ナイアド (衛星)

海王星の第3衛星

ナイアド[6]またはナイアッド[7] (Neptune III Naiad) は、海王星の第3衛星である。発見されている中では最も海王星に近い軌道を公転している。

ナイアド
Naiad
ボイジャー2号によって撮影されたナイアド。 細長く見えるのは、長時間露光に伴う被写体ブレに起因する
ボイジャー2号によって撮影されたナイアド。
細長く見えるのは、長時間露光に伴う被写体ブレに起因する
仮符号・別名 S/1989 N 6
Neptune III
見かけの等級 (mv) 23.9[1]
分類 海王星の衛星
発見
発見年 1989年9月[2]
発見者 ボイジャー2号撮像チーム
軌道要素と性質
元期:1989年8月18日
軌道長半径 (a) 48227 km[3][4]
離心率 (e) 0.0004 ± 0.0003[3]
公転周期 (P) 0.2943958 日[3]
軌道傾斜角 (i) 4.75°±0.03° (海王星の赤道に対して)
海王星の衛星
物理的性質
三軸径 96 × 60 × 52 km[5]
平均半径 33 ± 3 km[1]
質量 1.9×1017 kg[1]
平均密度 1.3 g/cm3 (仮定値)[1]
自転周期 同期回転
アルベド(反射能) 0.07[5][1]
赤道傾斜角 0
表面温度 ~51 K (推定)
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発見と命名

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ボイジャー2号が撮影した画像。1989 N6がナイアド。
 
海王星の衛星の軌道。ナイアドは一番内側を公転している

ナイアドは、惑星探査機ボイジャー2号が海王星をフライバイした際に撮影された画像の中から、1989年9月に発見された。このフライバイでは合わせて6個の新衛星が発見されたが、この衛星が最後の発見となった[2]。発見はタラッサの発見と共に同年9月29日に国際天文学連合のサーキュラーで発表されたが、その内容は「11日間に渡って25枚の画像を捉えた」ということのみであった[8]。発見されたのは同年9月18日以前とされ、NASAでは発見を1989年9月[2]、国際天文学連合の惑星系命名ワーキンググループでは発見を1989年8月としている[9]。発見に伴う仮符号として S/1989 N 6 が与えられた。

その後1991年9月16日に、ギリシャ神話の妖精の種族ナイアドに因んで命名され、Neptune III という確定番号が与えられた[10]

探査

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JWST2022年に撮影した海王星。ナイアドの姿が確認できる

ボイジャー2号が接近観測して以降、海王星系は地上の望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡によって広く観測された。2002年から2003年にかけて、ケック望遠鏡での補償光学を用いた海王星系の観測では、内側の4つの大きな衛星は容易に検出された。その際、タラッサはいくらかの画像処理を行うことで発見されたが、ナイアドは予想される位置に発見されなかった[11]。ハッブル宇宙望遠鏡は全ての発見済みの海王星の衛星を検出する能力を持っており、ボイジャー2号でさえ見つけられない新しい衛星を見つけることも可能であったが、ナイアドは見つからなかった。そのため、ナイアドの天体暦がかなり間違っているのではないかと疑われていた[12]

2013年になって、SETI協会マーク・ショーウォルター英語版らは、ハッブル宇宙望遠鏡が2004年に撮影した画像からナイアドを発見したと発表した[13]。ナイアドが予想されていた位置から80もずれた位置で発見されたことから、天体暦に誤りがあるとの疑いが証明された。

特徴

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ナイアドのCG。

ナイアドは歪な形状をしており、おそらく形成後から内部の地質的な活動によって変化を起こしていないと考えられる[2]。他の衛星と同じく、トリトンが海王星によって非常に軌道離心率が大きい軌道に捕獲された直後の摂動によって破壊されたかつての海王星固有の衛星の破片が、再び降着して形成されたラブルパイル天体だと考えられている[2][14]

ナイアドの軌道面は海王星の赤道面から4.7度傾いており、海王星に近い軌道にある衛星の中では軌道傾斜角が特異に大きい。この高い軌道傾斜角は、ナイアドが過去に一時的にデスピナとの軌道共鳴に捕獲された時に増大したものだと考えられている[14]

海王星の大気圏の上およそ 23,500 km 上空という、海王星系の中で最も内側の軌道を回っている。海王星の静止軌道半径のはるか下に位置している[13]。この軌道は潮汐力によって徐々に減衰しており、いずれ海王星の大気に突入するか、ロッシュ限界を超えて潮汐力により砕かれ、海王星のになると考えられる[2]。なお、ナイアドの軌道は既に海王星の理論的なロッシュ限界よりも内側に位置している[13][注 1]

脚注

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注釈

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  1. ^ 実際に衛星が破壊される半径には衛星の強度なども関係してくるため、衛星が存在できる半径は必ずしも理論的なロッシュ限界とは厳密に対応しない[15]

出典

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  1. ^ a b c d e Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月25日閲覧。
  2. ^ a b c d e f In Depth | Naiad – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空宇宙局 (2017年12月5日). 2019年1月22日閲覧。
  3. ^ a b c Jacobson, R. A.; Owen, W. M., Jr. (2004). “The orbits of the inner Neptunian satellites from Voyager, Earthbased, and Hubble Space Telescope observations”. Astronomical Journal 128 (3): 1412–1417. Bibcode2004AJ....128.1412J. doi:10.1086/423037. 
  4. ^ Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月25日閲覧。
  5. ^ a b Karkoschka, Erich (2003). “Sizes, shapes, and albedos of the inner satellites of Neptune”. Icarus 162 (2): 400–407. Bibcode2003Icar..162..400K. doi:10.1016/S0019-1035(03)00002-2. 
  6. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  7. ^ 衛星日本語表記索引”. 日本惑星協会. 2019年3月9日閲覧。
  8. ^ Daniel W. E. Green (1989年9月29日). “IAUC 4867: NEPTUNE; JUPITER”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2019年1月22日閲覧。
  9. ^ Planet and Satellite Names and Discoverers”. Planetary Names. 国際天文学連合. 2015年1月11日閲覧。
  10. ^ Brian G. Marsden (1991年9月16日). “IAUC 5347: SNe; 1991o; Sats OF SATURN AND NEPTUNE”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2019年1月22日閲覧。
  11. ^ Marchis, F.; Urata, R.; de Pater, I.; Gibbard, S.; Hammel, H. B.; Berthier, J. (May 2004). "Neptunian Satellites observed with Keck AO system". American Astronomical Society, DDA meeting #35, #07.08; Bulletin of the American Astronomical Society. Vol. 36. p. 860. 2006年8月5日閲覧
  12. ^ Showalter, M. R.; Lissauer, J. J.; de Pater, I. (August 2005). "The Rings of Neptune and Uranus in the Hubble Space Telescope". American Astronomical Society, DPS meeting #37, #66.09; Bulletin of the American Astronomical Society. Vol. 37. p. 772. 2006年8月5日閲覧
  13. ^ a b c A Tale of a Lost Moon: Hubble Spies Neptune's Moons and Its Rings - Universe Today”. UNIVERSE TODAY (2004年12月8日). 2019年1月22日閲覧。
  14. ^ a b Banfield, Don; Murray, Norm (1992-10). “A dynamical history of the inner Neptunian satellites”. Icarus 99 (2): 390–401. Bibcode1992Icar...99..390B. doi:10.1016/0019-1035(92)90155-Z. 
  15. ^ 天文学辞典 » ロッシュ限界”. 天文学辞典. 日本天文学会. 2019年1月22日閲覧。

外部リンク

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