パレネ (衛星)
パレネ[6][7] (Saturn XXXIII Pallene) は、土星の第33衛星である。非常に小さい天体であり、2004年に土星探査機カッシーニの調査チームによって発見された。付近を公転するメトネと共に、カッシーニが撮影した画像の中から発見された初めての衛星である。
パレネ Pallene | |
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カッシーニによって2004年に発見された際の画像
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仮符号・別名 | 仮符号 S/2004 S 2 S/1981 S 14 別名 Saturn XXXIII |
分類 | 土星の衛星 |
軌道の種類 | アルキオニデス (内大衛星群の副群) |
発見 | |
発見日 | 2004年6月1日[1] |
発見者 | カッシーニ画像班[1] |
軌道要素と性質 元期:2004年6月20日 | |
軌道長半径 (a) | 212,280 ± 5 km[2] |
離心率 (e) | 0.0040[2] |
公転周期 (P) | 1.154 日[3] |
軌道傾斜角 (i) | 0.1810° ± 0.0014° (土星の赤道)[2] |
近日点引数 (ω) | 16.074°[3] |
昇交点黄経 (Ω) | 123.180°[3] |
平均近点角 (M) | 356.229°[3] |
土星の衛星 | |
物理的性質 | |
三軸径 | 5.76 × 4.16 × 3.68 km[4] |
平均半径 | 2.22 ± 0.07 km[4] |
質量 | 3.3 ×1013 kg[5] |
平均密度 | 0.25 g/cm3[4] |
自転周期 | 公転と同期 |
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発見と命名
編集パレネは、カッシーニが撮影した画像の中から、カッシーニの画像解析に携わるチームによって2004年6月1日に発見された[8][9]。メトネの発見と合わせて、同年8月16日に国際天文学連合のサーキュラーで公表され、S/2004 S 2 という仮符号が与えられた[9]。その後2005年1月21日に、ギリシア神話の巨人「ギガース」の一人、アルキオネウスの7人の娘の一人パレネに因んで命名され、Saturn XXXIII という確定番号が与えられた[10]。
2004年の発見以降に、この衛星がボイジャー2号によって1981年8月23日に撮影されていたことが明らかになった。ボイジャー2号が土星に接近して観測した際にこの天体の写真が1枚だけ撮影されており、このときは S/1981 S 14 という仮符号が与えられていた[11]。土星からおよそ 200,000 km 離れた位置に発見されたものの、その他の画像には写っていなかったため、その段階では軌道を決定することができなかった。2004年の発見報告の段階では、メトネと S/1981 S 14 が同一の天体である可能性に言及されていたが[9]、後の軌道の比較ではパレネと同一の天体であることが示されている[2]。
軌道
編集パレネは、ミマスとエンケラドゥスの間の軌道を公転している。パレネは、エンケラドゥスによる摂動的な平均経度の共鳴によって軌道に影響を受けている。ただし、これはミマスによってメトネに与えられる摂動ほどは大きくない。この共鳴によってパレネの接触軌道要素[注 1]は変動しており、軌道長半径は 4 km 程度、近土点経度は 0.02° (距離に直すと 75 km に相当する) の変動をしている[2]。軌道離心率も複数の時間スケールで 0.002 から 0.006 の間を変動し、また軌道傾斜角も 0.174° から 0.184° の間を変動している[2]。
アンテおよびメトネと極めて近い軌道を持つことから、これらの衛星は力学的に密接な関係にあると推測されている。これらの3つの衛星の起源については、ミマスかエンケラドゥスから分離したという説と、初期に周辺に大量に存在した小衛星の集団の生き残りであるという説がある[1]。
土星の環との関係
編集2006年にカッシーニによって、パレネと同じ軌道にある薄いダストの環が発見され、R/2006 S 2 という仮符号が与えられた[12]。環を構成するダストの前方散乱光を観測することによって検出されている。この環は半径方向におよそ 2,500 km の広がりを持っており、パレネ環と呼ばれている。パレネの表面衝突した微小隕石によって放出された物質で構成されていると考えられている[13]。
脚注
編集注釈
編集- ^ 天体のある瞬間の位置と速度から計算した軌道要素のこと。時々刻々と変化するものであり、摂動などによる短周期での変動を知りたい場合にはこちらが用いられる。一方、長時間で平均して細かい変動を取り除いた軌道要素は平均軌道要素と呼ばれる。
出典
編集- ^ a b c NASA (2017年12月8日). “In Depth | Pallene – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空宇宙局. 2018年11月30日閲覧。
- ^ a b c d e f Spitale, J. N.; Jacobson, R. A.; Porco, C. C.; Owen, W. M., Jr. (2006). “The orbits of Saturn's small satellites derived from combined historic and Cassini imaging observations”. The Astronomical Journal 132 (2): 692–710. Bibcode: 2006AJ....132..692S. doi:10.1086/505206 .
- ^ a b c d Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年11月30日閲覧。
- ^ a b c Thomas, P. C.; Burns, J. A.; Tiscareno, M. S.; Hedman, M. M.; et al. (2013). "Saturn's Mysterious Arc-Embedded Moons: Recycled Fluff?" (PDF). 44th Lunar and Planetary Science Conference. p. 1598. 2013年5月21日閲覧。
- ^ Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年11月30日閲覧。
- ^ “衛星日本語表記索引”. 日本惑星協会. 2019年3月9日閲覧。
- ^ “太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
- ^ Porco, C. C. (2005). “Cassini Imaging Science: Initial Results on Saturn's Rings and Small Satellites”. Science 307 (5713): 1226–1236. doi:10.1126/science.1108056. ISSN 0036-8075.
- ^ a b c Daniel W. E. Green (2004年8月16日). “IAUC 8389: S/2004 S 1, S/2004 S 2; (854); 2004dj”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月30日閲覧。
- ^ Daniel W. E. Green (2005年1月21日). “IAUC 8471: 2005O; C/2004 T8, Y5, Y6, Y7, Y8; Sats OF SATURN”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月30日閲覧。
- ^ Daniel W. E. Green (1995年4月14日). “IAUC 6162: Poss. Sats OF SATURN; AL Com”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月30日閲覧。
- ^ Daniel W. E. Green (2006年10月11日). “IAUC 8759: RINGS OF SATURN (R/2006 S 1, R/2006 S 2, R/2006 S 3, R/2006 S 4); 2006iv, 2006iw, 2006ix, 2006iy, 2006iz, 2006ja; C/2006 P1”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年11月30日閲覧。
- ^ Hedman, M. M.; Murray, C. D.; Cooper, N. J.; Tiscareno, M. S.; Beurle, K.; Evans, M. W.; Burns, J. A. (2008-11-25). “Three tenuous rings/arcs for three tiny moons”. Icarus 199 (2): 378–386. Bibcode: 2009Icar..199..378H. doi:10.1016/j.icarus.2008.11.001. ISSN 0019-1035.