ストロンチウム斜方ホアキン石
鉱物
ストロンチウム斜方ホアキン石(ストロンチウムしゃほうホアキンせき、 Strontio-orthojoaquinite)は1974年に発表された日本産新鉱物で、新潟大学の岩石学者茅原一也などにより、新潟県の青海地区から発見された[1]。「ストロンチオ斜方ホアキン石」、「ストロンチオ斜方ジョアキン石」とも表記する。
化学組成はSr2Ba2(Na,Fe2+)2Ti2Si8O24(O,OH)・H2Oで(ホアキン石グループの化学組成は、幾つかの異なる報告があるが、ここでは最近の研究例に従って表示した[2])、斜方晶系。発見地では苦土リーベック閃石曹長岩中に黄色の不定形、もしくは四角錐状の結晶として埋もれるように産出する。モース硬度は5.5。
ホアキン石(Joaquinite)グループに属し、ストロンチウムの卓越する種で、ストロンチオホアキン石(Strontiojoaquinite, 単斜晶系)の同質異像である。発見当時、発見者の茅原は発見論文では「ホアキン石類似鉱物」と報告したのみで、日本の文献では姫川の古名である奴奈川(ぬなかわ)の名に因んで「奴奈川石」(Nunakawaite)という和名で呼んでおり[3][4]、日本ではこちらの名称の方が知られている。その後、カリフォルニア州サンベニト郡で1979年にストロンチオホアキン石とバリオ斜方ホアキン石(Bario-orthojoaquinite)が発見され[5]、「奴奈川石」も組成から自動的に命名された。ただし、本種のストロンチウムとバリウムの配置と量比は不明であり、一つの結晶中に多形が存在する[6]など構造については未解明の部分が多い。
脚注
編集- ^ Chihara, K. et al. (1974): A joaquinite-like mineral from Ohmi, Niigata Prefecture, Central Japan. Mineral. Jour., 7, 395-399.
- ^ Matsubara, S. et al. (2001): Redefinition of a mineral in the joaquinite group: orthojoaquinite-(La). Canad. Mineral., 39, 757-760.
- ^ 茅原一也, 小松正幸, 溝田忠人 (1981) 青海産新鉱物(ohmilite, nunakawaiteほか)の成因に関する研究–蛇紋岩中のtectonic blockの稀有鉱物共生–. 飛騨外縁帯総合研究飛騨外縁帯研究報告No.2!文部省科学研究費総合研究(A)飛騨外縁帯の地質学的岩石学的研究, 43-56.
- ^ 茅原一也(1996)青海自然史博物館とヒスイ. 宝石学会誌, 21, 95-96.
- ^ Wise W.S. (1982) Strontiojoaquinite and bario-orthojoaquinite: two new members of the joaquinite group, American Mineralogist 67, 809-816
- ^ 間島寛紀, 赤井純治(2005)HRTEMによる青海産ストロンチオ斜方ジョアキン石の構造多様性 -特にc軸方向四倍周期構造について-. 日本鉱物学会2005年度年会講演要旨集, K8-08