ジョアン・ミル
ジョアン・ミル・マイラタ (Joan Mir Mayrata, 1997年9月1日 - ) は、スペインのバレアレス諸島パルマ・デ・マヨルカ出身のオートバイレーサー。身長181 cm、体重68 kg[1]。
ジョアン・ミル | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2023年 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
国籍 | スペイン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
生年月日 |
1997年9月1日(27歳) バレアレス諸島マヨルカ島 パルマ・デ・マヨルカ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
現在のチーム | レプソル・ホンダ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ゼッケン | 36 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ウェブサイト | MIR 36 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2015年よりロードレース世界選手権に参戦。2017年のMoto3クラスチャンピオン。2019年よりMotoGPクラスにチーム・スズキ・エクスターから参戦し、2020年にMotoGPクラスチャンピオンを獲得した。
経歴
編集初期の活動
編集ミルは6歳の頃、初めて小型オートバイに乗ったが、同世代のライバルたちに比べ、レースキャリアの始まりは遅かった[1]。父親はマヨルカ島でローラースケートショップを営んでおり[1]、ミルの少年時代はローラースケートやスケートボード、キックスクーターと共にあった[2]。やがて、世界GP125ccクラスのライダーだった叔父のジョアン・ペレロに影響され、10歳の頃からレースに取り組むようになった。チーチョ・ロレンソ(ホルヘ・ロレンソの父親)が運営するスクールや、バレアレス・モーターサイクル連盟のスクールでライディングの基礎を学び、バレアレス選手権やバンキアカップで経験を積んだ[2]。
2013年より若手ライダーの登竜門、レッドブルMotoGPルーキーズカップに参戦。2014年は3勝を挙げ、ホルヘ・マルティンに次ぐランキング2位を獲得した。2015年はFIM CEVレプソルMoto3ジュニア世界選手権に参戦し、4勝を挙げてランキング4位。同年のMotoGP第16戦オーストラリアGPに尾野弘樹の代役として出場し、世界選手権Moto3クラスにデビューした[3]。
ロードレース世界選手権参戦
編集Moto3クラス
編集2016年、レオパード・レーシングよりMoto3クラスにレギュラー参戦を開始。前半戦は苦戦するも、第10戦オーストリアGPで初ポールポジションからポール・トゥ・ウィンで初優勝。後半戦はコンスタントに上位を走り、2位1回・3位1回を加え年間ランキング5位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。
2017年はマシンをKTMからホンダ・NSF250RWにスイッチ。接戦でアクシデントの多いMoto3において全18戦中17戦でポイント獲得、うち優勝10回・2位2回・3位1回という卓越した成績を収め、ランキング2位に93点差をつけMoto3クラスチャンピオンを獲得した[3]。軽量クラスで年間2桁勝利を記録したのは、125 cc時代のバレンティーノ・ロッシ(1997年11勝)とマルク・マルケス(2010年10勝)以来となる。
Moto2クラス
編集2018年はMoto2クラスにステップアップし、2017年王者フランコ・モルビデリの後継としてマークVDSレーシングチームに加入。4度の表彰台(2位2回・3位2回)、ランキング6位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。
シーズン前半の第5戦フランスGP後に、早くも2019年からMotoGPクラスにステップアップすることを発表した[4]。ミルはホンダと仮契約を交わしていたが、スズキから好条件のオファーを受け、Moto2クラスのタイトルを狙うよりも、最高峰のMotoGPクラスにファクトリーライダーとして昇格するチャンスを選択した [5]。
MotoGPクラス
編集2019年はチーム・スズキ・エクスターへ加入し、アレックス・リンスのチームメイトとしてスズキ・GSX-RRをライディングする[6]。第10戦チェコGP後のブルノテストで転倒し、肺挫傷のため2戦を欠場[7]。復帰後は7戦連続ポイントを獲得し、オーストラリアGPでシーズン最高5位を記録。初年度をランキング12位で終える。2019年のルーキー・オブ・ザ・イヤーにはファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)が選ばれ、ミルの3クラス連続受賞はならなかった。
2020年も同じ体制で2年目のシーズンを迎えた。新型コロナウイルス感染症によるカレンダー再編、王者マルク・マルケス(レプソル・ホンダ)の長期欠場という混迷のシーズンにおいて、ミルは優勝争いに浮上する。序盤3戦で2度の転倒リタイアを喫したが、第5戦オーストリアGPで2位初表彰台を獲得。続くスティリアGPではレース中盤までトップを快走するも、赤旗中断・再スタートの時点で新品のフロントタイヤが残っておらず、4位に後退した。その後も表彰台の常連に定着し、アラゴンGP終了時点でクアルタラロを抜きポイントリーダーに立つ。第13戦ヨーロッパGP(バレンシア)ではMotoGPクラス初優勝をリンスとのワンツーフィニッシュで達成[8]。続く第14戦バレンシアGPでシリーズチャンピオン獲得が決定した[9][10]。グランプリレギュラー参戦開始から5年目、23歳75日での最高峰クラス制覇は史上7番目の若さ[11]。また、2000年のGP500 ccクラスのケニー・ロバーツJr.以来20年ぶりにスズキのチャンピオンライダーとなり、同社の創業100周年・世界GP参戦60周年に花を添えた[12]。
2021年はチャンピオンとして3年目のシーズンを迎えた。第9戦スティリアGPでファステストラップをマークする活躍を見せるが、王者ながらも未勝利のままランキング3位でシーズンを終えた。
2022年も同じ体制で4年目のシーズンを迎えた。しかし、スズキの撤退に伴って来シーズンのシートは不明のままになっていた。第13戦オーストリアGP時点では契約締結は近いと明かしていたが、8月30日にホンダと2年契約締結を発表。ワークスチームであるレプソル・ホンダにマルケスとの体制で戦っていくことが決まった[13]。第14戦サンマリノGPではオーストリア戦の決勝レース時に右足首の距骨の小さな骨折と距骨靭帯を損傷し15日間の安静を要することとなったため欠場。渡辺一樹が代走することが決まった。
人物
編集スペイン語の"J"の発音から「ホアン・ミル[14]」と表記される場合もあったが、本人は「ジョアン」が正しいとのこと[15]。
出身地はホルヘ・ロレンソと同じマヨルカ島だが、憧れのライダーはバレンティーノ・ロッシだった[2]。また、母国スペインのテニス選手ラファエル・ナダルがコート内外で見せるふるまいを尊敬している[2]。
レース前の準備では必ず新品の青いパンツを履き、靴下やライディングスーツを右から着るというルーティンを通じて集中力を高めていく[15]。
ステップアップの過程で苦戦する選手も多いなか、ミルは1年目に環境に慣れ、2年目にはチャンピオンを争うという適応力を示しており、「クレバーでハイレベルなライディングをコンスタントにできるライダー」と評価されている[16]。2017年のMoto3タイトルを制したときは、ポールポジション1回ながら優勝10回を記録した。2020年は最高峰クラスでは史上最も少ないシーズン1勝でチャンピオンを獲得した(それまでの最少記録は2勝が4回)[11]。ポールポジション0回でのチャンピオンは1992年のウェイン・レイニー以来28年ぶり[11]。
おもな戦績
編集世界選手権
編集シーズン別
編集年 | クラス | マシン | チーム | 出走回数 | 勝利数 | 表彰台数 | PP | FL | ポイント | ランキング |
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2015年 | Moto3 | ホンダ・NSF250R | レオパード・レーシング | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | NC |
2016年 | Moto3 | KTM・RC250GP | レオパード・レーシング | 18 | 1 | 3 | 1 | 2 | 144 | 5位 |
2017年 | Moto3 | ホンダ・NSF250RW | レオパード・レーシング | 18 | 10 | 13 | 1 | 3 | 341 | 1位 |
2018年 | Moto2 | カレックス | EG 0,0 Marc VDS | 18 | 0 | 4 | 0 | 1 | 155 | 6位 |
2019年 | MotoGP | スズキ・GSX-RR | チームスズキエクスター | 17 | 0 | 0 | 0 | 0 | 92 | 12位 |
2020年 | MotoGP | スズキ・GSX-RR | チームスズキエクスター | 14 | 1 | 7 | 0 | 0 | 171 | 1位 |
2021年 | MotoGP | スズキ・GSX-RR | チームスズキエクスター | 18 | 0 | 6 | 0 | 1 | 208 | 3位 |
2022年 | MotoGP | スズキ・GSX-RR | チームスズキエクスター | 16 | 0 | 0 | 0 | 0 | 87 | 15位 |
2023年 | MotoGP | ホンダ・RC213V | レプソル・ホンダ | 15 | 0 | 0 | 0 | 0 | 26 | 22位 |
2024年 | MotoGP | ホンダ・RC213V | レプソル・ホンダ | 14 | 0 | 0 | 0 | 0 | 20* | 20位* |
合計 | 149 | 12 | 33 | 2 | 7 | 1244 |
クラス別
編集クラス | 年 | デビュー戦 | 初表彰台 | 初勝利 | 出走回数 | 勝利数 | 表彰台数 | PP | FL | ポイント | タイトル |
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Moto3 | 2015-2017 | 2015年オーストラリア | 2016年オーストリア | 2016年オーストリア | 37 | 11 | 16 | 2 | 5 | 485 | 1 |
Moto2 | 2018 | 2018年カタール | 2018年フランス | 18 | 0 | 4 | 0 | 1 | 155 | 0 | |
MotoGP | 2019-現在 | 2019年カタール | 2020年オーストリア | 2020年ヨーロッパ | 94 | 1 | 13 | 0 | 1 | 604 | 1 |
合計 | 2015-現在 | 149 | 12 | 33 | 2 | 7 | 1244 | 2 |
年別
編集年 | クラス | マシン | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 順位 | ポイント |
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2015年 | Moto3 | ホンダ | QAT | AME | ARG | SPA | FRA | ITA | CAT | NED | GER | IND | CZE | GBR | RSM | ARA | JPN | AUS Ret |
MAL | VAL | NC | 0 | ||
2016年 | KTM | QAT 12 |
ARG 5 |
AME Ret |
SPA 6 |
FRA 25 |
ITA 7 |
CAT 8 |
NED 8 |
GER Ret |
AUT 1 |
CZE 8 |
GBR 9 |
RSM 3 |
ARA 5 |
JPN 9 |
AUS Ret |
MAL Ret |
VAL 2 |
5位 | 144 | |||
2017年 | ホンダ | QAT 1 |
ARG 1 |
AME 8 |
SPA 3 |
FRA 1 |
ITA 7 |
CAT 1 |
NED 9 |
GER 1 |
CZE 1 |
AUT 1 |
GBR 5 |
RSM 2 |
ARA 1 |
JPN 17 |
AUS 1 |
MAL 1 |
VAL 2 |
1位 | 341 | |||
2018年 | Moto2 | カレックス | QAT 11 |
ARG 7 |
AME 4 |
SPA 11 |
FRA 3 |
ITA 3 |
CAT Ret |
NED 5 |
GER 2 |
CZE Ret |
AUT 8 |
GBR C |
RSM 5 |
ARA 6 |
THA Ret |
JPN 11 |
AUS 2 |
MAL 10 |
VAL Ret |
6位 | 155 | |
2019年 | MotoGP | スズキ | QAT 8 |
ARG Ret |
AME 17 |
SPA Ret |
FRA 16 |
ITA 12 |
CAT 6 |
NED 8 |
GER 7 |
CZE Ret |
AUT |
GBR |
RSM 8 |
ARA 14 |
THA 7 |
JPN 8 |
AUS 5 |
MAL 10 |
VAL 7 |
12位 | 92 | |
2020年 | SPA Ret |
ANC 5 |
CZE Ret |
AUT 2 |
STY 4 |
RSM 3 |
EMI 2 |
CAT 2 |
FRA 11 |
ARA 3 |
TER 3 |
EUR 1 |
VAL 7 |
POR Ret |
1位 | 171 | ||||||||
2021年 | QAT 4 |
DOH 7 |
POR 3 |
SPA 5 |
FRA Ret |
ITA 3 |
CAT 4 |
GER 9 |
NED 3 |
STY 2 |
AUT 4 |
GBR 9 |
ARA 3 |
RSM 6 |
AME 8 |
MAL Ret |
ALG 2 |
VAL 4 |
3位 | 208 | ||||
2022年 | QAT 6 |
INA 6 |
ARG 4 |
AME 4 |
POR Ret |
SPA 6 |
FRA Ret |
ITA Ret |
CAT 4 |
GER Ret |
NED 8 |
GBR Ret |
AUT Ret |
RSM |
ARA DNS |
JPN |
THA |
AUS 18 |
MAL 19 |
VAL 6 |
15位 | 87 | ||
2023年 | ホンダ | POR 11 |
ARG DNS |
AME Ret |
SPA Ret |
FRA Ret |
ITA DNS |
GER | NED | GBR Ret |
AUT Ret |
CAT 17 |
RSM Ret |
IND 5 |
JPN 12 |
INA Ret |
AUS Ret |
THA 12 |
MAL Ret |
QAT 12 |
VAL DNS |
22位 | 26 | |
2024年 | QAT 13 |
POR 12 |
AME Ret |
SPA 12 |
FRA Ret |
CAT 15 |
ITA Ret |
NED Ret |
GER 18 |
GBR Ret |
AUT 17 |
ARA 14 |
RSM WD |
EMI 11 |
INA Ret |
JPN Ret |
AUS Ret |
THA 15 |
MAL | VAL | 20位* | 21* |
* 現在進行中
脚注
編集- ^ a b c “Joan Mir” (英語). Team SUZUKI. SUZUKI Motor Corporatin (2020年). 2020年11月12日閲覧。
- ^ a b c d “Biography”. MIR36 (2020年). 2020年11月12日閲覧。
- ^ a b “ジョアン・ミル、2017年Moto3クラスチャンピオン”. MotoGP.com (2017年10月22日). 2020年11月12日閲覧。
- ^ “MotoGP:スズキ、未決の1席に2017年Moto3王者ジョアン・ミルの起用を発表。2019年から2年契約結ぶ”. autosport web. (2018年6月11日) 2020年11月12日閲覧。
- ^ “ジョアン・ミル「ホンダよりもスズキのオファーの方が充実していた」”. motorsport.com日本版. (2018年7月12日) 2020年11月12日閲覧。
- ^ “スズキ、MotoGPの2019年シーズン参戦体制を発表”. スズキ (2019年2月4日). 2020年11月12日閲覧。
- ^ “ジョアン・ミル、善戦見せるも裏では“呼吸に苦戦”。完全回復はまだ先?”. motorsport.com日本版. (2019年12月20日) 2020年11月12日閲覧。
- ^ “MotoGP 第13戦 ヨーロッパGP 決勝”. スズキレーシングレポート. スズキ株式会社 (2020年11月8日). 2020年11月18日閲覧。
- ^ “MotoGP 第14戦 バレンシアGP 決勝”. スズキレーシングレポート. スズキ株式会社 (2020年11月15日). 2020年11月18日閲覧。
- ^ “2020年MotoGPチャンピオンシップ優勝 ジョアン・ミル 「スズキでのタイトル獲得は、他のメーカーでのタイトル獲得より価値がある」”. 気になるバイクニュース. (2020年11月16日) 2020年11月18日閲覧。
- ^ a b c “ジョアン・ミルのチャンピオンナンバー”. MotoGP.com (2020年11月15日). 2020年11月18日閲覧。
- ^ “ジョアン・ミルがMotoGPチャンピオンに。スズキ20年ぶりのタイトル”. RIDING SPORT. (2020年11月16日) 2020年11月18日閲覧。
- ^ “ホンダMotoGP、2023年からジョアン・ミルとの2年契約を締結。2020年王者がマルク・マルケスのチームメイトに”. motorsport.com日本版. (2022年8月30日) 2022年8月30日閲覧。
- ^ “HONDA Riders Close UP Moto3 ホアン・ミル Leopard Racing”. 本田技研工業 (2017年). 2020年11月15日閲覧。
- ^ a b “MotoGPライダー ジョアン・ミルInterview 一旗揚げてやるぜ!の気概を感じさせた好青年「ジョアン」ミル選手”. Web Mr.Bike (2019年3月4日). 2020年11月16日閲覧。
- ^ “最高峰クラス参戦2年目にして才能開花。チャンピオンシップをリードするジョアン・ミル/MotoGP第13戦レビュー”. autosport web. (2020年11月11日) 2020年11月16日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- MIR 36
- JoanMir36 (@JoanMirOfficial) - X(旧Twitter)
- Joan Mir - Team SUZUKI
- Profile - MotoGP.com