ヒト胎盤性ラクトゲン
ヒト胎盤性ラクトゲン (ヒトたいばんせいラクトゲン、英: human placental lactogen、略称: hPL) あるいは ヒト胎盤性乳腺刺激ホルモン (ヒトたいばんせいにゅうせんしげきホルモン、英: human chorionic somatomammotropin、略称: HCS) とは、胎盤から分泌されるポリペプチドホルモンである。1963年に発見された。
chorionic somatomammotropin hormone 1 (ヒト胎盤性ラクトゲン) | |
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Crystal Structure of Human Placental Lactogen.[1] | |
識別子 | |
略号 | CSH1 |
Entrez | 1442 |
HUGO | 2440 |
OMIM | 150200 |
RefSeq | NM_001317 |
UniProt | Q6PF11 |
他のデータ | |
遺伝子座 | Chr. 17 q22-q24 |
chorionic somatomammotropin hormone 2 | |
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識別子 | |
略号 | CSH2 |
Entrez | 1443 |
HUGO | 2441 |
OMIM | 118820 |
PDB | 1Z7C (RCSB PDB PDBe PDBj) |
RefSeq | NM_020991 |
UniProt | P01243 |
他のデータ | |
遺伝子座 | Chr. 17 q22-q24 |
胎盤性ラクトゲン(乳腺刺激ホルモン)はサル、ヒツジ、ラットなど多くの哺乳類に存在しているホルモンであり、hPLはそのなかでも人間に存在するものを指す。その構造と作用はヒト成長ホルモンと類似している。またヒト成長ホルモンと同様に、hPL遺伝子は17番染色体のq22-24(17q22-24)に存在する。
hPLは妊娠中に胎盤の合胞体性栄養膜から分泌される。分泌されたhPLは抗インスリン作用などにより、妊娠中の母体の糖質・脂質 代謝を調節する。代謝調節の結果として、胎児への栄養供給が促進される[2]。
構造
編集hPLは191個のアミノ酸残基からなる一本鎖のポリペプチドであり、分子量は22,125である。分子内には2個のジスルフィド結合と8個のヘリックスがある。hPLの結晶構造は2.0 Aの分解能のX線回折法で同定された[1]。
濃度
編集hPLは妊娠中にしか存在せず、胎児と胎盤が成長するにつれて母体におけるhPLの血中濃度は上昇する。出産期になると血中濃度は最高に達し、通常は5-7 mg/Lとなる。多胎児を妊娠している場合、血中濃度はより高くなる。hPLは胎児の循環系にはほとんど取り込まれない。hPLの血中半減期は15分である。
生理作用
編集hPLは母体の代謝システムに下記のように作用する。
- 代謝
これらの機能は母体が栄養失調に陥ったときでも胎児の栄養吸収を補助する。
HPLは、成長ホルモンと似た弱い作用を示す。成長ホルモンと同じ方法で組織においてタンパク質合成を引き起こすからである。しかし、hPLが成長を促進するには成長ホルモンの100倍の量を必要とする。[3]hPL遺伝子のエンハンサーは遺伝子の2kb下流に発見されており、細胞特異的なhPL遺伝子の発現制御に関与している。
医学検査におけるhPL
編集妊娠初期には切迫流産や胞状奇胎の指標として有用である。妊娠後期から末期には胎児-胎盤機能の管理の指標として利用される[4]。
脚注
編集- ^ a b PDB: 1Z7C; Walsh ST, Kossiakoff AA (May 2006). “Crystal structure and site 1 binding energetics of human placental lactogen”. J. Mol. Biol. 358 (3): 773?84. doi:10.1016/j.jmb.2006.02.038. PMID 16546209.
- ^ Josimovich JB, Atwood BL, Goss DA (October 1963). “Luteotrophic, Immunologic and Electrophoretic Properties of Human Placental Lactogen”. Endocrinology 73: 410?20. doi:10.1210/endo-73-4-410. PMID 14068826.
- ^ Guyton and Hall (2005). Textbook of Medical Physiology (11 ed.). Philadelphia: Saunders. pp. 1033. ISBN 81-8147-920-3. "This hormone has weak actions similar to those of growth hormone, causing the formation of protein tissues in the same way that growth hormone."
- ^ 検査項目レファレンス/総合検査案内、2016年9月11日閲覧。
参考文献
編集- Speroff L, Glass RH, Kase NG (1999). Clinical gynecologic endocrinology and infertility (Sixth ed.). Hagerstwon, MD: Lippincott Williams & Wilkins. ISBN 0-683-30379-1
- “RCSB Protein Data Bank - Structure Summary for 1Z7C - Crystal Structure of Human Placental Lactogen”. 2016年9月11日閲覧。
- “Human Chorionic Somatomammotropin Enhancer Function Is Mediated by Cooperative Binding of TEF-1 and CSEF-1 to Multiple, Low-Affinity Binding Sites”. 2016年9月11日閲覧。
関連人物
編集関連項目
編集- 胎盤性ラクトジェン (ヒト以外の動物)
- 成長ホルモン
- ポリペプチド
- en:Somatotropin family
外部リンク
編集- Human Placental Lactogen - MeSH・アメリカ国立医学図書館・生命科学用語シソーラス