ベールイの定理
ベールイの定理(ベールイのていり、英: Belyi's theorem)とは、代数的数を係数として定義された任意の非特異代数曲線 C は、リーマン球面上3点のみで分岐する分岐被覆となるようなコンパクト・リーマン面であるという定理である。
この定理はゲンナジー・ウラジーミロヴィチ・ベールイによって1979年に証明された。 当時驚くべき結果だと考えられ、代数的数体上の非特異代数曲線を組合せ的なデータで記述する子供の絵の理論をグロタンディークが構築する契機となった。
人名のBelyi(露: Белый)はベールイとカナ表記されることもあれば[1]、数学の文献においてベリーとカナ表記されることもある[2]。
上半平面の商
編集ベールイの定理から、考えているリーマン面は商空間
- H/Γ
を尖点でコンパクト化したものと同型となることがわかる。ここで、H は上半平面、 Γ はモジュラー群の有限指数部分群である。 モジュラー群は非合同部分群を持つので、これは定理の曲線がモジュラー曲線となることを意味しない。
ベールイ関数
編集コンパクト・リーマン面 S からリーマン球面 P1(C)への正則写像であって、3点のみで分岐するものをベールイ関数と言う。メビウス変換と合成することにより、この3点は とすることができる。 ベールイ関数は子供の絵によって組合せ的に記述することができる。
ベールイ関数と子供の絵は、ベールイの定理は現れないものの、少なくともフェリックス・クラインの研究にまで遡ることができる。クラインは論文(Klein 1879)の中で、モノドロミー群が PSL(2,11) である複素射影直線の11重被覆の研究にこれらを用いた。[3]
応用
編集出典
編集- ^ 「ベールイ」 。コトバンクより2024年4月30日閲覧。
- ^ 星裕一郎「遠アーベル幾何学の進展」『数学』第74巻第1号、2022年、1–30頁、doi:10.11429/sugaku.0741001。
- ^ le Bruyn, Lieven (2008), Klein's dessins d'enfant and the buckyball.
参考文献
編集- Serre, Jean-Pierre (1997). Lectures on the Mordell-Weil theorem. Aspects of Mathematics. 15. Translated from the French by Martin Brown from notes by Michel Waldschmidt (Third ed.). Friedr. Vieweg & Sohn, Braunschweig. doi:10.1007/978-3-663-10632-6. ISBN 3-528-28968-6. MR1757192
- Klein, Felix (1879). “Über die Transformation elfter Ordnung der elliptischen Functionen [On the eleventh order transformation of elliptic functions]” (German). Mathematische Annalen 15 (3–4): 533–555. doi:10.1007/BF02086276 .
- Belyĭ, Gennadiĭ Vladimirovich (1980). “Galois extensions of a maximal cyclotomic field”. Math. USSR Izv 14 (2): 247–256. doi:10.1070/IM1980v014n02ABEH001096. MR0534593.
発展資料
編集- Girondo, Ernesto; González-Diez, Gabino (2012), Introduction to compact Riemann surfaces and dessins d'enfants, London Mathematical Society Student Texts, 79, Cambridge: Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-74022-7, Zbl 1253.30001
- Wushi Goldring (2012), “Unifying themes suggested by Belyi's Theorem”, in Dorian Goldfeld; Jay Jorgenson; Peter Jones et al., Number Theory, Analysis and Geometry. In Memory of Serge Lang, Springer, pp. 181–214, ISBN 978-1-4614-1259-5