コバノイラクサ

イラクサ科の種

コバノイラクサ(小葉の刺草、学名: Urtica laetevirens)は、イラクサ科イラクサ属多年草[3][4][5][6][7]。「刺はなく痛くない。」とする文献もある[3]が、茎と葉に刺毛があり、刺さると痛い[7]

コバノイラクサ
群馬県多野郡 2023年7月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : マメ類 Fabids
: バラ目 Rosales
: イラクサ科 Urticaceae
: イラクサ属 Urtica
: コバノイラクサ U. laetevirens
学名
Urtica laetevirens Maxim. (1876)[1]
シノニム
  • Urtica laetevirens Maxim. subsp. cyanescens (Kom. ex Jarmolenko) C.J.Chen (1983)[2]
和名
コバノイラクサ(小葉の刺草)[3]

特徴

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植物体全体が淡緑色。は四稜形で、直立して高さ50-100cmになる。茎に刺毛と細毛がまばらに生え、刺毛に刺さると痛い。は対生し、葉身は卵形から広卵形で、長さ5-10cm、幅3-5cm、縁は粗い単鋸歯であまりとがらず、重鋸歯にはならない。葉身の先は尾状になるが長くはとがらず、基部は切形または円形、葉の両面はほぼ同色で光沢が無く、両面に短毛が散生し、密に腺点がある。葉柄は葉身の3分の1の長さ。茎の各節に離生した4個の托葉があり、線形で長さ6-7mmになる[3][4][5][6][7]

花期は7-10月。雌雄同株。葉腋から1対の穂状花序を出し、上方の葉腋につく花序は雄花序、下方の葉腋につく花序は雌花序である。穂状花序は長さ2-3cmになり、は小さな緑白色になる。花は4数性で、雄花の花被片は4個で径2mm、雄蕊も4個あり、雌花の花被片は4個で小型である。果実は緑色で卵円形の痩果で長さ1-2mmになる。染色体数は2n=26[3][4][5][6][7]

分布と生育環境

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日本では、北海道、本州の近畿地方以北に分布し、山地の渓流沿いの湿った林内などに生育する[3][4][6][7]。世界では、朝鮮半島中国大陸に分布する[4][6][7]

名前の由来

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和名コバノイラクサは、「小葉の刺草」の意で、小さい葉を持ったイラクサの意味[7]、「刺草」は茎葉にある刺毛によって疼痛を感じることによる[8]

属名 Urtica は、ラテン語の uro で、「燃やす」「ちくちくする」に由来する古典ラテン語であり、この属の種にギ酸を含む刺毛があり、触れるとちくちくと痛むことによる[9]種小名(種形容語)laetevirens は、「鮮緑色の」「ライトグリーンの」の意味[10]

種の保全状況評価

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国(環境省)のレッドデータブックレッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通りとなっている[11]。東京都-絶滅危惧II類(VU)、新潟県-絶滅危惧II類(VU)、滋賀県-分布上重要種、奈良県-絶縁寸前種、徳島県-絶滅危惧IA類(CR)、高知県-絶滅危惧IA類(CR)、福岡県-絶滅危惧IB類(EN)。

ギャラリー

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分類

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イラクサ科のうち、植物体に触ると痛い刺毛があるものに、ムカゴイラクサ属 Laportea Gaudich. と本種が属するイラクサ属 Urtica L. があり、ムカゴイラクサ属は葉が互生し、イラクサ属は葉が対生する[12]。イラクサ属に属する日本に分布するは、本種のほか、イラクサ Urtica thunbergiana Siebold et Zucc.[13]エゾイラクサ U. platyphylla Wedd.[14]およびホソバイラクサ U. angustifolia Fisch. ex Hornem. var. angustifolia[15]がある[6]

本種とホソバイラクサは、托葉が各節に4個あり、本種の葉は卵形から広卵形で小型で先は長くとがらず、鋸歯は単鋸歯になり、ホソバイラクサの葉は本種と比べ幅が細く、先は細長くとがる。ホソバイラクサ(変種のナガバイラクサ var. sikokiana を含む。)は北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する。イラクサとエゾイラクサは、托葉が各節に2個あり、イラクサの葉は卵形で、鋸歯は欠刻状の重鋸歯になるのに対し、エゾイラクサの葉は狭卵形から卵状長楕円形になり、鋸歯は単鋸歯になる。イラクサは本州の福島県以南、四国、九州、朝鮮半島、台湾に分布し、エゾイラクサは、南千島、北海道、本州の中部地方以北、千島列島サハリン、シベリア東部、カムチャツカ半島に分布する[6]

利用

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『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』(2007年、柏書房)の著者の橋本郁三は、同著のなかで、本種について、他の文献(佐藤孝夫著、『北海道山菜図鑑』、1995年)の記述を紹介し、同属のホソバイラクサとともに山菜として「食べられる,と記述されている。」としている[16]

脚注

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  1. ^ コバノイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ コバノイラクサ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.348
  4. ^ a b c d e 『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』p.331
  5. ^ a b c 『新北海道の花』p.405
  6. ^ a b c d e f g 米倉浩司 (2016)「イラクサ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』pp.351-352
  7. ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.670
  8. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.669
  9. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1480
  10. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1499
  11. ^ コバノイラクサ。日本のレッドデータ検索システム、2024年1月29日閲覧
  12. ^ 米倉浩司 (2016)「イラクサ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』p.341
  13. ^ イラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  14. ^ エゾイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  15. ^ ホソバイラクサ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  16. ^ 『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』p.142

参考文献

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  • 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』、1984年、保育社
  • 梅沢俊著『新北海道の花』、2007年、北海道大学出版会
  • 橋本郁三著『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』、2007年、柏書房
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム