フランシス・ロイセール
フランシス・ロイセール(Francis Reusser、1942年1月1日 ヴヴェ - 2020年4月10日[1])は、スイスの写真家、映画監督である。
来歴・人物
編集1942年1月1日、スイス・ヴォー州ヴヴェに生まれる。ヴヴェ写真学校(École supérieure d'arts appliqués de Vevey)に学ぶ。同時期に同い年でのちの映画監督イヴ・イェルサンが在学していた。
卒業後、テレヴィジオン・スイス・ロマンド(TSR)でテレビ番組の製作にたずさわる。当時同社には、のちに製作会社「グループ5」を設立する「ヌーヴォー・シネマ・スイス」の中心人物である、アラン・タネールやクロード・ゴレッタ、ミシェル・ステーらが演出部にぞろぞろといた。ロイセールは、その後もマガジン番組(magazine、レポート番組、インタビュー番組)も多く演出している。
1968年、26歳のとき、イヴ・イェルサンら新人ばかり4人の監督によるオムニバス映画『Quatre d'entre elles』に参加、その一篇『22 ans - Patricia』で映画監督となる。主演はパトリシア・モラーズ。また、ジャック・サンドス監督の一篇『31 ans - Erika』にロイセールは出演している。
つづいて1969年、劇映画『Vive la mort』で長編映画の監督としてデビュー。前作のオムニバスの一篇に主演した女優パトリシア・モラーズと共同で脚本を書いた。撮影監督は新人のレナート・ベルタを抜擢。同年ベルタは、アラン・タネール監督の長篇デビュー作『どうなってもシャルル』の撮影監督をつとめるが、ロイセールは同作に重要な役で俳優として出演する。
1975年、ジュネーヴのジュネーヴ高等視覚芸術学校(ESAV、École Supérieure de l'Art Visuel、現ESBA)にフランソワ・アルベラ(現ローザンヌ大学映画史映画美学科教授)とともに、音響視覚学科を設立した。同年、その新学科に入学するのが、のちのジャン=リュック・ゴダールの音響を支えることとなる録音技師、フランソワ・ミュジーであった。
1976年、長篇第2作『Le Grand soir』を撮り、ロカルノ国際映画祭でグランプリにあたる金豹賞を受賞。本作の録音にはそれまで助手であったリュック・イェルサンを抜擢する。ベルタが撮影監督をつとめたダニエル・シュミット監督の『ラ・パロマ』(1974年)や、フレディ・ムーラー監督の『われら山人』(1975年)などドイツ語圏での他流試合の実績を買ってのことである。同年、ロイセールはタネール監督の『ジョナスは2000年に25才になる』に出演した。
2作目の成功したがしばらく間があって、1980年に前作に主演したニエル・アレストラップを主演に『Seuls』を撮ることになる。同作の撮影ベルタ、録音イェルサンは、前年の1979年にフランスのグルノーブルからおなじレマン湖畔の小村ロールに移住してきたばかりのゴダール監督による、商業映画復帰第1作『勝手に逃げろ/人生』の現場から帰ってきたところだった。その後次の長編映画『パッション』(1982年)を撮ろうとしているゴダールに、ロイセールは学校の教え子ミュジーを推薦[2]、これが25歳のミュジーにとっての録音技師デビューとなる。
1970年代の映画界を彩る「ヌーヴォー・シネマ・スイス」の一角にいるロイセールは、1999年、ピエール・エテックスやルイス・ブニュエルを支えた脚本家ジャン=クロード・カリエールとコラボレートした『La Guerre dans le Haut Pays』を始め、現在ももちろん新作を発表し続けている。にもかかわらず、現時点で、日本では1作たりとも商業公開されていない。公開が待たれる作家である。
フィルモグラフィー
編集- Quatre d'entre elles オムニバス 1968年
- 参加監督クロード・シャンピオン、フランシス・ロイセール、ジャック・サンドス、イヴ・イェルサン
- 22 ans - Patricia 監督 主演パトリシア・モラーズ
- 31 ans - Erika 出演 監督ジャック・サンドス
- 参加監督クロード・シャンピオン、フランシス・ロイセール、ジャック・サンドス、イヴ・イェルサン
- Vive la mort 1969年 監督・脚本・編集 共同脚本パトリシア・モラーズ、撮影レナート・ベルタ、音楽パトリック・モラーツ ※長篇デビュー作
- どうなってもシャルル Charles mort ou vif (Charles, Dead or Alive) 1969年 出演
- 監督・脚本・製作アラン・タネール、撮影レナート・ベルタ、録音助手リュック・イェルサン
- Le Grand soir 1976年 監督 撮影レナート・ベルタ、録音リュック・イェルサン、出演ニエル・アレストラップ 製作アルトコ=フィルム ※ロカルノ国際映画祭金豹賞受賞
- ジョナスは2000年に25才になる Jonas qui aura 25 ans en l'an 2000 1976年 出演
- 監督アラン・タネール
- Seuls 1980年 監督 撮影レナート・ベルタ、録音リュック・イェルサン、出演ニエル・アレストラップ、クリスティーヌ・ボワソン、マイケル・ロンズデール、ビュル・オジェ 製作アルトコ=フィルム
- Derborence 1985年 監督・編集 製作テレヴィジオン・スイス・ロマンド(TSR)ほか
- La Loi sauvage 1988年 監督 出演ミシェル・コンスタンタン、リュカ・ベルヴォー、エレーヌ・ラピオヴァル、ロラン・アムシュトゥッツ、エマニュエル・マシュエル 製作MK2ディフュージョン
- Visages suisses ドキュメンタリー 1991年 監督
- Jacques & Françoise 1991年 監督・脚本 録音フランソワ・ミュジー、出演ジュヌビエーヴ・パスキエ、ロラン・アムシュトゥッツ
- La Guerre dans le Haut Pays 1999年 監督・脚本 共同脚本ジャン=クロード・カリエール、撮影クリストフ・ボーカルヌ、録音フランソワ・ミュジー、出演マリオン・コティヤール、ヤン・トレグエ、フランソワ・マルトゥレ 製作CABプロデュクションほか
- Les Vacances de Romaine テレビ映画 1999年 監督 テレヴィジオン・スイス・ロマンド(TSR)
- Histoires de fête オムニバステレビ映画 2000年
- 参加監督ジャン=フランソワ・アミゲ、ナディア・ファレス、ピエール・マニャン、フランシス・ロイセール、レイモン・ヴイヤモス
- 製作CABプロデュクション、アルテ、テレヴィジオン・スイス・ロマンド(TSR)
- La fille à la caméra 監督
- Voltaire et L'Affaire Calas テレビ映画 2007年 監督 出演クロード・リッシュ、バルバラ・シュルツ
註
編集- ^ “Le cinéaste Francis Reusser est décédé” (フランス語). Tribune de Genéve. (2020年4月11日) 2020年4月14日閲覧。
- ^ フランソワ・ミュジー インタヴューの記述より。
外部リンク
編集- Francis Reusser - IMDb 映画