チェジュ航空2216便事故
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チェジュ航空2216便事故(チェジュこうくう2216びんじこ、韓国語: 제주항공 2216편 추락 사고 / 무안국제공항 여객기 추락 사고)は、2024年12月29日に韓国で発生した航空事故である。バンコク・スワナプーム空港から韓国・務安国際空港に向かっていたチェジュ航空2216便(ボーイング737-800型機)が、務安国際空港への胴体着陸に失敗しオーバーラン、外壁に衝突して大破炎上した[1]。事故により乗員・乗員181名のうち乗員2名を除く179名が死亡した。
2023年3月14日に撮影された事故機(福岡空港) | |
事故の概要 | |
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日付 | 2024年12月29日 |
概要 | 調査中 |
現場 |
韓国 全羅南道 務安国際空港 |
乗客数 | 175 |
乗員数 | 6 |
負傷者数 | 2 |
死者数 | 179 |
生存者数 | 2 |
機種 | ボーイング737-8AS |
運用者 | チェジュ航空 |
機体記号 | HL8088 |
出発地 | スワンナプーム空港 |
目的地 | 務安国際空港 |
チェジュ航空では2006年の運航開始以来初の死亡事故となり、韓国航空機による死亡事故としては、2013年にアシアナ航空機の着陸失敗により3人が死亡したアシアナ航空214便着陸失敗事故以来となる。2002年に金海国際空港近くで発生した中国国際航空129便墜落事故の129人を上回り、韓国国内の航空事故史上、最も多くの人命被害を出した。また、2024年に世界で発生した航空事故としても最多の死者数であり、B737シリーズで発生した事故では2番目に死者数の多い事故である。
事故の経緯
編集映像外部リンク | |
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事故の瞬間 | |
South Korea plane crash: 179 presumed dead - YouTube | |
車輪出ず胴体着陸で壁に激突 韓国の航空機事故 - YouTube |
2216便はタイのバンコクにあるスワンナプーム国際空港を2時11分 (UTC+7) に出発した[2]。事故は現地時間9時7分頃 (UTC+9) に発生した。当初、事故機は務安国際空港南側から滑走路01ヘの着陸進入をしており、ADS–Bの最終位置情報は8時58分・空港の南約1マイルの点であった[3]。
事故直前の8時57分[4]、同機は管制塔からバードストライクの危険を警告され、着陸を待つように指示を受けていた[5]。そして、その約2分後に操縦士からメーデーが発され[5]、3つすべてのランディングギアが展開しない状態のまま、旋回後北側から滑走路19への胴体着陸を試みたが[6]、同機は滑走路をオーバーランし、ILSアレイのある外壁に時速200 kmほどの高速で衝突し炎上した[7][8][9]。
事故機
編集事故機は2009年8月19日に初飛行し、アイルランドのライアンエアがリースで導入した(当時の機体記号:EI-EFR)。同年9月4日引き渡しが行われ、2016年11月24日にリースが返却された。
2017年2月3日にチェジュ航空がリース契約し、同月5日に金浦空港へ飛来。同月10日から運用開始した[10]。事故機は、事故2日前の12月27日にバンコク→務安→済州→北京大興→済州→務安→コタキナバルで運用されていた。そのうち、バンコク→務安の乗客が出発時にエンジンが停止したため、チェジュ航空に問い合わせたが、「特に問題ない」と返されたという[11]。事故翌日の30日にチェジュ航空が事故調査委員会に提出した資料では、前述のエンジン停止問題は事実でないとされた[12]。さらに、Flightradar24によると、済州→北京大興運航時には仁川に代替着陸(ダイバート)[13]した後、3時間後に北京大興へ向け再度出発していた[14]。 また事故の当該機は、発生1日前の同月28日に長崎空港発着の運用に入っていた[15]。
乗員乗客
編集国別 | 合計 | 死亡者数 | 生存者数 |
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韓国 | 179 | 177 | 2 |
タイ | 2 | 2 | 0 |
累計 | 181 | 179 | 2 |
乗客175人のうち、2人はタイ国籍、残り173人は韓国国籍だった。乗客の最年長者は1946年生まれ、最年少者は2021年生まれだった。乗客181人のうち、男性は82人、女性は93人だった。乗客5人は10歳未満だった[16]。
機長は2019年から済州航空の従業員であり、6,823時間の飛行経歴を積んでいた[17]。副操縦士の飛行経歴は1,650時間だった[17]。乗務員には4人の客室乗務員も含まれていたが、後方ジャンプシートに座っていた2人が墜落の唯一の生存者で意識があった。彼らは中等度から重度の傷を負い、1人は肋骨、肩甲骨、上部脊椎を骨折し、もう1人は足首と頭部を負傷した。 2人とも木浦の別々の病院で治療を受けた後、ソウルの病院に移送された。生存者は2人とも方向感覚を失っているようで、着陸直後に何が起こったのか思い出せなかった[18]。
乗客のほとんどはバンコクへの5日間のクリスマスパッケージツアーから帰国する人で、ツアーを企画した旅行会社が飛行機をチャーターしていた。乗客のうち、8人は和順郡の現職または元職員、5人は全南道教育庁の行政職員であると報告された。
合計179人の死亡が確認された。地元の消防当局は、飛行機がバリアに衝突した後、乗客は飛行機から放出されたため、生存の可能性はほとんどなかったと述べた。消防士によると、一部の遺体は墜落現場から100〜200メートル離れた場所に散乱しており、他の遺体は残骸の中で切断されたり焼死したりした状態で発見された。
調査
編集韓国の航空・鉄道事故調査委員会(ARAIB)によって調査が開始され[19]、アメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)が連邦航空局(FAA)とボーイング社と共に調査に参加した[20]。
コックピットボイスレコーダー(CVR)が良好な状態で、フライトデータレコーダー(FDR)が一部破損した状態で回収された[21]。
対応
編集チェジュ航空はウェブサイト上で事故について謝罪する声明を発表し、チケット購入リンクを一時的に削除した[22]。
事故発生当日の14時頃には崔相穆大統領代行[注 1]が事故現場の務安国際空港に到着し、現地当局者などに人命救助に最優先で取り組むよう指示するとともに「遺族にはいかなる慰めの言葉も足りない」と述べた[23]。また、2025年1月4日までの1週間を「国家哀悼期間」とした[24]。
また、タイのペートンターン・シナワット首相、ドイツのショルツ首相、ウクライナのゼレンスキー大統領、日本の石破茂首相、中国の習近平 国家主席、トルコのエルドアン大統領、セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領、ドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領、イギリスのキア・スターマー首相、アメリカのバイデン大統領など、各国の首脳が犠牲者と遺族に哀悼の意を表した。サウジアラビア外務省やローマ教皇庁も哀悼の意を表した。また、韓国の複数の外交使節団とボーイング社も犠牲者と遺族に哀悼の意を表した。
韓国国土交通部は、事故機種ボーイング737-800に関して、今回の事故に加え、2024年12月30日朝、チェジュ航空ソウル/金浦発済州行き101便(HL8090)で着陸装置に異常が発生し、金浦国際空港へ引き返したこと[25]や、ノルウェーでも28日に油圧系統の不具合により緊急着陸するトラブルが発生していたことを受け[26]、30日から翌年1月3日にかけて、韓国内の同型機全101機(チェジュ航空39機、ジンエアー19機、ティーウェイ航空27機、イースター航空10機、大韓航空2機、エア・インチョン4機)のエンジンなどの主要系統の整備履歴の検査を実施すると発表した[27]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 「韓国の空港で旅客機墜落 死傷者多数=181人搭乗」『聯合ニュース』2024年12月29日。2024年12月29日閲覧。
- ^ “7C2216 (JJA2216) Jeju Air Flight Tracking and History” (英語). FlightAware. 2024年12月29日閲覧。
- ^ Ranter, Harro. “Accident Boeing 737-8AS (WL) HL8088, Sunday 29 December 2024”. asn.flightsafety.org. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “韓国旅客機の着陸失敗で死者179人、車輪作動せず炎上-生存者は2人”. Bloomberg.com (2024年12月29日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ a b “韓国で旅客機が滑走路外れ炎上 179人死亡、2人救助”. BBCニュース (2024年12月29日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ “韓国航空機事故・操縦士が事故2分前、管制塔に「遭難信号」…滑走路に消防隊は確認されず”. www.afpbb.com (2024年12月29日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ “South Korea Plane Crash: What do we know so far?” (英語). The Indian Express (2024年12月29日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ “韓国旅客機事故 時速200キロで外壁に衝突か 航空評論家”. 毎日新聞 (2024年12月29日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ Tadayuki YOSHIKAWA (2024年12月29日). “チェジュ航空の務安事故”. Aviation Wire 2024年12月30日閲覧。
- ^ HL8088 Jeju Air Boeing 737-8AS(WL)History
- ^ 韓国で着陸失敗の旅客機、2日前にエンジン止まる現象 乗客証言 毎日新聞、2024年12月29日
- ^ “チェジュ航空が謝罪 「事故の原因にかかわらず責任痛感」(中央日報日本語版)”. Yahoo!ニュース. 2024年12月30日閲覧。
- ^ Playback of flight HL8088(7C8135) - FlightRader24
- ^ Playback of flight HL8088(7C8135) - FlightRader24
- ^ “務安空港で炎上の旅客機、前日含め日本で何度も発着…LCCのチェジュ航空が日韓路線を積極就航”. 読売新聞オンライン (2024年12月29日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ Herman, Alice; Lowe, Yohannes; Lavelle, Daniel; Ratcliffe, Rebecca; Stock, Petra; Russell, Graham; Lowe, Alice Herman (now); Yohannes; Russell (earlier), Graham (2024年12月29日). “Air traffic controllers warned of bird strike minutes before Muan airport accident – as it happened” (英語). the Guardian. ISSN 0261-3077 2024年12月30日閲覧。
- ^ a b “181人乗せた韓国チェジュ航空機が着陸失敗・炎上”. 東洋経済オンライン (2024年12月29日). 2024年12月30日閲覧。
- ^ “'3박5일' 크리스마스 방콕 여행객들 '참변'…여행사 전세기” (朝鮮語). 뉴스1 (2024年12月29日). 2024年12月30日閲覧。
- ^ Schupak, Adam (2024年12月30日). “NTSB To Assist South Korean Aviation Authority With Investigation Into Jeju Air Flight 2216” (英語). Simple Flying. 2024年12月30日閲覧。
- ^ News, A. B. C.. “179 dead, 2 rescued after plane crashes while landing in South Korea” (英語). ABC News. 2024年12月30日閲覧。
- ^ “<チェジュ航空旅客機事故>ブラックボックス一部損傷、解析に最小1カ月…米国に任せなければならない場合も」”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2024年12月30日閲覧。
- ^ Bae, Yoonjung Seo, Gawon (2024年12月29日). “Dozens dead after South Korean jet carrying 181 people crashes at airport: Live updates” (英語). CNN. 2024年12月29日閲覧。
- ^ “韓国の旅客機事故「搭乗者の大半、死亡と推定」 生存確認は2人”. 毎日新聞 (2024年12月29日). 2024年12月29日閲覧。
- ^ “韓国、来年1月4日まで「国家哀悼期間」に”. 共同通信 (2024年12月29日). 2024年12月30日閲覧。
- ^ <チェジュ航空旅客機事故>事故1日で同一機種、またランディングギアの異常…緊急回航
- ^ ボーイング737-800型機…韓国務安空港惨事の前日にもノルウェーでも非常着陸
- ^ 韓国国土交通部、ボーイング737-800型機の全数検査指示 6社101機が対象