チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ

チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ』(The Cheerful Insanity of Giles, Giles and Fripp[注釈 1]は、イングランドロックバンドジャイルズ・ジャイルズ&フリップ(GG&F)が1968年に発表したデビュー・アルバムである[1]

『チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ』
ジャイルズ・ジャイルズ&フリップスタジオ・アルバム
リリース
録音 1968年3月-4月
ジャンル サイケデリック・ロック
レーベル デラム・レコード
プロデュース Wayne Bickerton
ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ アルバム 年表
チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ
(1968年)
ザ・ブロンデスベリー・テープス
(1980年)
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解説

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経緯

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1967年7月、GG&Fは初めてロンドンに行き、ジャイルズ兄弟のつてでコーラス・グループのフラワー・ポット・メンのバック・バンドになる可能性を見出した。そこで9月に故郷のドーセットからロンドンに移ったが、到着すると仲介業者からフラワー・ポット・メン[注釈 2]が前日に他のバンドと契約してしまったと聞かされた[2]

失意の彼等は一旦引き返したが、ロンドンへの憧れを捨てきれずに数週間後に戻って、ブロンデスベリー・ロード(Brondesbury Road)に住み[3]、各自が短期の演奏のバイトで生活を営んだ。そして家では曲を書いて練習し、やがて居間に仮説スタジオを設営してRevoxのレコーダーを使ってバンドのデモ録音を制作した[3]。そしてイギリスデッカ・レコード内に新しく設立されたデラム・レコード部門とアルバム1作とシングル2作を発表する契約を結び、契約金250英ポンドを受け取った[4]

1968年3月と4月、ロンドンのBroadhurst Gardensにあるデラムのスタジオでレコ―ディングが計4日を費やして行なわれた[5]。デラムに所属するWayne Bickertonがプロデューサーに起用され、ニッキー・ホプキンスらのセッション・ミュージシャンが参加した。

内容

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オリジナル・アルバムの収録曲の間には、片面にロバート・フリップ作「ロドニー・トーディ物語」[6]、もう片面にマイケル・ジャイルス作「ジャスト・ジョージ」[7]の朗読が収録された[注釈 3]

収録曲の大半はジャイルズ兄弟のボーカルを中心に据えたサイケデリックなポップ・ミュージックである。フリップ作の「組曲 第一番」と「エリュダイト・アイズ」には、プログレッシブ・ロックの代表格であるキング・クリムゾンへと進化する予兆が僅かながらに感じられるという指摘もある[8][注釈 4]

6月28日にシングル『どこにもいる男 / 新婚さん』[9][5]、同年9月13日に本作[5]が発表された。本作の売り上げは同年のデラム・レコードのアルバムで最低の「全世界で」(フリップ談)600部[10]だった。

CDのボーナス・トラック

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GG&Fは元フェアポート・コンヴェンションジュディ・ダイブル(ボーカル)がメロディ・メーカーに掲載した広告を見て、シングル『どこにもいる男 / 新婚さん』が発表される直前の6月7日に彼女と彼女のボーイフレンドのイアン・マクドナルド(サクソフォーン、フルート、クラリネット)を迎えた[11][5]。ダイブルは約一か月で脱退し[注釈 5][12]、GG&Fとマクドナルドは7月6日に「木曜日の朝」のシングル・バージョンを制作し、マクドナルドのフルートとクラリネットとコーラスを追加した[13][14]

10月11日、2作目のシングル『木曜日の朝 / 象の歌』[15]が発表された[5]が、注目を集めるには至らなかった。3人とマクドナルドは秋のスタジオ・セッションで「シー・イズ・ローディド」と「アンダー・ザ・スカイ」を録音したが、いずれもデラムに拒否された[13]

収録曲

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LP
Side One
The Saga of Rodney Toady
#タイトル作詞・作曲時間
1.「北国の草原 (North Meadow)」Peter Giles
2.「ロドニー・トーディ物語 (パート1)」  
3.「新婚さん (Newly-Weds)」P. Giles
4.「ロドニー・トーディ物語 (パート2)」  
5.「どこにもいる男 (One in a Million)」Michael Giles
6.「ロドニー・トーディ物語 (パート3)」  
7.「コール・トゥモロウ (Call Tomorrow)」P. Giles
8.「ロドニー・トーディ物語 (パート4)」  
9.「ディギング・マイ・ローン (Digging My Lawn)」P. Giles
10.「ロドニー・トーディ物語 (パート5)」  
11.「リトル・チルドレン (Little Children)」Robert Fripp
12.「クラクスター (The Crukster)」M. Giles
13.「木曜日の朝 (Thursday Morning)」M. Giles
Side Two
Just George
#タイトル作詞・作曲時間
1.「ハウ・ドゥ・ゼイ・ノウ (How Do They Know)」M. Giles
2.「ジャスト・ジョージ (パート1)」  
3.「象の歌 (Elephant Song)」M. Giles
4.「ジャスト・ジョージ (パート2)」  
5.「陽は輝いていても (The Sun is Shining)」M. Giles
6.「ジャスト・ジョージ (パート3)」  
7.「組曲 第1番 (Suite No. 1)」Fripp
8.「ジャスト・ジョージ (パート4)」  
9.「エリュダイト・アイズ (Erudite Eyes)」Fripp
CD
#タイトル作詞・作曲時間
1.「北国の草原 (North Meadow)」Peter Giles
2.「ロドニー・トーディ物語 (パート1)」  
3.「新婚さん (Newly-Weds)」P. Giles
4.「ロドニー・トーディ物語 (パート2)」  
5.「どこにもいる男 (One in a Million)」Michael Giles
6.「ロドニー・トーディ物語 (パート3)」  
7.「コール・トゥモロウ (Call Tomorrow)」P. Giles
8.「ロドニー・トーディ物語 (パート4)」  
9.「ディギング・マイ・ローン (Digging My Lawn)」P. Giles
10.「ロドニー・トーディ物語 (パート5)」  
11.「リトル・チルドレン (Little Children)」Robert Fripp
12.「クラクスター (The Crukster)」M. Giles
13.「木曜日の朝 (Thursday Morning)」M. Giles
14.「ハウ・ドゥ・ゼイ・ノウ (How Do They Know)」M. Giles
15.「ジャスト・ジョージ (パート1)」  
16.「象の歌 (Elephant Song)」M. Giles
17.「ジャスト・ジョージ (パート2)」  
18.「陽は輝いていても (The Sun is Shining)」M. Giles
19.「ジャスト・ジョージ (パート3)」  
20.「組曲 第1番 (Suite No. 1)」Fripp
21.「ジャスト・ジョージ (パート4)」  
22.「エリュダイト・アイズ (Erudite Eyes)」Fripp
23.「シー・イズ・ローディド (She Is Loaded)」(ボーナス・トラック)P. Giles
24.「アンダー・ザ・スカイ (Under the Sky)」(ボーナス・トラック)Fripp[注釈 6]
25.「どこにもいる男 (モノ・シングル・ヴァージョン) (One in a Million)」(ボーナス・トラック)M. Giles
26.「新婚さん (モノ・シングル・ヴァージョン) (Newly-Weds)」(ボーナス・トラック)P. Giles
27.「木曜の朝 (モノ・シングル・ヴァージョン) (Thursday Morning)」(ボーナス・トラック)M. Giles
28.「木曜の朝 (ステレオ・シングル・ヴァージョン) (Thursday Morning)」(ボーナス・トラック)M. Giles

参加メンバー

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ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ

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その他のミュージシャン

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制作

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脚注

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注釈

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  1. ^ 日本語訳は「ジャイルズ・ジャイルズ&フリップの陽気な狂気」。
  2. ^ 8月にシングル発表した「レッツ・ゴー・トゥ・サンフランシスコ」が大ヒットした。
  3. ^ 朗読はいずれも作者である。
  4. ^ フリップは、この2曲が自分が本作に与えた独特の貢献であると語った。
  5. ^ 彼女が在籍中に5人が制作したデモ録音のうち、「風に語りて」はキング・クリムゾンの編集アルバム『新世代への啓示』(1976年)に収録された。また「風に語りて」「アンダー・ザ・スカイ」など7曲はGG&Fの編集アルバム"The Brondesbury Tapes (1968)"(2001年)に収録された。
  6. ^ 実際の作者はイアン・マクドナルドである。

出典

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  1. ^ Smith (2019), pp. 22–23, 393–397.
  2. ^ Smith (2019), p. 17.
  3. ^ a b Smith (2019), p. 18.
  4. ^ Smith (2019), p. 21.
  5. ^ a b c d e キング・クリムゾンのアルバム『新世代への啓示』(1976年)に添付されたブックレットの13ページ。
  6. ^ Smith (2019), p. 393.
  7. ^ Smith (2019), p. 395.
  8. ^ Smith (2019), pp. 22, 396–397.
  9. ^ Discogs”. 2025年1月9日閲覧。
  10. ^ Smith (2019), p. 22.
  11. ^ Smith (2019), p. 27.
  12. ^ Discogs”. 2025年1月12日閲覧。
  13. ^ a b Smith (2019), p. 28.
  14. ^ Discogs”. 2024年6月21日閲覧。
  15. ^ Discogs”. 2025年1月9日閲覧。

引用文献

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  • Smith, Sid (2019). In the Court of King Crimson: An Observation over Fifty Years. Panegyric. ISBN 978-1916153004