ニトロフェン
ニトロフェン (英: Nitrofen) はジフェニルエーテル系薬剤の一種。かつて農薬として用いられていた。
ニトロフェン Nitrofen | |
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2,4-ジクロロフェニル-4'-ニトロフェニルエーテル | |
別称 NIP | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 1836-75-5 |
特性 | |
化学式 | C12H7Cl2NO3 |
モル質量 | 284,10g/mol |
外観 | 無色ないし茶色の結晶状粉末。光に暴露すると黒ずむ。 |
密度 | 1.3g/cm3 |
融点 |
70~71 ℃ |
沸点 |
368 ℃ |
水への溶解度 | 0.0001 g/100 mL (22 ℃) |
危険性 | |
主な危険性 | 環境への影響 |
引火点 | 200 ℃ 以上 |
発火点 | 400 ℃ 以上 |
関連する物質 | |
関連物質 | クロルニトロフェン |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
用途
編集アメリカのロームアンドハース社 (Rohm and Haas) が開発した薬剤で、日本では1963年1月23日に農薬登録を受けた。「ニップ」の商品名で、水田のノビエや、野菜畑や造林苗畑の一年生雑草に対する除草剤として使用されたが、1982年6月30日に登録失効した[1]。欧州連合でも、1988年までにすべての国で使用が禁止されている。
安全性
編集半数致死量(LD50)はラットへの経口投与で740mg/kg、ウサギへの経皮投与で 5,000 mg/kg[2]。皮膚や目に対する刺激性があり、暴露によりヘモグロビンや白血球の減少、中枢神経障害などの症状が見られた[2]。国際がん研究機関(IARC)では発癌性についてGroup2B(ヒトに対し発癌性が疑われる)に分類している。ラットやマウスを使った動物実験では、奇形や死産が増加した[2]。ミジンコの一種での48時間半数致死濃度(LC50)は 0.216 mg/L。水生動物に対する毒性が強く、魚類などで生物濃縮が起こる[2]。可燃性であり、燃焼により有毒ガスを生じる[3]。
脚注
編集- ^ (植村 2002, pp. 304–305)
- ^ a b c d 製品安全データシート(安全衛生情報センター)
- ^ 国際化学物質安全性カード
参考文献
編集- 植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著『農薬毒性の事典 改訂版』三省堂、2002年。ISBN 978-4385356044。