ホソバイラクサ

イラクサ科の種
ナガバイラクサから転送)

ホソバイラクサ(細葉刺草、学名: Urtica angustifolia var. angustifolia)は、イラクサ科イラクサ属多年草 。葉は細長く、托葉は4個ある。やや叢生する[2][3][4][5][6][7]

ホソバイラクサ
長野県上田市 2023年7月下旬 雌株
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : マメ類 Fabids
: バラ目 Rosales
: イラクサ科 Urticaceae
: イラクサ属 Urtica
: ホソバイラクサ
U. angustifolia
学名
Urtica angustifolia Fisch. ex Hornem. (1819) var. angustifolia[1]
和名
ホソバイラクサ(細葉刺草)[2]

特徴

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植物体全体が強靭で多毛、やや淡い淡緑色になる。は丈夫で直立し、高さ50-150cmになり、多数の刺毛が生え、刺毛に刺さると痛い。は対生し、葉身は披針形または狭卵状長楕円形で、長さ8-15cm、幅4cm以下、先端が細長くとがり、縁は粗い単鋸歯になる。基部の葉柄は長さ1-3cm。葉と葉柄にも刺毛が生え、葉の両面に毛が生える。茎の各節に離生した4個の托葉があり、線形で長さ7-8mmになる[2][3][4][5][6][7]

花期は8-9月。ふつうは雌雄異株であるが、ときに雌雄同株となる。葉腋から1対の穂状花序を出す。は小さな緑白色になり、4数性で、雄花の花被片は4個、雄蕊も4個あり、雌花の花被片は4個で小型である[2][3][4][5][6][7]

植物体は乾燥すると濃緑色または碧緑色に変色する[6]

分布と生育環境

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日本では、北海道、本州、四国、九州に分布し[2][5]、山地の林縁の明るい湿った場所[6]、湿地、湿原の周辺などに生育する[4]。世界では、朝鮮半島中国大陸、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する[3][5][6]

名前の由来

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和名ホソバイラクサは、「細葉刺草」の意で、同属のイラクサに比べ、葉が披針形で細長いので「細葉」という[7]。「刺草」は茎葉にある刺毛によって疼痛を感じることによる[6]

属名 Urtica は、ラテン語の uro で、「燃やす」「ちくちくする」に由来する古典ラテン語であり、この属の種にギ酸を含む刺毛があり、触れるとちくちくと痛むことによる[8]種小名(種形容語)angustifolia は、「細葉の」「巾の狭い葉の」の意味[9]

種の保全状況評価

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国(環境省)のレッドデータブックレッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、群馬県が絶滅危惧IA類(CR)、埼玉県が情報不足(DD)、千葉県が重要保護生物(B)、福井県が県域絶滅危惧Ⅰ類、京都府が要注目種、大阪府が準絶滅危惧、兵庫県がAランク、岡山県が絶滅危惧II類となっている[10][11][12]

ギャラリー

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下位分類

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ナガバイラクサ

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ホソバイラクサを基本種とする変種ナガバイラクサ(長葉刺草、学名: Urtica angustifolia Fisch. ex Hornem. var. sikokiana (Makino) Ohwi (1953)[13]シノニム: Urtica sikokiana (Makino) Makino (1910)[14])がある[3][5][6]

特徴

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基本種のホソバイラクサと比べ、全体がやせて細く、刺毛が少ない。茎は直立し、高さは60-100cmになり、まばらに刺毛と細毛が生える。葉は対生し、葉身は狭披針形または線状披針形で、長さ5-8cmになり、先端は尾状に鋭くとがり、基部は円形または浅い心形[3][5][6]、縁はややそろった細鋸歯[6](文献によっては、鋭い大鋸歯[3])がある。葉質は薄く、両面に毛が少数散生し、3本の葉脈が縦に走る。花期は7-8月。雌雄同株。葉腋から穂状花序をだし、上方には雄花序、下方には雌花序がでる。植物体は乾燥すると暗色に変色する[3][5][6]

分布と生育環境

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日本では、本州の中部地方以西の太平洋側、四国、九州に分布し[5][7]、深山の林内や[3]渓流沿いの林内の湿った場所に生育する[6]。世界では、朝鮮半島南部に分布する[3][5][6]。基本種よりは稀な種である[7]

名前の由来

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和名ナガバイラクサは、「長葉刺草」の意で、イラクサの類で葉が細長いのでいう[6]。和名 Nagaba-irakusa は、牧野富太郎 (1909) による命名である。牧野は1910年に、シノニム記載のとおり、Urtica sikokiana (Makino) Makino (1910) として独立種として記載したが、前年に同種を Urtica dioica L. var. sikokiana Makino (1909) として記載した際、和名を Nagaba-irakusa とした[15]

変種名 shikokiana は、「四国産の」の意味[16]

種の保全状況評価

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国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、奈良県が絶滅危惧種、和歌山県が絶滅(EX)となっている[17]

分類

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イラクサ科のうち、植物体に触ると痛い刺毛があるものに、ムカゴイラクサ属 Laportea Gaudich. と本種が属するイラクサ属 Urtica L. があり、ムカゴイラクサ属は葉が互生し、イラクサ属は葉が対生する[18]。イラクサ属に属する日本に分布するは、本種のほか、イラクサ Urtica thunbergiana Siebold et Zucc.[19]エゾイラクサ U. platyphylla Wedd.[20]コバノイラクサ U. laetevirens Maxim.[21]がある[5]

本種とコバノイラクサは、托葉が各節に4個あり、本種の葉は和名のとおり幅が細く、先は細長くとがり、コバノイラクサの葉は卵形から広卵形で小型で先は長くとがらず、鋸歯は単鋸歯となる。コバノイラクサは北海道、本州の近畿地方以北、朝鮮半島、中国大陸に分布する。イラクサとエゾイラクサは、托葉が各節に2個あり、イラクサの葉は卵形で、鋸歯は欠刻状の重鋸歯になるのに対し、エゾイラクサの葉は狭卵形から卵状長楕円形になり、鋸歯は単鋸歯になる。イラクサは本州の福島県以南、四国、九州、朝鮮半島、台湾に分布し、エゾイラクサは、南千島、北海道、本州の中部地方以北、千島列島サハリン、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する[5]

利用

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『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』(2007年、柏書房)の著者の橋本郁三は、同著のなかで、本種について、他の文献(佐藤孝夫著、『北海道山菜図鑑』、1995年)の記述を紹介し、同属のコバノイラクサとともに山菜として「食べられる,と記述されている。」としている[22]

脚注

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  1. ^ ホソバイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.348
  3. ^ a b c d e f g h i j 『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』p.331
  4. ^ a b c d 『新北海道の花』p.405
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 米倉浩司 (2016)「イラクサ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.351-352
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『新分類 牧野日本植物図鑑』pp.669-670
  7. ^ a b c d e f ホソバイラクサ、米倉浩司 (2019)、コトバンク
  8. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1480
  9. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1483
  10. ^ ホソバイラクサ。日本のレッドデータ検索システム、2024年2月4日閲覧
  11. ^ ホソバイラクサ、p.92、埼玉県レッドデータブック2011 植物編、2024年2月4日閲覧
  12. ^ ホソバイラクサ、兵庫県版レッドデータブック2020(植物・植物群落)-No.504、2024年2月4日閲覧
  13. ^ ナガバイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  14. ^ ナガバイラクサ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  15. ^ T. Makino「Observations on the Flora of Japan」『植物学雑誌(The Botanical Magazine)』第23巻第268号、日本植物学会、1909年、84-85頁、doi:10.15281/jplantres1887.23.268_81 
  16. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1513
  17. ^ ナガバイラクサ。日本のレッドデータ検索システム、2024年2月4日閲覧
  18. ^ 米倉浩司 (2016)「イラクサ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』p.341
  19. ^ イラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  20. ^ エゾイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  21. ^ コバノイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  22. ^ 『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』p.142

参考文献

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