ベザフィブラート(Bezafibrate)は脂質異常症の治療に用いられるフィブラート系薬剤の一つである。血中LDLコレステロールおよびトリグリセリドを低下させ、HDLコレステロールを上昇させる。商品名ベザトールSR。ベザリップ、開発コードBF-759。

ベザフィブラート
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com 国別販売名(英語)
International Drug Names
MedlinePlus a682711
法的規制
データベースID
CAS番号
41859-67-0 チェック
ATCコード C10AB02 (WHO)
PubChem CID: 39042
IUPHAR/BPS英語版 2668
DrugBank DB01393en:Template:drugbankcite
ChemSpider 35728 チェック
UNII Y9449Q51XH チェック
KEGG D01366 en:Template:keggcite
ChEBI CHEBI:47612en:Template:ebicite
ChEMBL CHEMBL264374en:Template:ebicite
化学的データ
化学式C19H20ClNO4
分子量361.819 g/mol
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歴史

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1978年に西ドイツで販売が開始され、1983年に徐放性が発売された[1]:1。日本では、1991年1月に徐放性製剤が承認された。

作用機序

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他のフィブラート系薬剤同様、PPARαを活性化する。一部の研究では、PPARγおよびPPARδも活性化されることが示唆されている。

効能・効果

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日本で承認されている効能・効果は「高脂血症(家族性を含む)」である。ベザフィブラートはLDLコレステロールおよびトリグリセリドを減少させ、HDLコレステロールを増加させるので、複合型脂質異常症英語版の治療に有効である[2]メタボリックシンドローム患者の心血管状態を改善する[3]。耐糖能の低下した患者に対する臨床試験の結果、ベザフィブラートは糖尿病の発生時期を遅らせることができ[4]HOMA-IR指数英語版で評価されたインスリン抵抗性が改善した[5]。加えて、糖尿病または高血糖症を伴う脂質異常症患者の前向き観察研究では、抗糖尿病薬の併用に関係なく、ベザフィブラートはヘモグロビンA1cの値を有意に低下させることが示された[6]

禁忌

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  • 人工透析患者(腹膜透析を含む)
  • 腎不全等の重篤な腎疾患のある患者
  • 血清クレアチニン値が2.0mg/dL以上の患者
  • 過敏症の既往歴のある患者
  • 妊婦または妊娠している可能性のある婦人

原則禁忌

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  • 腎機能に関する臨床検査値に異常がある患者へのスタチンとの併用

副作用

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重篤な副作用はとして添付文書に記載されているものは、横紋筋融解症ショックアナフィラキシー、肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑である[7][8][9]


他の用法

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オーストラリアでは、ベザフィブラートとケノデオキシコール酸の合剤が、C型肝炎の治療薬として販売されている。

ベザフィブラートは、タウタンパク質の過剰なリン酸化、ならびにヒトタウ変異を有するトランスジェニックマウス英語版でのタウオパチーを減少させる[10]

出典

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  1. ^ ベザトールSR錠100mg/ベザトールSR錠200mg インタビューフォーム” (PDF). キッセイ薬品 (2010年11月). 2015年4月12日閲覧。
  2. ^ “Secondary prevention by raising HDL cholesterol and reducing triglycerides in patients with coronary artery disease: the Bezafibrate Infarction Prevention (BIP) study”. Circulation 102 (1): 21–7. (2000). doi:10.1161/01.cir.102.1.21. PMID 10880410. 
  3. ^ Tenenbaum, A; Motro, M; Fisman, EZ; Tanne, D; Boyko, V; Behar, S (2005). “Bezafibrate for the secondary prevention of myocardial infarction in patients with metabolic syndrome”. Archives of Internal Medicine 165 (10): 1154–60. doi:10.1001/archinte.165.10.1154. PMID 15911729. 
  4. ^ Tenenbaum, A; Motro, M; Fisman, EZ; Schwammenthal, E; Adler, Y; Goldenberg, I; Leor, J; Boyko, V et al. (2004). “Peroxisome proliferator-activated receptor ligand bezafibrate for prevention of type 2 diabetes mellitus in patients with coronary artery disease”. Circulation 109 (18): 2197–202. doi:10.1161/01.CIR.0000126824.12785.B6. PMID 15123532. 
  5. ^ Tenenbaum, A; Fisman, EZ; Boyko, V; Benderly, M; Tanne, D; Haim, M; Matas, Z; Motro, M et al. (2006). “Attenuation of progression of insulin resistance in patients with coronary artery disease by bezafibrate”. Archives of Internal Medicine 166 (7): 737–41. doi:10.1001/archinte.166.7.737. PMID 16606809. 
  6. ^ Teramoto T, Shirai K, Daida H, Yamada N. Effects of bezafibrate on lipid and glucose metabolism in dyslipidemic patients with diabetes: the J-BENEFIT study. Cardiovascular Diabetology英語版 2012, 11:29. http://www.cardiab.com/content/11/1/29, PMID 22439599
  7. ^ ベザトールSR錠100mg/ベザトールSR錠200mg”. www.info.pmda.go.jp. 2023年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月30日閲覧。
  8. ^ ベザトールSR錠100mg/ベザトールSR錠200mg 添付文書” (2016年2月). 2016年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月27日閲覧。
  9. ^ ベザリップ錠100mg/ベザリップ錠200mg 添付文書” (2015年11月). 2016年6月27日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ Dumont M, Stack C, Elipenahli C, Jainuddin S, Gerges M, Starkova N, Calingasan NY, Yang L, Tampellini D, Starkov AA, Chan RB, Di Paolo G, Pujol A, Beal MF (2012). “Bezafibrate administration improves behavioral deficits and tau pathology in P301S mice”. Human Molecular Genetics英語版 21 (23): 5091–5105. doi:10.1093/hmg/dds355. PMID 22922230.