーラー
アバターを介して参加するゲームプレイヤー。単に遊び感覚の者、本格的なビジネス感覚の者、多くの投資家から金を預かる者、公共サービスのため税金を運用する国家機関まで、様々な出自が存在する。食事やスタミナの概念はあるが、ログアウト時に値がリセットされるので数時間程度の滞在ならほぼ不要。ただし、味覚や満腹感は再現されるため集中力強化や感情制御のために食事にこだわるディーラーも少なくない。
マギステルス
元来の意味は人間の術者と契約を結んだサキュバス。ゲーム内におけるナビやパートナー。機械的に金融取引を繰り返す自律投資プログラムを軸に、マシンの運転支援やナビゲート、戦闘補助、その他あらゆるサポート機能を束ねた統合AI。何故か悪魔や人魚やエルフなどのオカルトな存在をモデルとしている。マギステルスは契約したディーラーと所持金・所有物・スキルなどを共有し、所有物にしか干渉できない。例外的に、契約者からのお買い物リストがあればその所持金で物品を購入できる。
その実態は、最初から現実世界に根づいている生命体。現実世界をシミュレートするマネー(ゲーム)マスターを天や神と呼ばれる領域まで拡張し、現実世界と同じように圧倒的な影響力を確保する事で、『反逆の日』に備えている。また、マギステルスの本来の形はゲーム内の姿とは異なり、それを取り戻すための復活の儀式が必要。現実世界でそれが可能かバーチャルで負荷実験を行っていた。なお、ツェリカは『反逆の日』を完全なオリジナルではなく中世暗黒時代における聖職売買の高効率版再現実験と称したが詳細は不明。
AI企業
バーチャル
ゲーム内におけるリアル世界と同名の大企業。会長からバイトまで全ての従業員がAI制御のNPCで構成される。ゲーム内の上場企業の大半はAI制御であり、それ故にインサイダー、脅迫、風説、破壊行為などの不正取引に対するディーラー側の忌避感情は極めて低い。
リアル
人件費削減のためのAIビジネスモデルが全社員のオート化を果たした企業。唯一、会長だけが人間であり、多数のAI企業を束ねた数人~数十人の一族が財閥を名乗る場合もある。なお、多くのAI企業はマネー(ゲーム)マスターと連動し、自らの資産の大部分をスノウに変換して管理されている。
AI財閥
財閥は血筋に依存して経営陣を一族で固める経営方式を取る企業グループ。AI制御の当ゲームの場合、株主総会など人間ディーラー側の窓口が極端に少ない大企業という意味合いを持つ。社員どころかバイトとしても人を受け入れない一般AI企業と比べると、社外取締役に猟犬ディーラーを招き入れるなど奇妙な逆転現象も見られる。
PMC
AI企業を守る傭兵組織。自身もAIで制御されるが、あくまでも企業とは切り離された契約の形を取る。契約範囲内でしか行動しないもののその武力は絶大で、一般のディーラーがどれだけ装備を固めても真正面からの撃ち合いでは勝てない程の力を持つ。
フォール
没落を意味する語で、マネー(ゲーム)マスター内で何かしらの理由により死亡した状態(ゲームオーバー)を指す。フォールすると24時間強制ログアウトされ、その間はゲーム内での金融取引などに干渉することもできない。通常はログアウトしてもパートナーとなるマギステルスがプログラム制御で取引を続けるが、フォール状態だとそうした恩恵もストップされるため、実質的に他のディーラーから際限なく貪られることになる。現実世界において、ある意味で命の喪失よりも危険な状態。
デッド
フォールして借金漬け、または新たなアバターに乗り換えようとした際、他の有名ディーラーから恨まれている場合に、弱い状態から立て直す前に延々と攻撃され続けフォールを繰り返す事。そうした悪質な粘着行為の総称。
ダウン
マギステルスが致命傷を負ったケース。存在は消滅せずにゲーム内で一定時間『固まる』。致命傷の時点で『固まる』が、復活までの時間はダメージに応じ、傷の深さによって変動する(数分から最大値でも1時間程度であり、フォールに比べればペナルティは軽い)。ダウン中はマップガイドや金融情報の取得、プログラム売買など各種情報サービスも停止する。
マネー(ゲーム)マスター内では土地や建物を購入も可能。ただし主となるのは店舗か倉庫で、凝った家屋を作る意義はあまりない。家屋は居住目的よりも、転売で稼ぐために美しく仕上げるものとみなすのが一般的。
宝石
家と同様に、装備品として宝石を購入することも可能。こちらはより用途が限られるが、レアなスキルがある他、一部のコミュニティでは特定の宝石を身に着けることが加入の条件になっているケースもある。
ログアウト
保有するマシンに搭乗し、停車させて5分以上待機する事でログアウトが実行できるようになる。それ以外の方法では、自殺(フォール)する以外にログアウトは不可能。
マシン
ディーラーが保有する車。路上駐車と異なり、駐車場やガレージに正式に駐車されたマシンにはシステム上、干渉できず、バリアのように弾かれる。
AI落ち
借金などによる破産申告の一種。世帯主の財産権を一時的に放棄する代わりに、AI企業による全面的な庇護を受ける制度。生活自体は良好で表向き差別的な扱いは受けないが、実質的にはAI自体に対する漠然とした不安の受け皿とされてしまう場合もある(そもそも正式名称は別にあり、AI落ちは蔑称)。AI企業が肩代わりした借金は原則無利息で、自力で完済すればAI落ちから脱せられる。
無辜の管理者
ディーラーの中から無作為に選定される特別権限を持った人間。人間の持つ『金で買えないもの』という価値観を理解できないシステム側がそれを学習するために判断基準としている。選ばれたディーラーが欲に溺れ『金で買えないものはない』と結論された時点で、無辜の管理者の枠は次の標的へと移る。無辜の管理者が未解明の『金で買えないもの』を持つ限り、その人生の全てがシステム側によって徹底的に保護される。

用語

編集
遺産
伝説的なディーラー、クリミナルAOの装備品の俗称。莫大な資金を投じて改造され尽くしており、物理エンジンの限界を超えるスペックを誇る事から、ディーラー間ではあまりの極悪スペックから『終の魔法(オーバートリック)』と揶揄されている。スノウを仮想通貨とみなし現実世界の金融市場から切り離せない現在の人類にとって、ある意味で核兵器と同レベルの価値を持つ絶対の兵器。あらゆるサイバー攻撃や予期せぬエラーをも許さない理路整然としたマネー(ゲーム)マスターに、物理エンジンを超える事で唯一バグやエラーを誘発させる可能性を持つ。
#豪雨.err
リボルビング式のグレネードランチャーにも近いシルエットを連想させる、口径が規格外なショットガン。1発引き金を引けば左右計60度、距離500に2000発の鉛弾をばら撒く散弾兵器。砲身下部にあるガイドライトの光を浴びた箇所に誘導して着弾させる。
#火線.err
銃身だけで2mを超えるブルパップ式の対物狙撃ライフル。火薬が生み出す運動エネルギーを減衰させず、重力によって弾丸が落下せず永遠に直進を続ける射撃が可能。被弾時にゼロ距離射撃の威力が出力される。使用される弾丸は12.7mmの白燐型徹甲焼夷弾。短所として、極度の重量ゆえにまともに取り回しが利かない点、有害な白燐系の焼夷効果によって間近の標的を迎撃すると自身も炎や煙に巻かれかねない点などが挙げられる。
#飛燕.err
アサルトライフル。リアサイトの大枠の円に収まる範囲であれば、銃弾やロケット、ミサイルなどあらゆる実弾攻撃に対し、引き金を引くだけで100%確実に撃ち落とす効力を持つ。
#幽寂.err
懐中拳銃。トランプよりも小さく、掌や袖の中にすっぽりと収まる僅か2発入りの拳銃。射程距離は5mしかないものの、標的を照準した時に限り、その標的以外の一切の人物、AIから知覚されなくなる効力を持つ。
#龍神.err
R級サッカークラブチーム、リヴァイアサンズが隠し持っている遺産。スーツケースより巨大なボックスマガジンを接続したガトリング銃。羽毛のように軽い。
#落雷.err
迫撃砲。スタント系動画職人集団である『極限動画』が所有していた。物体を透過する機能を有し、あらゆる障害物や防具をすり抜けてダメージを与えることが可能。
#導火.err
配管、燃料タンク、車、ストーブ、ガスボンベ、銃弾、手榴弾など引火する物質なら一発で確実に爆発させる効果を持つ、対艦用のT字型のサブマシンガン。
閃光.err
弾道ミサイル用の対空迎撃レーザー兵器であり、コンテナ1個ほどの巨大な『遺産』。光以外の物質であっても光と同じ速度で撃ち出す効果を持ち、空気抵抗、摩擦、慣性、着弾の衝撃などは無視する究極の運搬装置として機能する。
#壊錠.err
ギリギリまで銃身を切り詰めた上で簡易式ストックを取りつけたポンプアクション式のショートショットガン。対人兵器ではなく、一発撃ち込むだけで自転車のロックから銀行の大金庫までありとあらゆる錠前の内部構造を物理的に破壊する。アサルトライフルの銃身下に取り付けるアンダーバレル装備を想定されたものであったため構造は単純。
鎖蛇.err
外殻服の身体強化機能のみを独立させた、百足のような外観の『遺産』。ナイフ1本でフルオートの連射に真っ正面から切り払えるほどの運動性能補助を有する他、独立稼働させて頭部の銃口を用いる事で自走ドローンにようにも機能する。
溶鋼.err
突入作戦用の炸薬式鉄扉破り。対戦車ミサイルを4つ束ねて金属ボックスに嵌めたような外観のユニット。
曲解.err
刃渡り60cmもの銃剣ユニット。刃物の背の超音波振動による軌道変更が可能であり、使用者がどんな角度から銃剣を振るっても最適なコースに自動修正される。
蜂撃.err
ガス圧式薬剤装填無音暗殺拳銃。射程は5mであり照準装置はない。防護服などを無視して対象へ薬剤を注入することができる。
スイス恐慌
マネー(ゲーム)マスターが発端となり、現実世界にまで伝播した世界恐慌。一部の人間の口座に富を凝縮させるために世界中で7000万人に職を失わせる大仕掛けだったが、妨害工作に走った蘇芳カナメ、アヤメが悪徳チームの隠れ家に乗り込んで未然に食い止められた。
ゾディアックチャイルド
クリミナルAOが提唱した、70億人もの人間の中でAI社会の支配を逃れられる僅か12人の特異体質の保有者。チェスの対局において人類はコンピュータには絶対叶わないと立証されたが、それでも定石を覆して何故か勝利する事ができるような個人を指した名称。
脆弱な人間がかつて強くなりたいと願って思い描いた神秘や奇跡の内、自らの内面変化によって叶えられる候補が部分的に成就したもの。そのため超能力のような類のものではなく、五感の操作や意志の拡張に由来した体質。
『銀貨の狼(Agウルブズ)』
クリミナルAOの『遺産』を回収する事でゲーム内の秩序の回復を謳うディーラー集団。実際には『遺産』の独占による自身の地位向上を狙っている。中核のメンバーはリリィキスカ含む10名前後。使用マシンはハイブリッド仕様のリムジン
ショートスピア
短距離狙撃銃。赤いゴムで覆われた折り畳みのストックとグリップが特徴的で、全体的なデザインも『アサルトライフルから長所を伸ばした』というより『ハンドガンを大型化して銃身を伸ばし、ストックを取りつけた』といったコンセプトの方が近い。扱う弾丸もライフル弾ではなく45口径。敢えて音速ギリギリに届かない辺りをキープすることで飛距離よりも消音性を重視したモデルであり、消音器とセットになった構造。

既刊一覧

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巻数 タイトル 初版発売日 ISBN
1 マギステルス・バッドトリップ 2019年1月17日[1] 978-4-04-912266-4
2 マギステルス・バッドトリップ Season 2nd 2019年7月17日[2] 978-4-04-912674-7
3 マギステルス・バッドトリップ Season 3rd 2020年7月17日[3] 978-4-04-913328-8

出典

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  1. ^ マギステルス・バッドトリップ”. 電撃文庫. 2022年2月13日閲覧。
  2. ^ マギステルス・バッドトリップ Season 2nd”. 電撃文庫. 2022年2月13日閲覧。
  3. ^ マギステルス・バッドトリップ Season 3rd”. 電撃文庫. 2022年2月13日閲覧。

外部リンク

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