スヴァールバル条約

国際条約

スヴァールバル条約(スヴァールバルじょうやく)は、1920年のパリ会議で締結された、北極海にあるノルウェースヴァールバル諸島の取り扱いに関する多国間の条約である。

「スピッツベルゲン」ニ関スル条約
通称・略称 スヴァールバル条約
署名 1920年2月9日
署名場所 パリ
発効 1925年8月14日
主な内容 スヴァールバル諸島の地位を定める
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概説

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スヴァールバル諸島は20世紀初頭までに、ノルウェーだけでなく、ロシア帝国を含むヨーロッパ各国やアメリカ合衆国探検や領有権主張、石炭採掘などを行った。こうした歴史的経緯から、条約はノルウェーの領有権を認める一方で、ノルウェーの法律を全ては適用せず、全ての加盟国は等しくこの島で経済活動を行う権利を有すると規定した。また、スヴァールバル諸島を非武装地帯として軍事活動を禁じた。このため第二次世界大戦中を除いて、軍隊は駐屯していない。

条約加盟国の国民は、ノルウェーの入国管理税関の審査を受けず、査証無しで入島できる。また徴収された租税は諸島内だけで使い、ノルウェー本土への流用を禁じている[1]

原加盟国はオーストラリアカナダデンマークフランスインドイタリア日本オランダニュージーランド、ノルウェー、南アフリカスウェーデンイギリス、アメリカ。1924年ソビエト連邦1925年ドイツが加盟した。現在の加盟国は40を超えるが、実際に諸島で経済活動を行っているのはノルウェーとロシアのみである。

条約加盟国

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スヴァールバル条約加盟国(緑色)
青色はスヴァールバル諸島

日付は批准日[2]

加盟国 批准日 備考
  アフガニスタン 1929年11月23日
  アルバニア 1930年4月29日
  アルゼンチン 1927年5月6日
  オーストラリア 1923年12月29日 当初はイギリスの自治領として加盟。
  オーストリア 1930年3月12日
  ベルギー 1925年5月27日
  ブルガリア 1925年10月20日
  カナダ 1923年12月29日 当初はイギリスの自治領として加盟。
  チリ 1928年12月17日
  中華人民共和国 1925年7月1日 当初は中華民国として加盟。現在、中華人民共和国中華民国(台湾)の双方が後継国あるいは継続国であると主張しているが、2024年現在、他のすべての条約締約国は中華人民共和国のみを国家承認している。
  チェコ 2006年6月21日 前身国家となるチェコスロバキアは1930年7月9日に条約に加盟。チェコ政府は2006年6月21日に1993年1月1日(ビロード離婚により現在の国家が成立した日)以来、後継国としてこの条約に拘束されていると考えていると表明した。
  デンマーク 1924年1月24日 デンマーク王国として加盟。
  ドミニカ共和国 1927年2月3日
  エジプト 1925年9月13日
  エストニア 1930年4月7日
  フィンランド 1925年8月12日
  フランス 1924年9月6日
  ドイツ 1925年11月16日 当初はドイツ国ヴァイマル共和政)として加盟。第二次世界大戦後、西ドイツはドイツ国との継承国として同条約を継承、東ドイツは継承国であることを承認していなかったものの、1974年8月7日に同条約の適用を再開した。両国は1990年10月3日に再統一した。
  ギリシャ 1925年10月21日
  ハンガリー 1927年10月29日
  アイスランド 1994年5月31日
  インド 1923年12月29日 当初はイギリスの一部(イギリス領インド帝国)として加盟。
  アイルランド 1923年12月29日 当初はイギリスの自治領(アイルランド自由国)として加盟。1976年4月15日にイギリスの批准以来、同条約を適用していると宣言した。
  イタリア 1924年8月6日
  日本 1925年4月2日
  ラトビア 2016年6月13日
  リトアニア 2013年1月22日
  モナコ 1925年6月22日
  オランダ 1920年9月3日 オランダ王国として加盟。
  ニュージーランド 1923年12月29日 当初はイギリスの自治領(ニュージーランド自治領)として加盟
  北朝鮮 2016年3月16日
  ノルウェー 1924年10月8日
  ポーランド 1931年9月2日
  ポルトガル 1927年10月24日
  ルーマニア 1925年7月10日
  ロシア 1935年5月7日 当初はソビエト連邦として加盟。1992年1月27日、ロシアはソ連が締結した条約を引き続き適用すると宣言した。
  サウジアラビア 1925年9月2日 当初はヒジャーズ王国として加盟。
  セルビア 2022年9月5日 ユーゴスラビア王国は1925年7月6日に加盟(ただしこの国家の継承国は2024年現在存在しないとされる)。2022年9月5日、セルビアは条約の適用継続を宣言。
  スロバキア 2017年2月21日 前身国家となるチェコスロバキアは1930年7月9日に条約に加盟。スロバキア政府は2017年2月21日に1993年1月1日(ビロード離婚により現在の国家が成立した日)以来、後継国としてこの条約に拘束されていると考えていると表明した。
  南アフリカ共和国 1923年12月29日 当初はイギリスの自治領(南アフリカ連邦)として加盟。
  大韓民国 2012年9月11日
  スペイン 1925年11月12日
  スウェーデン 1924年9月15日
  スイス 1925年6月30日
  トルコ 2024年4月11日
  イギリス 1923年12月29日
  アメリカ合衆国 1924年4月2日
  ベネズエラ 1928年2月8日

脚注

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  1. ^ ノルウェー領「最北のロシア」 北極開発へ布石 スピッツベルゲン島『読売新聞』朝刊2017年3月23日
  2. ^ Traités et accords de la France” [Treaties and agreements of France] (フランス語). Ministry for Europe and Foreign Affairs of France. 1 August 2024閲覧。

関連項目

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