ススキティラヌス学名Suskityrannus "(ズニ族の言葉で)コヨーテの暴君"の意味)は、白亜紀後期のララミディア大陸に生息した小型のティラノサウルス上科獣脚類の属。模式種ススキティラヌス・ハゼラエのみが含まれ、約9,200万年前に生息していたと考えられている[1]。模式標本はチューロニアンにあたるニューメキシコ州西部のズニ盆地 Moreno Hill 層で発見された。

ススキティラヌス
生息年代: 白亜紀後期, 92 Ma
特別展『恐竜王国2012』のため組み立てられた骨格
地質時代
中生代白亜紀後期 - チューロニアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
階級なし : 鳥吻類 Averostra
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : コエルロサウルス類 Coelurosauria
階級なし : ティラノラプトラ Tyrannoraptora
上科 : ティラノサウルス上科 Tyrannosauroidea
階級なし : パンティラノサウルス類 Pantyrannosauria
: ススキティラヌス属 Suskityrannus
学名
Suskityrannus
Nesbitt et al.2019

記載

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ワイオミング州恐竜センターにて、一般的なコエルロサウルス類としての特徴が多い初期の骨格復元

ススキティラヌスの2つの標本は背丈1メートル全長3メートルで、体重は20 - 40キログラムだった。いずれも成体ではない可能性が高く[2]、標本の1つは成長輪に基づいて3歳と推定された。ススキティラヌスの頭部と足はティラノサウルスよりも細長い[3]アークトメタターサルの系統発生学的に早い記録などススキティラヌスは既にティラノサウルス科のボディープランの主要な特徴を持っており、羽毛が生えていた可能性もある。

発見と命名

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Wolfe と Kirkland による1998年のズニケラトプスの記載において小型のドロマエオサウルス科として最初に言及され、科学的記載に先立って「ズニのコエルロサウルス類」や「ズニのティラノサウルス類」あるいは「ズニティラヌス」と非公式に呼称されていた。ドキュメンタリー『プラネット・ダイナソー』で焦点が当てられた際にはズニティラヌスという名称が用いられ、ティラノサウルス類の推論的な傾向に基づき、群れで狩りをする捕食動物として紹介された[4][5][6]。最初の化石は古生物学者 Doug Wolfe とともに発掘に訪れていた当時16歳の博物館ボランティアであるスティーリング・ネスビットが発見した[7][8][9][10]。ススキティラヌスは2019年に原始的なティラノサウルス上科の属として正式に記載された[11][12]。ホロタイプ標本 MSM P4754(部分的に関節した頭骨と少量の胴体の骨)とパラタイプ標本 MSM P6178 (少量の頭骨と不完全な胴体を含む部分的に関節した骨格)のどちらもがアリゾナ自然史博物館のコレクションとして保管されている[11]

分類

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ススキティラヌスに近縁な属であるティムルレンギア

以下はススキティラヌスの位置についての系統解析[11]

ティラノサウルス上科

プロケラトサウルス科

ストケソサウルス

ジュラティラント

エオティラヌス

ススキティラヌス

ティムルレンギア

シオングアンロン

ドリプトサウルス

アパラチオサウルス

ビスタヒエヴェルソル

ティラノサウルス科

古生物学

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ススキティラヌスが生息していたニューメキシコの地域は化石が豊富である。白亜紀前期の動物相と白亜紀後期の動物相の転換期にあたり、植物が生い茂り、湿潤で、恐竜がひしめいていた。この層は降雨と大規模な植生に恵まれた湾であったと考えられ、モクレンなどの森林が卓越していたとされている。ズニケラトプスノトロニクスといった他の属[13][14][15]ジェヤワティのわずかな標本[16][17]などがこの地域から知られており、まだ命名されていないアンキロサウルス科の恐竜もこの層に含まれている[18]。ススキティラヌスの記載は、研究者がティラノサウルス上科の進化を解明するために埋める必要があった重要な系統学的・形態学的なギャップを埋めた[19]。ススキティラヌスの脳がそのボディープランと比較して遥かに大きいと Douge Wolfe は主張している。

文化面

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前述のとおりススキティラヌスは正式な学名がつけられる前から、様々な特別展や映像作品に登場している。

ドキュメンタリー

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恐竜再生』ディスカバリーチャンネル制作

今作では発見当初のドロマエオサウルス類説と、やや新しいコエルロサウルス類説の姿で登場した。ドロマエオサウルス類としては度々ズニケラトプスノトロニクスと小競り合いを繰り広げた。コエルロサウルス類としては鳥類への進化を解説する役目を担った。 制作年の都合により、ススキティラヌス自体の名前は言及されていないが、解説シーンにて実骨標本(頭骨)が確認できる[20]

プラネット・ダイナソー』BBC制作

今作では“ズニティラヌス”という仮の名前で登場した。こちらでもノトロニクスを2度に渡り襲撃したり、仲間の死骸を漁る様子が描写された[21]

出典

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  1. ^ Temming, Maria (2019年5月7日). “A tiny mystery dinosaur from New Mexico is officially T. rex’s cousin” (英語). Science News. 2019年5月14日閲覧。
  2. ^ “Mini Tyrannosaur Struck Fear Into Hearts of Jurassic Proto-rabbits Everywhere”. HAARETZ. Ruth Schuster. https://www.haaretz.com/science-and-health/.premium.MAGAZINE-mini-tyrannosaur-struck-fear-into-hearts-of-jurassic-proto-rabbits-everywhere-1.7209920 May 6, 2019閲覧。 
  3. ^ Newly named Tyrannosaurus Rex cousin was only three feet tall”. Chrissy Sexton. 2019年5月17日閲覧。
  4. ^ Tyrannosaur 'Gangs' Terrorized Ancient Landscape”. Liver science. 2019年5月14日閲覧。
  5. ^ New Evidence Suggests Tyrannosaurus Rex Was A Cannibal”. IFL Science. 2019年5月14日閲覧。
  6. ^ Planet Dinosar”. BBC. 2019年5月14日閲覧。
  7. ^ Found in New Mexico: A tiny cousin of the T-Rex”. https://bigthink.com/surprising-science/trex-. ROBBY BERMAN. 13 May, 2019閲覧。
  8. ^ Teen's fossil find leads to discovery of new dinosaur, a tiny relative of T. rex”. AZcentral.com. Lindsey Collom. 2019年5月17日閲覧。
  9. ^ Coelurosauria”. theropoddatabase.com. 9 May 2019閲覧。
  10. ^ Zuni Tyrannosaur Skeleton”. Gaston Design, Inc.. 9 May 2019閲覧。
  11. ^ a b c Wolfe, Douglas G.; McDonald, Andrew T.; Kirkland, James I.; Turner, Alan H.; Smith, Nathan D.; Brusatte, Stephen L.; Loewen, Mark A.; Denton, Robert K. et al. (May 6, 2019). “A mid-Cretaceous tyrannosauroid and the origin of North American end-Cretaceous dinosaur assemblages”. Nature Ecology & Evolution: 1. doi:10.1038/s41559-019-0888-0. https://www.nature.com/articles/s41559-019-0888-0. 
  12. ^ Mcdonald, Wolfe and Kirkland, 2010. A new basal hadrosauroid (Dinosauria: Ornithopoda) from the Turonian of New Mexico. Journal of Vertebrate Paleontology. 30(3), 799-812.
  13. ^ PDBB”. 2019年5月17日閲覧。
  14. ^ †Nothronychus mckinleyi Kirkland and Wolfe 2001 (coelurosaur)”. PBDB. 2019年5月17日閲覧。
  15. ^ “The Creature From the Zuni Lagoon”. Discover. Heather Pringle, Grant Delin. (August 1, 2001). http://discovermagazine.com/2001/aug/featzuni May 6, 2019閲覧。 
  16. ^ McDonald Andrew T.; Wolfe, Douglas G. and Kirkland, James I. (2010). "A new basal hadrosauroid (Dinosauria: Ornithopoda) from the Turonian of New Mexico". Journal of Vertebrate Paleontology. 30(3): 799–812.
  17. ^ CRETACEOUS DINOSAURS IN NEW MEXICO”. 2019年5月6日閲覧。
  18. ^ Sterling J. Nesbitt; Robert K. Denton Jr; Mark A. Loewen; Stephen L. Brusatte; Nathan D. Smith; Alan H. Turner; James I. Kirkland; Andrew T. McDonald et al. (2019). “Supplementary information for: A mid-Cretaceous tyrannosauroid and the origin of North American end-Cretaceous dinosaur assemblages”. Nature Ecology & Evolution 3. https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs41559-019-0888-0/MediaObjects/41559_2019_888_MOESM1_ESM.pdf. 
  19. ^ “Tiny Tyrannosaur trod lightly 92 million years ago”. Cosmos. https://cosmosmagazine.com/palaeontology/tiny-tyrannosaur-trod-lightly-92-million-years-ago May 6, 2019閲覧。 
  20. ^ 『恐竜再生』ディスカバリーチャンネル制作
  21. ^ 『プラネット・ダイナソー』BBC制作