ノッキング・ラウンド・ザ・ズー

ノッキング・ラウンド・ザ・ズー」("Knocking 'Round the Zoo"、旧邦題:精神病院)はジェームス・テイラーが1968年にアップル・レコードからリリースしたデビュー・アルバムに収録した自作曲。テイラーは1966年に自身のバンド、フライング・マシーンでもこの曲を録音していたが、その時の録音は1971年の『ジェームス・テイラー・アンド・ザ・オリジナル・フライング・マシーン英語版』までリリースされなかった。この曲はアップルからフランスでもB面の「サムシング・ラング」とともにシングル(APF 506)としてリリースされた。「ノッキング・ランド・ザ・ズー」と「彼女の言葉のやさしい響き」はテイラーがプロデューサーのピーター・アッシャーにアップルがテイラーと契約するように納得させるために送ったデモテープに含まれていた[1]

「ノッキング・ラウンド・ザ・ズー」
ジェームス・テイラーシングル
初出アルバム『ジェームス・テイラー
B面 サムシング・ラング
リリース
録音 1968年
ジャンル フォークロック
時間
レーベル アップル (APF 506)
作詞・作曲 ジェームス・テイラー
プロデュース ピーター・アッシャー
ジェームス・テイラー シングル 年表
思い出のキャロライナ
1969年
ノッキング・ラウンド・ザ・ズー
1969年
スウィート・ベイビー・ジェイムス英語版
1970年
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オールミュージックの評論家リンゼイ・プラナーは「ノッキング・ラウンド・ザ・ズー」を疑似ブルースと説明した[2]。歌詞はテイラー自身のマクリーン病院英語版精神科への入院経験から導かれている[3][4]。曲の第1ヴァースで、テイラーは "There's bars on all the windows and they're countin' up the spoons"(すべての窓に鉄格子があり、彼らはスプーンの数を数え上げる)と歌っている[5]。実際には、マクリーン病院の窓には鉄格子の代わりに2000ポンド(約900kg)に耐える窓ガラスを使用しているが、食後には特別な道具ですべての金属食器の数を確認している[5][6]。ヴァースはさらに「私がエッジの効いたと感じている場合、私の奴隷になるために支払われたひよこがいる/そして、私が不正行為をしようとしていると彼女が思った場合、彼女は私を針で打つだろう」と述べている[7]。第2ヴァースでは、テイラーはさらにマクリーンの職員に対する怒りを歌っている[5]。第3ヴァースでテイラーは自分がいかに疎外されていると感じたのかを「今、友達全部会いに来ている/彼らは私を指さし笑うだろう」と歌っている[3][8]タイム誌の編集者によると、テイラーはこの詩に「冷酷な狂人の響きを加える」とのことである[8]ローリング・ストーン誌のティモシー・クロースはこの曲のドラムのビートは「不吉」で、ギター演奏は「神経質」であり、これはマクリーンでのテイラーが感じていた「怒りと焦り」を反映していると述べている[5]

ローリング・ストーン・アルバム・ガイド英語版』の評論家、マーク・コールマンは「ノッキング・ラウンド・ザ・ズー」を『ジェームス・テイラー』の「ハイライト」と考えており、この曲を「格好よく」て、テイラーが将来のレコーディングで辿る道筋を予見していると述べている[9]タイム誌はこの曲の「ウィットに富みリフの多い音楽的アイロニー」を称賛している[8]。ローリング・ストーン誌の評論家、ジョン・ランドーは「落ち着いたユーモアのセンスと、より自然主義を兼ね備えている」と述べている[6]。テイラーの伝記作家、ティモシー・ホワイトはアレンジャーのリチャード・ヒューソンがアルバム『ジェームス・テイラー』でのこの曲の冒頭につけた弦楽器による「圧倒的な」前奏を批判している[4]ローリング・ストーン誌のライター、ジュールズ・シーゲルはこの曲が「サドマゾ的幻想」のようなサウンドだと批判している[10]。シーゲルはテイラーが精神病院に入院しているにもかかわらず、「彼の奴隷になるために支払った女性の付き添い」ととに貴族的で支配的であると示唆している。[10]。シーゲルはまた、付添人が彼を針で打つことについての部分も批判している[10]。著述家のイアン・ヘルパリンは『ジェームス・テイラー・アンド・ザ・フライング・マシーン』のCD版での楽器演奏について批判している[3]

脚注

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  1. ^ Browne, D. (2012). Fire and Rain: The Beatles, Simon and Garfunkel, James Taylor, CSNY, and the Bittersweet Story Of 1970. Da Capo Press. ISBN 9780306822131 
  2. ^ Planer, L.. “James Taylor”. Allmusic. 2014年7月3日閲覧。
  3. ^ a b c Halperin, I. (2003). Fire and Rain. Citadel Press. pp. 48-49, 126. ISBN 0806523484 
  4. ^ a b White, T. (2009). Long Ago And Far Away: James Taylor - His Life And Music. Omnibus Press. pp. 118, 229, 138. ISBN 9780857120069 
  5. ^ a b c d Crouse, T. (1971年2月18日). “The First Family of the New Rock”. Rolling Stone: pp. 34-37 
  6. ^ a b Landau, J. (1969年4月19日). “James Taylor”. Rolling Stone. 2014年7月3日閲覧。
  7. ^ McCarthy Bartlett, M. (2011). Loving the Tasmanian Devil: Reflections on Marriage and Asperger Syndrome. AAPC Publishing. pp. 293-294. ISBN 9781934575819 
  8. ^ a b c “James Taylor: One Man's Family of Rock”. Time: pp. 45-53. (1971年3月1日) 
  9. ^ Coleman, M. (1992). DeCurtis, A.; Henke, J.; George-Warren, H.. eds. The Rolling Stone Album Guide (3rd ed.). Straight Arrow Publishers. p. 293. ISBN 0679737294 
  10. ^ a b c Thompson, D. (2012). Hearts of Darkness: James Taylor, Jackson Browne, Cat Stevens, and the Unlikely Rise of the Singer-Songwriter. Backbeat Books. ISBN 9781458471390